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JP6066770B2 - 金属板ラミネート用ポリエステルフィルム - Google Patents

金属板ラミネート用ポリエステルフィルム Download PDF

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JP6066770B2 JP2013040205A JP2013040205A JP6066770B2 JP 6066770 B2 JP6066770 B2 JP 6066770B2 JP 2013040205 A JP2013040205 A JP 2013040205A JP 2013040205 A JP2013040205 A JP 2013040205A JP 6066770 B2 JP6066770 B2 JP 6066770B2
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Description

本発明は、金属板ラミネート用ポリエステルフィルムに関する。
従来、食品用金属缶の内面及び外面には、内容物の風味を保つのと同時に金属缶素材の腐食を防止することを目的として、又は、外面の意匠性の向上や印刷面の保護を目的として、熱硬化性樹脂を主成分とする溶剤型塗料が塗布されていた。しかしながら、溶剤型塗料により塗膜を形成するためには高温での加熱が必要であり、また加熱時に多量の溶剤が揮発するため、作業の安全性及び環境面において問題がある。このため、最近は溶剤型塗料を用いない腐食防止法として、熱可塑性樹脂による金属缶のラミネートが提案されている。中でもポリエステル樹脂は加工性や耐熱性に優れることから、ポリエステル樹脂をベースとした金属板ラミネート用フィルムの開発が進められている。
しかしながら、ポリエステル樹脂をラミネートした金属缶には、レトルト殺菌処理等の高温殺菌処理の際、ポリエステル樹脂中の環状三量体が樹脂表面に析出して意匠性を損なうこと、ポリエステル樹脂そのものが白く濁ったように変色するレトルト白化現象が発生すること等の問題がある。このため、これらの問題を解決するために、特許文献1には、容器に成形した際に外面側になるポリエステル樹脂層として、エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂30〜50質量%と、ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂50〜70質量%とを含有するポリエステル組成物が記載されている。
ところで、食品缶詰用素材には加工性や密着性等の基本特性のほか、2ピース缶用途であれば、深絞り成形性、加工・レトルト後密着性、耐食性、意匠性等の多様な機能が求められる。フィルムラミネート金属板を多機能化する方法としては、(1)付加したい機能を有する改質剤をフィルム内に加えてフィルムそのものを多機能化する方法、又は(2)フィルムは改質せずにフィルム表面に付加したい機能を有する改質剤又は改質剤を含む樹脂をコーティングする方法のいずれかの方法を選択することができる。
上記方法(1)は、一定の機能を有するフィルムを大量に生産する場合には、生産効率が高く、収益性が高い方法である。しかしながら、食品缶詰は、形状や内容物の種類が多種多様であり、種類毎に求められる機能が異なるため、方法(1)を用いることは適切でない。その理由は、フィルムに付与する機能を変更する毎に、樹脂の押し出し装置、キャスティングドラム、冷却ロール等の装置を洗浄する必要があり、製造ラインを長時間停止しなければならず、生産効率が著しく低下してしまうためである。
これに対して、上記方法(2)は、フィルムに付加する機能の変更が容易であるため、食品缶詰の多様なニーズに対応できる。その理由は、改質剤を含むコーティング液の入ったタンクを洗浄、交換することによって、機能変更に速やかに対応できるためである。なお、フィルム表面に改質剤を含む樹脂をコーティングする方法としては、例えば特許文献2記載の方法がある。特許文献2記載の方法は、エポキシ樹脂を主成分とし、メラミン樹脂、ブロックイソシアネート化合物、及び着色剤を含む樹脂層を金属板とフィルムとの間に形成するものである。
特開2005−342911号公報 特開2007−185915号公報 特開平05−331302号公報 特開2002−88233号公報 特開2001−335682号公報 特開2004−58402号公報 特開2004−249705号公報 特開平04−266984号公報 特開平08−199147号公報 特開平10−183095号公報 特開2002−206079号公報
しかしながら、上記特許文献1および2に記載の技術には以下に示すような問題点がある。
すなわち、特許文献1記載のポリエステル樹脂層は、深絞り成形性が悪く、2ピース缶用途に適用できない。なお、特許文献3には、ポリマーの結晶化速度を速めることによってレトルト白化現象を抑制できる旨の記載がある。しかしながら、レトルト白化現象のメカニズムは完全には把握されてなく、レトルト白化現象の問題は根本的に解決されていない。また、特許文献4〜7には、ブチレンテレフタレートとエチレンテレフタレートとからなるフィルムをアルミニウム板にラミネートして絞りしごき(DI : Drawn and Ironed)加工用に用いた金属板ラミネート用フィルムが記載されている。しかしながら、このような平滑なラミネート金属板では、食品缶詰等の容器に使用する場合には加工性が不十分であり、フィルムの破れ等の欠陥が生じる可能性がある。特に、アルミニウム板に比べ強度の高い金属板を下地とした場合には、成形時にフィルムにダメージが発生して缶体として使用できなくなる。
一方、エポキシ樹脂は、反応性に富み、金属板との密着性に優れるものの、深絞り成形性が劣るという欠点があるため、2ピース缶用素材として使用可能なフィルムを得ることができない。すなわち、特許文献2記載の樹脂被覆金属板を深絞り(DRD : Drawn and ReDrawn)缶に成形しようとしても、缶高さ方向の伸び変形にエポキシ樹脂が追随することができず素材の変形を拘束してしまい、絞り工程で素材が破断してしまう。なお、密着性向上を目的として、フィルムに樹脂をコーティングする方法が特許文献8〜11に開示されている。しかしながら、特許文献8〜11記載の樹脂は、ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂との複合系又はエポキシ樹脂を主成分としている。このため、特許文献8〜11記載の樹脂は、特許文献1記載のポリエステル樹脂層と同様、深絞り成形性に難があり、2ピース缶用途には適用できない。また、特許文献8〜11に記載されている実施例の中には製缶加工性や深絞り成形性を評価した例が開示されていないことからも、これらが深絞り加工が要求される2ピース缶用途を考慮していないことは明らかである。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、レトルト殺菌処理後の缶体外観の意匠性に優れ、2ピースラミネート缶に適用可能な成形性に優れた2ピース缶用ラミネート金属板を作成することができる金属板ラミネート用ポリエステルフィルムを提供することにある。
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る金属板ラミネート用ポリエステルフィルムは、ポリブチレンテレフタレート45〜65質量%と、イソフタル酸を5〜8モル%共重合したポリエチレンテレフタレート25〜52質量%と、ポリエチレンテレフタレート3〜10質量%とを含み、合計が100質量%であるポリエステルフィルムであり、ポリエステルフィルムが示す融点のうち高い方の融点が前記イソフタル酸を5〜8モル%共重合したポリエチレンテレフタレートの融点より高いことを特徴とする。
本発明に係る金属板ラミネート用ポリエステルフィルムは、上記発明において、数平均分子量が1000〜8000の範囲内にある低分子量ポリエチレンを2000〜6000ppm含有することを特徴とする。
本発明によれば、レトルト殺菌処理後の缶体外観の意匠性に優れ、2ピースラミネート缶に適用可能な成形性に優れた2ピース缶用ラミネート金属板を作成することができる金属板ラミネート用ポリエステルフィルムを提供することができる。
以下、本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムを、その用途の一形態である2ピース缶用ラミネート金属板に適用した場合を例に挙げて説明する。
〔2ピース缶用ラミネート金属板の全体構成〕
2ピース缶用ラミネート金属板は、金属板と、容器成形後に容器外面となる金属板の表面側にラミネートされた缶外面フィルムと、容器成形後に容器内面となる金属板の表面側にラミネートされた缶内面フィルムと、を備えている。
〔金属板の構成〕
金属板としては、缶用材料として広く使用されている鋼板やアルミニウム板を用いることができる。金属板としては、特に、JIS G 3315に記載の、ティンフリースチール(TFS)等が好適である。
〔本発明のフィルムの組成〕
本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムは、2ピース缶用ラミネート金属板のフィルムに適用することができ、特に、缶外面用フィルムとして好適である。本発明のフィルムは、ポリブチレンテレフタレート(B)と、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)と、ポリエチレンテレフタレート(D)との3成分を含有するポリエステルフィルムである。
ポリブチレンテレフタレート(B)、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)、及びポリエチレンテレフタレート(D)は、本発明の効果を妨げない範囲で他のモノマーを共重合してもよい。共重合する酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトンや乳酸等を例示できる。
共重合するアルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキシド付加体等を例示できる。共重合成分として、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3官能化合物等を少量用いてもよい。これらの共重合成分は2種以上併用してもよい。
イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)は、ポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸を共重合したものであり、イソフタル酸の共重合比率は5〜8モル%であることが必要であり、5〜7モル%であることがより好ましい。イソフタル酸の共重合比率が5モル%未満である場合、ラミネート熱圧着後の結晶化度が高くなり、金属板との密着性が良好でなくなる。一方、イソフタル酸の共重合比率が8モル%を超えると耐熱性が低下する。
イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)の融点は、225〜238℃の範囲内であることが好ましく、228〜235℃の範囲内であることがより好ましい。融点が225℃未満であると、成形後の加熱処理により白化や白斑が発生し、また耐衝撃性が劣る。一方、融点が238℃を超えると、ラミネート熱圧着後の結晶化度が高くなり、金属板との密着性が低下する。さらに十分な密着性を持たせるためには、融点近傍又は融点以上の温度に上げてフィルムの結晶を融解させる必要があり、生産性に劣る。前述のイソフタル酸の共重合比率であれば、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)の融点は上記範囲内になることが多いが、融点が上述の範囲を逸脱しないように、イソフタル酸以外のモノマーの共重合比率を適宜調整すればよい。
ポリブチレンテレフタレート(B)の極限粘度は0.75〜1.60の範囲内にあることが好ましく、0.90〜1.40の範囲内にあることがさらに好ましい。また、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)及びポリエチレンテレフタレート(D)の極限粘度は0.70〜0.85の範囲内にあることが好ましく、0.70〜0.80の範囲内にあることがさらに好ましい。
極限粘度が上記範囲未満では、缶の高次加工時にフィルムが破断し、生産性を極端に低下させることがある。特に缶の容量が大きい場合、ラミネート金属板をDI加工する過程において、フィルムの変形加工度が大きくなるため、フィルムはそれに追随できず、ボイドが発生したり、クラックが発生したりする。そして、外部からのわずかな衝撃によってすらフィルム層の剥離やクラックの成長が助長され、ボイドによりフィルムが白化した部分では印刷外観が不良となる。また、ボイドやクラックによって長期保存時に缶が腐食するという問題を生じる恐れがある。一方、極限粘度が上記範囲を超える場合には、フィルムの生産工程において、樹脂の溶融押出機にかかる負荷も大きくなり、生産速度の低下、フィルムの厚み制御が困難になる等、フィルムの生産性が低下する。また、極限粘度の高いものは、重合時間や重合プロセスが長く、コストを押し上げる要因ともなる。
本発明のフィルムは、ポリブチレンテレフタレート(B)45〜65質量%と、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)25〜52質量%と、ポリエチレンテレフタレート(D)3〜10質量%とを含有し、合計が100質量%である。
ポリブチレンテレフタレート(B)の含有量が45質量%未満である場合、最終的に得られる缶の状態でのフィルムの結晶化度が低くなり、レトルト殺菌処理時に白化する。ポリブチレンテレフタレート(B)の含有量が65質量%を超える場合やイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)の含有量が25質量%未満である場合、ラミネート後のフィルムの結晶化度が高くなり、成形性が低下する。
イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)の含有量が52質量%を超える場合も、ポリブチレンテレフタレート(B)の添加濃度が45質量%未満となることから、缶のフィルムの結晶化度が低くなり、レトルト白化現象が発生しうる。ポリブチレンテレフタレート(B)の含有量が適量であっても、ポリエチレンテレフタレート(D)の含有量が3質量%未満である場合、後述のフィルム融点が低くなり、フィルムの結晶性が低くなることで耐レトルト白化性が低下する。ポリエチレンテレフタレート(D)の含有量が10質量%を超える場合、ラミネート後の結晶性が高くなり金属板との密着性が低下する。
ポリブチレンテレフタレート(B)と、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)と、ポリエチレンテレフタレート(D)とは、フィルム製造時に互いにエステル交換を起こす。このため、フィルムの融点を測定した場合、ポリブチレンテレフタレート(B)、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)、及びポリエチレンテレフタレート(D)そのものの融点とは異なった融点が観測される。すなわち、ポリブチレンテレフタレート(PBT)由来の融点は、フィルムが示す融点のうち低い方の融点として観測される。また、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)の融点とポリエチレンテレフタレート(D)の融点とが近いために、イソフタル酸共重合の有無に関わらず、ポリエチレンテレフタレート(PET)由来の融点が1つの融点として、フィルムが示す融点のうち高い方の融点として観測される。
本発明では、フィルムが示す融点のうち高い方の融点であるこのPET由来の融点がイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)の融点より高い温度であることが必要である。フィルムのPET由来の融点がイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)の融点以下となった場合、ポリブチレンテレフタレート(B)とイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)及びポリエチレンテレフタレート(D)とが過剰にエステル交換を起こしていることとなり、実質的にポリブチレンテレフタレート(B)の含有率の減少と同じ効果を呈し、レトルト時に白化することがある。ポリエチレンテレフタレート(D)を添加することにより、フィルムの融点低下を抑えることができる。
本発明のフィルムは、フィルム製造時や製缶時の工程通過性をよくするため、シリカ、アルミナ、カオリン等の無機滑剤を少量添加して製膜して、フィルム表面にスリップ性を付与することが望ましい。フィルムにおける無機滑剤の含有量は、0.001〜0.5質量%の範囲内であることが好ましく、0.05〜0.3質量%の範囲内であることがより好ましい。また、滑剤の機能と併用して、隠蔽性の目的から二酸化チタンを20質量%程度まで添加することもできる。特に同時二軸延伸においては40質量%を超える二酸化チタンを添加しても延伸フィルムを得ることができる。さらに、フィルム外観や印刷性を向上させるため、例えばフィルムにシリコーン化合物等を含有させることもできる。
ポリブチレンテレフタレート(B)、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)、及びポリエチレンテレフタレート(D)の重合方法は特に限定されず、例えば、エステル交換法や直接重合法等で重合することができる。エステル交換触媒としては、Mg、Mn、Zn、Ca、Li、Tiの酸化物、酢酸塩等を例示できる。また、重縮合触媒としては、Sb、Ti、Ge酸化物、酢酸塩等の化合物を例示できる。
重合後のポリブチレンテレフタレート(B)、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)、及びポリエチレンテレフタレート(D)は、モノマーやオリゴマー、副生成物のアセトアルデヒドやテトラヒドロフラン等を含有しているため、減圧又は不活性ガス流通下、200℃以上の温度で固相重合することが好ましい。重合においては、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等の添加剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物等を例示でき、熱安定剤としては、リン系化合物等を例示でき、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系の化合物等を例示できる。
本発明のフィルムは、低分子量ポリエチレンを2000〜6000ppm含有することが好ましい。低分子量ポリエチレンは、ポリブチレンテレフタレート(B)、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)、及びポリエチレンテレフタレート(D)に非相溶である。低分子量ポリエチレンの含有量が2000ppm未満である場合、滑り性改良の効果が充分でなく、また、低分子量ポリエチレンの含有量が6000ppmを超える場合には、フィルム表面の滑り性については過剰品質となるばかりでなく、非相溶の樹脂が多くなるにつれてフィルムが脆くなったり、完成した缶が衝撃性に劣り、さらにフレーバー性が低下したりする場合がある。
本発明において低分子量ポリエチレンは、数平均分子量が1000〜8000の範囲内にあることが好ましく、特に2000〜6000の範囲内であることが好ましい。上記分子量範囲の低分子量ポリエチレンを非相溶のポリマー中に含有させることにより、延伸フィルムの表面を荒して滑り性を向上させることができるばかりか、フィルムを金属板にラミネートした時に、表面へ移行して、荒れたフィルム表面を保持することができる。数平均分子量が1000未満であると、分子量が低すぎ、フィルム加工時又はフィルムをラミネートする際に、フィルムの表面に析出して剥落してしまい、缶の加工工程で治具を汚してしまったり、逆にフィルム自身に傷を付けたりする場合がある。一方、数平均分子量が8000を超える場合には、フィルムをアモルファスにした後のフィルム表面を荒らす効果が十分ではなく、缶加工時の滑り性が劣る。
本発明において低分子量ポリエチレンは、軟化点が95℃以上であることが好ましく、特に100〜200℃の範囲内になることが好ましい。軟化点が95℃未満である場合、通常の缶成形温度である60〜90℃の範囲内において、フィルムが軟化し、缶成形時の滑り性が劣る場合がある。低分子量ポリエチレンの添加方法は、特に限定されないが、低分子量ポリエチレンは、ポリブチレンテレフタレート(B)、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)もしくはポリエチレンテレフタレート(D)又はそれらの混合物中に0.5〜5質量%程度含有するマスターチップを事前に作成して、マスターチップで添加する方法が好ましい。
〔本発明のフィルムの厚さ〕
本発明のフィルムの厚さは、金属板にラミネートした後の成形性、金属板に対する被覆性、耐衝撃性、味特性の点で、3〜50μmの範囲内にあることが好ましく、さらに好ましくは8〜30μmの範囲内である。
〔フィルムの製造方法〕
本発明のフィルムの製造方法としては、公知のポリエステルフィルムの製造方法が適用できる。一例を挙げると、ポリブチレンテレフタレート(B)とイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)とポリエチレンテレフタレート(D)との混合物を押出機に投入し、270〜300℃の温度で3〜15分間溶融混合した後、Tダイを通じてシート状に押出す。このシートを室温以下に温度調整した冷却ドラム上に密着させて冷却し、得られた未延伸フィルムをその後同時二軸延伸機に導き、40〜120℃の温度でMD及びTDにそれぞれ2〜4倍程度の延伸倍率となるように二軸延伸し、さらにTDの弛緩率を数%として、140〜190℃で数秒間熱処理を施すことによって、本発明のフィルムを製造することができる。
また、本発明のフィルムは逐次延伸法によっても製造することができる。その方法を概説すると、上記同時二軸法において記述したのと同様の未延伸フィルムをロール加熱、赤外線等で加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。延伸は2個以上のロール周速差を利用し、ポリエステルのガラス転移点(Tg)〜Tgより40℃高い温度の範囲で2.5倍以上、3.6倍以下とすることが好ましい。縦延伸フィルムは続いて連続的に、横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとする。横延伸はポリエステルのTg〜Tgより40℃高い温度で開始し、最高温度はポリエステルの融点(Tm)より(100〜40)℃低い温度であることが好ましい。横延伸の倍率は最終的なフィルムの要求物性に依存し調整されるが、2.7倍以上、さらには3.0倍以上とすることが好ましく、3.6倍以上とすることがより好ましい。延伸に続く熱固定処理時にフィルム幅方向に2〜20%の伸張を加えてもよいが、この伸張率はトータルの延伸倍率の中に含まれることが好ましい。熱固定処理後、フィルムの熱収縮特性を調整するためリラックス処理を行い、その後フィルムのTg以下に冷却して二軸延伸フィルムを得る。
延伸後の熱処理は、フィルムの寸法安定性を付与するために必要な工程であるが、その方法としては、熱風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法、マイクロ波を照射する方法等の公知の方法を用いることができる。このうち、均一に精度良く加熱できることから熱風を吹き付ける方法が最適である。
本発明のフィルムは、鋼板、アルミ等の金属板に熱圧着法でラミネートされるが、ラミネートする金属板は、クロム酸処理、リン酸処理、電解クロム酸処理、クロメート処理等の化成処理や、ニッケル、スズ、亜鉛、アルミ、砲金、真鍮、その他の各種メッキ処理等を施した金属板を用いることができる。
本発明のフィルムには、金属板との熱圧着性及びその後の密着性を更に向上させる目的で、共押出法やラミネート加工、又はコーティング加工により接着層を設けることができる。接着層の厚さは乾燥膜厚で1μm以下であることが好ましい。接着層は、特に限定されないが、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂やこれらの各種変性樹脂からなる熱硬化性樹脂層であることが好ましい。
〔フィルムラミネート金属板の製造方法〕
本発明のフィルムを缶外面および缶内面フィルムとして用い、このフィルムをそれぞれ金属板の両表面にラミネートする方法としては、金属板を予め200〜250℃まで予熱しておき、これとフィルムとを金属板より30℃、さらには50℃以上低く温度制御されたロールによって圧接して熱圧着させた後、室温まで冷却することによって連続的に製造される。金属板の加熱方法としては、ヒーターロール伝熱方式、誘導加熱方式、抵抗加熱方式、熱風伝達方式等が挙げられる。また、ラミネート後の冷却方法については、水等の冷媒中に浸漬する方法や冷却ロールと接触させる方法を用いることができる。
ラミネート条件については、適宜設定される。例えば、ラミネート開始時の温度を少なくともフィルムの融点以上とし、ラミネート時にフィルムの受ける温度履歴として、フィルムの融点以上の温度で接している時間を1〜35msecの範囲内とすることが好適である。
次に、実施例によって本発明を具体的に説明する。
実施例及び比較例におけるフィルムの原料、および、特性値の測定法は、次の通りである。
(1)フィルムの原料
(1−1)ポリブチレンテレフタレート(B)
固相重合品、極限粘度1.08dl/g、Tm223℃、Ti触媒40ppm含有
(1−2)イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)
(C−1):固相重合品、イソフタル酸共重合量6モル%、極限粘度0.75dl/g、Tm233℃、Ge触媒40ppm含有
(C−2):固相重合品、イソフタル酸共重合量4モル%、極限粘度0.75dl/g、Tm239℃、Ge触媒40ppm含有
(C−3):固相重合品、イソフタル酸共重合量9モル%、極限粘度0.75dl/g、Tm224℃、Ge触媒40ppm含有
(1−3)ポリエチレンテレフタレート(D)
固相重合品、極限粘度0.77dl/g、Tm255℃、Ti触媒40ppm含有
(1−4)低分子量ポリエチレン(E)
(E−1):クラリアントジャパン社製 リコワックスPE190 数平均分子量5500
(E−2):三洋化成工業社製 サンワックス171P 数平均分子量1500
(E−3):クラリアントジャパン社製 リコワックスPED136 数平均分子量900
(2)測定法
(2−1)融点(Tm)
Perkin Elmer社製DSCを用い、20℃/minで昇温し、吸熱量のピークとなる温度を融点とした。フィルムの測定サンプルは、延伸フィルムを溶融後、100℃/min以上の速度で急冷して非晶状態としたものを用いた。各実施例及び比較例では2つの融点が観測されたが、低い方(Tm1)をポリブチレンテレフタレート由来とし、高い方(Tm2)をイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート由来とした。
(2−2)極限粘度
測定サンプル0.25gをフェノール/テトラクロロエタン=5/5(質量比)50mlに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて25℃で測定した。
(2−3)成形前密着性
ラミネート金属板の製缶前の平板サンプル(幅15mm、長さ120mm)を切り出した。切り出したサンプルの長辺側端部からフィルムの一部を剥離する。剥離したフィルムを、剥離された方向とは逆方向(角度:180°)に開き、引張試験機を用いて、引張速度30mm/minでピール試験を行い、幅15mmあたりの密着力を評価した。
(評点)
◎:10.0(N)/15(mm)以上
○:5.0(N)/15(mm)以上、10.0(N)/15(mm)未満
×:5.0(N)/15(mm)未満
(2−4)耐スクラッチ性
DI成形は、まずラミネート金属板の両面に融点45℃のパラフィンワックスを50mg/m塗布した後に、123mmφのブランクを打ち抜き、そのブランクを市販のカッピングプレスで、内径71mmφ、高さ36mmのカップに絞り成形した。次いでこのカップを市販のDI成形装置に装入して、ポンチスピード200mm/s、ストローク560mmで、再絞り加工及び3段階のアイアニング加工で総リダクション率50%(それぞれのリダクション20%、19%、23%)を行い、最終的に缶内径52mm、缶高さ90mmの缶を成形した。なお、DI成形中には、水道水を50℃の温度で循環させた。
(評点)
◎:スクラッチ無く製缶
○:表面スクラッチが発生した缶体の個数が製缶個数の5%未満
△:表面スクラッチが発生した缶体の個数が製缶個数の5%以上15%未満
×:表面スクラッチが発生した缶体の個数が製缶個数の15%以上
××:製缶時にフィルム剥離、破胴発生
(2−5)耐レトルト白化性
上記耐スクラッチ性評価で成形可能(××以外)であった缶の、底部(缶外面側)を対象とした。缶内に常温の水道水を満たした後、蓋を巻き締めて密閉した。その後、缶底部を下向きにして、蒸気式レトルト殺菌炉の中に配置し、125℃で90分間、レトルト殺菌処理を行った。処理後、缶底部外面の外観変化を目視で観察した。
(評点)
○:外観変化なし
△:外観にかすかな曇り(フィルム表面積で5%未満)発生
×:外観が白濁(フィルム表面積で5%以上白化発生)
(2−6)成形後密着性
上記耐スクラッチ性評価で成形可能(××以外)であった缶を対象とした。缶胴部よりピール試験用のサンプル(幅15mm、長さ120mm)を切り出した。切り出したサンプルの長辺側端部からフィルムの一部を剥離する。剥離したフィルムを、剥離された方向とは逆方向(角度:180°)に開き、引張試験機を用いて、引張速度30mm/minでピール試験を行い、幅15mmあたりの密着力を評価した。評価対象は、缶外面の缶胴部である。
(評点)
◎:10.0(N)/15(mm)以上
○:6.0(N)/15(mm)以上、10.0(N)/15(mm)未満
△:3.0(N)/15(mm)以上、6.0(N)/15(mm)未満
×:3.0(N)/15(mm)未満
実施例1
(本発明のフィルムの作成)
表1に示す割合のポリブチレンテレフタレート(B)と、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C−1)と、ポリエチレンテレフタレート(D)とに、さらに平均粒径2.5μmの凝集シリカをフィルムの0.08質量%になるように添加し、275℃の温度で溶融し、Tダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸フィルムを得た。
次いで、この未延伸フィルムの端部をテンター式同時二軸延伸機のクリップに把持し、60℃の予熱ゾーンを走行させた後、温度80℃でMDに3.0倍、TDに3.3倍で同時二軸延伸した。その後TDの弛緩率を5%として、150℃の熱固定温度で4秒間の熱処理を施した後、室温まで冷却して巻き取り、厚さ18μmの二軸延伸フィルムを得た。
(ラミネート金属板の作成)
JIS G 3315に記載の、ティンフリースチール(TFS)を金属板として用い、次に、金属板のラミネート装置を用いてティンフリースチール(TFS)を、ラミネート温度225℃に加熱し、ラミネートロールでティンフリースチール(TFS)の両面に前述のフィルムをラミネートした。
(2ピースラミネート缶の成形)
DI成形は、ラミネート金属板の両面に融点45℃のパラフィンワックスを50mg/m塗布した後に、123mmφのブランクを打ち抜き、そのブランクを市販のカッピングプレスで、内径71mmφ、高さ36mmのカップに絞り成形した。次に、このカップを市販のDI成形装置に装入して、ポンチスピード200mm/s、ストローク560mmで、再絞り加工及び3段階のアイアニング加工で総リダクション率50%(それぞれのリダクション20%、19%、23%)を行い、最終的に缶内径52mm、缶高さ90mmの缶を成形した。なお、DI成形中には水道水を50℃の温度で循環させた。
実施例2〜5、比較例1〜9
表1に示すポリブチレンテレフタレート(B)、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)、ポリエチレンテレフタレート(D)の種類、配合比とする以外は実施例1と同様の方法で厚さ18μmのフィルムを得た。
得られたフィルムを用い、実施例1に記載した方法でラミネート金属板を作成、次いで2ピースラミネート缶を成形し、評価を行った。結果を表1に示した。
実施例6〜12
表1に示す低分子量ポリエチレンを添加する以外は実施例1と同様の方法で厚さ18μmのフィルムを得た。
得られたフィルムを用い、実施例1に記載した方法でラミネート金属板を作成、次いで2ピースラミネート缶を成形し、評価を行った。結果を表1に示した。
比較例10
実施例5において、フィルムの作成時の溶融温度を305℃とする以外は実施例5と同様の方法で厚さ18μmのフィルムを得た。
得られたフィルムを用い、実施例1に記載した方法でラミネート金属板を作成、次いで2ピースラミネート缶を成形し、評価を行った。結果を表1に示した。
Figure 0006066770
表1の実施例に示すように、本発明のフィルムは、金属板にラミネートし、製缶された際、耐レトルト性に優れ、成形性、缶との密着性が良好であった。
ただし、実施例12では二軸延伸フィルムを製造する際、低分子量ポリエチレンの析出成分による工程汚染が問題となった。
表1から明らかなように、本発明の範囲のフィルムを缶外面フィルムとして使用したラミネート金属板や缶は、食品缶詰素材に要求される成形性、耐レトルト白化性、及び成形後密着性について良好な性能を有することが確認された。
これに対して、本発明の範囲を外れる比較例1〜10は、いずれかの特性が劣っていることが確認された。
比較例1、6のフィルムは、ポリブチレンテレフタレート(B)の添加量が多過ぎたため、ラミネート後のフィルムの結晶化度が高くなり、成形後密着性に劣り、また耐スクラッチ性に劣るものとなった。比較例2のフィルムは、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)の添加量が多く、ポリブチレンテレフタレート(B)の添加量が少なくなったため、充分な耐レトルト白化性を有さなかった。比較例7も比較例2同様、ポリブチレンテレフタレート(B)の添加量が少なく、充分な耐レトルト白化性を得られなかった。
比較例3のフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(D)の添加量が少なく、PET由来の融点(Tm2)がイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)の融点より低くなったため、耐レトルト白化性や耐スクラッチ性、成形後密着性がやや劣った。比較例4のフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(D)の添加を行わなかったため、比較例3よりPET由来の融点(Tm2)が低くなったことでさらに耐レトルト白化性や耐スクラッチ性、成形後密着性が低下する結果となった。比較例5のフィルムは、ポリエチレテレフタレート(D)の添加量が多すぎたため、PET由来の融点(Tm2)が高くなりすぎて、成形前密着性が低下した。
比較例8のフィルムは、イソフタル酸の共重合比率の低いポリエチレンテレフタレート(C−2)を使用したが、PET由来の融点(Tm2)が高くなった結果、成形前密着性が低下した。比較例9のフィルムは、イソフタル酸の共重合比率の高いポリエチレンテレフタレート(C−3)を使用したが、PET由来の融点(Tm2)が低下し、耐レトルト白化性や耐スクラッチ性、成形後密着性が低下した。
比較例10のフィルムは実施例5と同組成であるが、押出時における樹脂温度が高く、エステル交換反応が進行したため、PET由来の融点(Tm2)がイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)の融点より低くなり、耐レトルト白化性や耐スクラッチ性、成形後密着性が低下した。
以上、本発明者によってなされた金属板ラミネート用ポリエステルフィルムの発明を、2ピース缶用ラミネート金属板に適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者などによりなされる他の実施の形態、実施例、および運用技術などは全て本発明の範疇に含まれる。

Claims (2)

  1. ポリブチレンテレフタレート45〜65質量%と、イソフタル酸を5〜8モル%共重合したポリエチレンテレフタレート25〜52質量%と、ポリエチレンテレフタレート3〜10質量%とを含み、合計が100質量%であるポリエステルフィルムであり、前記ポリエステルフィルムが示す融点のうち高い方の融点が前記イソフタル酸を5〜8モル%共重合したポリエチレンテレフタレートの融点より高いことを特徴とする金属板ラミネート用ポリエステルフィルム。
  2. 前記ポリエステルフィルムは、数平均分子量が1000〜8000の範囲内にある低分子量ポリエチレンを2000〜6000ppm含有することを特徴とする請求項1に記載の金属板ラミネート用ポリエステルフィルム。

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