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JP2006099995A - コイル用線材 - Google Patents

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JP2006099995A JP2004281466A JP2004281466A JP2006099995A JP 2006099995 A JP2006099995 A JP 2006099995A JP 2004281466 A JP2004281466 A JP 2004281466A JP 2004281466 A JP2004281466 A JP 2004281466A JP 2006099995 A JP2006099995 A JP 2006099995A
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Yoshihide Goto
芳英 後藤
Katsuyoshi Onuma
勝由 大沼
Daiki Goto
大樹 後藤
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Goto Denshi Co Ltd
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Goto Denshi Co Ltd
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Abstract

【課題】 コイルの巻線エリア空間における占積率を向上し、より多量の電流を流す。
【解決手段】 コイル用線材の断面形状を矩形とする。前記矩形は、1辺の長さと前記1辺と直交する他辺の長さとの比を、コイル用線材を巻き付ける巻線エリアの形状に応じてシミュレーションすることにより設定する。更に、コイル用線材は、その断面の四方の隅に面取り部が設けられ、面取り部が設けられた前記コイル用線材の断面積が、その断面積と等しい面積を持つ正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の面積の1.15倍以上の広さを有している。
【選択図】 図20

Description

この発明は、コイルの巻線エリア空間における占積率を向上し、より多量の電流を流しパワーアップを図ることができるコイル用線材に関するものである。
最近のロボット開発は、限りなく人間に近いロボットを目指し、競争している。そのため種々の、ハイテク技術が更に開発され、その進歩は目を見張るものがある。そのためのアクチュエータもまた小型で且つパワーアップの性能向上が要求されている。本発明は、そのロボットアクチュエータの性能アップ、すなわち、磁気回路におけるモータのロータの占積率を向上し、パワーアップを図る方法から生まれた。
良く知られているように、磁界中でコイルによって得られる磁気力Fは、F=B・I・Lとなり、磁束密度B[ステラ]と電流[A]とコイルの有効長さL(巻数N)とによって決まる。すなわち、単純に限られた巻線エリアの中に、可能な限り巻数Nを多くし、可能な限り多くの電流を流すことが磁気力Fを増大させる要件となる。
これらに鑑み、発明者等は、これまで、断面が円形の線材、すなわち、コイル用線材や電線等を含む意味の線材において、断面が円形の線材(断面が円形の線材を「丸線」という)に対し、断面が概略正方形の線材(断面が正方形の線材を「正方形線」という)を提案し、丸線より1.27倍の電流を流すことが可能な正方形線を開発、製造し、スピーカーのボイスコイル等に適用し、その成果を上げている。
図5〜7にその比較モデル図を示す。図5〜7は、ボイスコイルに巻かれた線材の状態を丸線と正方形線とにより比較する説明図である。図5は直径(外径)4mm、高さ6.2mmのボイスコイル16に巻き付けられた直径(φ)が0.5mmの丸線1、図6は1辺が0.5mmの正方形線3、図7は1辺が0.44mmの正方形線4を用いている。すなわち、図5では、与えられた巻線エリアに対し、丸線1を巻いたときの巻数Nが56(56N)に対し、正方形線3を巻いたときは、巻数Nが48(48N)と少なくなる。しかしながら、正方形線3は、丸線1に対し1.27倍の電流が流せるため、そのアンペアターン[A・N]は48×1.27=60.96となり、直径0.5mmの丸線1(アンペアターン[A・N]は56×1=56)の1.07倍のアンペアターンが得られる。
更に、直径0.5mmの丸線1の断面積(0.196mm2)とその断面積が等しい正方形線、すなわち、1辺が0.44mm(√0.196mm)の正方形線4において、その巻数Nは70(70N)となり、直径0.5mmの丸線1の56Nと比較して1.25倍の電流が流せるため、同一断面積では正方形線のほうが丸線よりもはるかに有利である。
特に最近では、人間型ロボットにおけるアクチュエータは、限られた最小の空間にいかに多くの電線を巻線するか、いわゆる、占積率の向上が一段と強く求められている。
図8は、ロボットアクチュエータ(モータのロータ)の全体図、図9、図10は、モータのロータに丸線、正方形線を巻いた状態を12等分割(30度)したモータのロータの部分で示す説明図である。図9は、図8に示す外径(直径)30mm、軸径(直径)16mmのモータのロータ17に、直径(φ)が0.3mmの丸線2を巻いた状態、図10は1辺が0.3mmの正方形線5を巻いた状態である。また、図9、図10は、説明を簡単にするために、複雑な形状を単純に略した図で示されている。
この図9、図10における比較では、丸線2では、143N(巻数143)で、正方形線5では127N(巻数127)と、正方形線5の方が巻数が少ないが、正方形線5は流せる電流が丸線2の1.27倍となることから巻数が161Nに相当することになり、丸線2と比較して、12.5%増のアンペアターンが得られる。この12.5%増のパワーアップは、ロボットアクチュエータの性能アップに、計り知れない効果をもたらす。すなわち、単純にこれまで5kgの可搬重量が5.6kgになることを意味し、発生トルクが12.5%アップすることは、ロボットアームの慣性モーメントを同じにすれば、そのアームの加減速度を12.5%アップして、移動が可能である。このように最近では、この図9、図10における、概略三角形状の巻線エリアに、いかにして多くの巻線を行うかが問題となってきた。
このモータのロータの概略三角形状の巻線エリアに、正方形線を階段状に巻線を行っても、必ず、巻線不可能な微小な概略三角形の部分が残る。この微小に残ったエリアにも、巻線が可能であれば、更にパワーアップが可能となる。
本発明者等は、このような、この微小な概略三角形の部分にいかにして巻線するか、新たな装置や、新たな巻線技術を必要とせず、この微小な概略三角形の部分にいかにして巻線するか、いかにして、微小な概略三角形の部分を更に小さくするかの問題を解決するために研究を重ねた。その結果、巻線エリアの形状によっては、占積率を上げるために、断面形状が正方形よりも矩形等の四辺形の断面が有利となることがわかり、そのための最適な四辺形形状を求めるための手段について知見した。
本発明の目的は、上述の知見に基づき、ロボットアクチュエータ(モータのロータ)等の巻線において、限られた巻線エリアに最大限の巻線を施すことができる線材の断面形状およびその実用に供する断面の面取り部の多きさを決定し、巻線することにより、ロボットアクチュエータ等の著しい性能向上を図ることができるコイル用線材を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
[1]コイル用線材の断面形状を矩形とし、前記矩形は1辺の長さと前記1辺と直交する他辺の長さとの比が、前記コイル用線材を巻き付ける巻線エリアの形状に応じて設定されており、更に、前記コイル用線材は、その断面の四方の隅に面取り部が設けられ、前記面取り部を含む前記コイル用線材の断面形状において、前記コイル用線材の断面積が、その断面積と等しい面積を持つ正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の面積の1.15倍以上の広さを有するコイル用線材。
[2]コイル用線材の断面形状を四辺形とし、前記四辺形は1辺の長さと前記1辺と直交する他辺の長さとの比および前記四辺形の隅の角度が、前記コイル用線材を巻き付ける巻線エリアの形状に応じて設定されており、更に、前記コイル用線材は、その断面の四方の隅に面取り部が設けられ、前記面取り部を含む前記コイル用線材の断面形状において、前記コイル用線材の断面積が、その断面積と等しい面積を持つ正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の面積の1.15倍以上の広さを有するコイル用線材。
[3]コイル用線材の断面形状を矩形とし、前記矩形は1辺の長さと前記1辺と直交する他辺の長さとの比が、前記コイル用線材を巻き付ける巻線エリアの形状に応じて設定されており、更に、前記コイル用線材は、その断面の四方の隅に面取り部が設けられ、前記面取り部を含む前記コイル用線材の断面形状において、前記コイル用線材の断面の外周の全長が、前記コイル用線材の断面積と等しい面積を持つ正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の円周の1.09倍以上の長さを有するコイル用線材。
[4]コイル用線材の断面形状を四辺形とし、前記四辺形は1辺の長さと前記1辺と直交する他辺の長さとの比および前記四辺形の隅の角度が、前記コイル用線材を巻き付ける巻線エリアの形状に応じて設定されており、更に、前記コイル用線材は、その断面の四方の隅に面取り部が設けられ、前記面取り部を含む前記コイル用線材の断面形状において、前記コイル用線材の断面の外周の全長が、前記コイル用線材の断面積と等しい面積を持つ正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の円周の1.09倍以上の長さを有するコイル用線材。
[5]コイル用線材の断面形状を矩形とし、前記矩形は1辺の長さと前記1辺と直交する他辺の長さとの比が、前記コイル用線材を巻き付ける巻線エリアの形状に応じて設定されており、更に、前記コイル用線材は、その断面の四方の隅に、円弧状等の丸みを帯びた形状の面取り部が設けられ、前記面取り部を含む前記コイル用線材の断面形状において、前記コイル用線材の断面積が、その断面積と等しい面積を持つ正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の面積の1.15倍以上の広さを有するコイル用線材。
[6]コイル用線材の断面形状を四辺形とし、前記四辺形は1辺の長さと前記1辺と直交する他辺の長さとの比および前記四辺形の隅の角度が、前記コイル用線材を巻き付ける巻線エリアの形状に応じて設定されており、更に、前記コイル用線材は、その断面の四方の隅に、円弧状等の丸みを帯びた形状の面取り部が設けられ、前記面取り部を含む前記コイル用線材の断面形状において、前記コイル用線材の断面積が、その断面積と等しい面積を持つ正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の面積の1.15倍以上の広さを有するコイル用線材。
[7]コイル用線材の断面形状を矩形とし、前記矩形は1辺の長さと前記1辺と直交する他辺の長さとの比が、前記コイル用線材を巻き付ける巻線エリアの形状に応じて設定されており、更に、前記コイル用線材は、その断面の四方の隅に、円弧状等の丸みを帯びた形状の面取り部が設けられ、前記面取り部を含む前記コイル用線材の断面形状において、前記コイル用線材の断面の外周の全長が、その断面積と等しい面積を持つ正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の円周の1.09倍以上の長さを有するコイル用線材。
[8]コイル用線材の断面形状を四辺形とし、前記四辺形は1辺の長さと前記1辺と直交する他辺の長さとの比および前記四辺形の隅の角度が、前記コイル用線材を巻き付ける巻線エリアの形状に応じて設定されており、更に、前記コイル用線材は、その断面の四方の隅に、円弧状等の丸みを帯びた形状の面取り部が設けられ、前記面取り部を含む前記コイル用線材の断面形状において、前記コイル用線材の断面の外周の全長が、その断面積と等しい面積を持つ正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の円周の1.09倍以上の長さを有するコイル用線材。
この発明によれば下記に示す有用な効果がもたらされる。
1.与えられた巻線エリアに対し、占積率が最大、且つ、最大の巻数が得られるコイル用線材の断面形状が簡単に求められ、最大巻数となる断面形状が決定できる。
2.モータのロータやステータ等、円を何等分かした巻線エリアでは、概略三角形状の巻線エリアが生じる。この概略三角形状の巻線エリアでは、丸線でも、正方形線でも微小な概略三角形状の巻線されない空間が残る。この微小空間を最小限にし、可能な限り巻線を可能にする線材の断面形状を簡単に求めることができ、最大の巻数となる断面形状が決定できる。
3.モータのロータやステータの巻線の占積率が向上することにより、ロボットのアクチュエータの性能が向上し、更に、小型で性能アップしたロボット技術が向上する。
4.巻線のシミュレーションにより、モータの基本設計の段階から、使用電線サイズ、断面形状を決定することが可能である。
5.矩形断面における最適化された四方の隅の面取りの大きさにより、面取り部の絶縁層も安定的に得られ、巻線工程においても支障なく、従来の丸線や正方形線より占積率が向上し、更に、高性能なコイルやロボットアクチュエータが得られる。
次に、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図11〜13は、ボイスコイルに線材を巻き付けた状態を示す。図11は直径(φ)が0.5mmの丸線1、図12は1辺が0.5mmの正方形線3、図13は断面が矩形で、矩形の1辺の長さが0.57mmで前記1辺と直交する他辺の長さが0.51mmの線材(以下、断面が矩形の線材を「矩形線」という)7を用いている。
図5〜7と同様に直径(外径)4mmのボイスコイルに、直径(φ)0.5mmの丸線1を巻くエリアに、1辺が0.5mmの正方形線3を巻いたときには、図12に示すように径方向に約0.3mm、巻き長さ方向に約0.2mmの巻線されない無駄な空間が生じていることがわかる。
この空間を埋めるには、1辺が0.5mmの正方形線3の代わりに、図13に示すように、断面が矩形で、矩形の1辺の長さが0.57mmで前記1辺と直交する他辺の長さが0.51mmの矩形線7を巻けば、許される巻き線エリアを完全に埋めることができる。
すなわち、0.57×0.51mmの矩形線7の断面積は、1辺が0.5mmの正方形線3の断面積の1.16倍となり、直径0.5mmの丸線1に対し1.24倍のアンペアターンが得られる。この約24%増は非常に大きなパワーアップとなる。
図14〜16は、ボイスコイルに線材を巻きつけた状態を示す。図14は直径(φ)が0.5mmの丸線1、図15は1辺が0.44mmの正方形線4、図16は1辺の長さが0.44mmで前記1辺と直交する他辺の長さが0.46mmの矩形線8を用いている。
図11〜13と同様に直径0.5mmの丸線1に対し、断面積が等しい1辺が0.44mmの正方形線4を巻いた巻線における巻径方向の空間0.1mmを埋めるには、図16に示すように、0.44×0.46mmの矩形線8を用いて巻線を行えば、断面積が1.045倍となる。また、直径0.5mmの丸線1に対しては、1.3倍のアンペアターンが得られる。このように許される巻線エリアに対し、設計時の巻きの層数、長さ方向の巻数の値に対し、最適な矩形断面形状を求めることが可能となる。
以上の説明において、電線には絶縁膜が当然ある。電線は、線材(丸線、正方形線、矩形線等)および絶縁膜からなっている。説明を簡単にするため、絶縁膜の厚さは、丸線、正方形線および矩形線において一様とし、その厚さを無視して説明している。以下の説明も同様である。
図17、図18は、モータのロータに丸線、正方形線を巻いた状態を12等分割したモータのロータの部分で示す説明図であり、直径(φ)0.3mmの丸線2と、その断面積が等しい正方形線、すなわち、1辺が0.27mmの正方形線6との巻数を比較した図である。図17が直径が0.5mmの丸線1、図18が、1辺が0.27mmの正方形線6を用いている。
図17、図18から、直径0.3mmの丸線2の総巻数は143N、1辺が0.27mmの正方形線6では157Nとなり、その増加は約10%となる。しかし、図18に示す1辺が0.27mmの正方形線6の巻き状態において、巻線されていない概略三角形の微小な空間が残っている。この空間を可能な限り埋めるため、1辺が0.27mmの正方形線6の断面積を変化させず、辺の長さを微小量変化させて断面を矩形形状とし、そして、その矩形形状の寸法を求めた値を表1、表2に示す。
Figure 2006099995
Figure 2006099995
表1、表2のうち表2から、3種の矩形形状、すなわち、0.22×0.33mm(矩形線9)、0.2×0.36mm(矩形線10)、0.18×0.4mm(矩形線11)を選び、巻線のキャド(CAD)によるシミュレーションの結果を図19〜21に示す。図19〜21は、モータのロータに矩形線を巻いた状態を12等分割したモータのロータの部分で示す説明図であり、3種の矩形線において断面形状の相違によって総巻数を比較する。図19は0.22×0.33mmの矩形線9、図20は0.2×0.36mmの矩形線10、図21は0.18×0.4mmの矩形線11を用いている。
これにより、図20に示す矩形線10(0.2×0.36mm)の矩形形状断面が総数161Nで最大巻数になることがわかる。すなわち、円を何等分かした概略三角形の形状を持つ巻線エリアでは、正方形の断面形状よりも巻線総数が多くなる矩形の断面形状が存在することを意味する。よって、正方形線よりも矩形線の方が占積率が良くなる巻線エリアが存在することがわかる。
そして、更に、1辺が0.3mmの正方形線5の断面積を変化させず、辺の長さを微小量変化させて断面を矩形形状とし、そして、その矩形形状の寸法を求めた値を表3、表4に示す。
Figure 2006099995
Figure 2006099995
表3、表4のうち表4から、4種の矩形線の矩形形状、0.2×0.45mm(矩形線12)、0.18×0.5mm(矩形線13)、0.15×0.6mm(矩形線14)、0.1×0.9mm(矩形線15)を選び、巻線のキャド(CAD)によるシミュレーションの結果を図22〜25に示す。図22〜25は、4種の矩形線において断面形状の相違によって総巻数を比較する説明図である。図22が0.2×0.45mmの矩形線12、図23が0.18×0.5mmの矩形線13、図24が0.15×0.6mmの矩形線14、図25が0.1×0.9mmの矩形線15を用いている。
これにより、図23に示す矩形線13(0.18×0.5mm)の矩形断面形状が131Nと最大の巻数を示し、基準となる1辺が0.3mmの正方形線5を変えても、正方形線より、巻数が多くなる矩形形状が存在することを意味する。同様に正方形線より、矩形断面形状の矩形線の方が、占積率が向上する巻線エリアが存在する。すなわち、本発明は、与えられた巻線エリアに対し、最大の巻数が得られる断面決定方法とその断面形状となる。
更に、これまでは説明を簡単にするために、電線の絶縁膜の厚さを0(ゼロ)として論じてきたが、実際には絶縁膜は必要であり、説明してきた電線は一様な同じ絶縁膜が付いているとすれば、比例的に同じ説明になる。そして、絶縁膜は必ず必要である。発明者等はすでに特願2003−384209(以下、「先願1」という)において、断面形状が正方形で、四方の隅に面取り部を有するコイル用線材を提案している。
断面形状が四辺形の線材における絶縁膜塗布において、鋭角なコーナを持つ箇所に絶縁膜を均一に塗布することは、非常に難しい。その巻線においても、鋭角な箇所を持つ電線は、お互いのコーナの重なり部に応力(面圧力)集中がおこり、絶縁破壊が簡単に生じることも周知である。発明者等がすでに提案している最適な面取り部が必要である。本発明においては、先願1の内容を、矩形線に利用するものである。
先願1の内容は下記の通りである。
[1] 断面形状が正方形のコイル用線材において、正方形の断面の四方の隅に面取り部が設けられ、前記面取り部が設けられた前記線材の断面積が、前記正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の面積の1.15倍以上の広さを有することを特徴とするコイル用線材。
[2] 断面形状が正方形のコイル用線材において、正方形の断面の四方の隅に円弧状面取り部が設けられ、前記面取り部が設けられた前記線材の断面積が、前記正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の面積の1.15倍以上の広さとなるように、前記円弧状面取り部の円弧の半径の長さが設定されているコイル用線材。
[3] 断面形状が正方形のコイル用線材において、正方形の断面の四方の隅に面取り部が設けられ、前記面取り部が設けられた前記線材の断面の外周の全長が、前記正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の円周の1.09倍以上の長さを有するコイル用線材。
[4] 断面形状が正方形のコイル用線材において、正方形の断面の四方の隅に円弧状面取り部が設けられ、前記面取り部が設けられた前記線材の断面の外周の全長が、前記正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の円周の1.09倍以上の長さとなるように、前記円弧状面取り部の円弧の半径の長さが設定されているコイル用線材。
[5] 前記正方形の1辺の長さが1mm以下である上記[1]から[4]のうちのいずれか1に記載のコイル用線材。
上記のように、先願1は、断面形状が正方形の線材において、正方形の断面の四方の隅に面取り部を設けるとともに、面取り部を有する正方形の断面積や外周の全長を規定するものである。
本発明において、巻線エリアに対して最適の矩形断面を決定し、更に、四方の隅に設ける面取り部を決定する2つの手順を示す。
第1は、線材の断面積を基準として求める方法である。
(1)巻線エリアに対して最適な矩形形状をシミュレーションにより決定する。これによりその矩形断面の1辺の長さと前記1辺と直交する他辺の長さが決定される。
(2)決定した矩形線の断面積と等しい面積を持つ正方形を求め、その1辺の長さを求める。
(3)求めた正方形の1辺を直径とする円の面積を求める。
(4)求めた円の面積の1.15倍以上の面積となる正方形の面積を求める。そして、求めた面積と同一断面積となるように面取り部を有する矩形線の断面形状を決定する。
求めた矩形断面形状の面取り部として、直線状の面取り部や実用的なコーナR、すなわち、円弧状等の丸みを帯びた形状の面取り部を用いることができる。なお、発明者等は、求めた正方形線の辺の長さの10%値を基準として、求めた矩形断面の辺の長短に合わせ、面取り形状を最適な値に補正している。
第2は、線材の断面の外周の全長(以下、「周長さ」という)を基準として求める方法である。
(1)巻線エリアに対して最適な矩形形状をシミュレーションにより決定する。これによりその矩形断面の1辺の長さと前記1辺と直交する他辺の長さが決定される。
(2)決定した矩形線の断面形状と等しい断面積を持つ正方形を求め、その1辺の長さを求める。
(3)求めた正方形の1辺を直径とする円の円周を求める。
(4)求めた円周の1.09倍以上の長さとなる正方形の外周の全長(周長さ)を求める。そして、求めた周長さと同一の周長さとなるように面取り部を有する矩形線の断面形状を決定する。
なお、発明者等は、1.09倍以上での実用的なコーナRとして、求めた正方形線の辺の長さの10%値を基準とし、求めた矩形断面の長短に合わせ、最適な値に補正している。
以上のように、本発明によれば、与えられた巻線エリアに対し可能な限り多い巻数で巻線ができるような、最適な矩形の断面形状を求め、最適な面取り部を持つ矩形断面のコイル用線材を提供することができる。
かくして、本発明は、ボイスコイルやロボットアクチュエータ等磁気回路を有する多くの機器において設計段階から、巻線エリアに対する理想的な線材の形状を求めることが可能となり、且つ、その性能が著しく向上するボイスコイルやロボットアクチュエータなどの機器を実現できる。
以上は、矩形線の例を示したが、本発明は、巻線エリアの形状によって、台形あるいはその他の四辺形の断面形状とすることができる。
次に、本発明の矩形線の面取り部の設定を実施例により説明する。
図1、図2は、円弧状面取り部の設定手順を示す説明図、図3は、円弧状面取り部を構成する円の説明図である。図3中の26は円弧状面取り部を構成する半径Rの円を示す。
本発明矩形線、すなわち、四方の隅に面取り部を有する矩形断面形状からなる矩形線を製造するに当たり、まず、創作の基本となる最適な矩形線の矩形断面形状21(面取り部なし、図1)を決定する。この矩形断面形状21は、巻線エリアに応じた最適な矩形形状のシミュレーションにより決定する。これにより矩形の1辺と前記1辺と直交する他辺の長さが決定される。次いで、この矩形断面形状21と同じ面積を有する正方形22(図1)の1辺の長さを求める。該正方形22の1辺の長さをDとする(図2)。
次いで、Dを直径とする円25の面積(DA)を求める。そして、求めた円25の面積(DA)の1.15倍の広さ(1.15DA)を求める。この面積(1.15DA)を、四方の隅に円弧状面取り部24を有する矩形線の矩形断面形状23(図1)の断面積とする。なお、矩形断面形状23の断面積は、円25の面積の1.15倍以上とするのが要件であり本件においては1.15倍とした。
四方の隅に設けた円弧状面取り部は、半径Rの円26(図3)の一部からなっている。そして、面取り部を設けた矩形断面形状23の面積が円25の面積の1.15倍となる半径Rを下記により求める。
矩形断面形状23の断面積を□Aとすると、□Aは下記となる。
□A=D2−0.858R2・・・1
ただし、
D:矩形断面形状21と同じ面積を有する正方形22の1辺の長さ
R:四方の隅に設けた円弧状面取り部を構成する円26の半径
ここで、1式の「0.858R2」は、図3に示される円弧状面取り部に示すΔAの面積の4倍の値である。すなわち、
(2R)2−πR2=4R2−πR2(4−π)R2
=0.858R2
直径Dの円の面積をDAとすると、DAは下記となる。
DA=π(D/2)2=π/4(D)2=0.785D2
円弧状面取り部24を構成する円弧26の半径Rは下記により求まる。
□A=1.15×DA
2−0.858R2=1.15×0.785D2
0.858R2=0.09725D2
R=√(0.09725D2/0.858)
求めたR値が最適な矩形断面の円弧状面取り部を構成する円弧の半径Rである。このR値から、四方の隅に半径Rの円弧状面取り部24を有する矩形断面形状23の矩形線が構成される。
更に、本発明の矩形線の面取り部の設定を実施例により説明する。
図4は円弧状面取り部を構成する円の説明図であり、図4中の27は円弧状面取り部を構成する半径Rの円を示す。
図1、図2に示すように、まず、Dを直径とする円25の円周(DL)を求める。そして、求めた円25の円周(DL)の1.09倍の長さ(1.09DL)を求める。この長さを、四方の隅に円弧状面取り部24を有する矩形線の矩形断面形状23の周長さとする。なお、矩形断面形状23の周長さは、円25の円周の1.09倍以上とするのが要件であり本件においては1.09倍とした。
四方の隅に設けた円弧状面取り部は、半径Rの円27(図4)の一部からなっている。そして、面取り部を設けた矩形断面形状23の周長さが円25の円周の1.09倍となる半径Rを下記により求める。
矩形断面形状23の周長さを□Lとすると、□Lは下記となる。
□L=4D−1.72R・・・2
ただし、
D:矩形断面形状21と同じ面積を有する正方形22の1辺の長さ
R:四方の隅に設けた円弧状面取り部を構成する円27の半径
ここで、2式の「1.72R」は、図4に示される円弧状面取り部を構成する円27の円周を求めればよい。すなわち、
4(D−2R)−2πR=4D−8R−2πR=4D−2R(4−π)
=4D−1.72R
直径Dの円の円周をDLとすると、DLは下記となる。
DL=πD
円弧状面取り部24を構成する円弧の半径Rは下記により求まる。
4D−1.72R=1.09×πD
1.72R=0.5774D
R=0.5774D/1.72
求めたR値が最適な矩形断面の円弧状面取り部を構成する円弧の半径Rである。このR値から、四方の隅に半径Rの円弧状面取り部24を有する矩形断面形状23の矩形線が構成される。
以上の実施例1、2は、円弧状面取り部(コーナがR状のもの)を示すものであるが、面取り部は直線状でもよい。すなわち、本発明の矩形線は、面取り部を有する矩形の断面形状を構成する矩形の面積または周長さが、本発明の範囲内であれば、直線状の面取り部によっても構成可能である。
本発明の実施例に係る円弧状面取り部の設定方法の説明図である。 本発明の実施例に係る円弧状面取り部の設定方法の説明図である。 本発明の実施例に係る円弧状面取り部を構成する半径Rの円を示す説明図である。 本発明の実施例に係る円弧状面取り部を構成する半径Rの円を示す説明図である。 (a)はボイスコイルに丸線を巻いた状態を示す説明図、(b)は(a)の正面図である。 ボイスコイルに正方形線を巻いた状態を示す説明図である。 ボイスコイルに正方形線を巻いた状態を示す説明図である。 モータのロータの全体を示す説明図である。 モータのロータに丸線を巻いた状態を示す説明図である。 モータのロータに正方形線を巻いた状態を示す説明図である。 ボイスコイルに丸線を巻いた状態を示す説明図である。 ボイスコイルに正方形線を巻いた状態を示す説明図である。 ボイスコイルに矩形線を巻いた状態を示す説明図である。 ボイスコイルに丸線を巻いた状態を示す説明図である。 ボイスコイルに正方形線を巻いた状態を示す説明図である。 ボイスコイルに矩形線を巻いた状態を示す説明図である。 モータのロータに丸線を巻いた状態を示す説明図である。 モータのロータに正方形線を巻いた状態を示す説明図である。 モータのロータに矩形線を巻いた状態を示す説明図である。 モータのロータに矩形線を巻いた状態を示す説明図である。 モータのロータに矩形線を巻いた状態を示す説明図である。 モータのロータに矩形線を巻いた状態を示す説明図である。 モータのロータに矩形線を巻いた状態を示す説明図である。 モータのロータに矩形線を巻いた状態を示す説明図である。 モータのロータに矩形線を巻いた状態を示す説明図である。
符号の説明
1 直径が0.5mmの丸線
2 直径が0.3mmの丸線
3 1辺が0.5mmの正方形線
4 1辺が0.44mmの正方形線
5 1辺が0.3mmの正方形線
6 1辺が0.27mmの正方形線
7 0.51mm×0.57mmの矩形線
8 0.44mm×0.46mmの矩形線
9 0.22mm×0.33mmの矩形線
10 0.2mm×0.36mmの矩形線
11 0.18mm×0.4mmの矩形線
12 0.2mm×0.45mmの矩形線
13 0.18mm×0.5mmの矩形線
14 0.15mm×0.6mmの矩形線
15 0.1mm×0.9mmの矩形線
16 ボイスコイル
17 モータのロータ
21 最適な矩形線の断面形状
22 最適な矩形線の断面形状と面積が等しい正方形
23 面取り部を有する矩形断面形状
24 円弧状面取り部
25 Dを直径とする円
26 円弧状面取り部を構成する円
27 円弧状面取り部を構成する円

Claims (8)

  1. コイル用線材の断面形状を矩形とし、前記矩形は1辺の長さと前記1辺と直交する他辺の長さとの比が、前記コイル用線材を巻き付ける巻線エリアの形状に応じて設定されており、更に、前記コイル用線材は、その断面の四方の隅に面取り部が設けられ、前記面取り部を含む前記コイル用線材の断面形状において、前記コイル用線材の断面積が、その断面積と等しい面積を持つ正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の面積の1.15倍以上の広さを有することを特徴とするコイル用線材。
  2. コイル用線材の断面形状を四辺形とし、前記四辺形は1辺の長さと前記1辺と直交する他辺の長さとの比および前記四辺形の隅の角度が、前記コイル用線材を巻き付ける巻線エリアの形状に応じて設定されており、更に、前記コイル用線材は、その断面の四方の隅に面取り部が設けられ、前記面取り部を含む前記コイル用線材の断面形状において、前記コイル用線材の断面積が、その断面積と等しい面積を持つ正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の面積の1.15倍以上の広さを有することを特徴とするコイル用線材。
  3. コイル用線材の断面形状を矩形とし、前記矩形は1辺の長さと前記1辺と直交する他辺の長さとの比が、前記コイル用線材を巻き付ける巻線エリアの形状に応じて設定されており、更に、前記コイル用線材は、その断面の四方の隅に面取り部が設けられ、前記面取り部を含む前記コイル用線材の断面形状において、前記コイル用線材の断面の外周の全長が、前記コイル用線材の断面積と等しい面積を持つ正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の円周の1.09倍以上の長さを有することを特徴とするコイル用線材。
  4. コイル用線材の断面形状を四辺形とし、前記四辺形は1辺の長さと前記1辺と直交する他辺の長さとの比および前記四辺形の隅の角度が、前記コイル用線材を巻き付ける巻線エリアの形状に応じて設定されており、更に、前記コイル用線材は、その断面の四方の隅に面取り部が設けられ、前記面取り部を含む前記コイル用線材の断面形状において、前記コイル用線材の断面の外周の全長が、前記コイル用線材の断面積と等しい面積を持つ正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の円周の1.09倍以上の長さを有することを特徴とするコイル用線材。
  5. コイル用線材の断面形状を矩形とし、前記矩形は1辺の長さと前記1辺と直交する他辺の長さとの比が、前記コイル用線材を巻き付ける巻線エリアの形状に応じて設定されており、更に、前記コイル用線材は、その断面の四方の隅に、円弧状等の丸みを帯びた形状の面取り部が設けられ、前記面取り部を含む前記コイル用線材の断面形状において、前記コイル用線材の断面積が、その断面積と等しい面積を持つ正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の面積の1.15倍以上の広さを有することを特徴とするコイル用線材。
  6. コイル用線材の断面形状を四辺形とし、前記四辺形は1辺の長さと前記1辺と直交する他辺の長さとの比および前記四辺形の隅の角度が、前記コイル用線材を巻き付ける巻線エリアの形状に応じて設定されており、更に、前記コイル用線材は、その断面の四方の隅に、円弧状等の丸みを帯びた形状の面取り部が設けられ、前記面取り部を含む前記コイル用線材の断面形状において、前記コイル用線材の断面積が、その断面積と等しい面積を持つ正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の面積の1.15倍以上の広さを有することを特徴とするコイル用線材。
  7. コイル用線材の断面形状を矩形とし、前記矩形は1辺の長さと前記1辺と直交する他辺の長さとの比が、前記コイル用線材を巻き付ける巻線エリアの形状に応じて設定されており、更に、前記コイル用線材は、その断面の四方の隅に、円弧状等の丸みを帯びた形状の面取り部が設けられ、前記面取り部を含む前記コイル用線材の断面形状において、前記コイル用線材の断面の外周の全長が、その断面積と等しい面積を持つ正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の円周の1.09倍以上の長さを有することを特徴とするコイル用線材。
  8. コイル用線材の断面形状を四辺形とし、前記四辺形は1辺の長さと前記1辺と直交する他辺の長さとの比および前記四辺形の隅の角度が、前記コイル用線材を巻き付ける巻線エリアの形状に応じて設定されており、更に、前記コイル用線材は、その断面の四方の隅に、円弧状等の丸みを帯びた形状の面取り部が設けられ、前記面取り部を含む前記コイル用線材の断面形状において、前記コイル用線材の断面の外周の全長が、その断面積と等しい面積を持つ正方形の1辺と同じ長さの直径を有する円の円周の1.09倍以上の長さを有することを特徴とするコイル用線材。
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