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JP6293576B2 - 回転電機用のステータ - Google Patents

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JP6293576B2
JP6293576B2 JP2014106224A JP2014106224A JP6293576B2 JP 6293576 B2 JP6293576 B2 JP 6293576B2 JP 2014106224 A JP2014106224 A JP 2014106224A JP 2014106224 A JP2014106224 A JP 2014106224A JP 6293576 B2 JP6293576 B2 JP 6293576B2
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Description

本発明は、軸方向の両側及び径方向の内側に開口部を有するスロットが周方向に複数分散配置されている円筒状のコアと、スロット内に配置されるコイル辺部及び一対のコイル辺部をコアの軸方向の外側において接続する渡り部を有してコアに巻装される複数相のコイルと、を備えた回転電機用のステータに関する。
上記のような回転電機用のステータとして、特開2002−51489号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。特許文献1には、コイルエンド部(渡り部の集合体)が径方向の最外側に配置されるU相を含む各相のコイルエンド部を、径方向に比べて軸方向に長い扁平形状に成形すると共に、全ての相のコイルエンド部を、径方向におけるスロットの配置領域に配置する構成が記載されている。これにより、コイルエンド部を小型化することが可能とされている。
特開2002−51489号公報(段落0050、図2等)
しかしながら、特許文献1の構成では、各相のコイルエンド部が軸方向に長い扁平形状に成形されるため、コイルエンド部が軸方向に大型化しやすい。更に、コイルエンド部の径方向の配置領域がスロットの径方向の配置領域に含まれるため、コイルエンド部におけるコイル辺部との接続部分(特許文献1の図2における立上り部3u3)が、軸方向において比較的大きな配置スペースを要する。この連結部分に対して軸方向の外側には他相のコイルエンド部が配置されるため、このことによっても、特許文献1の構成ではコイルエンド部が軸方向に大型化しやすい。しかしながら、特許文献1では、この点について特段の認識がなされていなかった。
そこで、コイルエンド部の軸方向における小型化を図ることが可能な回転電機用のステータの実現が望まれる。
本発明に係る、円筒状のコアであって、前記コアの軸方向及び径方向に延びると共に前記軸方向の両側及び前記径方向の内側に開口部を有するスロットが、前記コアの周方向に複数分散配置されているコアと、前記スロット内に配置されるコイル辺部及び一対の前記コイル辺部を前記コアの前記軸方向の外側において接続する渡り部を有して前記コアに巻装される複数相のコイルと、を備えた回転電機用のステータの特徴構成は、前記渡り部は、各相毎に設定された前記径方向の領域である特定領域において前記周方向に延びるように配置された周方向延在部と、前記周方向延在部と一対の前記コイル辺部とを接続する接続部とを有し、
前記特定領域が前記径方向の最も外側に設定される相の前記渡り部の前記周方向延在部は、当該渡り部が接続する一対の前記コイル辺部の前記周方向の間に配置された他相の全ての前記スロットである対象スロットと前記軸方向に見て重複する部分を有さないように、前記対象スロットに対して前記径方向の外側に配置され
前記コイルは、一対の前記スロット間に線状導体を複数回巻回してなる同心巻部を複数有し、
前記コアにおける前記コイル辺部の前記径方向の配置位置に応じて定まる基準周長に対する、前記同心巻部を構成する前記線状導体の1周回分の周長の比を周長比として、
前記特定領域が前記径方向の最も外側に設定される相の前記同心巻部は、前記コイル辺部が配置される前記径方向の位置が前記径方向の内側に向かうに従って、前記径方向の距離に対してより大きな増加幅で前記周長比が大きくなるように構成されている点にある。
上記の特徴構成によれば、特定領域が径方向の最も外側に設定される相(以下、「U相」とする。)の渡り部の周方向延在部が、対象スロットに対して径方向の外側に配置される。そのため、渡り部の周方向延在部が対象スロットに対して軸方向に見て重複するように配置される場合に比べて、U相のコイルエンド部(渡り部の集合体)におけるコイル辺部との接続部分の配置スペースを、軸方向に小さなスペースとすることができる。これにより、当該接続部分に対して軸方向の外側に配置される他相のコイルエンド部を、コアに対して軸方向に近い位置に配置することが可能となり、結果、各相のコイルエンド部が全体として配置される軸方向の領域を小さく抑えることができる。よって、コイルエンド部の軸方向における小型化を図ることが可能な回転電機用のステータを実現することができる。
なお、スロットに対して径方向の外側にはコアの環状部分が配置されているため、上記の特徴構成では、当該環状部分の径方向の配置領域を有効に利用して、ステータの径方向における大型化を抑制しつつ、U相の渡り部の周方向延在部を対象スロットに対して径方向の外側に配置することができる。
また、上記の特徴構成では、U相の渡り部の周方向延在部が対象スロットと軸方向に見て重複する部分を有さないように配置されるため、ステータの製造時に、対象スロットに対して容易に他相のコイルを挿入することができる。
また、上記の特徴構成によれば、U相の同心巻部が、コイル辺部が配置される径方向の位置が径方向の内側に向かうに従って、径方向の距離に対して同じ増加幅で周長比が大きくなる場合に比べて、接続対象のコイル辺部がスロット内の径方向内側部分に配置される渡り部の長さを、大きく確保することができる。よって、ステータの製造時に、接続対象のコイル辺部からスロットの径方向の外側までの距離が長い渡り部についても、比較的小さな成形力で、対象スロットに対して径方向の外側に配置されるように渡り部を変形させることができる。よって、ステータの製造時に、線状導体の伸長や変形等によって線状導体の絶縁皮膜が部分的に薄くなることを抑制することができ、コイルの電気的絶縁性を適切に確保することができる。
ここで、前記特定領域が前記径方向の最も内側に設定される相の前記渡り部の全体が、前記コアの内周面よりも前記径方向の外側に配置されている構成とすると好適である。
この構成によれば、回転電機の製造時に、ロータを容易にステータの径方向内側に配置することができ、回転電機の製造工程の簡略化を図ることができる。
また、複数本の前記コイル辺部が、1つの前記スロットの内部に非整列状態で配置されている構成とすると好適である。
本発明によれば、この構成のように1つのスロットの内部に複数のコイル辺部が非整列状態で配置される場合でも、U相の渡り部を対象スロットに対して径方向の外側に配置して、コイルエンド部の軸方向における小型化を図ることができる。
また、前記コイルは、前記コアに対して相毎に順に巻装される複数の相コイルを備え、前記特定領域が前記径方向の最も外側に設定される相の前記渡り部は、前記コアに対して最初に巻装された前記相コイルの前記渡り部であると好適である。
この構成によれば、特定領域が径方向の最も外側に設定される相の相コイル(以下、「U相コイル」とする。)を、最初に、すなわち、他相の相コイルがコアに巻装されていない状態で、コアに巻装することができる。よって、ステータの製造時に、U相コイルの渡り部の周方向延在部を、比較的容易に、対象スロットと軸方向に見て重複する部分を有さないように対象スロットに対して径方向の外側に配置することができる。また、コアに最初に巻装されるU相コイルが、渡り部の周方向延在部が対象スロットに対して径方向の外側に配置されるようにコアに巻装されるため、他の相コイルをコアに巻装する際に、U相コイルが巻装の妨げになることを抑制することもできる。
また、上記の回転電機用のステータは、前記スロット内に配置されて前記コイルと前記コアとを電気的に絶縁する絶縁部材を更に備え、前記絶縁部材は、前記スロットに挿入される前記絶縁部材の当該スロットから前記軸方向に突出するカフス部を有し、前記基準周長は、前記コアの前記軸方向の長さと、前記コイル辺部の前記径方向の配置位置における前記同心巻部が配置される一対の前記スロット間の円弧長と、前記カフス部の前記軸方向の長さと、に基づいて定まると好適である。
本発明の実施形態に係るステータの一部の軸方向視図である。 本発明の実施形態に係るコイル辺部のスロット内の配置状態を示す図である。 本発明の実施形態に係るステータの一部の断面図である。 比較例に係るステータの一部の断面図である。 本発明の実施形態に係るステータ製造方法の各工程の模式図である。 本発明の実施形態に係る周長比とスロット底部からの距離との関係を示す図である。 本発明の実施形態に係る基準周長の説明図である。
本発明に係る回転電機用のステータの実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、特に区別して明記している場合を除き、「軸方向L」、「周方向C」、及び「径方向R」は、円筒状のコア2の内周面2aを基準として、言い換えれば、コア2の内周面2aの軸心Aを基準として定義している(図1、図3参照)。また、本明細書では、寸法、配置方向、配置位置等に関する用語(例えば、平行や直交等)は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態も含む概念として用いている。
1.ステータの全体構成
ステータ1は、回転電機用のステータであり、図1〜図3に示すように、コア2(ステータコア)と、コア2に巻装される複数相のコイル3とを備えている。コア2は、磁性材料を用いて形成される。例えば、複数枚の磁性体板(例えば、ケイ素鋼板等の電磁鋼板)を積層してコア2が構成され、或いは、磁性材料の粉体を加圧成形してなる圧粉材を主な構成要素としてコア2が構成される。本実施形態では、ステータ1は、三相交流で駆動される回転電機に用いられ、コイル3は、U相コイル3U、V相コイル3V、及びW相コイル3Wの、3つの相コイルを備えている。後述するように、本実施形態では、3つの相コイルは、コア2に対して相毎に順に巻装される。すなわち、本実施形態では、コイル3は、コア2に対して相毎に順に巻装される複数の相コイルを備えている。図1では、U相コイル3Uの配置状態を明確に示すべく、周方向Cの一部の領域においてV相コイル3VとW相コイル3Wとを省略している。ステータ1は、回転界磁型の回転電機用のステータであり、電機子として機能する。ステータ1から発生する磁界により、永久磁石や電磁石等を備えた界磁としてのロータ(図示せず)が回転する。ロータは、コア2に対して径方向Rの内側に配置される。
コア2には、軸方向L及び径方向Rに延びるスロット40が、周方向Cに複数分散配置されている。図1に示すように、複数のスロット40は、周方向Cに沿って一定間隔で配置されている。本実施形態では、U相用、V相用、及びW相用のスロット40が、周方向Cに沿って繰り返し現れるように配置されている。本実施形態では、毎極毎相あたりのスロット数が“2”であり、コア2には、各相用のスロット40が周方向Cに沿って2つずつ繰り返し現れるように配置されている。周方向Cの配置状態に関して、V相コイル3Vは、U相コイル3Uに対して周方向Cの一方側である周第一方向側(図1における反時計回り方向側)にスロットピッチ(スロット40の配設ピッチ)の2倍だけずれた位置関係で配置され、W相コイル3Wは、V相コイル3Vに対して周第一方向側にスロットピッチの2倍だけずれた位置関係で配置されている。
スロット40のそれぞれは、図2及び図7に示すように、軸方向Lの両側に開口部(軸方向開口部41)を有すると共に、径方向Rの内側に開口部(径方向開口部42)を有する。軸方向開口部41は、コア2の軸方向Lにおける端面において、軸方向Lの外側に向けて開口するように形成されている。径方向開口部42は、コア2の内周面2aにおいて、径方向Rの内側に向けて開口するように形成されている。周方向Cに隣接する2つのスロット40の間にはティース23が形成される。コア2の内周面2aは、複数のティース23のそれぞれの径方向Rの内側の端面を含む円筒状の仮想面である。本実施形態では、コア2の内周面2aを、軸方向L、周方向C、及び径方向Rの各方向の基準としているが、コア2の径方向Rの外側の面(外周面)等を各方向の基準としても良い。
本実施形態では、図1に示すように、ティース23の周方向Cの両側の側面部(周方向Cの互いに反対側を向く2つの側面部)が互いに平行に形成された構成、すなわち、ティース23が平行ティースである構成を採用している。よって、本実施形態では、スロット40は、周方向Cの幅が径方向Rの内側に向かうに従って次第に小さくなるように形成されている。また、本実施形態では、ティース23の径方向Rの内側の端部に周方向Cに突出する突出部が形成された構成、すなわち、スロット40がセミオープンスロットである構成を採用している。
2.コイルの構成
次に、本発明の要部であるコイル3の構成について説明する。コイル3は、図2に示すように、線状の導体である線状導体34を用いて構成されている。線状導体34は、銅やアルミニウム等の導電性を有する材料により構成される。本実施形態では、線状導体34として、延在方向に直交する断面の形状が円形状の線状導体を用いている。線状導体34の表面には、樹脂等の電気的絶縁性を有する材料からなる絶縁皮膜が形成されている。
コイル3は、図1及び図2に示すように、スロット40内に配置されるコイル辺部30と、一対のコイル辺部30をコア2の軸方向Lの外側において接続する渡り部50とを有している。コイル辺部30は、スロット40内を軸方向Lに平行に延びるように配置される。図2に示すように、各スロット40には、複数本のコイル辺部30が配置される。本実施形態では、複数本のコイル辺部30が、1つのスロット40の内部に非整列状態で配置されている。渡り部50は、コア2に対して軸方向Lの両側のそれぞれに備えられる。渡り部50のそれぞれは、互いに異なるスロット40(本例では、互いにスロットピッチの5倍だけ離れた一対のスロット40)にそれぞれ配置された一対のコイル辺部30を接続する。複数本の渡り部50の集合により、コア2から軸方向Lに突出するコイル3の部分であるコイルエンド部が形成される。図1及び図3では、簡略化のため、1本1本の渡り部50の形状は示さず、周方向Cの同じ領域に配置される同相の複数本の渡り部50の集合体の外形(すなわち、コイルエンド部の外形)を示している。
渡り部50は、図1に示すように、各相毎に設定された径方向Rの領域である特定領域Dにおいて周方向Cに延びる部分を有するように配置されている。すなわち、渡り部50は、特定領域Dにおいて周方向Cに延びるように配置される周方向延在部51と、周方向Cの両側において周方向延在部51とコイル辺部30とを接続する接続部52とを有する。ここで、周方向延在部51の形状について「周方向Cに延びる」とは、周方向延在部51の全体又は一部の延在方向が周方向Cに交差する方向となっていてもよく、周方向延在部51の全体としての延在方向(各部の延在方向についてのベクトルとしての和の向く方向)が周方向Cに対して予め定められた範囲内(例えば10度以下又は20度以下)である形状を含む概念として用いている。
本実施形態では、複数の相に対応する複数の特定領域Dは、径方向Rに沿って順に並ぶように、径方向Rにおける互いに異なる領域に設定されている。径方向Rに隣接する2つの特定領域Dは、互いに一部が重複するように設定され、或いは、互いに重複しないように連続して又は不連続部を間に挟んで設定される。本実施形態では、図1及び図3に示すように、U相、V相、及びW相の三相のそれぞれに対して特定領域Dが設定されている。本例では、3つの特定領域Dが、互いに重複することなく径方向Rに連続して設定されている。そして、本実施形態では、特定領域Dが径方向Rの最も外側に設定される相がU相であり、特定領域Dが径方向Rの最も内側に設定される相がW相である。本実施形態では、後述するように、複数の相コイルの中で、U相コイル3Uがコア2に対して最初に巻装される。そのため、本実施形態では、特定領域Dが径方向Rの最も外側に設定される相(ここではU相)の渡り部50は、コア2に対して最初に巻装された相コイル(ここではU相コイル)の渡り部50である。
図1におけるV相コイル3VとW相コイル3Wとを省略した部分に示すように、U相の渡り部50(U相コイル3Uの渡り部50)の周方向延在部51は、当該渡り部50が接続する一対のコイル辺部30の周方向Cの間に配置された他相の全てのスロットである対象スロットと軸方向Lに見て重複する部分を有さないように、対象スロットに対して径方向Rの外側に配置されている。また、U相の渡り部50の接続部52は、対象スロットに対して周方向Cの両側において、対象スロットと軸方向Lに見て重複する部分を有さないように配置されている。すなわち、U相の渡り部50の全体が、対象スロットと軸方向Lに見て重複する部分を有さないように配置される。本例では、U相の渡り部50の全体は、当該渡り部50が接続する一対のコイル辺部30のそれぞれが配置される一対のスロット40を除く全てのスロット40と、軸方向Lに見て重複する部分を有さないように配置されている。U相の特定領域Dは、スロット40の底部43よりも径方向Rの外側に設定されている。また、U相の渡り部50の周方向延在部51(ここでは、当該渡り部50の全体)は、コア2の外周面よりも径方向Rの内側に配置されている。すなわち、U相の特定領域Dは、スロット40の底部43と、コア2の外周面との径方向Rの間に設定されている。本実施形態では、軸方向Lの両側のそれぞれにおいて、U相の渡り部50がここで説明したように配置されている。
本実施形態では、U相の渡り部50が接続する一対のコイル辺部30のうちの周方向Cの一方側である周第一方向側(図1における反時計回り方向側)のコイル辺部30は、周第一方向側に隣接するV相の渡り部50が接続する一対のコイル辺部30の周方向Cの間に配置されると共に、周第一方向側に隣接するW相の渡り部50が接続する一対のコイル辺部30の周方向Cの間に配置される。また、U相の渡り部50が接続する一対のコイル辺部30のうちの周方向Cの他方側(周第一方向とは反対側)である周第二方向側(図1における時計回り方向側)のコイル辺部30は、周第二方向側に隣接するV相の渡り部50が接続する一対のコイル辺部30の周方向Cの間に配置されると共に、周第二方向側に隣接するW相の渡り部50が接続する一対のコイル辺部30の周方向Cの間に配置される。そのため、本実施形態では、4つのスロット40(具体的には、2つのV相用のスロット40及び2つのW相用のスロット40)が上記の対象スロットを構成する。
また、図1に示すように、本実施形態では、W相の渡り部50の全体が、コア2の内周面2aよりも径方向Rの外側に配置されている。具体的には、W相の渡り部50の周方向延在部51が、コア2の内周面2aよりも径方向Rの外側に配置されている。すなわち、W相の特定領域Dは、コア2の内周面2aよりも径方向Rの外側に設定されている。本実施形態では、軸方向Lの両側のそれぞれにおいて、W相の渡り部50がここで説明したように配置されている。
本実施形態では、コイル3は、複数の同心巻部10を有する。同心巻部10は、一対のスロット40間(本例では、互いにスロットピッチの5倍だけ離れた一対のスロット40間)に線状導体34を複数回巻回してなるコイル部(重ね巻部)である。周方向Cに沿って磁極ピッチ(本例ではスロットピッチの6倍のピッチ)分ずつずらしながら配置された複数の同心巻部10を備えて、U相コイル3U、V相コイル3V、及びW相コイル3Wのそれぞれが構成されている。同心巻部10の端部は、他の同心巻部10の端部に接続され、或いは、電源端子や中性点等に接続される。
そして、本実施形態では、U相の同心巻部10(U相コイル3Uの同心巻部10)は、コイル辺部30が配置される径方向Rの位置が径方向Rの内側に向かうに従って、言い換えれば、スロット40の底部43からコイル辺部30までの径方向Rの距離が長くなるに従って、径方向Rの距離に対してより大きな増加幅で周長比が大きくなるように構成されている。ここで、「周長比」は、コア2におけるコイル辺部30(線状導体34)の径方向Rの配置位置に応じて定まる基準周長に対する、同心巻部10を構成する線状導体34の1周回分の周長の比である。基準周長は、少なくとも、コア2の軸方向Lの長さと、コイル辺部30の径方向Rの配置位置における円弧長(以下、「基準円弧長」という。)とに基づき定まる。基準円弧長は、コイル辺部30の径方向Rの配置位置に応じて定まり、具体的には、軸心Aを中心とし、軸心Aと当該コイル辺部30との間の径方向Rの距離を半径とし、同心巻部10が巻装される一対のスロット40間の周方向Cの位置の差(角度差)を中心角とする円弧の長さである。本例では、一対のスロット40間の角度差は、スロットピッチの5倍の角度である。
例えば、基準周長を、コア2の軸方向Lの長さの2倍と、基準円弧長の2倍と、ゼロ以上の調整値と、の加算値に設定することができる。調整値は、例えば、カフスサポート25の軸方向Lの長さの4倍の値とすることができる。ここで、カフスサポート25は、図7に示すように、スロット40に挿入される絶縁部材24の当該スロット40から軸方向Lに突出する部分(カフス部)を、ステータ1の製造時に保護するための部材である。このように基準周長を設定した場合、基準周長は、図7において強調して太実線で示す矩形の周長に等しくなる。ここで、符号90で示す直線部は、基準円弧長の長さの線分である。なお、絶縁部材24は、スロット40内に配置されてコイル3とコア2とを電気的に絶縁するシート状の部材である。図1、図2、及び図5では、絶縁部材24を省略している。絶縁部材24は、その一部がコア2から軸方向Lの両側に突出するように配置される。そのため、カフスサポート25は、コア2の軸方向Lの両側の端面のそれぞれに配置される。
本実施形態では、同心巻部10を構成する線状導体34の1周回分の周長は、個々のコイル辺部30毎に設定されず、複数のコイル辺部30の群(以下、「コイル辺部群」という。)毎に設定される。そのため、本実施形態では、基準周長に関して上述した「コイル辺部30の径方向の配置位置」は「コイル辺部群の径方向の配置位置」であり、U相の同心巻部10は、コイル辺部群が配置される径方向Rの位置が径方向Rの内側に向かうに従って、径方向Rの距離に対してより大きな増加幅で周長比が大きくなるように構成されている。そして、本実施形態では、この「増加幅」は、径方向Rに隣接する2つのコイル辺部群のそれぞれに対応する周長比の差の、当該2つのコイル辺部群のそれぞれの径方向Rの配置位置の差に対する比である。なお、コイル辺部群の径方向Rの配置位置は、例えば、コイル辺部群が配置される径方向Rの領域の中心位置とすることができる。
コイル辺部群は、スロット40の内部を径方向Rに沿って複数の配置領域に分割した場合の、同一の配置領域に配置される複数のコイル辺部30の群である。そのため、コイル辺部群は、配置領域と同数形成される。本実施形態では、以下に述べるように、配置領域の数(言い換えれば、コイル辺部群の数)は、ステータ1の製造段階で用いる巻枠70(図5(a)参照)の段数と同数である。そして、線状導体34の1周回分の周長は、巻枠70における製造段階で線状導体34が巻回された段の外周長(巻取り長さ)に等しくなる。本実施形態では、巻枠70の段数は“5”であり、周長比は、5段階に設定される。そして、図6に示すように、コイル辺部30(本例ではコイル辺部群)のスロット40の底部43からの距離が長くなるに従って、U相の同心巻部10の周長比が径方向Rの距離に対してより大きな増加幅で大きくなるように、U相コイル3Uを形成する際に用いられる巻枠70の、各段の外周長が設定される。
以下、図5を参照して、本実施形態に係るステータ1の製造方法について説明する。本実施形態では、U相コイル3U、V相コイル3V、及びW相コイル3Wの順に、インサート法によりコイル3(相コイル)をコア2に対して相毎に巻装する。すなわち、本実施形態では、U相コイル3Uをコア2に対して最初に巻装する。ここでは、U相コイル3Uをコア2に巻装する場合について説明するが、巻枠70の各段の外周長が異なる点と、コア2に対する周方向Cの巻装位置が異なる点等を除いて、V相コイル3V及びW相コイル3Wについても同様にコア2に巻装される。
まず、図5(a)に示すように、線状導体束35を巻枠70に対して螺旋状に複数回巻回することで、コア2に巻装された状態で同心巻部10を構成する環状導体部11を形成する。ここで、線状導体束35は、複数本(例えば、3本又は4本等)の線状導体34の束である。なお、図5及び図7では、線状導体束35を構成する各線状導体34の形状は示さず、線状導体束35の概略形状のみを示している。線状導体束35を構成する複数本の線状導体34は互いに相対移動可能であるため、図2に示すように、複数本のコイル辺部30はスロット40の内部に非整列状態で配置される。
本実施形態では、巻枠70は5段の段差形状を有し、各段に少なくとも1周回(1ターン)ずつ線状導体束35が巻回される。図中上側から第一段、第二段、第三段、第四段、及び第五段とすると、各段の外周長、すなわち、1周回させるのに必要な線状導体束35の長さは、図5(a)に示すように、段の数が大きくなるに従って長くなる。そのため、環状導体部11における第N段(N=1,2,3,4,5)に巻回された部分を第N段部とすると、第一段部81、第二段部82、第三段部83、第四段部84、及び第五段部85の順に、線状導体束35の1周回分の周長が長くなる。例えば、第一段には線状導体束35が1周回分(1ターン分)巻回され、第二段から第五段のそれぞれの段には線状導体束35が2周回分(2ターン分)巻回されることで、9ターンの環状導体部11が形成される構成とすることができる。
巻枠70を用いて形成された環状導体部11は、図5(b)に示すようにコイル保持器60に配置される。ここでは、コイル保持器60がコア2と同軸に配置された状態を想定して、コイル保持器60についても軸方向L、周方向C、及び径方向Rの各方向を用いて説明する。コイル保持器60は、棒状部材であるブレード61を複数備えている。図5(b)には、複数のブレード61のうちの1つのブレード61を示している。複数のブレード61は、延在方向が軸方向Lに平行となる向きで、周方向Cに沿って分散配置されている。隣接するブレード61の間には、環状導体部11を挿入する挿入隙間が形成され、環状導体部11は、2箇所の挿入部分のそれぞれが互いに異なる挿入隙間に挿入されるように、コイル保持器60に配置される。
図5(b)に示すようにティース23がブレード61に対して径方向Rに対向するようにコア2を配置した状態で、コイル押出器62を軸方向Lにおけるコア2側に移動させる。これにより、コイル保持器60に保持された環状導体部11の全体が押し上げられると共にスロット40側に押し出され、図5(c)に示すように、環状導体部11の一部がスロット40に挿入される。この際、第一段部81、第二段部82、第三段部83、第四段部84、及び第五段部85の順にスロット40に挿入される。すなわち、第一段部81、第二段部82、第三段部83、第四段部84、及び第五段部85の順に、スロット40内を径方向Rの外側から内側に向かって配置される。図7は、図5(c)に示す状態でのコア2及び環状導体部11(同心巻部10)を、径方向Rの内側から見た図である。図7から明らかなように、第一段部81、第二段部82、第三段部83、第四段部84、及び第五段部85のそれぞれの周長は、基準周長よりも長く、また、記載の順に長くなっている。そして、第一段部81、第二段部82、第三段部83、第四段部84、及び第五段部85のそれぞれについて、同一の段部に含まれる複数のコイル辺部30によって、上述したコイル辺部群が形成される。すなわち、本実施形態では、1つのコイル辺部群を構成する複数のコイル辺部30のそれぞれは、ステータ1の製造時に巻枠70の互いに同一の段に巻回された部分(線状導体34の部分)により構成される。
そして、図5(d)に示すように、環状導体部11におけるコア2から軸方向Lに突出する部分(渡り部50)を、図1及び図3に示す形状となるように成形治具63を用いて成形することで、同心巻部10が形成される。この際、渡り部50の接続部52(図1参照)が、周方向延在部51(図1参照)を当該渡り部50が接続する一対のコイル辺部30に対して径方向Rの外側にオフセットさせるように変形される。なお、本実施形態では、軸方向Lの両側の渡り部50のそれぞれを、互いに同様の形状に成形する。
ここで、本実施形態では、図6に示すように、コイル辺部30(本例ではコイル辺部群)のスロット40の底部43からの距離が長くなるに従って、U相の同心巻部10の周長比が径方向Rの距離に対してより大きな増加幅で大きくなるように構成されている。そのため、図5(d)に示す成形工程において渡り部50を径方向Rの外側に向けて変形させる際に、線状導体34に対して成形のために作用する力を小さく抑えることができる。この結果、線状導体34の伸長や変形等によって線状導体34の絶縁皮膜が部分的に薄くなることを抑制することができ、コイル3の電気的絶縁性を適切に確保することができる。
更に、U相の渡り部50の周方向延在部51が、図1及び図3に示すように、当該渡り部50が接続する一対のコイル辺部30の周方向Cの間に配置された他相の全てのスロットである対象スロットと軸方向Lに見て重複する部分を有さないように、対象スロットに対して径方向Rの外側に配置される。そのため、図4に示す比較例との比較から明らかなように、軸方向Lに見てU相の渡り部50とV相の渡り部50(V相コイル3Vの渡り部50)とが重複する重複領域におけるU相の渡り部50の軸方向Lの幅を小さく抑えることができ、結果、コイルエンド部の軸方向Lの幅(高さ)を小さく抑えることが可能となっている。また、V相コイル3Vをコア2に巻装する際に、U相コイル3UやV相コイル3Vに作用する力を小さく抑えることができ、このことによっても、コイル3の電気的絶縁性を適切に確保することができる。なお、図4は、本発明を適用しない場合の比較例を示す図であり、本発明とは異なり、U相の渡り部50の周方向延在部が、当該渡り部50が接続する一対のコイル辺部の周方向の間に配置された他相の全てのスロットである対象スロットと軸方向Lに見て重複するように配置される構成を示している。図4に示すステータは本発明の実施例ではないが、理解を容易にすべく、図3等と同様の符号を付している。
図6に示すように、本実施形態では、V相の同心巻部10(V相コイル3Vの同心巻部10)の周長比も、U相の同心巻部10の周長比と同様に、コイル辺部30が配置される径方向Rの位置が径方向Rの内側に向かうに従って、径方向Rの距離に対してより大きな増加幅で大きくなるように構成されている。一方、W相の同心巻部10(W相コイル3Wの同心巻部10)の周長比は、コイル辺部30が配置される径方向Rの位置が径方向Rの内側に向かうに従って、減少した後に増加するように構成されている。
また、図示は省略するが、本実施形態では、U相の同心巻部10及びV相の同心巻部10のそれぞれは、コイル辺部30が配置される径方向Rの位置が径方向の内側に向かうに従って、径方向Rの距離に対してより大きな増加幅で、渡り部50の長さの比が大きくなるように構成されている。一方、同じく図示は省略するが、W相の同心巻部10は、コイル辺部30が配置される径方向Rの位置が径方向の内側に向かうに従って、径方向Rの距離に対してより小さな減少幅で、渡り部50の長さの比が小さくなるように構成されている。ここで、「渡り部50の長さの比」は、第一段部81の渡り部50の長さに対する各段部の渡り部50の長さの比である。
3.その他の実施形態
最後に、本発明に係る回転電機用のステータの、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の実施形態では、線状導体束35を一対のスロット40間に複数回巻回して同心巻部10が形成される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されず、1本の線状導体34を一対のスロット40間に複数回巻回して同心巻部10が形成される構成とすることも可能である。この場合、ステータ1の製造過程で、同心巻部10を構成する線状導体34は、巻枠70の各段に複数回(複数ターン)ずつ巻回される。
(2)上記の実施形態では、複数本のコイル辺部30が1つのスロット40の内部に非整列状態で配置される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、上記の実施形態とは異なりスロット40の周方向Cの両側の側面部が互いに平行に形成される場合(すなわち、スロット40が平行スロットである場合)等において、複数本のコイル辺部30が1つのスロット40の内部に整列状態で配置される構成とすることも可能である。整列状態は、例えば、複数のコイル辺部30が周方向Cに隣接する複数列に並んで径方向Rに沿って配置される状態とされる。
(3)上記の実施形態では、コイル3が、一対のスロット40間に線状導体34を複数回巻回してなる同心巻部10を有する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、コイル3が、複数対のスロット40間に線状導体34を複数回巻回してなるコイル部を有する構成や、コイル3が、波巻状となるようにスロット40に巻回されるコイル部を有する構成とすることも可能である。
(4)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。従って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
本発明は、軸方向の両側及び径方向の内側に開口部を有するスロットが周方向に複数分散配置されている円筒状のコアと、スロット内に配置されるコイル辺部及び一対のコイル辺部をコアの軸方向の外側において接続する渡り部を有してコアに巻装される複数相のコイルと、を備えた回転電機用のステータに利用することができる。
1:ステータ
2:コア
2a:内周面
3:コイル
3U:U相コイル(相コイル)
3V:V相コイル(相コイル)
3W:W相コイル(相コイル)
10:同心巻部
30:コイル辺部
34:線状導体
40:スロット
41:軸方向開口部(開口部)
42:径方向開口部(開口部)
50:渡り部
51:周方向延在部
52:接続部
C:周方向
D:特定領域
L:軸方向
R:径方向

Claims (5)

  1. 円筒状のコアであって、前記コアの軸方向及び径方向に延びると共に前記軸方向の両側及び前記径方向の内側に開口部を有するスロットが、前記コアの周方向に複数分散配置されているコアと、前記スロット内に配置されるコイル辺部及び一対の前記コイル辺部を前記コアの前記軸方向の外側において接続する渡り部を有して前記コアに巻装される複数相のコイルと、を備えた回転電機用のステータであって、
    前記渡り部は、各相毎に設定された前記径方向の領域である特定領域において前記周方向に延びるように配置された周方向延在部と、前記周方向延在部と一対の前記コイル辺部とを接続する接続部とを有し、
    前記特定領域が前記径方向の最も外側に設定される相の前記渡り部の前記周方向延在部は、当該渡り部が接続する一対の前記コイル辺部の前記周方向の間に配置された他相の全ての前記スロットである対象スロットと前記軸方向に見て重複する部分を有さないように、前記対象スロットに対して前記径方向の外側に配置され
    前記コイルは、一対の前記スロット間に線状導体を複数回巻回してなる同心巻部を複数有し、
    前記コアにおける前記コイル辺部の前記径方向の配置位置に応じて定まる基準周長に対する、前記同心巻部を構成する前記線状導体の1周回分の周長の比を周長比として、
    前記特定領域が前記径方向の最も外側に設定される相の前記同心巻部は、前記コイル辺部が配置される前記径方向の位置が前記径方向の内側に向かうに従って、前記径方向の距離に対してより大きな増加幅で前記周長比が大きくなるように構成されている回転電機用のステータ。
  2. 前記特定領域が前記径方向の最も内側に設定される相の前記渡り部の全体が、前記コアの内周面よりも前記径方向の外側に配置されている請求項1に記載の回転電機用のステータ。
  3. 複数本の前記コイル辺部が、1つの前記スロットの内部に非整列状態で配置されている請求項1又は2に記載の回転電機用のステータ。
  4. 前記コイルは、前記コアに対して相毎に順に巻装される複数の相コイルを備え、
    前記特定領域が前記径方向の最も外側に設定される相の前記渡り部は、前記コアに対して最初に巻装された前記相コイルの前記渡り部である請求項1から3のいずれか一項に記載の回転電機用のステータ。
  5. 前記スロット内に配置されて前記コイルと前記コアとを電気的に絶縁する絶縁部材を更に備え、
    前記絶縁部材は、前記スロットに挿入される前記絶縁部材の当該スロットから前記軸方向に突出するカフス部を有し、
    前記基準周長は、前記コアの前記軸方向の長さと、前記コイル辺部の前記径方向の配置位置における前記同心巻部が配置される一対の前記スロット間の円弧長と、前記カフス部の前記軸方向の長さと、に基づいて定まる請求項1から4のいずれか一項に記載の回転電機用のステータ。
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