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JP2006096930A - インク組成物 - Google Patents

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JP2006096930A JP2004286720A JP2004286720A JP2006096930A JP 2006096930 A JP2006096930 A JP 2006096930A JP 2004286720 A JP2004286720 A JP 2004286720A JP 2004286720 A JP2004286720 A JP 2004286720A JP 2006096930 A JP2006096930 A JP 2006096930A
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Toshiyuki Miyabayashi
利行 宮林
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Seiko Epson Corp
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Abstract

【課題】 顔料粒子の分散性、発色性に優れ、優れた耐擦性、耐水性と光沢性に優れた印刷物を得ることができ、ブロンズ現象が起こり難く、しかも画像の濃淡部間の光沢差が小さい顔料インク組成物を提供すること。
【解決手段】 それぞれの粒子表面がポリマーを主成分とする材料で被覆されたカプセル化酸化チタンコロイド粒子およびカプセル化顔料粒子を含み、前記カプセル化酸化チタンコロイド粒子および前記カプセル化顔料粒子が特定の方法を用いて製造されたものであるインク組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、インクジェット記録方法等に好適に用いられるインク組成物に関する。さらに詳細には、表面をポリマーを主成分とする材料によって被覆して得られるマイクロカプセル化された酸化チタンコロイド粒子と、同じく表面をポリマーを主成分とする材料によって被覆して得られる顔料粒子を含み、光沢紙上でのブロンジングが発生しにくいマイクロカプセル化された顔料粒子を含むインク組成物に関するものである。
インクジェット記録方法は、微細なノズルヘッドからインク液滴を吐出して、文字や図形を紙などの記録媒体の表面に記録する方法である。インクジェット記録方法としては電歪素子を用いて電気信号を機械信号に変換し、ノズルヘッド部分に貯えたインク液滴を断続的に吐出して記録媒体表面に文字や記号を記録する方法や、ノズルヘッドの吐出部分に近い一部でインク液の一部を急速に加熱して泡を発生させ、その泡による体積膨張でインク液滴を断続的に吐出して、記録媒体表面に文字や記号を記録する方法などが実用化されている。
最近では、インクジェット記録用インクとして、顔料を水中に分散させた水系顔料インクが提供されている。これは、顔料を用いたインクの方が、水溶性染料を用いたインクに比べて耐水性や耐光性に優れるという特徴を有するからである。このような水系顔料インクにおいては、界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤を用いて顔料を水性分散媒中に分散させることが一般的に行われている(例えば特許文献1等参照)。しかし、このように顔料粒子の分散のために分散剤を用いると、インク調製時の要素が多くなり、粘度などのインク物性を所望の値に調節するのが困難であった。また、この顔料インクを用いても充分高い印字濃度の印刷物を得ることは困難であった。さらに、これらの水系顔料インクにおいては、分散剤が顔料粒子表面に単に吸着しているだけであり、インク液がノズルヘッドの細いノズルを通って吐出される際に強い剪断力が加わるので、顔料粒子表面に吸着していた分散剤が離脱して顔料の分散性が低下し、インク液の吐出が不安定になる傾向が認められることがある。また、前記の水系顔料インクを長期間保存した場合にも分散性が不安定となる傾向が認められることがある。
顔料粒子を水中に分散させる他の手法として、顔料粒子の表面にスルホン酸基を導入する技術も提案されている。例えば、活性プロトンを有しない溶剤中に分散させた有機顔料をスルホン化剤で処理して得られるスルホン化表面処理有機顔料を含む顔料インクが知られている(例えば特許文献2等参照)。これらの手法によれば、前記顔料インクは分散安定性に優れ、また、記録ヘッドのノズルからの吐出安定性(記録ヘッドから一定方向に安定して吐出される特性)が良好であるとされている。
また、スルホン酸基を導入した有機顔料塊状体を1価金属イオンで処理することにより、表面を正帯電させる有機顔料塊状体の調製法が知られており、更に、その表面正帯電有機顔料塊状体から調製された顔料微粒子、分散剤、及び水を含み、貯蔵安定性(分散安定性)に優れた水系インク組成物が記載されている(例えば特許文献3等参照)。
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2に開示されている従来例のような表面処理顔料粒子を着色剤として用いたインクは、これまでの顔料系インクジェット記録用インクと比較して、分散安定性及び吐出安定性には優れるものの、普通紙やインクジェット用記録媒体(インクジェット記録用インクを受容するためのインク受容層が表面に設けられた記録媒体)等の記録媒体に印刷して得られる記録物の耐擦性は依然として不十分なものであった。これは、記録媒体に対する前記表面処理顔料粒子の定着性が良好でないことによるものと考えられる。
一方、顔料系インクジェットインクに含まれる顔料の記録媒体に対する定着性を向上させる目的で、着色剤粒子がポリマーで被覆されたマイクロカプセル化顔料を使用する技術が知られている。
顔料微粒子をカプセル化したもの(例えば、特許文献4、5、6等参照)や、顔料粒子の表面にポリマーをグラフト重合したもの(例えば、特許文献7等参照)が提案されている。また、両親媒性グラフトポリマーを用いて疎水性粉体をマイクロカプセル化する方法等が提案されている(例えば、特許文献8等参照)が、マイクロカプセル化にあたり、予め重合したポリマーを用いるとカプセル化後の粒子径が大きくなりすぎるという問題があった。
上記の提案のほかに、転相乳化法によって室温で皮膜形成性を有する樹脂を被覆した顔料を用いたインク(例えば、特許文献9等参照)や、酸析法によってアニオン性基含有有機高分子化合物で被覆した顔料を用いたインク(例えば、特許文献10等参照)が提案されている。
さらに、転相乳化法によってポリマー微粒子に色材を含浸させてなるポリマーエマルジョンを用いたインクが提案されている(例えば、特許文献11等参照)。しかしながら、転相乳化法や酸析法によって得られた着色剤においても、インクに用いられる浸透剤等の有機溶媒の種類によっては、顔料粒子に吸着されたポリマーの脱離が起きてインク中に溶解することもあり、インクの分散安定性や吐出安定性、画像品質等が十分でない場合もあった。例えば特許文献11に開示のインクにおいては、顔料粒子に吸着されたポリマーの脱離が少なからず起きるため、分散安定性の点からインク中の顔料含有量が制限されるので、このインクを使用して得られた記録物の画像は印字濃度が低く、特に、記録媒体に普通紙を用いた場合には、画像の滲みが発生しやすく、また、発色性も低いという問題があった。
ところで、顔料を水中に分散させた水系顔料インク組成物中に、顔料粒子と共に酸化チタンコロイド粒子を分散させておくことによって該インク組成物を用いてインクジェット記録方法により光沢紙等の基材に印刷した場合、ブロンジングの発生やその解消を防ぐことができ、また、白色顔料であるコロイド粒子の作用により、色調調整が可能となる。しかしながら、このようなチタンコロイドを含有する水系顔料インク組成物も、顔料粒子を水溶媒中に均一に分散させておくことが困難である等、上記の顔料を水中に分散させた水系顔料インクと同様の問題点を有していた。
特開平3−157464号公報 特開平10−110129号公報 特開平11−49974号公報 特公平7−94634号公報 特開平8−59715号公報 特開2003−306661 特開平5−339516号公報 特開平5−320276号公報 特開平08−218015号公報 特開平9−31360号公報 特開平9−286939号公報
本発明は、従来のチタンコロイドを含有する顔料インク組成物と比較して、(1)顔料粒子の分散性に優れ、(2)優れた発色性を有し、(3)それを用いて印刷された画像が、優れた耐擦性及び耐水性、並びに高い光沢を有し、(4)ブロンズ現象が起こり難く、しかも(5)画像の濃淡部間の光沢差が小さいという特徴を有する顔料インク組成物を提供しようとするものである。
本発明のインク組成物は、ポリマーを主成分とする材料で表面が被覆されたカプセル化酸化チタンコロイド粒子、およびポリマーを主成分とする材料で表面が被覆されたカプセル化顔料粒子を含み、
前記カプセル化酸化チタンコロイド粒子が以下のステップ:
(1)水性媒体中において、表面に正電荷を有する酸化チタンコロイド、および少なくとも一種のアニオン性重合性界面活性剤を混合して水性混合物を得;
(2)前記水性混合物に、少なくとも一種の重合性モノマー、および少なくとも一種のアニオン性またはカチオン性重合性界面活性剤をさらに添加し混合するとともに、重合すること、
を含む方法を用いて製造されたものであり、
かつ、前記カプセル化顔料粒子が以下のステップ:
(a)水性媒体中において、表面に負電荷を有する少なくとも一種の顔料粒子、および少なくとも一種のカチオン性重合性界面活性剤を混合して水性混合物を得;
(b)前記水性混合物に、少なくとも一種の重合性モノマー、および少なくとも一種のアニオン性またはカチオン性重合性界面活性剤をさらに添加し混合するとともに重合すること、
を含む方法を用いて製造されたものであることを特徴とするものである。
本発明のインク組成物は、前記カプセル化酸化チタンコロイド粒子を製造するための前記ステップ(2)が、前記ステップ(1)で調製した前記水性混合物に少なくとも一種の重合性モノマーを添加しかつ混合し、次に少なくとも一種のアニオン性またはカチオン性重合性界面活性剤を添加し混合するとともに重合するものであることを含む方法を用いて製造されたものであることが好ましい。前記ステップ(1)で調製した水性混合物に前記重合性モノマーを添加、混合した後に前記アニオン性またはカチオン性重合性界面活性剤を添加することによって、各酸化チタンコロイド粒子のそれぞれをポリマーによるカプセル化がよりし易くなる。
また、本発明のインク組成物は、前記カプセル化顔料粒子を製造するための前記ステップ(b)が前記ステップ(a)で調製した前記水性混合物に少なくとも一種の重合性モノマーを添加しかつ混合し、次に少なくとも一種のアニオン性またはカチオン性重合性界面活性剤を添加し混合するとともに重合するものであることを含む方法を用いて製造されたものであることが好ましい。このように前記ステップ(a)で調製した前記水性混合物に前記重合性モノマーを添加、混合した後に、前記アニオン性またはカチオン性重合性界面活性剤を添加することにより、より完全に各顔料粒子のポリマーによるカプセル化が行われるのでより好ましい。
本発明のインク組成物においては、前記カプセル化酸化チタンコロイド粒子の表面電荷と、前記カプセル化顔料粒子の表面電荷が同種電荷であることが、インク組成物としたときの該インク組成物中での各粒子の凝集を防止する点において好ましい。
また、本発明のインク組成物においては、インク組成物とした時に印刷媒体上で被覆ポリマーが成膜し、定着性及び耐擦性を発現し得る点で、前記カプセル化酸化チタンコロイド粒子を被覆する材料の主成分であるポリマーのガラス転移温度、および前記カプセル化顔料粒子を被覆する材料の主成分であるポリマーのガラス転移温度がともに30℃以下である材料を用いることがより好ましい。
本発明のポリマーを主成分とする材料で表面が被覆されたカプセル化酸化チタンコロイド粒子、及びポリマーを主成分とする材料で表面が被覆されたカプセル化顔料粒子を含むインク組成物は、分散安定性にすぐれ、優れた発色性を有し、それを用いて印刷された画像が、優れた耐擦性及び耐水性、並びに高い光沢を有し、ブロンズ現象が起こり難く、しかも画像の濃淡部間の光沢差が小さいという特徴を有する。
本発明のインク組成物は、それぞれ特定の製造方法により製造されてなる、ポリマーを主成分とする材料で表面が被覆されたマイクロカプセル化酸化チタンコロイド粒子(以下、単にカプセル化酸化チタンコロイド粒子ともいう)、及び同じくポリマーを主成分とする材料で表面が被覆されたマイクロカプセル化顔料粒子(以下、単に、カプセル化顔料粒子ともいう)を含むことを特徴とする。
本発明のインク組成物の構成原料であるカプセル化酸化チタンコロイド粒子及びカプセル化顔料粒子は、それぞれの芯物質が酸化チタンコロイド粒子であるか又は顔料粒子であるかの相違以外にはほぼ同様にして製造される(以下、カプセル化酸化チタンコロイド粒子の芯物質である酸化チタンコロイド粒子、及びカプセル化顔料粒子の芯物質である顔料粒子を総称して単に芯物質粒子ともいう)。
本発明のインク組成物の構成原料である、カプセル化酸化チタンコロイド粒子及びカプセル化顔料粒子は、出発原料としてそれぞれ表面に負電荷を有する芯物質粒子(酸化チタンコロイド粒子、または顔料粒子)及び正電荷に帯電した基を有する少なくとも一種のカチオン性重合性界面活性剤(以下、これを重合性界面活性剤Aとも記す)を用いる。
さらに、上記の重合性界面活性剤Aと異っていても同じでもよい重合性界面活性剤であって、正又は負に帯電した基を有する少なくとも一種の重合性界面活性剤(以下、これを重合性界面活性剤Bとも記す)をさらに用いる。この重合性界面活性剤Bとしては、アニオン性重合性界面活性剤及び/又はカチオン性重合性界面活性剤を用いることができる。
そして、上記重合性界面活性剤A及びBの他に、さらに重合性モノマーを用いて所定の重合方法により芯物質粒子表面を被覆するポリマーを合成し、カプセル化酸化チタンコロイド粒子及びカプセル化顔料粒子を製造する。このポリマーの重合には重合開始剤を用いることができる。
以下、本発明において用いる芯物質粒子、重合性界面活性剤A及び/又は重合性界面活性剤Bとして用いるカチオン性重合性界面活性剤及びアニオン性重合性界面活性剤、本発明で用いる重合性モノマー、並びに重合開始剤について説明し、さらにこれらの原料を用いて芯物質粒子(酸化チタンコロイド粒子及び顔料粒子)をポリマーで被覆する方法について説明する。
なお、本明細書中、「芯物質粒子(酸化チタンコロイド粒子または顔料粒子)の表面電荷と反対の電荷」とは、酸化チタンコロイド粒子または顔料粒子表面のイオン性基の電荷がプラス電荷であればマイナス電荷を意味し、該粒子表面のイオン性基の電荷がマイナス電荷であればプラス電荷を意味する。
本発明のインク組成物に用いるカプセル化酸化チタンコロイド粒子の芯物質としては市販の酸化チタン(TiO2)コロイド粒子が用いられ、一方、カプセル化顔料粒子の芯物質としては、インク組成物用として通常用いられている無機顔料及び有機顔料を使用することができる。
このとき用いられる芯物質の酸化チタンコロイド粒子の平均粒径(平均直径)は5〜200nmであることが好ましく、10〜100nmであることが特に好ましい。また、顔料粒子の平均粒径(平均直径)は10〜500nmであることが好ましく、20〜300nmであることがより好ましく20〜100nmであることが特に好ましい。
特に平均粒径が10〜100nmの酸化チタンコロイド粒子や顔料粒子を用いることによって透明性が良好となり、またブロンズ現象がより低減するという効果が得られる。なお、本明細書において、各粒子の平均粒径は、レーザ光散乱法を用いて測定した値である。
また、本発明のインク組成物に用いるカプセル化顔料粒子の芯物質となる顔料には、表面に負電荷を持ったイオン性基を有する顔料粒子を用いる。負電荷を持ったイオン性基を表面に有する顔料粒子は、顔料粒子の表面をイオン性基付与剤によって処理することにより製造できる。したがって、負電荷を持ったイオン性基を表面に有する顔料粒子の原料となる顔料としては、イオン性基付与剤に溶解しない顔料であればよく、その他は特に限定されない。また、イオン性基付与剤はイオン性界面活性剤又はイオン性重合性界面活性剤を用いることもできる。この場合、一般の分散機を用いて分散処理を行うのが好ましい。このような観点から、本発明のインクにおいて好ましい顔料粒子としては、例えば以下の無機顔料及び有機顔料を挙げることができる。
〔顔料粒子〕
無機顔料としては、ファーネスブラック,ランブブラック,アセチレンブラック,チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.l.ピグメントブラック7)類、あるいは、酸化鉄顔料等を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、及びキレートアゾ顔料などを含む。)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、又はキノフラノン顔料などを含む)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート又は酸性染料型キレートなどを含む)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、及びアニリンブラックなどを挙げることができる。これらは、ブラック顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、及びイエロー顔料を含む。さらに所望により、その他の色の顔料を本発明に用いることもできる。
以下、本発明に用いることができる顔料について詳しく述べる。
ブラック用として用いられる無機顔料としては、例えば、以下のカーボンブラック、例えば、三菱化学社製のNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、及びNo2200B等(以上、商品名);コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、及びRaven700等(以上、商品名);キャボット社製のRegal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、及びMonarch 1400等(以上、商品名);あるいは、デグッサ社製のColor Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color Black S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、及びSpecial Black 4等(以上、商品名)を挙げることができる。
また、ブラック用の有機顔料としては、アニリンブラック(C.l.ピグメントブラック1)等の黒色有機顔料を用いることもできる。
イエローインク用の有機顔料としては、例えば、C.l.ピグメントイエロー1(ハンザイエロー);同2,3(ハンザイエロー10G);同4,5(ハンザイエロー5G);同6,7,10,11,12,13,14,16,17,24(フラバントロンイエロー);同34,35,37,53,55,65,73,74,75,81,83,93,94,95,97,98,99,108(アントラピリミジンイエロー);同109,110,113,117(銅錯塩顔料);同120,124,128,129,133(キノフタロン);同138,139(イソインドリノン);同147,151,153(ニッケル錯体顔料);および、同154,167,172,180などを挙げることができる。
マゼンタインク用の有機顔料としては、例えば、C.l.ピグメントレッド1(パラレッド);同2,3(トルイジンレッド);同4,5(lTR Red);同6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38(ピラゾロンレッド);同40,41,42,48(Ca);同48(Mn),57(Ca),57:1,88(チオインジゴ);同112(ナフトールAS系);同114(ナフトールAS系);同122(ジメチルキナクリドン);同123,144,146,149,150,166,168(アントアントロンオレンジ);同170(ナフトールAS系);同171,175,176,177,178,179(ベリレンマルーン);同184,185,187,202,209(ジクロロキナクリドン);同219,224(ベリレン系);同245(ナフトールAS糸)、又は、C.I.ピグメントバイオレット19(キナクリドン);同23(ジオキサジンバイオレット);同32,33,36,38,43,50などを挙げることができる。
シアンインク用の有機顔料としては、例えば、C.l.ピグメントブルー1,2,3,15,15:1,15:2,15:3,15:34,15:4,16(無金属フタロシアニン);同18(アルカリブルートナー);同22,25,60(スレンブルー);同65(ビオラントロン);同66(インジゴ);および、C.l.Vatブルー4,60などを挙げることができる。
また、マゼンタ,シアン又はイエローインク以外のカラーインクに用いる有機顔料として、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン);同10(グリーンゴールド);同36,37;C.I.ピグメントブラウン3,5,25,26;及び、C.I.ピグメントオレンジ1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63等を本発明に用いることができる。
本発明に係るインク組成物のカプセル化顔料の原料(芯物質)としては、上記の顔料を1種で用いることも、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明においては、顔料粒子を負の電荷を有するイオン性基付与剤で処理することにより、上記の顔料粒子の表面に負の電荷を有するイオン性基を付与したものを用いる。負の電荷を有するイオン性基付与剤として好ましいものとしては、まず、硫黄を含有する処理剤が挙げられ、具体的には、硫酸,発煙硫酸,三酸化硫黄,クロロ硫酸,フルオロ硫酸,アミド硫酸,スルホン化ピリジン塩,スルファミン酸が挙げられる。これらの中でも、三酸化硫黄,スルホン化ピリジン塩又はスルファミン酸等のスルホン化剤が好適である。これらを単独で、又は2種以上を併用して、顔料の表面処理に用いることができる。(なお、"スルホン化剤"とは、スルホン酸(−SO3H)及び/又はスルフィン酸(−RSO2H:RはC1〜C12のアルキル基、又は、フェニル基及びその変性体)を顔料粒子表面に付与するための処理剤である。)
また、上記三酸化硫黄と錯体を形成することのできる溶剤(N,N−ジメチルホルムアミドジオキサン,ピリジン,トリエチルアミン,トリメチルアミンのような塩基性溶剤、ニトロメタン、アセトニトリル等)と後述する溶剤1種以上との混合溶媒により、三酸化硫黄を錯体化させて用いることも有効である。特に、三酸化硫黄を単独で用いたときに、その反応性が高すぎるために、顔料自身が分解又は変質したりする場合や、強酸性のために反応制御が困難になる場合には、上記のように三酸化硫黄と第三アミンとの錯体を用いて顔料粒子の表面処理(この場合はスルホン化)を行うことが好ましい。
また、顔料の表面処理剤として、硫酸、発煙硫酸、クロロ硫酸、及びフルオロ硫酸などを単独で用いる場合、容易に顔料粒子が溶解し、顔料粒子表面だけでなく一分子ごとに反応するような強酸に対しては、反応を抑制する必要があるため、後述する溶剤の種類や使用量を最適化するように留意する必要がある。
顔料の表面処理反応に用いる溶剤は、硫黄を含む処理剤とは反応せず、また、上記顔料が不溶性又は難溶性である溶剤から選択されることが好ましく、好ましい溶媒としては、例えば、スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、キノリン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、ニトロメタン、ニトロベンゼン、液体二酸化硫黄、二硫化炭素、及びトリクロロフルオロメタンなどが挙げられる。
硫黄を含む処理剤による顔料の処理は、顔料粒子を溶剤に分散させ、この分散液に硫黄を含む処理剤を添加し、60〜200℃に加熱するとともに、3〜10時間攪拌することにより行うことができる。具体的には、予めハイスピードミキサー等で溶媒中に顔料を高速せん断分散し、あるいはビーズミルやジェットミル等で衝撃分散し、スラリー状(分散液)にすることが好ましい。その後、穏やかな攪拌に変えた後、硫黄を含む処理剤を添加し、イオン性基を顔料粒子の表面に導入する。この際、顔料表面へのイオン性基の導入量は、反応条件、及び硫黄を含む処理剤の種類に大きく左右される。顔料粒子表面へイオン性基を導入後、水洗、限外濾過、逆浸透等の方法、遠心分離、及び濾過等を繰り返して行い、顔料粒子を含むスラリーから溶剤及び残留する硫黄を含む処理剤を取り除く。
さらに、上記のように顔料粒子表面に導入したスルホン酸(−SO3H)及び/又はスルフィン酸(−RSO2H:RはC1〜C12のアルキル基、又は、フェニル基及びその変性体)をアルカリ化合物で処理することによって、イオン性基として、スルホン酸アニオン基(−SO3 -)及び/又はスルフィン酸アニオン基(−RSO2 -:RはC1〜C12のアルキル基又はフェニル基及びその変性体)を表面に有する顔料粒子を得ることができる。
上記アルカリ化合物としては、カチオンがアルカリ金属イオン又は化学式:R1234N)+(R1,R2,R3及びR4は同一でも異なってもよく、水素原子,アルキル基,ヒドロキシアルキル基又はハロゲン化アルキル基を示す)で示される1価のイオンとなるアルカリ化合物を用いることができる。カチオンが、リチウムイオン(Li+)、カリウムイオン(K+)、ナトリウムイオン(Na+)、アンモニウムイオン(NH4 +)、及び、トリエタノールアミンカチオン等のアルカノールアミンカチオンであるアルカリ化合物であることが好ましい。
上記アルカリ化合物のアニオンとしては、ヒドロキシルアニオンが好ましい。アルカリ化合物の具体例としては、アンモニア,アルカノールアミン(モノエタノールアミン,ジエタノールアミン,N,N−ブチルエタノールアミン,トリエタノールアミン,プロパノールアミン,アミノメチルプロパノール,2−アミノイソプロパノール等)、及び一価のアルカリ金属の水酸化物(LiOH,NaOH,KOH)が例示できる。
スルホン酸等の硫黄含有基を表面に導入した顔料粒子に対する上記アルカリ化合物の添加量は、顔料粒子のスルホン酸基及び/又はスルフィン酸基の中和当量以上となる量が好ましい。さらに、アンモニア、及びアルカノールアミン等の揮発性添加剤については、概ね、顔料粒子表面のスルホン酸基等を中和できる当量の1.5倍以上を添加することが好ましい。
なお、表面処理した顔料粒子をアルカリ化合物で処理する操作は、上記スルホン酸基及び/又はスルフィン酸基が表面に化学結合された顔料粒子とアルカリ化合物とを混合し、その混合物をペイントシェーカー等で振とうすることにより行うことができる。こうして得られた顔料粒子は、本発明のインク組成物の一構成成分であるカプセル化顔料を製造するための原料として用いる、表面に負のイオン性基(アニオン性基)を有する顔料粒子として好ましい。
また、顔料粒子に負のイオン性基(アニオン性基)を付加するための好ましいイオン性基付与剤として、カルボキシル化剤も挙げられる。ここで「カルボキシル化剤」とは、顔料粒子表面にカルボン酸基(−COOH)を付与するための処理剤である。カルボキシル化は、次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カリウム等の次亜ハロゲン酸塩等の酸化剤を用い、顔料粒子表面の結合(C=C、C−C)の一部を切断し、酸化処理することによって行うことができる。また前記の化学処理のほかにプラズマ処理等のような物理的酸化によりカルボン酸基を付与する方法を用いることもできる。本発明では、得られた顔料が水性媒体中で安定して分散していることができる処理方法であれば処理方法に制限はなく、各種手法の選択が可能である。さらに、先に例示した顔料へのカルボン酸導入処理においては、量的には少ないがキノン基等が導入される場合もある。こうした場合であっても、カプセル化顔料の水性媒体中での分散安定性を確保可能であれば本発明の実施上問題ない。
カルボキシル化剤による顔料の処理の一例を挙げる。ハイスピードミキサー等を用いて顔料粒子を水性媒体中に予め高速せん断分散し、又は、ビーズミルやジェットミル等で衝撃分散し、スラリー状(分散液)にする。次に、適量の水を含むようにしたスラリーに、有効ハロゲン濃度で10〜30重量%の次亜ハロゲン酸塩、例えば次亜塩素酸ナトリウムを混合し、60〜80℃に加熱するとともに、5〜10時間程度、さらに好ましくは10時間以上攪拌する。この作業は、かなりの発熱を伴うため、安全上の注意が必要である。この後、表面処理された顔料粒子のスラリーから溶剤及び残留するカルボキシル化剤を加熱処理によって取り除く。また、必要に応じて、水洗、限外濾過、逆浸透等の方法、遠心分離、濾過等を繰り返し行うことで、所望の水性分散体を得ることができる。
さらに上記スルホン化等の場合と同様にカルボン酸基(−COOH)を有する顔料粒子をアルカリ化合物で処理することによって、イオン性基としてカルボン酸アニオン基(−COO-)を表面に有する顔料粒子とすることができる。本発明においては、この状態の顔料粒子を用いることが好ましい。用いるアルカリ化合物の種類、及びアルカリ化合物による処理方法は前述と同様である。
顔料粒子表面への負イオン性基の好ましい導入量は、例えば顔料粒子の表面処理をスルホン化剤によって行う場合、顔料粒子表面への該イオン性基の導入量は、顔料粒子1g当たり0.01mmol当量以上であることが好ましい。顔料粒子表面への親水性基の導入量が0.01mmol/g未満になると、水性溶媒中での顔料粒子のマイクロカプセル化工程において、顔料粒子の凝集物が発生し易くなり、マイクロカプセル化顔料の平均粒径が増大する傾向がある。マイクロカプセル化顔料の平均粒径が増大するにつれて、分散安定性及び吐出安定性が優れるとともに画像の印字濃度を高くできるインクジェット記録用インク組成物を得ることが困難になる。
顔料粒子に対する負のイオン性基の導入量の上限は、特に限定されないが、導入量が多くなると染料化、すなわち水溶化しやすくなるため、適宜、導入量を調整して染料が水溶化しないようにすることが好ましい。
〔重合性界面活性剤〕
次に本発明で用いる重合性界面活性剤について説明する。本発明においては、カチオン性重合性界面活性剤及び/又はアニオン性重合性界面活性剤を用いる。
〔カチオン性重合性界面活性剤〕
本発明で用いるカチオン性重合性界面活性剤は、イオン性基としてのカチオン性基、疎水性基、及び重合性基を有する化合物である。
カチオン性重合性界面活性剤のカチオン性基としては、一級アンモニウムカチオン、二級アンモニウムカチオン、三級アンモニウムカチオン、及び第四級アンモニウムカチオンなる群から選択されたカチオン性基が好ましい。一級アンモニウムカチオンとしてはモノアルキルアンモニウムカチオン(RNH3 +)等を、二級アンモニウムカチオンとしてはジアルキルアンモニウムカチオン(R2NH2 +)等を、三級アンモニウムカチオンとしてはトリアルキルアンモニウムカチオン(R3NH+)等を、第四級アンモニウムカチオンとしては(R4+)等を挙げることができる。
ここで、Rは、疎水性基及び重合性基であり、以下に示すものを挙げることができる。
上記カチオン性基の対アニオンとしては、Cl-、Br-、及びI-等を挙げることができる。
上記Rの疎水性基としては、アルキル基及びアリール基からなる群から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましく、一つの界面活性剤分子中にアルキル基及びアリール基の両者を有することもできる。
上記Rの重合性基としては、不飽和炭化水素基が好ましく、具体的には、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、及びビニレン基からなる群から選択された基であることが好ましい。このなかでも特にアクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
前記カチオン性重合性界面活性剤の具体的な例としては、特公平4−65824号公報に記載されているようなカチオン性のアリル酸誘導体、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体などを挙げることができる。
本発明において用いるカチオン性重合性界面活性剤としては、例えば、一般式R[4-(l+m+n)]1 l2 m3 n+・X-で表される化合物を挙げることができる(前記一般式中、Rは重合性基であり、R1、R2、R3はそれぞれアルキル基又はアリール基であり、XはCl、Br又はIであり、l、m及びnはそれぞれ1又は0である)。ここで、前記重合性基としては、ラジカル重合可能な不飽和炭化水素基を有する炭化水素基を好適に例示でき、より具体的には、アリル基、アクロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロぺニル基、ビニリデン基、ビニレン基等を挙げることができる。
カチオン性重合性界面活性剤の具体例としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド塩、及び2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド塩等を挙げることができる。
上記カチオン性重合性界面活性剤としては市販品を用いることもでき、例えば、アクリエステルDMC(三菱レイヨン社製)、アクリエステルDML60(三菱レイヨン社製)、及びC−1615(第一工業製薬社製)などを挙げることができる。
以上例示したカチオン性重合性界面活性剤は、単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
〔アニオン性重合性界面活性剤〕
本発明で用いるアニオン性重合性界面活性剤は、イオン性基としてのアニオン性基、疎水性基、及び重合性基を有する化合物である。
本発明に用いるアニオン性重合性界面活性剤の具体例としては、特公昭49−46291号公報、特公平1−24142号公報、又は特開昭62−104802号公報に記載されているようなアニオン性のアリル誘導体、特開昭62−221431号公報に記載されているようなアニオン性のプロペニル誘導体、特開昭62−34947号公報又は特開昭55−11525号公報に記載されているようなアニオン性のアクリル酸誘導体、特公昭46−34898号公報又は特開昭51−30284号公報に記載されているようなアニオン性のイタコン酸誘導体などを挙げることができる。
本発明において使用するアニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(1):
Figure 2006096930
[式中、R21及びR31は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基であり、Z1は、炭素−炭素単結合又は式:−CH2−O−CH2
で表される基であり、mは2〜20の整数であり、Xは式−SO31で表される基であり、M1はアルカリ金属、アンモニウム塩、又はアルカノールアミンである。]
で表される化合物、又は、例えば、下記一般式(2):
Figure 2006096930
[式中、R22及びR32は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基であり、Dは、炭素−炭素単結合又は式:−CH2−O−CH2
で表される基であり、nは2〜20の整数であり、Yは式−SO32で表される基であり、M2はアルカリ金属、アンモニウム塩、又はアルカノールアミンである。]
で表される化合物が好ましい。
前記式(1)で表される重合性界面活性剤としては、特開平5−320276号公報、又は特開平10−316909号公報に記載されている化合物を挙げることができる。式(1)におけるmの値を適宜調整することによって、顔料粒子をカプセル化して得られるカプセル化顔料粒子表面の親水性を調整することが可能である。式(1)で表される好ましい重合性界面活性剤としては、下記の式(3)で表される化合物を挙げることができ、さらに具体的には、下記の式(3a)〜(3d)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2006096930
[式中、R31、m、及びM1は式(1)で表される化合物と同様である。]
Figure 2006096930
Figure 2006096930
Figure 2006096930
Figure 2006096930
上記アニオン性重合性界面活性剤としては市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンHSシリーズ(アクアロンHS−05、HS−10、HS−20、及びHS−1025)(以上、商品名)、あるいは、旭電化工業株式会社製のアデカリアソープSE−10N,及びSE−20N(以上、商品名)などを挙げることができる。
旭電化工業株式会社のアデカリアソープSE−10Nは、式(3)で表される化合物において、M1がNH4、R31がC919、m=10とされる化合物である。旭電化工業株式会社のアデカリアソープSE−20Nは、式(3)で表される化合物において、M1がNH4、R31がC919、m=20とされる化合物である。
また、本発明において用いるアニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、一般式(4):
Figure 2006096930
[式中、pは9又は11であり、qは2〜20の整数であり、Aは−SO33で表わされる基であり、M3はアルカリ金属、アンモニウム塩又はアルカノールアミンである。]
で表される化合物が好ましい。式(4)で表される好ましいアニオン性重合性界面活性剤としては、下記式の化合物を挙げることができる。
Figure 2006096930
[式中、rは9又は11、sは5又は10である。]
上記アニオン性重合性界面活性剤としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンKHシリーズ(アクアロンKH−5、及びアクアロンKH−10)(以上、商品名)などを挙げることができる。アクアロンKH−5は、上記式(4)で示される化合物において、rが9及びsが5である化合物と、rが11及びsが5である化合物との混合物である。アクアロンKH−10は、上記式で示される化合物において、rが9及びsが10である化合物と、rが11及びsが10である化合物との混合物である。
また、本発明に用いるアニオン性重合性界面活性剤としては、下記の式(A)で表される化合物も好ましい。
Figure 2006096930
[上記式(A)中、R4は水素原子又は炭素数1から12の炭化水素基を表し、lは2〜20の数を表し、M4はアルカリ金属、アンモニウム塩、又はアルカノールアミンを表す。]
以上に例示したアニオン性重合性界面活性剤は、単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
〔重合性モノマー〕
本発明でいう重合性モノマーとは、その構造中に少なくとも重合性基を有する重合可能なモノマーをいい、さらに重合性モノマーは疎水性基を有することが好ましい。前記疎水性基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基の群から選択されたものを例示できる。
上記の脂肪族炭化水素基としてはメチル基、エチル基、及びプロピル基等を、脂環式炭化水素基としてはシクロヘキシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、及びイソボルニル基等を、芳香族炭化水素基としてはベンジル基、フェニル基、及びナフチル基等を挙げることができる。
上記重合性モノマーの重合性基は、ラジカル重合が可能な不飽和炭化水素基であって、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、及びビニレン基からなる群から選択されることが好ましい。
重合性モノマーの具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、p−クロルメチルスチレン、及びジビニルベンゼン等のスチレン誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、ブトキシエチルアクリレート、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸シクロヘキシル、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、及びイソボルニルアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、2−エチルヘキシルメタクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、フェノキシエチルメタクリレート、メタクリル酸シクロヘキシル、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、及びイソボルニルメタクリレート等の単官能メタクリル酸エステル類;アリルベンゼン、アリル−3−シクロヘキサンプロピオネート、1−アリル−3,4−ジメトキシベンゼン、アリルフェノキシアセテート、アリルフェニルアセテート、アリルシクロヘキサン、及び多価カルボン酸アリル等のアリル化合物;フマル酸、マレイン酸、及びイタコン酸等の不飽和エステル類;N−置換マレイミド、環状オレフィンなどのラジカル重合性基を有するモノマーなどが挙げられる。
本発明に用いる上記重合性モノマーとして、1分子あたり重合性基を2個以上有する架橋性モノマーを用いてもよい。架橋性モノマーを共重合させて芯物質粒子表面の被覆ポリマーを合成することにより、被覆ポリマーの耐溶剤性を高めることができる。被覆ポリマーの耐溶剤性を高めることにより、被覆ポリマーとの親和性が高い溶剤を含む水性組成物中においても、本発明のインク性物に用いるカプセル化酸化チタンコロイド粒子及びカプセル化顔料の分散安定性を優れたものにできる。
本発明において用いる上記架橋性モノマーとしては、ビニル基,アリル基,アクリロイル基,メタクリロイル基,プロペニル基,ビニリデン基,及びビニレン基から選ばれる1種以上の不飽和炭化水素基を2個以上有する化合物で、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アリルアクリレート、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラブロモピスフェノールAジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロビレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4一(メタクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、テトラブロモビスフェノールAジメタクリレート、ジシクロペンタニルジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリグリセーロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリルメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、及びジエチレングリコールビスアリルカーボネート等が挙げられる。
本発明の上記重合性モノマーとしては、さらに下記一般式(5)で表されるモノマーを用いてもよい。
Figure 2006096930
[ただし、R1は水素原子又はメチル基を表す。R2はt−ブチル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はヘテロ環基を表す。mは0〜3、nは0又は1の整数を表す。]
上記一般式(5)において、R2が示す脂環式炭化水素基としては、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、及びアダマンタン基等が挙げられ、ヘテロ環基としてはテトラヒドロフラン基等が挙げられる。
上記一般式(5)で表されるモノマーの具体例としては、以下のものが挙げられる。
Figure 2006096930
Figure 2006096930
芯物質粒子を被覆するポリマー中に一般式(5)で表されるモノマー由来の「嵩高い」基である前記R2基を入れることによって、ポリマーの分子のたわみやすさを低下させ、すなわち、分子の運動性を低下させて、ポリマーの機械的強度や耐熱性を高めることができる。上記の架橋性モノマーや、一般式(5)で表されるモノマーを用いて重合して得られるポリマーは、Tg(ガラス転移温度)が高く、機械的強度、耐熱性、耐溶剤性に優れるという利点を有する。したがって、架橋性モノマー及び/又は一般式(5)で表されるモノマーを用いることにより、前記ポリマーで被覆された芯物質粒子を含むインク組成物を用いて基材にコーティング又は印刷した場合、コーティング又は印刷面を優れた耐擦性と耐久性を有するものにできる。また、「嵩高い」基である前記R2基が前記ポリマー中に存在することによって、インク組成物中に含まれる有機溶媒がポリマー内部へ浸透することを抑制でき、それにより前記ポリマーの耐溶剤性を優れたものにすることができる。このため、インク組成物中に水溶性有機溶媒を共存させ、さらにこれらの組成物をインクジェットヘッドから吐出させて基材にコーティング又は印刷する場合でも、組成物中における芯物質粒子の分散性や、該組成物の保存安定性を高めることができる。
しかし、このような架橋性モノマー及び/又は上記一般式(5)で表されるモノマーを多くするとポリマーの可塑性が低くなるために、カプセル化酸化チタンコロイド粒子やカプセル化顔料粒子が基材と密着しにくくなる場合がある。そのため、好ましい基材との密着性が得られるように、これらのモノマーの使用量は適宜調整することが好ましい。
〔重合開始剤〕
芯物質粒子を被覆するポリマーは、上述した各種モノマーを用いて重合反応を行うことによって得られる。この重合反応は公知の重合開始剤を用いて行うことができ、特にラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては水溶性の重合開始剤が好ましく、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、2,2−アゾビス−(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、及び4,4−アゾビス−(4−シアノ吉草酸)などが挙げられる。
〔カプセル化酸化チタンコロイド粒子及びカプセル化顔料粒子の製造法〕
以下に、上述した各種原料を用いて本発明のインク組成物の構成原料である、酸化チタンコロイド粒子、及び顔料粒子をそれぞれポリマーで被覆してカプセル化酸化チタンコロイド粒子及びカプセル化顔料粒子を製造する方法を以下に説明する。なお、前述のようにカプセル化顔料粒子の製造方法は、酸化チタンコロイド粒子に代えて芯物質として顔料粒子を用いる外はカプセル化酸化チタンコロイド粒子とほぼ同様にして製造することができるので、酸化チタンコロイド粒子及び顔料粒子を芯物質と総称して、以下にカプセル化酸化チタンコロイド粒子及びカプセル化顔料粒子の製造方法をまとめて説明する。
芯物質を被覆するポリマーは上述のとおり重合反応によって合成するが、この重合反応は、超音波発生器、攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗、及び温度調節器を備えた反応容器を使用して行うことが好ましい。
表面に正電荷を有する芯物質粒子を含む水性分散液、すなわち水性混合液を調製する。この芯物質粒子が水性媒体中に良好に分散していない場合は、重合を行う前処理として、ボールミル、ロールミル、アイガーミル、又はジェットミル等の一般的な分散装置を用いて芯物質粒子を水性媒体中に分散させておくことが好ましい。
次に上記水性混合液に、アニオン性重合性界面活性剤(重合性界面活性剤A)を加えて混合する。このとき、芯物質粒子を水性媒体中に分散させるとともに、該芯物質粒子とアニオン性重合性界面活性剤を良く混合するために超音波を混合物に照射することが好ましい。
上記水性混合液へのアニオン性重合性界面活性剤の添加量は、水性混合液に含まれる芯物質粒子の表面積を上記のアニオン性重合性界面活性剤の占有面積で除して求めたアニオン性重合性界面活性剤のモル数に対して、0.5〜2倍モルの範囲であることが好ましく、0.8〜1.2倍モルの範囲であることがさらに好ましい。芯物質粒子表面のアニオン性基の総モル量に対して、カチオン性重合性界面活性剤を0.5倍モル以上添加することによって、その後の重合反応によって良好な分散性を有するカプセル化酸化チタンコロイド粒子やカプセル化顔料を得ることができる。これは芯物質粒子表面をカチオン性重合性界面活性剤で充分覆うことができるためと考えられる。一方、芯物質粒子表面のアニオン性基の総モル量に対するカチオン性重合性界面活性剤の添加量を2倍モル以下にすることによって、芯物質粒子を芯物質として持たないポリマー粒子(ポリマーのみからなる粒子)の生成を抑制することができる。これは、芯物質粒子に吸着されないカチオン性重合性界面活性剤の量を少なくできるためであると考えられる。
次に、この水性混合液中に正又は負に帯電した基を有する少なくとも一種の重合性界面活性剤(重合性界面活性剤B)、及び少なくとも一種の重合性モノマーをさらに添加して重合を行う。この場合、上記水性混合液に重合性モノマー及び重合性界面活性剤Bを添加する順序は、本発明の効果を奏することができる限り任意の順序で添加することができ、さらに一方又は両者を分割して添加することもできる。本発明の製造法においては、特に水性混合液に、先に重合性モノマーを添加した後、重合性界面活性剤Bを添加する方が、先に添加された重合性モノマーがミセル内に最初から保持され得るためより好ましい。
水性混合液に上記重合性モノマー及び重合性界面活性剤Bを添加する場合も、水性混合液に超音波を照射することが好ましい。以上の工程により、まず、正電荷を有する芯物質粒子表面にアニオン性重合性界面活性剤が吸着されると考えられる。次に重合性モノマー及び重合性界面活性剤Bを加え、超音波を照射して処理するが、この処理によって芯物質粒子の周囲に存在する重合性界面活性剤分子及び重合性モノマー分子の配置形態が極めて高度に制御され、その最外層では水相に向かって親水性基(アニオン性基又はカチオン性基)が配向した状態(アドミセル(admicell))が形成されると推定される。そして、それを以下に説明するように重合することによって、モノマー分子が芯物質粒子のまわりに高度に制御された形態のまま重合されてポリマーになり、本発明のインク組成物の構成原料であるカプセル化酸化チタンコロイド粒子及びカプセル化顔料粒子が得られるものと考えられる。
なお、上記の重合反応において水性混合液への超音波の照射を行わなくても、水性媒体中での分散安定性に優れたカプセル化酸化チタンコロイド粒子やカプセル化顔料粒子を得ることができる場合は、超音波照射は必ずしも必要ではない。
ここで、水性混合液中に添加する重合性界面活性剤Bの量は、用いた重合性界面活性剤Aに対して、1倍〜10倍モルの範囲であることが好ましく、1倍モル〜5倍モルの範囲であることがさらに好ましい。前記添加量を1倍モル以上にすることにより、得られるカプセル化酸化チタンコロイド粒子やカプセル化顔料粒子の凝集を抑制でき、分散安定性が優れたカプセル化酸化チタンコロイド粒子及びカプセル化顔料粒子の分散液が得られる。さらに、得られたカプセル化酸化チタンコロイド粒子やカプセル化顔料粒子の分散液を含むインク組成物は、インクジェット記録方法を用いた場合にインクジェットヘッドからの吐出安定性が優れ、また基材への吸着性が優れる。また、重合性界面活性剤Bの添加量を重合性界面活性剤Aの10倍モル以下にすることによって、カプセル化酸化チタンコロイド粒子やカプセル化顔料粒子の表面に結合又は付着しない重合性界面活性剤Bの量を減らし、芯物質を含まないポリマー粒子が生成することを抑制できる。
次に上記のようにして各種モノマーを含む水性混合液に重合開始剤を添加して重合反応を行う。重合開始剤の添加は、重合開始剤が活性化される温度に加熱した水性混合液に重合開始剤を一度に若しくは分割して添加しても、連続的に添加してもよい。また、重合開始剤を添加した後に、重合開始剤が活性化される温度に水性混合液を加熱してもよい。本発明においては、重合開始剤として水溶性重合開始剤を用い、これを純水に溶解して得られる水溶液を反応容器内の上記水性混合液中に滴下して加えることが好ましい。添加した重合開始剤が開裂して開始剤ラジカルが発生し、これが重合性界面活性剤A及びBの重合性基や重合性モノマーの重合性基を攻撃することによって重合反応が起こる。重合温度及び重合反応時間は、用いる重合開始剤の種類及び重合性モノマーの種類によって変わるが、当業者であれば適宜好ましい重合条件を設定することは容易にできる。一般に重合温度は60℃〜90℃の範囲とするのが好ましく、重合時間は3時間〜10時間とするのが好ましい。
上記重合反応においては、上記アニオン性重合性界面活性剤、カチオン性重合性界面活性剤、重合性モノマーは、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。また、上記乳化重合反応は、重合性界面活性剤を用いて行っているため、乳化剤を用いなくても原料モノマーを含む水性混合液の乳化状態は良好な場合が多い。したがって、必ずしも乳化剤を用いる必要はないが、必要に応じて公知のアニオン系、ノニオン系、及びカチオン系乳化剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の乳化剤を用いることもできる。
表面に正電荷を有する芯物質粒子に、アニオン性重合性界面活性剤(重合性界面活性剤A)、重合性モノマー、及びアニオン性又はカチオン性重合性界面活性剤Bを加えて乳化し、重合を行った場合は、重合終了後に、得られた水性分散液のpHを7.0〜9.0の範囲に調整し、さらに濾過を行なうことが好ましい。濾過は限外濾過が好ましい。
以上のようにして得られるカプセル化酸化チタンコロイド粒子及びカプセル化顔料粒子は水性溶媒に対して高い分散安定性を有するが、これはこれらの芯物質粒子がポリマー層で完全に被覆されている(被覆されていない部分がない)とともに、マイクロカプセル壁材のポリマー層の親水性基が水性溶媒に向かって規則正しく配向しているためであると考えられる。
上述のようにして得られる、本発明のインク組成物の構成成分であるカプセル化酸化チタンコロイド粒子及びカプセル化顔料粒子は、芯物質粒子の表面をポリマーが被覆した形態を有するが、所望により、ポリマーの重合前又は重合中に、水性混合液に酸化防止剤及び/又は可塑剤などを添加してポリマーにそれらの添加剤を含有させることもできる。このような酸化防止剤や可塑剤などは公知の材料を用いることができる。
上記方法によって得られる本発明のインク組成物の構成成分であるカプセル化酸化チタンコロイド粒子及びカプセル化顔料粒子の平均粒子径は、それぞれ400nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがさらに好ましく、20〜200nmであることが特に好ましい。これらカプセル化された芯物質粒子の平均粒子径は、市販の動的光散乱法粒度分布測定機を使用して測定することができる。また、本発明において用いられるカプセル化された芯物質粒子の平均粒子径は、原料として所望の平均粒子径を有する芯物質粒子を用いることとあわせて、重合反応開始前に超音波を所定の照射条件(照射エネルギーを制御することを主とし、これは例えば周波数及び照射時間によって制御できる)で反応混合液に照射すること、重合反応中に反応混合物に超音波を照射するか否かの違い、及び重合反応中に反応混合物に超音波を照射する場合はその照射条件の制御等によって所望する粒子径に制御することができる。
〔インク組成物の製造〕
次に上述のようにようにして得られたカプセル化酸化チタンコロイド粒子及びカプセル化顔料粒子を含む本発明のインク組成物の製造方法について説明する。
本発明のインク組成物は、水性組成物であり、水性溶媒中に少なくとも上記カプセル化酸化チタンコロイド粒子及びカプセル化顔料粒子が分散されて含まれるものである。組成物中のカプセル化酸化チタン粒子の含有量は、組成物の全重量に対してカプセル化酸化チタン粒子が0.1〜10重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがさらに好ましい。また、カプセル化顔料粒子の含有量は0.5〜20重量%であることが好ましく、1〜10重量%であることがさらに好ましい。
また、インク組成物に保水性と湿潤性を付与するために、高沸点水溶性有機溶媒からなる湿潤剤を組成物に添加することが好ましい。このような高沸点水溶性有機溶媒としては、沸点が180℃以上の水溶性有機溶媒が好ましい。
本発明のインク組成物に用いることができる、沸点が180℃以上の水溶性有機溶媒の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、グリセリン、メソエリスリトール、及びペンタエリスリトールを挙げることができる。本発明インク組成物に用いる高沸点水溶性有機溶媒は、沸点が200℃以上であることがさらに好ましい。これらの一種又は2種以上を本発明の組成物に用いることができる。インク組成物に高沸点水溶性有機溶媒を添加することにより、開放状態(室温でこの組成物が空気に触れている状態)で放置しても、カプセル化酸化チタンコロイド粒子及びカプセル化顔料粒子の再分散性及び流動性を長時間維持できるインク組成物を得ることができる。さらに、このような組成物は、インクジェットプリンタを用いての印字中もしくは印字中断後の再起動時に、インクジェットノズルの目詰まりが生じ難くなるため、インクジェットノズルからの高い吐出安定性を有する。
これらの高沸点水溶性有機溶媒を含めた水溶性有機溶媒の合計の含有量は、インク組成物の全重量に対して、好ましくは10〜50重量%程度であり、より好ましくは10〜30重量%である。
本発明のインク組成物には、さらに2−ピロリドン,N−メチルピロリドン,ε−カプロラクタム,ジメチルスルホキシド,スルホラン,モルホリン,N−エチルモルホリン,及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等からなる群から選ばれる一種以上の極性溶媒を添加することができる。極性溶媒を添加することにより、組成物中におけるカプセル化酸化チタンコロイド粒子及びカプセル化顔料粒子の分散性が向上するという効果が得られ、インク組成物をインクジェット記録用に用いる場合、のインクジェットヘッドからの吐出安定性を良好にすることができる。
これらの極性溶媒の含有量は、インク組成物の全重量に対して、好ましくは0.1重量%〜20重量%であり、より好ましくは1重量%〜10重量%である。
本発明のインク組成物は、水性溶媒が記録媒体に浸透することを促進する目的で、浸透剤をさらに含有することが好ましい。水性溶媒が記録媒体に素早く浸透することによって、画像の滲みが少ない記録物を得ることができる。このような浸透剤としては、多価アルコールのアルキルエーテル、1,2−アルキルジオールなどが好ましく用いられる。
本発明のインク組成物中にグリセリンを含有させることにより、インクジェット記録用として用いた時、インクジェットノズルの目詰まりが発生しにくくなり、さらにこの組成物自身の保存安定性を高めることもできる。
また、本発明のインク組成物にグリコールエーテル類を用いる場合には、グリコールエーテル類とあわせて、後述するアセチレングリコール系界面活性剤を用いることが好ましい。
さらに、本発明のインク組成物中には界面活性剤、特にアニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤を含有させることが好ましい。アニオン性界面活性剤の具体例としては、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸、アシルメチルタウリン酸、ジアルキルスルホ琥珀酸、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸塩、及びアルキルザルコシン塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、モノグリセライトリン酸エステル塩などが挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、グリセリンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、シュガーアルキルエステル、多価アルコールアルキルエーテル、アルカノールアミン脂肪酸アミドなどが挙げられる。
より具体的には、アニオン性界面活性剤としてはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩などが挙げられ、ノニオン性界面活性剤の具体例としてはポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系化合物、並びにポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、及びポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系化合物等を挙げることができる。
特に、本発明のインクジェット記録用組成物は、界面活性剤としてアセチレングリコール系界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール系界面活性剤を含むことが望ましい。これにより、組成物に含まれる水性溶媒が記録媒体へ浸透しやすくなるため、種々の記録媒体に対して滲みの少ない画像を印刷できる。
本発明において用いられるアセチレングリコール系界面活性剤の好ましい具体例としては、下記の式(6)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2006096930
上記式(6)において、m及びnは、それぞれ0≦m+n≦50を満たす数である。また、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立してアルキル基(好ましくは炭素数6以下のアルキル基)である。
上記式(6)で表される特に好ましい化合物としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。上記式(6)で表される化合物として、アセチレングリコール系界面活性剤として市販されている市販品を利用することも可能であり、具体例としては、サーフィノール104、82、465、485、及びTG(いずれも商品名、Air Products and Chemicals. Inc.より入手可能)、並びにオルフィンSTG及びオルフィンE1010(以上商品名、日信化学社製)が挙げられる。また、アセチレンアルコール系界面活性剤としては、サーフィノール61(商品名、Air Products and Chemicals. Inc.より入手可能)等が挙げられる。
これらのアセチレングリコール系界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール系界面活性剤は、インク組成物の全重量に対して、好ましくは0.01〜10重量%の範囲、さらに好ましくは0.1〜5重量%の範囲になるように用いることが好ましい。
本発明のカプセル化酸化チタンコロイド粒子及びカプセル化顔料粒子を含むインク組成物は、顔料粒子の分散性に優れ、優れた発色性を有し、それを用いて印刷された画像は優れた耐擦性及び耐水性、並びに高い光沢を有し、特に、ブロンズ現象が起こり難く、しかも画像の濃淡部間の光沢差が小さい印刷物を得ることができる。
[カプセル化酸化チタンコロイド粒子〔1〕の製造]
酸化チタンコロイド(ソラロニクス社製;Ti−NanoxideD/SP、コロイド状アナターゼ粒子)を、固形分が20gとなるように秤取し、これに脱イオン水を400g添加して十分に攪拌、混合し、さらに超音波を照射した。その後、アニオン性重合性界面活性剤のアクアロンKH−10を5g加えて攪拌混合し、超音波を照射した。
次いで、スチレン15g、ジシクロペンタニルメタクリレート5g、ドデシルメタクリレート5gを加えて攪拌、混合し、さらにイオン交換水50gに溶解した5.0gのアニオン性重合性界面活性剤(第一工業製薬社製、アクアロンKH−10)を添加して超音波を30分間照射した。
このようにして得た混合液を、攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗、温度調整器、窒素導入管及び超音波発生器を備えた反応容器に投入した。反応容器内の温度を80℃に昇温した後、イオン交換水20gに重合開始剤として過硫酸カリウム0.7gを溶解した過硫酸カリウム水溶液を滴下し、窒素を導入しながら80℃で6時間重合させた。重合終了後、2mol/L水酸化カリウム水溶液でpHを8に調整し、限外濾過装置でクロスフロー法による限外濾過を行った。
このようにして得られたマイクロカプセル化無機微粒子〔1〕は水媒体に対して良好な分散性を示すものであった。得られたマイクロカプセル化無機微粒子〔1〕を動的光散乱法粒度分布測定機(リーズ&ノースロップ社製;マイクロトラックUPA150)で体積平均粒子径を測定したところ30nmであった。
[アニオン性基を表面に有するマゼンタ顔料粒子〔P1〕の製造]
イソインドリノン顔料(C.I.ピグメントレッド122)20部をキノリン500部と混合し、アイガーモーターミルM250型(アイガージャパン社製)でビーズ充填率70%及び回転数5000rpmの条件下で2時間分散処理し、分散した顔料ペーストと溶剤の混合液をエバポレータに移し、30mmHg以下に減圧しながら120℃に加熱し、系内に含まれる水分をできるだけ蒸発除去した後、160℃に温度制御した。
次いで、これにスルホン化ピリジン錯体20部を加えて8時間反応させ、反応終了後に過剰なキノリンで数回洗浄した後に水中に注ぎ、濾過することで、アニオン性基を表面に有するマゼンタ顔料粒子〔P1〕を得た。
次いで、以下に示す方法によって、得られたマゼンタ顔料〔P1〕粒子表面へのアニオン性基(スルホン酸基)の導入量を求めた。すなわち、スルホン化剤によって表面が処理された上記マゼンタ顔料粒子〔P1〕を酸素フラスコ燃焼法で処理し、0.3%過酸化水素水に吸着させた後、ダイオネクス社製2000iを用いてイオンクロマトグラフ法により硫酸イオン(2価)を定量し、この値をスルホン酸基に換算して顔料1g当たりのモル量(mmol/g)として示した。得られたマゼンタ顔料〔P1〕のアニオン性基の導入量は0.06mmol/gであった。
[マイクロカプセル化顔料〔MCP1〕の製造]
アニオン性基を表面に有するマゼンタ顔料粒子〔P1〕100gをイオン交換水500gに分散した水性分散液に、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド(カチオン性重合性界面活性剤)を1.25g添加して混合した後、超音波を30分間照射した。
次いで、予めベンジルメタクリレート50gとラウリルメタクリレート20gを混合して得たモノマー混合液を添加して混合した後、超音波を30分間照射した。
さらに、予めイオン交換水50gに溶解しておいたアニオン性重合性界面活性剤(第一工業製薬社製、アクアロンKH−10)を5.6gと、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(親水性モノマー)を0.2g添加して混合した後、再び超音波を30分間照射した。
このようにして得た混合液を攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗、温度調整器、窒素導入管を備えた反応容器に投入した。反応容器内の温度を80℃に昇温した後、イオン交換水20gに重合開始剤として過硫酸カリウム1.6gを溶解した過酸化カリウム水溶液を滴下し、窒素を導入しながら80℃で6時間重合反応を行わせた。重合終了後、限外濾過装置を用いて精製を行い、マイクロカプセル化顔料濃度を15重量%に調整した後、2mol/Lの水酸化カリウム水溶液でpHを8に調整した。このようにして、目的とするマイクロカプセル化顔料〔CP1〕の分散液を得た。
得られたマイクロカプセル化顔料〔CP1〕の分散液を動的光散乱法粒度分布測定機(リーズ&ノースロップ社製;マイクロトラックUPA150を用いて体積平均粒子径を測定したところ、160nmであった。
[カプセル化酸化チタンコロイド粒子及びカプセル化顔料粒子を含むインク組成物の製造]
カプセル化酸化チタンコロイド粒子〔1〕の分散液を固形分で5g相当量とマイクロカプセル化顔料〔MCP1〕の分散液を固形分で5g秤取し、これにグリセリン15gと1,2−ヘキサンジオール5g、トリメチロールプロパン3g、2−ピロリドン2g、オルフィンE1010を1g加え、総量で100gとなるようにさらにイオン交換水を加えて良く攪拌した。インクジェット記録用インクをインクカートリッジに充填し、これをインクジェットプリンターPM−720C(セイコーエプソン社製)に装填して、PM写真用紙(光沢)に100%Dutyでベタ印刷を行った。
得られた画像は発色性に優れ、高い光沢が得られるとともに、ブロンズ現象がなかった。また、画像の濃淡部の光沢差も小さいものであった。
本発明のインク組成物は、分散性、発色性に優れ、ブロンズ現象を起こしにくいインク組成物として、インクジェット記録方法等に好適に用いられる。

Claims (5)

  1. ポリマーを主成分とする材料で表面が被覆されたカプセル化酸化チタンコロイド粒子、およびポリマーを主成分とする材料で表面が被覆されたカプセル化顔料粒子を含み、
    前記カプセル化酸化チタンコロイド粒子が以下のステップ:
    (1)水性媒体中において、表面に正電荷を有する酸化チタンコロイド、および少なくとも一種のアニオン性重合性界面活性剤を混合して水性混合物を得;
    (2)前記水性混合物に、少なくとも一種の重合性モノマー、および少なくとも一種のアニオン性またはカチオン性重合性界面活性剤をさらに添加し混合するとともに、重合すること、
    を含む方法を用いて製造されたものであり、
    かつ、前記カプセル化顔料粒子が以下のステップ:
    (a)水性媒体中において、表面に負電荷を有する少なくとも一種の顔料粒子、および少なくとも一種のカチオン性重合性界面活性剤を混合して水性混合物を得;
    (b)前記水性混合物に、少なくとも一種の重合性モノマー、および少なくとも一種のアニオン性またはカチオン性重合性界面活性剤をさらに添加し混合するとともに重合すること、
    を含む方法を用いて製造されたものであることを特徴とするインク組成物。
  2. 前記カプセル化酸化チタンコロイド粒子を製造するための前記ステップ(2)が、前記ステップ(1)で調製した前記水性混合物に少なくとも一種の重合性モノマーを添加しかつ混合し、次に少なくとも一種のアニオン性またはカチオン性重合性界面活性剤を添加し混合するとともに重合するものであることを特徴とする請求項1記載のインク組成物。
  3. 前記カプセル化顔料粒子を製造するための前記ステップ(b)が前記ステップ(a)で調製した前記水性混合物に少なくとも一種の重合性モノマーを添加しかつ混合し、次に少なくとも一種のアニオン性またはカチオン性重合性界面活性剤を添加し混合するとともに重合するものであることを特徴とする請求項1または2に記載のインク組成物。
  4. 前記カプセル化酸化チタンコロイド粒子の表面電荷と、前記カプセル化顔料粒子の表面電荷が同種電荷であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインク組成物。
  5. 前記カプセル化酸化チタンコロイド粒子を被覆する材料の主成分であるポリマーのガラス転移温度、および前記カプセル化顔料粒子を被覆する材料の主成分であるポリマーのガラス転移温度が、ともに30℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のインク組成物。

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