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JP2005120560A - アルミナ繊維集合体およびそれよりなる触媒コンバータ用把持材 - Google Patents

アルミナ繊維集合体およびそれよりなる触媒コンバータ用把持材 Download PDF

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JP2005120560A JP2004268532A JP2004268532A JP2005120560A JP 2005120560 A JP2005120560 A JP 2005120560A JP 2004268532 A JP2004268532 A JP 2004268532A JP 2004268532 A JP2004268532 A JP 2004268532A JP 2005120560 A JP2005120560 A JP 2005120560A
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Eisaku Kakikura
栄作 柿倉
Toshiaki Sasaki
利明 笹木
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Mitsubishi Kagaku Sanshi Corp
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Abstract

【課題】繊維の飛散が少なく、取り扱い性上および作業環境衛生上の点で優れ、且つ、触媒コンバータ用把持材などの用途に好適なアルミナ繊維集合体を提供する。
【解決手段】アルミナ短繊維からなるアルミナ繊維集合体であって、該アルミナ短繊維の繊維径をx(μm)としたとき、xの対数正規分布における自然対数値lnxがln3未満である割合が2%以下であり、且つ、該繊維径の長さ加重幾何平均径からその標準誤差の2倍値を引いた値が6μm以下であることを特徴とするアルミナ繊維集合体、及び、それよりなる触媒コンバータ用把持材。
【選択図】 なし

Description

本発明は、新規なアルミナ繊維集合体およびそれよりなる触媒コンバータ用把持材に関する。
アルミナ繊維集合体は、その優れた耐熱性を活かし、ブランケット等に加工されて断熱材、耐熱性クッション材などとして使用されている。特に、近年、本出願人等がアルミナ繊維を触媒コンバータ用把持材として用いる基本技術を確立させた結果(特許文献1、2参照)、主に該用途でのアルミナ繊維の需要が急増した。
かかるアルミナ繊維のブランケットは、例えば、次のような方法で製造することができる。即ち、塩基性塩化アルミニウム、珪素化合物、有機重合体および水を含有する紡糸液をブローイング法で紡糸し、得られたアルミナ繊維短繊維前駆体の集合体(積層シート)を必要に応じてニードリングを施した後に焼成する。そして、該焼成工程において、揮発分が除去されると共にアルミナとシリカの結晶化が進行しアルミナ繊維に変換される。この結果、アルミナ短繊維から成るアルミナ繊維集合体のブランケットが得られる。かかる製造方法は、一般に前駆体繊維化法と呼ばれる(特許文献3参照)。
ところで、アルミナ短繊維の直径(以下、繊維径という)が小さい場合はアルミナ短繊維が飛散し易く、取り扱い性が悪化するとともに、作業環境衛生上も好ましくない。そして、近年、繊維径3μm未満のものは人体吸引後、肺胞迄達する可能性があるとされ、健康上好ましくないなどの指摘がある。一方、アルミナ繊維の繊維径は制御しにくく、一般に繊維径分布が広くなるので、繊維径3μm未満のものを排除することが難しい(非特許文献1参照)。一方、繊維径が大きくすぎても、アルミナ繊維集合体の断熱性、クッション性等の産業上有用な諸特性が低下する傾向がある。
特許第3282362号公報 特開平8−174687号公報 特開2000−80547号公報 Official Journal of the European Communities.21,8,2001 L225/9
本発明は、かかる実状に鑑みなされたものであり、その目的は、繊維径の範囲が制御され作業環境衛生上、健康上の問題も実質的にないこと、且つ、それを触媒コンバータ用把持材などで使用した場合に諸特性が向上するようなアルミナ繊維集合体を提供することにある。
本発明者等は、上記課題に鑑み、アルミナ繊維集合体における繊維径の範囲の制御手段などについて鋭意検討を重ねた結果、製造条件を詳細に詰めていくことで、所望の平均径であり、且つ、繊維径分布が非常にシャープであるものを得ることが可能であること、また、かかるアルミナ繊維集合体を用いると触媒コンバータ用把持材の性能を飛躍的に改善しうるとの知見を得、本発明の完成に至った。
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、アルミナ短繊維からなるアルミナ繊維集合体であって、該アルミナ短繊維の繊維径の測定値をx(μm)としたとき、xの対数正規分布における自然対数値lnxがln3未満である割合が2%以下であり、且つ、該繊維径の長さ加重幾何平均径からその標準誤差の2倍値を引いた値が6μm以下であることを特徴とするアルミナ繊維集合体、及び、それよりなる触媒コンバータ用把持材に存する。
本発明によれば、アルミナ短繊維からなるアルミナ繊維集合体であって、その繊維径に関して3μm未満のものが実質的に含まれず、且つ、その分布を狭くすることにより過大なものが含まれない。そのため、その繊維集合体の気密性やクッション性が良好であり、これを触媒用把持材などとして使用する場合に高い性能が発現できる。かかる本発明のアルミナ繊維集合体は、ハンドリングの際に繊維の飛散が少なく、取り扱い性上、作業環境衛生上及び健康上の点で優れる。以上より、本発明の工業的価値は顕著である。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のアルミナ繊維集合体は、通常、前述の様な前駆体繊維化法で得られ、構造的にはアルミナ短繊維からなる。本発明のアルミナ繊維集合体は、前記アルミナ短繊維の繊維径の測定値をx(μm)としたとき、xの対数正規分布における自然対数値lnxがln3未満である割合が2%以下であり、且つ、該繊維径の長さ加重幾何平均径からその標準誤差の2倍値を引いた値が6μm以下であることを特徴とする。
はじめに、本発明の第1の特徴である「アルミナ短繊維の繊維径の測定値をx(μm)としたとき、xの対数正規分布における自然対数値lnxがln3未満である割合が2%以下」について説明する。
アルミナ短繊維の繊維径は、一般に繊維径の大きい側に裾が長い非対称分布をとるが、その繊維径xの自然対数をとったものは正規分布に近い分布となる。かかる場合を対数正規分布に従うという。上記のln3未満である割合は、当該アルミナ繊維集合体を構成する繊維中に繊維径3μm未満のものが含まれる統計的な確率を意味することになる。端的に言えば、上記のln3未満である割合が2%以下とは、実質的に3μm未満の繊維径のものを含まないことを示すものと言える。
ここでのアルミナ短繊維は、その繊維径をx(μm)としたとき、xの対数正規分布における自然対数値lnxがln3未満である割合が2%以下、好ましくは1%以下、更に好ましくは0.2%以下である。かかる基準値は可及的にゼロ%に近づけることが望ましいが、現実的には工業的製造が可能であるレベルと、取り扱い上および作業環境衛生上の許容レベルとを考慮して決定され、0.01%程度が許容下限と考えられる。
次に、本発明の第2の特徴である「アルミナ短繊維の繊維径の長さ加重幾何平均径からその標準誤差の2倍値を引いた値が6μm以下」について説明する。
まず、標準誤差とは、平均値の推定にかかわる誤差を意味する。母集団の平均値を推定するに当たっては、一般に母集団から標本を取り出して標本平均を求めることが行われる。この標本平均の分布は母集団の分布形態に拘らず必ず正規分布になる。この標本平均分布の標準偏差のことを標準誤差と呼び、母集団の標準偏差を標本集団の例数の平方根で除した値がこれに相当する。ただし、通常母集団の標準偏差は未知であるので、標本集団から計算した母標準偏差の推定値(標本標準偏差)を代用して、次式から計算する。
上式から判るとおり、標本平均の標準偏差すなわち標準誤差は、標本集団の例数nが大きいほど小さくなるため、標本平均と母平均との間の誤差は小さくなり標本平均の信頼性が増すといえる。なお、本願発明においては、European Chemicals Bureauの定める人造鉱物繊維の長さ加重幾何平均径に関する試験方法(ECB/TM/1(00) rev.2のDRAFT-4)に則り、全ての計算は自然対数にて実施し、最後に指数に戻す方式を採用した。
また、標本平均の分布は正規分布となることについては前述のとおりであるが、正規分布においては、標準偏差は平均値から分布の変曲点までの距離を表し、平均±2標準偏差の間には全データの約95%が含まれることは周知のとおりである。つまり平均−2標準偏差は、95%予測区間の下限値、平均+2標準偏差は95%予測区間の上限値を意味する。
前記アルミナ短繊維の繊維径の長さ加重幾何平均径からその標準誤差の2倍値を引いた値が6μm以下とは、端的に言えば、アルミナ繊維集合体全体の真の平均径として予想される実質的に最も低い値が6μm以下であることを示すものと言える。同様に、前記アルミナ短繊維の繊維径の長さ加重幾何平均径とその標準誤差の2倍値の和が6μm以下とは、アルミナ繊維集合体全体の真の平均径として予想される最も高い値が6μm以下であることを示すものと言える。本発明におけるアルミナ短繊維は、繊維径の長さ加重幾何平均径からその標準誤差の2倍値を引いた値が6μm以下である。
以上のように規定される本発明のアルミナ繊維集合体は、繊維径分布の中心が実質6μm以下でありながら、実質的に3μm未満の繊維径のものを含まないものと言える。前記非特許文献1においては、繊維径が制御されていない人造鉱物繊維については一般に繊維系分布が広いため、発ガン性を有する3μm未満の繊維を十分に排除するためには、平均径としては6μmより大きい繊維を選択する必要があることを示している。ところが、本発明のアルミナ繊維集合体は、アルミナ短繊維の繊維径平均としては、この発ガン性の分類に該当するにも関わらず、発ガン性を有する3μm未満の繊維を実質含まない。
かかる繊維径分布が望ましいのは、本繊維径が小さいものが多くなると繊維が飛散しやすく、取り扱い性が悪化すると共に作業環境衛生上、健康上も好ましくなく、一方、繊維径が大きすぎると、一般に、アルミナ短繊維の集合体の断熱性(気密性)やクッション性が低下するので好ましくないからである。
また、本発明のアルミナ繊維集合体は、見方によっては、公知のアルミナ繊維集合体の繊維径分布をわずか変更したものにすぎないようにも見えるが、これを触媒コンバータ用把持材して使用した場合に、その性能が飛躍的に改善できることは極めて意外なことである。かかる飛躍的な改善をもたらすことができる理由としては、繊維が均一に集積しやすくなり、触媒コンバータ用把持材としての特性の位置依存性がなくなり、面圧値が安定すること、一方、前記でも説明しているように、過大な繊維径のものが含まれていないことにより、気密性やクッション性が改良されることなどが、考えられる。
なお、ここでの把持材としては、排気ガス浄化用の触媒コンバータにおける触媒担体とその外周を覆うシェルとの間の隙間に配置して用いる場合が最も一般的であるが、特にこれに限定されない。例えば、近年では、燃料電池用触媒コンバータでの触媒担体とその外周を覆うシェルとの間の隙間に配置して用いる場合も多い。
ところで、本発明のアルミナ繊維集合体において、気密性やクッション性などの諸特性をより改良するためには、更に繊維径分布が急峻であることが望ましい。したがって、前記アルミナ短繊維の繊維径の長さ加重幾何平均径と標準誤差の2倍値との差は、6μm以下、好ましくは5.5μm以下の範囲とすることが好ましい。また、該繊維径の長さ加重幾何平均径と標準誤差の2倍値との和は6.5μm以下、中でも5.6μm以下であることが好ましい。また、繊維径が10μm以上のアルミナ短繊維の割合が4%以下、好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下であることが望ましい。ここで繊維径が10μm以上のアルミナ短繊維の割合が4%以下であるとは、アルミナ短繊維の繊維径xの対数正規分布における自然対数値lnxがln10以上である割合を言う。更に、長さ加重幾何平均径は通常4.0〜5.5μm、好ましくは4.5〜5.5μmの範囲であることが望ましい。
以上のような本発明のアルミナ繊維集合体の製造方法について以下に説明する。まず、本発明のアルミナ繊維集合体を製造するに当たって採用される、一般的な製造手順について説明する。次に、本発明のアルミナ繊維集合体を製造する上で工夫すべき点につき説明する。
まず、一般的な製造手順としては、前述のように、通常、塩基性塩化アルミニウム、珪素化合物、有機重合体および水を含有する紡糸液をブローイング法で紡糸し、得られたアルミナ繊維前駆体の集合体を焼成する方法(前駆体繊維化法)が採用される。そして、主として、紡糸液の調製工程、紡糸工程、焼成工程よりなり、必要に応じ、紡糸工程と焼成工程との間にニードリング工程が設けられる。
<紡糸液の調製工程>
塩基性塩化アルミニウム;Al(OH)3-xClx は、例えば、塩酸または塩化アルミニウム水溶液に金属アルミニウムを溶解させることにより調製することが出来る。上記の化学式におけるxの値は、通常0.45〜0.54、好ましくは0.5〜0.53である。珪素化合物としては、シリカゾルが好適に使用されるが、その他にはテトラエチルシリケートや水溶性シロキサン誘導体などの水溶性珪素化合物を使用することも出来る。有機重合体としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子化合物が好適に使用される。これらの重合度は、通常1000〜3000である。
紡糸液としては、アルミニウムと硅素の比がAl23とSiO2の重量比に換算して、通常99:1〜65:35、好ましくは99:1〜70:30、塩基性塩化アルミニウムの濃度が150〜190g/Lである紡糸液を使用する。硅素化合物の量が上記の範囲より少ない場合は、短繊維を構成するアルミナがα−アルミナ化し易く、しかも、アルミナ粒子の粗大化による短繊維の脆化が起こり易い。一方、硅素化合物の量が上記の範囲よりも多い場合は、ムライト(3Al23・2SiO2)と共に生成するシリカ(SiO)の量が増えて耐熱性が低下しやすい。
塩基性塩化アルミニウムの濃度が150g/L未満の場合または有機重合体の濃度が16g/L未満の場合は、何れも、適当な粘度が得られずに繊維径が小さくなる。すなわち、紡糸液中の遊離水が多すぎる結果、ブローイング法による紡糸の際の乾燥速度が遅く、延伸が過度に進み、紡糸された前駆体繊維の繊維径が変化し、所定の平均繊維径で且つ繊維径分布がシャープな短繊維が得られない。しかも、塩基性塩化アルミニウムの濃度が150g/L未満の場合は、生産性が低下する。一方、塩基性塩化アルミニウムの濃度が190g/Lを越える場合または有機重合体の濃度が40g/Lを越える場合は、何れも、粘度が高すぎて紡糸液にはならない。塩基性塩化アルミニウムの好ましい濃度は150〜185g/L、更に好ましい濃度は155〜185g/Lであり、有機重合体の好ましい濃度は25〜35g/Lである。
上記の紡糸液は、塩基性塩化アルミニウム水溶液に硅素化合物および有機重合体を添加し、塩基性塩化アルミニウムおよび有機重合体の濃度が上記の範囲となるように濃縮することによって調製される。紡糸液の常温における粘度は通常1〜1000ポイズ、好ましくは10〜100ポイズである。
<紡糸>
紡糸(紡糸液の繊維化)は、高速の紡糸気流中に紡糸液を供給するブローイング法によって行われ、これにより、長さが数十mm〜数百mmのアルミナ短繊維前駆体が得られる。上記の紡糸の際に使用する紡糸ノズルの構造は、特に制限はないが、例えば、特許第2602460号公報に記載されているような、エアーノズルより吹き出される空気流と紡糸液供給ノズルより押し出される紡糸液流とは並行流となり、しかも、空気の並行流は充分に整流されて紡糸液と接触する構造のものが好ましい。この場合、紡糸ノズルの直径は通常0.1〜0.5mmであり、紡糸液供給ノズル1本あたりの液量は、通常1〜120ml/h、好ましくは3〜50ml/hであり、エアーノズルからのスリットあたりのガス流速は通常40〜200m/sである。また、紡糸液供給ノズル1本あたりの液量のばらつきは通常±5%以内、好ましくは±2%以内であり、エアノズルからのスリットあたりのガス流速のばらつきは通常±15%以内、好ましくは±8%以内である。かかる液、ガス流速をより精密に制御できることは、繊維径分布をよりシャープにするための極めて重要な要因となっているものと考えられる。
かかる液流速の精密な制御を行うには、液を供給するポンプ自体の微細な脈動を制御することと、紡糸ノズル間の流量ばらつきをなくし紡糸ノズル1本当たりの流量が一定となるようにすることの2つが重要である。まず、液を供給するポンプの微細な脈動を抑制する方法としては、三連ダイヤフラム型のように複数のシリンダーを位相をずらして作動させることにより脈動を抑制する方式のポンプを採用したり、ポンプと紡糸ノズルの間にアキュムレータを設置し、アキュムレータ本体の容積を変化させることによって脈動、衝撃圧力を吸収させる方法がある。一方、紡糸ノズル間の流量ばらつきは、紡糸液注入口に近いノズルほど吐出圧力(背圧)が高くなるために生じる。流量ばらつきをなくす方法としては、紡糸ノズル手前の液流路中にステンレス製ウール状材料を充填し紡糸ノズルの背圧を均一化することなどが挙げられる。
また、かかるガス流速の精密な制御を行うには、ガスを供給するコンプレッサーの微細な脈動を抑制することと、エアーノズルの吐出圧力(背圧)を均一化することの2つが重要である。まず、ガスを供給するコンプレッサーの微細な脈動を抑制する方法としては、コンプレッサーとエアーノズルの間にレシーバータンクを設置してガス流量のぶれを緩和するバッファーとして作用させる方法がある。一方、エアーノズルの吐出圧のぶれは、スリット状エアーノズルの中央部においてガス注入口からの距離が近いためにガス流速が早く、スリット状エアーノズルの両端部においてはガス注入口からの距離が遠いためにガス流速が遅くなることに起因して生じる。エアーノズルの吐出圧を均一化する方法としては、ガス流路中に導入板(邪魔板)等を組み込むことや、エアーノズルのスリット間隔に分布を持たせ、ガス流速の早い部位はスリット間隔を狭くすることなどが挙げられる。
また、上記のような紡糸ノズルによれば、紡糸液供給ノズルより押し出される紡糸液は、スプレー状(霧状)となることなく充分に延伸され、繊維相互で融着し難いので、紡糸条件を最適化することにより、繊維径分布の狭い均一なアルミナ繊維前駆体を得ることができる。
更に、紡糸に際しては、先ず、水分の蒸発や紡糸液の分解が抑制された条件下において、紡糸液から充分に延伸された繊維が形成され、次いで、この繊維が速やかに乾燥されることが好ましい。そのためには、紡糸液から繊維が形成されて繊維捕集器に到達するまでの過程において、雰囲気を水分の蒸発を抑制する状態から水分の蒸発を促進する状態に変化させることが好ましい。そのため、紡糸液が気流と接触を開始する付近の相対湿度を通常35%以上、好ましくは40%以上とする。相対湿度の上限としては、特に制限はないが、あまりに高いと繊維が融着を起こしやすくなることから、通常は相対湿度50%以下程度とする。また、紡糸液が気流と接触を開始する付近の温度条件としては通常0〜40℃、好ましくは5〜30℃、更に好ましくは10〜20℃とする。また、繊維捕集器付近の気流の相対湿度は35%未満、中でも30%以下とするのが好ましい。また、繊維捕集器付近の気流の温度は通常30〜50℃、中でも35〜40℃とする。
紡糸液から充分に延伸された繊維が形成されるべき段階で雰囲気の温度が高すぎる場合は、水分の急激な蒸発その他により、充分に延伸された繊維が形成し難く、また、形成された繊維に欠陥が生じて最終的に取得される無機酸化物繊維が脆弱化する。一方、蒸発を抑制すべく低温または高湿度雰囲気中で紡糸液から繊維を形成した場合は、繊維形成後も引続いて同じ雰囲気であるため、繊維が相互に付着したり、弾性回復により液滴化してショットを生じ易いので好ましくない。アルミナ短繊維前駆体の集合体は、紡糸気流に対して略直角となるように金網製の無端ベルトを設置し、無端ベルトを回転させつつ、これにアルミナ短繊維前駆体を含む紡糸気流を衝突させる構造の集積装置により連続シート(薄層シート)として回収することができる。
上記の集積装置より回収された薄層シートは、連続的に引出して折畳み装置に送り、所定の幅に折り畳んで積み重ねつつ、折り畳み方向に対して直角方向に連続的に移動させることにより積層シートにすることが出来る。これにより、薄層シートの内側に配置されるため、積層シートの目付量がシート全体に亘って均一となる。上記の折畳み装置としては、特開2000−80547号公報に記載のものを使用することができる。
<ニードリング工程>
アルミナ短繊維前駆体の集合体(積層シート)にニードリングを施すことにより、厚さ方向にも配向された機械的強度の大きいアルミナ繊維集合体とすることができる。ニードリングの打数は通常1〜50打/cmであり、一般に打数が多いほど得られるアルミナ繊維集合体の嵩密度と剥離強度が大きくなる。
<焼成工程>
焼成は、通常500℃以上、好ましくは700〜1400℃の温度で行う。焼成温度が500℃未満の場合は結晶化が不十分なため強度の小さい脆弱なアルミナ繊維しか得られず、焼成温度が1400℃を越える場合は繊維の結晶の粒成長が進行して強度の小さい脆弱なアルミナ繊維しか得られない。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の諸例において、アルミナ短繊維の繊維径分布の測定は次に示す手順で行った。
<繊維径分布の測定方法>
(1)アルミナ繊維マットからピンセットにより耳掻き1杯程度の量の繊維を摘み取る。
(2)走査型電子顕微鏡(SEM)観察用試料台に貼ったカーボン製の導電テープの上に上記(1)で摘み取った繊維をなるべく重ならないように載せる。
(3)上記(2)の繊維表面に導電性を持たすべく、試料表面に白金―パラジウム膜を1〜3nmの厚さで蒸着する。
(4)蒸着した分析試料をSEMの測定室に入れ、繊維径を計測するのに適当な倍率で観察し、観察像を写真撮影する。装置としては、日本電子社製の走査型電子顕微鏡 「JSM―6320F」を使用し、観察条件は、加速電圧15KV、ワークディスタンス(WD)15mmを採用した。また、倍率1000〜3000の範囲から適宜選択した。
(5)上記(4)で撮影したSEM写真からノギスまたは直定規で0.1mm単位まで測りとる。そして、無作為に合計100本の繊維径と繊維長を測定する。
(6)次式により繊維径を計算する。この際、計算値は、小数点以下2桁を四捨五入して、小数点以下1桁に丸める。
(7)統計学的に、ある変数の対数をとったものが正規分布するとき、もとの変数は対数正規分布に従うという。通常、上記の繊維径は対数正規分布に従う。
(8)繊維径を対数変換して得られた対数正規分布を標準正規分布化し、正規分布表よりlnxがln3未満である割合およびln10以上である割合を読みとる。
(9)長さ加重幾何平均径はこの式で定義される。
一方、European Chemicals Bureau (ECB)のTesting Methodsには、ECB/TM/1(00) rev.2のDRAFT-4に鉱物繊維の長さ加重幾何平均径については次の式に近似されることが記載されており、本願発明においては、次式により長さ加重幾何平均径を算出する。
(10)更に、ECB/TM/1(00) rev.2のDRAFT-4の記載に沿って、次式(a)〜(d)より「長さ加重幾何平均径−2×標準誤差」を算出する。
(11)面圧測定、通気速度:
シート状の繊維集合体より50mm角で打ち抜いたサンプルにつき、隙間充填時嵩密度(GBD)が0.35g/cm時の面圧をオートグラフにより測定した。次ぎに同じ繊維集合体より長辺150mm、短辺74mmの長方形で打ち抜いたサンプルにつき、GBDが0.35g/cmとなるよう厚み方向に圧縮した状態でシートの平面短辺方向に圧縮空気を流し、差圧が20kPa時の流量を測定した。これを厚みと長辺の積で得られる断面積で除して流速を得た。
実施例1:
<紡糸液の調製>
先ず、アルミニウム濃度が75g/Lの塩基性塩化アルミニウム;Al(OH)3-xClx(x=0.51)の水溶液1.0L当たり20重量%シリカゾル溶液276g、5重量%ポリビニルアルコール(重合度1700)水溶液315gを添加して混合した後、50℃で減圧濃縮し、紡糸液を得た。紡糸液の濃度は40ポイズ(25℃における回転粘度計による測定値)、アルミニウムと珪素の比(Al23とSiO2の重量比)は72.0:28.0、塩基性塩化アルミニウムの濃度は155g/L、有機重合体の濃度は32.6g/Lであった。
<紡糸>
上記の紡糸液をブローイング法で紡糸した。紡糸ノズルとしては、欧州特許第495466号公報(日本特許第2602460号公報)図6に記載されたものと同様の構造の紡糸ノズルを使用した。そして、紡糸は、紡糸液を三連ダイヤフラム型のポンプによりアキュムレーター経由で供給する際、紡糸ノズル直前にステンレス製ウール状材を充填し背圧を均一化することによって紡糸液供給ノズルの直径0.3mm、紡糸液供給ノズル1本当たりの液量5±0.075ml/h、空気流速(エアーノズルのスリット部):54±3m/s(圧力:2kg/cm、温度:18℃、相対湿度40%)の条件下で行った。また、集綿に際しては、高速気流に並行流で乾燥した150℃の温風(温度30℃、相対湿度40%の大気を加温)をスクリーンに導入することにより、繊維捕集器付近の空気流を温度35℃、相対湿度30%に調整した。そして、紡糸気流に対して略直角となる様に金網製の無端ベルトを設置し、無端ベルトを回転させつつ、これにアルミナ短繊維前駆体を含む紡糸気流を含む紡糸気流を衝突させる構造の集積装置により連続シート(薄層シート)として回収した。
集積装置より回収された薄層シートは、連続的に引出して折畳み装置に送り、所定の幅に折り畳んで積み重ねつつ、折り畳み方向に対して直角方向に連続的に移動させることにより積層シートにした。上記の折畳み装置としては、特開2000―80547号公報に記載されたものと同様の構造の折畳み装置を使用した。
<アルミナ繊維集合体の製造>
上記の積層シート(アルミナ短繊維前駆体の集合体)にニードリングを施した後、1250℃で1時間空気中で焼成し、アルミナ繊維集合体を得た。上記のニードリングはニードルパンチング機械により8回/cmパンチングして行った。得られたアルミナ繊維集合体の長さ加重幾何平均繊維直径は5.1μm、3μm未満の繊維の割合(存在確率)は0.02%であった。また、主要特性を表−1、表−2に示す。
実施例2:
<紡糸液の調製>
先ず、アルミニウム濃度が75g/Lの塩基性塩化アルミニウム;Al(OH)3-xClx(x=0.51)の水溶液1.0L当たり20重量%シリカゾル溶液276g、5重量%ポリビニルアルコール(重合度1500)水溶液315gを添加して混合した後、50℃で減圧濃縮し、紡糸液を得た。紡糸液の濃度は35ポイズ(25℃における回転粘度計による測定値)、アルミニウムと珪素の比(Al23とSiO2の重量比)は72.0:28.0、塩基性塩化アルミニウムの濃度は155g/L、有機重合体の濃度は32.6g/Lであった。
<紡糸およびアルミナ繊維集合体の製造>
実施例1と同じ紡糸ノズルを使用した。そして、紡糸は、実施例1と同様にして、紡糸液供給ノズルの直径0.3mm、紡糸液供給ノズル1本当たりの液量5±0.10ml/h、空気流速(エアーノズルのスリット部):46±5m/s(圧力:2kg/cm、温度:18℃、相対湿度40%)の条件下で行った。また、集綿に際しては、高速気流に並行流で乾燥した165℃の温風(温度30℃、相対湿度40%の大気を加温)をスクリーンに導入することにより、繊維捕集器付近の空気流を温度38℃、相対湿度28%に調整した。そして、実施例1と同じ集綿装置、集積装置により連続シート(薄層シート)として回収した。得られたアルミナ繊維集合体の長さ加重幾何平均繊維直径は5.8μm、3μm未満の繊維の割合(存在確率)は1.59%であった。また、主要特性を表−1、表−2に示す。
比較例1:
<紡糸液の調製>
先ず、アルミニウム濃度が75g/Lの塩基性塩化アルミニウム;Al(OH)3-xClx(x=0.51)の水溶液1.0L当たり20重量%シリカゾル溶液276g、5重量%ポリビニルアルコール(重合度1700)水溶液315gを添加して混合した後、50℃で減圧濃縮し、紡糸液を得た。紡糸液の濃度は40ポイズ(25℃における回転粘度計による測定値)、アルミニウムと珪素の比(Al23とSiO2の重量比)は72.0:28.0、塩基性塩化アルミニウムの濃度は155g/L、有機重合体の濃度は32.6g/Lであった。
<紡糸およびアルミナ繊維集合体の製造>
実施例1と同じ紡糸ノズルを使用した。そして、紡糸は、液流路中にステンレス製ウール状材がなく、ガス流路中に邪魔板がないこと以外は実施例1と同様にして、紡糸液供給ノズルの直径0.3mm、紡糸液供給ノズル1本当たりの液量5±0.35ml/h、空気流速(エアーノズルのスリット部):54±8.5m/s(圧力:2kg/cm、温度:18℃、相対湿度40%)の条件で行った。また、集綿に際しては、高速空気流に並行流で乾燥した150℃の温風(温度30℃、相対湿度40%の大気を加温)をスクリーンに導入することにより、繊維捕集器付近の空気流を温度35℃、相対湿度30%に調節した。そして、実施例1と同じ集綿装置、集積装置により連続シート(薄層シート)として回収した。得られたアルミナ繊維集合体の長さ加重幾何平均繊維直径は5.1μm、3μm未満の繊維の割合(存在確率)は2.13%であった。主要特性を表−1、表−2に示す。本比較例の特性自体は前記実施例1とほぼ同等であったが、3μm未満の繊維の割合が多く製品として好ましくない。
比較例2:
<紡糸液の調製>
アルミニウム濃度が165g/Lの塩基性塩化アルミニウム;Al(OH)3-xClx(x=0.51)の水溶液1.0L当たり20重量%シリカゾル溶液606g、5重量%ポリビニルアルコール(重合度1700)水溶液608gを添加して混合した後、50℃で減圧濃縮し、紡糸液を得た。紡糸液の濃度は60ポイズ(25℃における回転粘度計による測定値)、アルミニウムと珪素の比(Al23とSiO2の重量比)は72.0:28.0、塩基性塩化アルミニウムの濃度は190g/L、有機重合体の濃度は35.0g/Lであった。
<紡糸およびアルミナ繊維集合体の製造>
実施例1と同じ紡糸ノズルを使用した。そして、紡糸は、液流路中にステンレス製ウール状材がなく、ガス流路中に邪魔板がないこと以外は実施例1と同様にして、紡糸液供給ノズルの直径0.3mm、紡糸液供給ノズル1本当たりの液量5±0.35ml/h、空気流速(エアーノズルのスリット部):54±8.5m/s(圧力:2kg/cm、温度:18℃、相対湿度40%)の条件で行った。また、集綿に際しては、高速空気流に並行流で乾燥した150℃の温風(温度30℃、相対湿度40%の大気を加温)をスクリーンに導入することにより、繊維捕集器付近の空気流を温度40℃、相対湿度20%に調節した。そして、実施例1と同じ集綿装置、集積装置により連続シート(薄層シート)として回収した。得られたアルミナ繊維集合体の長さ加重幾何平均繊維直径は6.9μm、3μm未満繊維の割合(存在確率)0.00%であった。主要特性を表−1、表−2に示す。
以上、現時点において、最も実践的であり、且つ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読みとれる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う場合も本発明の技術的範囲であると理解されなければならない。

Claims (8)

  1. アルミナ短繊維からなるアルミナ繊維集合体であって、該アルミナ短繊維の繊維径をx(μm)としたとき、xの対数正規分布における自然対数値lnxがln3未満である割合が2%以下であり、且つ、該繊維径の長さ加重幾何平均径からその標準誤差の2倍値を引いた値が6μm以下であることを特徴とするアルミナ繊維集合体。
  2. 請求項1に記載のアルミナ繊維集合体において、前記アルミナ短繊維の繊維径xの対数正規分布における自然対数値lnxがln3未満である割合が1%以下であるアルミナ繊維集合体。
  3. 請求項1又は2に記載のアルミナ繊維集合体において、繊維径が10μm以上のアルミナ短繊維の割合が4%以下であるアルミナ繊維集合体。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載のアルミナ繊維集合体において、前記アルミナ短繊維の長さ加重幾何平均径とその標準誤差の2倍値の和が6.5μm以下であるアルミナ繊維集合体。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載のアルミナ繊維集合体において、該アルミナ短繊維の繊維径の長さ加重幾何平均径とその標準誤差の2倍値の差が5.5μm以下であるアルミナ繊維集合体。
  6. 請求項1〜5の何れかに記載のアルミナ繊維集合体において、長さ加重幾何平均径が4.0〜5.5μmであるアルミナ繊維集合体。
  7. 請求項1〜6の何れかに記載のアルミナ繊維集合体において、前記アルミナ短繊維が前駆体繊維化法により得られたものであるアルミナ繊維集合体。
  8. 請求項1〜7の何れかのアルミナ繊維集合体からなる触媒コンバータ用把持材。
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