JP2004095092A - 多層相変化型光情報記録媒体及びその記録再生方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光の入射により結晶状態と非晶質状態との相変化を起して情報を記録しうる記録層を有する情報層がN層(N:2以上の整数)設けられた光情報記録媒体において、それぞれの情報層を、光が入射される側からみて、第1情報層、第2情報層、…第N情報層としたとき、第N情報層以外の、少なくとも1層の情報層が、下部保護層、記録層、上部保護層、反射層、熱拡散層の順に積層された層構成を有し、該熱拡散層は、酸化亜鉛を主成分とすることを特徴とする多層相変化型光情報記録媒体。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザーなどの光により情報の記録、再生などが行なわれる多層相変化型光情報記録媒体とその記録再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
CD−RWなどの相変化型光ディスク(相変化型光情報記録媒体)は、一般的にプラスチックの基板の上に、相変化型材料からなる記録層を設け、その上に、記録層の光吸収率を向上させ、かつ熱拡散効果を有する反射層を形成したものを基本構成とするものであり、基板面側からレーザー光を入射して、情報の記録、再生を行なうものである。
相変化型材料は、レーザー光照射による加熱とその後の冷却によって、結晶状態と非晶質状態の間を相変化し、急速加熱後急冷すると非晶質となり、徐冷すると結晶化するものであり、相変化型光情報記録媒体は、この性質を情報の記録と再生に応用したものである。
また、光照射による加熱によって起る記録層の酸化、蒸散又は変形を阻止する目的で、通常、基板と記録層の間に下部保護層(下部誘電体層ともいう)、及び、記録層と反射層の間に上部保護層(上部誘電体層ともいう)が設けられている。更に、これらの保護層は、その厚さを調節することによって、記録媒体の光学特性の調節機能を有するものであり、下部保護層は、記録層への記録時の熱によって基板が軟化するのを防止する機能を併せ持つものである。
【0003】
近年、コンピューター等で扱う情報量が増加したことによって、DVD−RAM、DVD+RWのような、光ディスクの信号記録容量が増大し、信号情報の高密度化が進んでいる。現在のCDの記録容量は650MB程度で、またDVDは4.7GB程度であるが、今後、更に高記録密度化の要求が高まることが予想される。
このような相変化型光情報記録媒体を用いて高記録密度化するやり方として、例えば使用するレーザー波長を青色光領域まで短波長化すること、或いは記録再生を行なうピックアップに用いられる対物レンズの開口数NAを大きくして、光記録媒体に照射されるレーザー光のスポットサイズを小さくすることが提案されている。
情報記録媒体自体を改良して記録容量を高めるやり方として、基板の片面側に少なくとも記録層と反射層からなる情報層を2つ重ねて、これら情報層間を紫外線硬化樹脂等で接着して作成される2層相変化型光情報記録媒体が、例えば特許第2702905号公報、特開2000−215516号公報、特開2000−222777号公報、特開2001−243655号公報等で提案されている。
【0004】
この情報層間の接着部分である分離層(本発明においては中間層という)は、2つの情報層を光学的に分離する機能を有するもので、記録再生に用いるレーザー光がなるべく奥側の情報層に到達する必要があるため、その光をなるべく吸収しないような材料から構成されている。
これらの2層相変化型光情報記録媒体は、何れも第1情報層に特徴部を有するもので、単層相変化型光情報記録媒体の場合と同様に、第1保護層と第2保護層が設けられたものである。
この2層相変化型光情報記録媒体については、例えば「ODS2001 Technical Digest P22」にもあるように、学会などでも発表されているが、未だ多くの課題が存在している。
例えば、レーザー光照射側から見て手前側にある情報層(第1情報層)をレーザー光が十分に透過しなければ、奥側にある情報層(第2情報層)の記録層に情報を記録したりそれを再生したりできないので、第1情報層を構成する反射層をなくすか又は極薄にすること、或いは第1情報層を構成する記録層を極薄にすることが考えられる。
【0005】
相変化型光情報記録媒体による記録は、記録層の相変化型材料にレーザー光を照射させて急冷することによって、結晶を非晶質に変化させてマークを形成して行なわれるため、反射層をなくすか又は厚さ10nm程度と非常に薄くすると、熱拡散効果が小さくなるために、非晶質マークを形成することが困難になってしまう。
特に、CD−RWなどの相変化型光情報記録媒体において一般的に用いられている材料の1つであるSb−Te共晶系記録材料は、Ge−Sb−Te化合物系記録材料と比べて消去比が優れ、また高感度であるために、記録マークのアモルファス部の輪郭が明確であるという点で優れたものとして知られている。
しかしながら、Sb−Te共晶系記録材料は、Ge−Sb−Te化合物系記録材料に比べて材料の結晶化速度が速いので、非晶質化するには、より単時間で急冷しなければならず、即ち急冷構造をとることが必要な材料であり、反射層の薄い構造では、マーク形成が困難になる。
【0006】
比較的熱伝導率が大きく光吸収率の小さな窒化物や炭化物等を用いて、反射層が担っていた熱拡散機能を補助する層(熱拡散層という)を反射層の上に設けるやり方が、単層相変化型光情報記録媒体に関する特開平8−50739号公報など及び2層相変化型光情報記録媒体に関する特開2000−222777号公報などで提案されており、このやり方は第1情報層を構成する反射層を薄くした場合に発生する前記のような欠点を解消するのに有効な方法であると考えられる。しかしながら、これら窒化物や炭化物等の材料は応力が大きいために、形成された熱拡散層にクラックが生じ易く、その結果、熱拡散層を設けた光ディスクでは充分なオーバーライト特性が得らないという問題が発生している。
また、2層相変化ディスクを初期化する場合、1層の光ディスクに比べて初期化工程に2倍の時間がかかってしまい、著しく効率が低下してしまう。
この問題を解決するために、特開平9−91700号公報では、レーザー光源を複数用いて、複数の記録層を同時に初期化する方法と、その初期化装置が提案されている。しかし、複数の記録層を同波長の光源を用いて初期化する場合、手前側に位置する記録層は、初期化波長において、レーザー光をある程度透過しなければ奥側の記録層を初期化することはできない。そのような場合では、手前側の記録層をフォーカスするのが困難となり初期化後の反射率に面内ばらつきが生じたり、透過した光が奥側の記録層の結晶化状態に影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、情報層中の反射層が薄い場合でも、オーバーライト特性が優れ、かつ複数の記録層を確実に初期化できる多層相変化型光情報記録媒体及びその記録再生方法の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記のような多層相変化型光情報記録媒体とその記録再生方法を見出した。
即ち、上記課題は、次の1)〜15)の発明(以下、本発明1〜15という)によって解決される。
1) 光の入射により結晶状態と非晶質状態との相変化を起して情報を記録しうる記録層を有する情報層がN層(N:2以上の整数)設けられた光情報記録媒体において、それぞれの情報層を、光が入射される側からみて、第1情報層、第2情報層、…第N情報層としたとき、第N情報層以外の、少なくとも1層の情報層が、下部保護層、記録層、上部保護層、反射層、熱拡散層の順に積層された層構成を有し、該熱拡散層は、酸化亜鉛を主成分とすることを特徴とする多層相変化型光情報記録媒体。
2) 熱拡散層が、B、Al、Ga、Inのうちから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする1)記載の多層相変化型光情報記録媒体。
3) 熱拡散層が、A(=B、Al、Ga、Inのうちから選ばれる1種)を、原子比において、0.01≦A/(Zn+A)≦0.1の範囲で含有することを特徴とする2)記載の多層相変化型光情報記録媒体。
4) 熱拡散層が、更にX(=Cr又はV)を、原子比において、0.005≦X/(Zn+A+X)≦0.05、の範囲で含有することを特徴とする2)又は3)記載の多層相変化型光情報記録媒体。
5) 熱拡散層の厚さが20〜200nmであることを特徴とする1)〜4)の何れかに記載の多層相変化型光情報記録媒体。
6) 熱拡散層を有する情報層中の記録層が、SbとTeを主体とし、Ag、In、Ge、Se、Sn、Al、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Bi、Si、Dy、Pd、Pt、Au、S、B、C、Pのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする1)〜5)の何れかに記載の多層相変化型光情報記録媒体。
7) 熱拡散層を有する情報層中の記録層の厚さが、3〜15nmであることを特徴とする1)〜6)の何れかに記載の多層相変化型光情報記録媒体。
8) 熱拡散層を有する情報層中の反射層が、Au、Ag、Cu、W、Al、Taの少なくとも1種を主成分とする1)〜7)の何れかに記載の多層相変化型光情報記録媒体。
9) 熱拡散層を有する情報層中の反射層の厚さが、3〜20nmであることを特徴とする1)〜8)の何れかに記載の多層相変化型光情報記録媒体。
10) 第1基板と第2基板の間に2つの情報層が設けられ、かつ2つの情報層の間に中間層を設けてなる、情報の記録・再生が可能な2層相変化型光情報記録媒体であって、第1情報層は、第1下部保護層、第1記録層、第1上部保護層、第1反射層、第1熱拡散層を含み、第2情報層は、第2下部保護層、第2記録層、第2上部保護層、第2反射層を含み、記録・再生のための光が入射される側から、第1基板、第1下部保護層、第1記録層、第1上部保護層、第1反射層、第1熱拡散層、中間層、第2下部保護層、第2記録層、第2上部保護層、第2反射層、第2基板の順に積層されていることを特徴とする1)〜9)の何れかに記載の2層相変化型光情報記録媒体。
11) 第1情報層の光透過率が、波長350〜700nmの光に対して40〜70%であることを特徴とする10)記載の2層相変化型光情報記録媒体。
12) 第1基板と第1下部保護層との間に透明層を設けることを特徴とする10)又は11)記載の2層相変化型光情報記録媒体。
13) 第1上部保護層と第1反射層との間及び/又は第2上部保護層と第2反射層との間にバリア層を設けることを特徴とする10)〜12)の何れかに記載の2層相変化型光情報記録媒体。
14) 第1基板の厚さが、10〜600μmであることを特徴とする10)〜13)の何れかに記載の2層相変化型光情報記録媒体。
15) 1)〜14)の何れかに記載の多層相変化型光情報記録媒体の各情報層に対し、第1情報層側から波長350〜450nmの光ビームを入射させて情報の記録再生を行なうことを特徴とする多層相変化型光情報記録媒体の記録再生方法。
【0009】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明は、基板上にN層(N:2以上の整数)の情報層が設けられ、該情報層が光照射によって結晶状態と非晶質状態との間を相変化する材料からなる記録層を有し、かつ各情報層の間に中間層を設けてなる、情報の記録再生が可能な多層相変化型光情報記録媒体に係るものであって、記録再生用の光が入射される側からみて、最も奥側に形成された情報層以外の、少なくとも1つの情報層が、順に下部保護層、記録層、上部保護層、反射層及び熱拡散層で構成され、該熱拡散層が酸化亜鉛を主成分とすることを特徴とするものである。ここで、主成分とは、全体の50重量%以上を占めることを意味する。
下部保護層、相変化型記録材料からなる記録層、上部保護層及び反射層については、従来公知の技術が適用可能であるが、本発明の多層相変化型光情報記録媒体の特徴とするところは、熱拡散層に特定な材料を用いたことによって本発明の前記課題を解決した点にある。
【0010】
ここで、複数ある情報層のうち、光入射側からみて最も奥側に形成される情報層については、光を透過させる必要はなく、従って反射層を厚くできるので熱拡散層を設ける必要はない。また、もし最も奥側の情報層に熱拡散層を設ける場合には、熱拡散層を構成する材料として上記のような酸化亜鉛を主成分とする材料を用いる必要はない。
反射層の材料としては、従来からAg系材料が多層相変化型光情報記録媒体用の好ましい材料として知られている。これは、例えばISOM2001 Technical Digest P202に記載されているように、青色波長領域でも屈折率nが0.5以下と小さく光吸収を小さく抑えることができるためである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る多層相変化型光情報記録媒体について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る2層相変化型光情報記録媒体の概略断面図である。第1基板3の上に、第1情報層1、中間層4、第2情報層2、第2基板5を順次積層した構造からなるものである。
第1情報層1は、第1下部保護層11、第1記録層12、第1上部保護層13、第1反射層14、第1熱拡散層15からなり、第2情報層2は、第2下部保護層21、第2記録層22、第2上部保護層23、第2反射層24からなる。なお、本発明の第1情報層1及び第2情報層2は、上記層構成に何ら限定されるものではない。
また、図2に、本発明の他の実施形態に係る2層相変化型光情報記録媒体の概略断面図を示すが、図のように、第1上部保護層13と第1反射層14との間、及び/又は第2上部保護層23と第2反射層24との間に、第1バリア層16、第2バリア層25を設けても構わない。
また、第1基板3と第1下部保護層11との間に透明層6を設けてもよい。このような透明層6は、第1基板3に厚さの薄いシート状物を用い、製法が図1の光情報記録媒体とは相違するときに設けられる。
【0012】
第1基板3は、記録再生のために照射する光を透過する必要があり、当該技術分野において従来知られているものが用いられる。
その材料としては、通常ガラス、セラミックス、樹脂等が用いられるが、特に成形性やコストの点で樹脂が好適である。
樹脂としては、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられるが、成形性、光学特性、コストの点で優れたポリカーボネート樹脂やポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル系樹脂が好ましい。
第1基板3の膜を形成する面には、必要に応じて、レーザー光のトラッキング用のスパイラル状又は同心円状の溝などであって、通常グルーブ部及びランド部と称される凹凸パターンが形成されていてもよく、このような溝は通常射出成形法又はフォトポリマー法などによって形成される。
また、第1基板3の厚さは、10〜600μm程度が好ましい。
第2基板5の材料としては、第1基板3と同様の材料を用いても良いが、記録再生光に対して不透明な材料を用いても良く、第1基板3とは、材質や溝形状が異なっても良い。第2基板5の厚さは、特に限定されないが、第1基板の厚さとの合計が1.2mmになるような厚さを選択することが好ましい。
【0013】
中間層4、透明層6は、記録再生のために照射する光の波長における光吸収が小さいことが好ましく、材料としては、成形性、コストの点で樹脂が好適であり、紫外線硬化性樹脂、遅効性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。
第2基板5、中間層4には、第1基板3と同様に、射出成形又はフォトポリマー法などによって、グルーブ、案内溝などの凹凸パターンが形成されてもよい。中間層4は、記録再生を行なう際に、ピックアップが第1情報層と第2情報層とを識別し光学的に分離できるようにするための層であり、その厚さは10〜50μmが好ましい。10μmより薄いと、層間クロストークが生じ、また50μmより厚いと、第2記録層を記録再生する際に球面収差が発生し、記録再生が困難になる傾向がある。また、透明層6の厚さは特に限定されないが、図1のような透明層6を設けない製法により作成した光情報記録媒体の最適な第1基板3の厚さと、製法の異なる図2のような光情報記録媒体の基板3と透明層6の厚さの合計が、同程度となるように、第1基板3と透明層6との厚さを調整する必要がある。
例えば、NA=0.85の場合であって、図1の光情報記録媒体の第1基板3の厚さが100μmのときに良好な記録・消去性能が得られたとすると、図2の光情報記録媒体の第1基板3の厚さが50μmならば、透明層の厚さを50μmとすることが好ましい。
【0014】
第1記録層12と第2記録層22の材料としては、光照射による加熱と冷却によって、結晶と非晶質の間を相変化する材料であれば特に限定されず、当該技術分野において従来知られているものが適用される。
例えば、Ge−Te系、Ge−Te−Sb系、Ge−Sn−Te系などのカルコゲン系合金、及びSb−Te共晶系材料を挙げることができるが、記録(非晶質化)感度・速度、及び消去比の点で、Sb−Te共晶系材料が特に好ましい。これらの記録層材料には更なる性能向上、信頼性向上などを目的として、Ag、In、Ge、Se、Sn、Al、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Bi、Si、Dy、Pd、Pt、Au、S、B、C、Pなどの他の元素や不純物を添加することができる。
これらの記録層は、各種気相成長法、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などによって形成できるが、中でもスパッタリング法が、量産性、膜質等に優れている。スパッタリング法は、一般にアルゴンなどの不活性ガスを流しながら成膜を行なうが、その際、酸素、窒素などを混入させながら、反応スパッタリングさせてもよい。
第1記録層12の厚さは、特に限定されないが、3〜15nmであることが好ましい。3nm未満では、均一な膜にするのが困難となる傾向があり、15nmより厚くなると、光透過率が低下してしまう傾向があるので好ましくない。
第2記録層22の厚さも、特に限定されないが、3〜20nmであることが好ましい。3nm未満では、均一な膜にするのが困難となる傾向があり、20nmより厚くなると、記録感度が低下してしまう傾向があるので好ましくない。
【0015】
第1反射層14、第2反射層24は、入射光を効率良く使い、冷却速度を向上させて非晶質化し易くするなどの機能を有するものであり、そのために通常熱伝導率の高い金属が用いられ、例えば、Au、Ag、Cu、W、Al、Taなど、又はそれらの合金などを用いることができる。また、添加元素としては、Cr、Ti、Si、Pd、Ta、Nd、Znなどが使用される。
中でもAg系材料は、青色波長領域でも屈折率が小さく、nが0.5以下で、光吸収を小さく抑えることができるので、本発明のような多層光情報記録媒体の反射層、特に第1情報層の反射層に用いる材料として好ましいものである。
反射層の製法は、前記記録層の場合と同様である。
第1情報層1は高い光透過率が必要とされるため、第1反射層14は、屈折率が低く、熱伝導率の高いAg又はその合金を用いることが好ましく、また、厚さは、3〜20nm程度であることが好ましい。3nm未満にすると、厚さが均一で緻密な膜を作ることが困難になる。20nmより厚いと、光透過率が減少し、第2情報層2の記録再生が困難になる。
また、第2情報層2を構成する第2反射層24は、厚さ50〜200nm、好適には80〜150nmとするのがよい。50nm未満になると繰り返し記録特性が低下し、200nmより厚くなると感度の低下を生じる傾向があるので、好ましくない。
【0016】
第1下部保護層11と第2下部保護層21及び第1上部保護層13と第2上部保護層23の機能と材質は、単層相変化型光情報記録媒体の場合と同様であり、第1記録層12と第2記録層22の劣化変質を防ぎ、接着強度を高め、かつ記録特性を高めるなどの作用を有するものである。
その材料としては、SiO、SiO2、ZnO、SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgO、ZrO2などの金属酸化物;Si3N4、AlN、TiN、ZrNなどの窒化物;ZnS、In2S3、TaS4などの硫化物;SiC、TaC、B4C、WC、TiC、ZrCなどの炭化物;ダイヤモンドライクカーボン;或いは、それらの混合物が挙げられる。
これらの材料は、単体で保護層とすることもできるが、互いの混合物としてもよい。また、必要に応じて不純物を含んでもよい。
保護層の融点は記録層よりも高いことが必要である。具体的には、ZnSとSiO2との混合物が最も好ましいと考えられている。
保護層の製法は、前記記録層の場合と同様である。
【0017】
第1下部保護層11と第2下部保護層21の厚さは、それぞれ60〜200nmであることが好ましい。60nm未満であると、記録時の熱によって、第1基板又は中間層が変形してしまう恐れがある。200nmより厚いと、量産性に問題が生じてくる傾向がある。これらの範囲で、最適な反射率になるように、膜厚の設計を行なう。
また、第1上部保護層13と第2上部保護層23の膜厚は、それぞれ3〜40nmであることが好ましい。3nm未満になると記録感度が低下し、40nmより厚くなると放熱効果が得られなくなる傾向がある。
【0018】
本発明の多層相変化型光情報記録媒体は、上部保護層と反射層との間にバリア層16、25を設けていても構わない。前述のように、反射層としては、Ag合金、保護層としては、ZnSとSiO2との混合物が最も好ましいが、この2層が隣接した場合、保護層中の硫黄が反射層のAgを腐食させる可能性があり、保存信頼性が低下する恐れがある。この不具合を無くすために、反射層にAg系を用いた場合には、バリア層を設けるのが好ましい。バリア層は、硫黄を含まず、かつ融点を記録層よりも高くする必要があり、具体的にはSiO、ZnO、SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgO、ZrO2などの酸化物;Si3N4、AlN、TiN、ZrNなどの窒化物;ZnS、In2S3、TaS4などの硫化物;SiC、TaC、B4C、WC、TiC、ZrCなどの炭化物;或いは、それらの混合物が挙げられる。
これらのバリア層は、レーザー波長での吸収率が小さいことが望まれる。
バリア層の製法は、前記記録層の場合と同様である。
バリア層の膜厚は、2〜10nmであることが好ましい。2nm未満になると、Agの腐食を防止する効果が得られなくなり、保存信頼性が低下する。10nmより厚くなると、放熱効果が得られなくなる傾向がある。
【0019】
第1熱拡散層15としては、レーザー照射された記録層を急冷させるために、熱伝導率が大きいことが望まれる。また、奥側の情報層を記録再生できるように、レーザー波長での吸収率が小さいことも望まれる。
熱拡散層は本発明の特徴部であり、酸化亜鉛を主成分とする材料を用いることによって上記の機能を発揮し、オーバーライト特性を向上させることができる。また、酸化亜鉛にB、Al、Ga、Inのうちから選ばれる少なくとも1種の元素を添加することにより、熱伝導性、光透過性を向上させることができ、更に、その添加量を調整することによって、良好に初期化を行なうことができる。
B、Al、Ga、InをAとした場合、Aは、原子比において0.01≦A/(Zn+A)≦0.1の範囲で含まれていることが好ましい。これよりも少ないと熱伝導率や成膜速度が低下してしまい、多いと光透過率が低下してしまう。
【0020】
また、更なる特性の向上、信頼性の向上などを目的として、Cr又はVを添加することができる。これらの添加元素をXとすると、Xは、0.005≦X/(Zn+A+X)≦0.05の範囲で含まれているのが好ましい。これより少ないと効果が得られなくなる傾向にあるし、多いと消衰係数が大きくなり、光透過率が減少してしまう。
消衰係数は、情報の記録再生に用いるレーザー光の波長において、1.0以下であることが好ましく、更に0.5以下であることがより好ましい。1.0より大きいと第1情報層での吸収率が増大し、第2情報層の記録再生が困難になる。
熱拡散層の製法は、前記記録層の場合と同様である。
第1熱拡散層15の膜厚は、20〜200nmが好ましい。20nmより薄いと放熱効果が得られなくなる。200nmより厚いと、応力が大きくなり、繰り返し記録特性が低下するばかりでなく、量産性にも問題が生じる。
【0021】
図3は、酸化亜鉛に対するAlのドープ量を変化させて成膜した、厚さ200nmの膜の光透過率の波長依存性を示す図である。図3から、ドープ量が多くなるに従って長波長側の光透過率が減少することが分る。このことを利用して、第1情報層を初期化する際に、従来から初期化で多く用いられている810nmの波長のレーザーよりも長波長のレーザーを用いれば、第2情報層への透過が殆ど無いので低パワーでムラなく初期化を行なうことが出来る。そして第2情報層の初期化には、従来の810nmのレーザーを用いれば、第1情報層で吸収される量が少ないので、低パワーで良好に初期化を行なうことが出来る。
また、本発明の2層相変化型光情報記録媒体の第1情報層1は、記録・再生に用いるレーザー光波長(例えば350〜700nm)での光透過率が40〜70%であることが好ましく、更には45〜60%であることが好ましい。
初期化後に記録を行なった2層相変化型光情報記録媒体では、記録層がアモルファス状態である面積が結晶状態である面積よりも小さいので、アモルファスでの光透過率は結晶状態での光透過率より小さくても構わない。
【0022】
以下、本発明の多層相変化型光情報記録媒体の製造方法について説明する。
本発明に係る2層相変化型光情報記録媒体の製造方法の一つは、成膜工程、初期化工程、貼り合わせ工程からなり、基本的にはこの順に各工程を行なう。図4に示すのが、この方法により製造した2層相変化型光情報記録媒体の概略断面図であり、第1基板3、第2基板5にグルーブが形成されている。
成膜工程としては、第1基板3のグルーブが設けられた面に第1情報層1を形成したものと、第2基板5のグルーブが設けられた面に第2情報層2を形成したものを別途作成する。
第1情報層1、第2情報層2のそれぞれを構成する各層の成膜方法は、記録層のところで述べた通りである。
【0023】
初期化工程は、第1情報層1、第2情報層2に対して、レーザー光などのエネルギー光を全面に照射することにより、初期化即ち記録層の結晶化を行う。
初期化工程の際にレーザー光エネルギーにより膜が浮いてきてしまう恐れがある場合には、初期化工程の前に、第1情報層及び第2情報層の上にUV樹脂などをスピンコートし紫外線を照射して硬化させ、オーバーコートを施しても良い。次に、以上のようにして初期化された、第1基板3の面上に第1情報層1を形成したものと、第2基板5の面上に第2情報層2を形成したものとを、第1情報層1と第2情報層2とを向かい合わせながら、中間層4を介して貼り合わせる。例えば、何れか一方の膜面に中間層となる紫外線硬化性樹脂をスピンコートし、膜面同士を向かい合わせて両基板を加圧、密着させた上で、紫外線を照射して樹脂を硬化させることができる。
なお、上記貼り合わせ工程を行なった後に、第1基板側から、第1情報層、第2情報層を初期化しても構わない。
【0024】
次に、図2に示すような本発明に係る2層相変化型光情報記録媒体を製造するための他の方法について説明する。この方法は、第一成膜工程、中間層形成工程、第二成膜工程、基板貼り合わせ工程、及び初期化工程からなり、基本的にこの順に各工程を行う。
図5に示すのが、この方法により製造した2層相変化型光情報記録媒体の概略断面図であり、中間層4、第2基板5にグルーブが形成されている。
第一成膜工程として、第2基板5上の案内溝の設けられた面に第2情報層2を成膜する。成膜方法は、前述の通りである。
中間層形成工程として、第2情報層2上に案内溝を有する中間層4を形成する。例えば、第2情報層2上の全面に紫外線硬化性樹脂を塗布し、紫外線を透過することのできる材料で作られたスタンパを押し当てたまま紫外線を照射して硬化させれば、溝を形成することができる。
第二成膜工程として、中間層4上に第1情報層1を成膜する。成膜方法は前述の通りである。
【0025】
基板貼り合わせ工程として、第1情報層1と第1基板3を、透明層6を介して貼り合わせる。例えば、第1情報層1上、又は第1基板3上に、透明層6の材料である紫外線硬化性樹脂をスピンコートし、第1情報層1と第1基板3とを貼り合わせてから紫外線を照射し硬化させて形成することができる。また、透明層6を形成せずに、第1基板3の材料である樹脂を第1情報層1上に塗布し硬化させることによって、第1基板3を形成してもよい。
初期化工程として、透明層6側から、第1情報層1及び第2情報層2に対して、レーザー光などのエネルギー光を全面に照射することにより、初期化即ち記録層の結晶化を行う。第2情報層2に対しては、中間層4の形成工程直後に初期化を行なっても何ら問題はない。
【0026】
次に、図6に示されるような、3つの情報層を有する相変化型光情報記録媒体の製造は、次のような工程順で行なわれる。
第一成膜工程(第1基板に第1情報層、第2基板に第3情報層を成膜)→中間層形成工程(第2基板の第3情報層の上に第2中間層を形成する)→第二成膜工程(第2基板の中間層の上に第2情報層を成膜)→密着工程(第1基板と第2基板を第1情報層と第2情報層を向かい合わせながら、第1中間層を介して貼り合わせる)→初期化工程。
なお初期化工程は、各情報層を成膜した直後でもよい。
次に、図7に示されるような、3つの情報層を有する相変化型光情報記録媒体の製造は、次のような工程順で行なわれる。
第一成膜工程(第3情報層を成膜)→第一中間層形成工程(第2中間層を形成)→第二成膜工程(第2情報層を成膜)→第二中間層形成工程(第1中間層を形成)→第三成膜工程(第1情報層を成膜)→第1基板貼り合わせ工程(透明層を介して貼り合わせる)→初期化工程
なお、初期化工程は、第3情報層については第一成膜工程後又は第2中間層形成直後、第2情報層については第二成膜工程後又は第1中間層形成直後、第1情報層については第三成膜工程後でもよい。
【0027】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0028】
実施例1
予備実験として、ガラス基板上に熱拡散層に用いられる酸化亜鉛のターゲットを、Balzers社製枚葉スパッタ装置を用いてスパッタし、厚さ200nm程度の膜を設けた。その際、ArとO2の混合ガスをスパッタガスとして、Arガス流量を一定にしたままO2ガス流量を変えながらスパッタを行ない、薄膜の電気抵抗率が最も低くなるO2ガス流量を求めた。電気抵抗率の測定は四端子法を用いた。
直径12cm、厚さ0.6mmで表面に連続溝によるトラッキングガイド用の凹凸を持つポリカーボネート樹脂からなる第1基板上に、ZnS・SiO2からなる厚さ120nmの第1下部保護層、Ge4Ag1In3Sb70Te22からなる厚さ6nmの第1記録層、ZnS・SiO2からなる厚さ15nmの第1上部保護層、Ag−Pd−Cuからなる厚さ10nmの第1反射層、表1に示す各材料からなる厚さ120nmの第1熱拡散層の順にArガス雰囲気中のスパッタ法により製膜した。酸化亜鉛を用いた熱拡散層に関しては、予備実験で求めた流量のArとO2の混合ガスを用いた。
また、第1基板と同様の基板を第2基板として、その上にAl−Tiからなる厚さ120nmの第2反射層、ZnS・SiO2からなる厚さ20nmの第2上部保護層、Ge4Ag1In3Sb70Te22からなる厚さ12nmの第2記録層、ZnS・SiO2からなる厚さ130nmの第2下部保護層の順にArガス雰囲気中のスパッタ法により製膜した。ここで、第1情報層の波長405nmでの光透過率を、SHIMADZU製分光光度計を用いて第1基板側から測定した。
次に、第1情報層、第2情報層に対して、それぞれ第1基板側、第2情報層膜面側からレーザー光を照射させ、初期化処理を行なった。ここでまた、第1情報層の波長405nmでの光透過率を測定した。
次に、第1情報層の膜面上に紫外線硬化樹脂を塗布し、その上に第2基板を第2情報層面側を下にして乗せ、スピンコートして貼り合わせた後、第1基板側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させることにより中間層を形成し、2つの情報層を有するサンプル1−1〜1−4の2層相変化型光ディスクを作成した。中間層の厚さは30μmとした。なお、サンプル1−1は実施例、サンプル1−2〜1−4は比較例である。
【0029】
作成された各ディスクについて次の条件で記録した。
レーザー波長:405nm
NA:0.65
線速:6.0m/s
トラックピッチ:0.40μm
線密度0.18μm/bitでの第1情報層、第2情報層のジッター、及び、1000回オーバーライト後の第1情報層、第2情報層のジッターを測定した。
各サンプルの測定結果を表1に示す。
本発明に係る2層相変化型光ディスクであるサンプル1−1は、熱拡散層に酸化亜鉛を用いており、光透過率は40%を越え、1回記録後のジッター値は第1情報層、第2情報層共に9%以下となり、光ディスクとして優れていることが分った。サンプル1−2は、熱拡散層に窒化アルミニウムを用いているが、120nmの厚さで成膜したところ、目に見えるクラックが多発してしまい、記録再生を行なうことができなかった。サンプル1−3、1−4は、熱拡散層にそれぞれ炭化珪素、酸化チタンを用いたが、第1情報層の光透過率が40%以下となり、第2情報層の感度が悪く、ジッター値も大きく、1000回書き換えすることはできなかった。以上の結果から、第1情報層の熱拡散層の材料として酸化亜鉛が好ましいことが確認された。
【0030】
【表1】
【0031】
実施例2
本実施例に用いた熱拡散層のターゲットは、酸化亜鉛を主体とし、表2の「ドープ元素A」欄に示す元素が「A/(Zn+A)」欄に示す原子比で添加されている。これらのターゲットを熱拡散層に用いた点以外は、実施例1と同様にして、サンプル2−1〜2−9の2層相変化型光ディスクを作成した。
作成された各サンプルに対して実施例1と同条件で記録を行い、第1情報層、第2情報層のジッター、及び1000回オーバーライト後の第1情報層、第2情報層のジッターを測定した。
サンプル1−1と比較すると、B、Al、Ga、Inを、0.01〜0.1の範囲の原子比で添加することによって、1000回書き換え後のジッターが低下し、オーバーライト特性が向上することが分った。サンプル2−8は、Alの添加量が0.005であり、Alが含まれていないサンプル1−1とジッター値も同程度であり、Al添加による効果は見られなかった。反対に、サンプル2−9は、Alの添加量は0.2であり、光透過率も低下し、第1情報層のオーバーライト特性も低下した。しかし、比較例であるサンプル1−2〜1−4と比べると透過率は大きく、1000回繰り返し記録後のジッター値も大きいながらも測定可能であったから、熱拡散層に酸化亜鉛を主成分とする材料を用いたことによる本発明の効果は得られていると考えられる。
以上の結果から、ドープ元素Aの割合は0.01≦A/(Zn+A)≦0.1の範囲が好ましいことが分る。
また、その他の試作実験からも、第1情報層の記録層の膜厚が3〜15nm、反射層の膜厚が3〜20nm、熱拡散層の膜厚が20〜200nmの範囲であると、第1情報層、第2情報層ともに良好な記録再生ができ、また、第2情報層を良好に記録再生するためには、第1情報層の光透過率が40%以上必要であることが確認された。
【0032】
【表2】
【0033】
実施例3
本実施例に用いた熱拡散層のターゲットは、酸化亜鉛を主体とし、Al及び、Cr又はVが含まれており、Alは、原子比においてAl/(Zn+Al+X)=0.05(X:Cr、V)の割合で含まれている。Cr又はVの含有量(原子比)は、表3の「X/(Zn+Al+X)」欄に示す通りである。
これらのターゲットを熱拡散層に用いた点以外は、実施例1と同様にしてサンプル3−1〜3−6の2層相変化型光ディスクを作成した。
作成された各サンプルに対して実施例1と同条件で記録を行い、第1情報層、第2情報層のジッターを測定した。更に保存信頼性を調べるため、初期記録した各サンプルを80℃85%RHで300時間保存した後、初期記録マークの3T再生信号のジッターを測定した。
各サンプルの測定結果を表3に示す。Cr又はVを0.005〜0.05の範囲の原子比で添加したサンプル3−1〜3−4、及びVを0.1添加したサンプル3−5は、無添加のサンプル3−6に比べて、第1情報層の保存後のジッター値が小さく、光ディスクとして優れていることが分った。しかし、サンプル3−5は、光透過率が低下し、第2情報層のジッター値が増大している。以上の結果から、ドープ元素Xの割合は、0.005≦X/(Zn+A+X)≦0.05の範囲が好ましいことが分る。
【0034】
【表3】
【0035】
実施例4
第1反射層にAgを用い、第1上部保護層と第1反射層との間に第1バリア層として膜厚3nmのSiCを設けた点以外は、実施例2のサンプル2−2と同様にして、実施例であるサンプル4−1の2層相変化型光ディスクを作成した。
また、バリア層を設けない点以外は、サンプル4−1と同様にして、比較例であるサンプル4−2を作成した。
作成された各サンプルに対して実施例1と同条件で記録を行い、第1情報層、第2情報層のジッターを測定した。更に保存信頼性を調べるため、初期記録した各サンプルを80℃85%RHで300時間保存した後、初期記録マークの3T再生信号のジッターを測定した。結果は表4に示すとおりであり、第1反射層にAgを用いた場合、バリア層を設けたサンプルは、保存後のジッターも良好で、光ディスクとして優れていることが分った。
【0036】
【表4】
【0037】
実施例5
直径12cm、厚さ1.1mmで表面に連続溝によるトラッキングガイド用の凹凸を持つポリカーボネート樹脂からなる第2基板上に、Al−Tiからなる厚さ120nmの第2反射層、ZnS・SiO2からなる厚さ20nmの第2上部保護層、Ge4Ag1In3Sb70Te22からなる厚さ12nmの第2記録層、ZnS・SiO2からなる厚さ130nmの第2下部保護層の順にArガス雰囲気中のスパッタ法により製膜し、第2情報層を形成した。
この第2情報層上に、樹脂を塗布し、2P(photo polymerization)法によって、連続溝によるトラッキングガイド用の凹凸を持つ中間層を形成した。中間層の厚さは30μmとした。
更にその上に、サンプル2−2と同様のターゲットを用いて厚さ120nmの第1熱拡散層を設け、Ag−Pd−Cuからなる厚さ10nmの第1反射層、ZnS・SiO2からなる厚さ15nmの第1上部保護層、Ge4Ag1In3Sb70Te22からなる厚さ6nmの第1記録層、ZnS・SiO2からなる厚さ120nmの第1下部保護層の順にArガス雰囲気中のスパッタ法で製膜し、第1情報層を形成した。熱拡散層に関しては、ArとO2の混合ガスをスパッタガスとし、電気伝導率、光透過率が大きくなるArガスとO2ガスの比で成膜を行なった。
更に第1情報層膜面上に、直径12cm、厚さ50μmのポリカーボネートフィルムからなる第1基板を、45μmの厚さの両面粘着シートからなる透明層を介して貼り合わせ、2層相変化型光ディスクを作成した。
また、これとは別に、光透過率測定用として、厚さ1.1mmの基板に第1情報層と透明層、第1基板を同様に設け、第1基板側からの光透過率を測定した。本実施例の光ディスクの、第1情報層の初期化前の光透過率は、波長405nmで48%、波長810nmで45%、波長1060nmで20%であった。
【0038】
次に、本実施例の2層相変化型光ディスクに対して、2つのレーザーを持つ2層媒体用初期化装置を用いて、初期化を行なった。本実施例で用いた初期化装置の構成を図8に模式的に示す。この初期化装置は、半導体レーザーと対物レンズから構成される光ヘッドが、2つ設けられている。2つの光ヘッドは、それぞれ波長1060nm及び810nmの発光がなされる半導体レーザーとフォーカシング機能を持つ光学系装置とを組み合わせて構成されている。スピンドルモータによって光ディスクを回転させながら、内周から外周へ2つの光ヘッドが移動し(図の矢印の方向)初期化を行なう。
本実施例では、第1情報層に対して波長1060nmのレーザーを、第2情報層に対して波長810nmのレーザーを用い、線速度3m/sec、光ヘッドの外周への送りピッチ35μm/回転で初期化を行なった。
また、光透過率測定用のディスクも同様に、波長1060nmで初期化した後、405nmでの光透過率を測定したところ、51%であった。
初期化された2層光ディスクの各情報層の信号をオシロスコープで観察した。RF信号は、各層とも変動が少なく良好であった。これは、第1情報層に本発明の熱拡散層を用いたことで、波長1060nmでの光透過率が小さくなり、第1情報層は、波長1060nmのレーザーでフォーカスが外れることなく、効率よく初期化できたことによると考えられる。また、反対に波長810nmでの第1情報層の光透過率が大きいために、第2情報層を波長810nmのレーザーで初期化するときの光量損失が少なく、効率よく初期化できたことによると考えられる。
【0039】
上記のようにして作成したそれぞれの媒体について次の条件で記録を行った。
レーザー波長:405nm
NA:0.85
線速:6.5m/s
トラックピッチ:0.32μm
線密度0.16μm/bitでの第1情報層、第2情報層のジッター、及び、1000回オーバーライト後の第1情報層、第2情報層のジッターを測定したところ、第1情報層、第2情報層ともに良好に記録再生を行なうことができた。
また、その他の試作実験からも、NA=0.85のピックアップで記録再生を行なう場合に、第2情報層を良好に記録再生するためには、第1情報層の光透過率が40%以上必要であることが確認された。
以上のことから、本発明の光ディスクは、記録再生を行なう対物レンズの開口数NAが変化した場合でも、第1基板の厚さを10〜600μmの範囲で調整することによって、良好に記録再生を行なうことが出来る。また、本発明の光ディスクは、確実にかつ良好に初期化できることが分った。
【0040】
【発明の効果】
本発明1〜3によれば、オーバーライト特性の優れた多層相変化型光情報記録媒体を提供できる。
本発明4によれば、更に保存信頼性の優れた多層相変化型光情報記録媒体を提供できる。
本発明5〜9によれば、それぞれの層の反射率、記録感度及び光透過率(第N層をのぞく)を、記録、消去、再生条件に合わせて最適化することができ、全情報層の記録再生特性が優れた多層相変化型光情報記録媒体を提供できる。
本発明10によれば、中間層によって、第1情報層と第2情報層とを光学的に分離することができ、2種類の波長光源を持つ初期化装置を使って、2層の情報層共に良好な初期化が可能な多層相変化型光情報記録媒体を提供できる。
本発明11によれば、第1情報層、第2情報層共に感度がよく、記録再生特性の優れた2層相変化型光情報記録媒体を提供できる。
本発明12によれば、第1基板の厚さが薄い場合でも容易に製造可能な2層相変化型光情報記録媒体を提供できる。
本発明13によれば、反射層の腐食が抑えられ保存信頼性に優れた2層相変化型光情報記録媒体を提供できる。
本発明14によれば、対物レンズの開口数NAが変化した場合でも、良好に記録・再生を行なうことが可能な2層相変化型光情報記録媒体を提供できる。
本発明15によれば、本発明1〜14の多層相変化型光情報記録媒体を用いて大容量の記録再生を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る2層相変化型光情報記録媒体の概略断面図。
【図2】本発明の他の実施形態に係る2層相変化型光情報記録媒体の概略断面図。
【図3】酸化亜鉛に対するAlのドープ量を変化させて成膜した、厚さ200nmの膜の光透過率の波長依存性を示す図。
【図4】成膜工程、初期化工程、密着工程からなる方法で製造した2層相変化型光情報記録媒体の概略断面図。
【図5】第1成膜工程、中間層形成工程、第2成膜工程、基板貼り合わせ工程、及び初期化工程からなる方法で製造した2層相変化型光情報記録媒体の概略断面図。
【図6】本発明に係る3つの情報層を有する相変化型光情報記録媒体を示す図。
【図7】本発明に係る他の3つの情報層を有する相変化型光情報記録媒体を示す図。
【図8】実施例5で用いた初期化装置の構成を模式的に示す図。
Claims (15)
- 光の入射により結晶状態と非晶質状態との相変化を起して情報を記録しうる記録層を有する情報層がN層(N:2以上の整数)設けられた光情報記録媒体において、それぞれの情報層を、光が入射される側からみて、第1情報層、第2情報層、…第N情報層としたとき、第N情報層以外の、少なくとも1層の情報層が、下部保護層、記録層、上部保護層、反射層、熱拡散層の順に積層された層構成を有し、該熱拡散層は、酸化亜鉛を主成分とすることを特徴とする多層相変化型光情報記録媒体。
- 熱拡散層が、B、Al、Ga、Inのうちから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1記載の多層相変化型光情報記録媒体。
- 熱拡散層が、A(=B、Al、Ga、Inのうちから選ばれる1種)を、原子比において、0.01≦A/(Zn+A)≦0.1の範囲で含有することを特徴とする請求項2記載の多層相変化型光情報記録媒体。
- 熱拡散層が、更にX(=Cr又はV)を、原子比において、0.005≦X/(Zn+A+X)≦0.05、の範囲で含有することを特徴とする請求項2又は3記載の多層相変化型光情報記録媒体。
- 熱拡散層の厚さが20〜200nmであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の多層相変化型光情報記録媒体。
- 熱拡散層を有する情報層中の記録層が、SbとTeを主体とし、Ag、In、Ge、Se、Sn、Al、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Bi、Si、Dy、Pd、Pt、Au、S、B、C、Pのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の多層相変化型光情報記録媒体。
- 熱拡散層を有する情報層中の記録層の厚さが、3〜15nmであることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の多層相変化型光情報記録媒体。
- 熱拡散層を有する情報層中の反射層が、Au、Ag、Cu、W、Al、Taの少なくとも1種を主成分とする請求項1〜7の何れかに記載の多層相変化型光情報記録媒体。
- 熱拡散層を有する情報層中の反射層の厚さが、3〜20nmであることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の多層相変化型光情報記録媒体。
- 第1基板と第2基板の間に2つの情報層が設けられ、かつ2つの情報層の間に中間層を設けてなる、情報の記録・再生が可能な2層相変化型光情報記録媒体であって、第1情報層は、第1下部保護層、第1記録層、第1上部保護層、第1反射層、第1熱拡散層を含み、第2情報層は、第2下部保護層、第2記録層、第2上部保護層、第2反射層を含み、記録・再生のための光が入射される側から、第1基板、第1下部保護層、第1記録層、第1上部保護層、第1反射層、第1熱拡散層、中間層、第2下部保護層、第2記録層、第2上部保護層、第2反射層、第2基板の順に積層されていることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の2層相変化型光情報記録媒体。
- 第1情報層の光透過率が、波長350〜700nmの光に対して40〜70%であることを特徴とする請求項10記載の2層相変化型光情報記録媒体。
- 第1基板と第1下部保護層との間に透明層を設けることを特徴とする請求項10又は11記載の2層相変化型光情報記録媒体。
- 第1上部保護層と第1反射層との間及び/又は第2上部保護層と第2反射層との間にバリア層を設けることを特徴とする請求項10〜12の何れかに記載の2層相変化型光情報記録媒体。
- 第1基板の厚さが、10〜600μmであることを特徴とする請求項10〜13の何れかに記載の2層相変化型光情報記録媒体。
- 請求項1〜14の何れかに記載の多層相変化型光情報記録媒体の各情報層に対し、第1情報層側から波長350〜450nmの光ビームを入射させて情報の記録再生を行なうことを特徴とする多層相変化型光情報記録媒体の記録再生方法。
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