JP2004051854A - アミノ基含有多糖類を含有する組成物及びそれからなる炭酸ガス選択透過性を有するフィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アミノ基含有多糖類、多価アルコール及び無機層状化合物を含む組成物からなる炭酸ガス選択透過性を有するフィルム。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はアミノ基含有多糖類、多価アルコール及び無機層状化合物を含む組成物及びそれからなる炭酸ガス選択透過性を有するフィルムに関する。より詳しくは、成形して酸素ガスバリヤー性、及び炭酸ガス透過度(CO2TR)と酸素ガス透過度(O2TR)の比(α=(CO2TR)/(O2TR))が大きく、且つ食品衛生上の安全性を有し、水に不溶性であり、発酵食品及び青果物等の食品包装に好適なフィルムを与える組成物及びそれからなるフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
酸素ガスバリヤー性を有する材料としては、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリロニトリルなどのプラスチック自体からなるフィルム、酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機物を基材表面に蒸着したフィルムが開発されている。いずれの材料もそれぞれ長所、短所を有している。無機物を基材表面に蒸着したフィルムは、フィルムの製造のために蒸着工程が必要となり製造のためのコストが掛かる。この問題を解決するために、基材に金属酸化物及びポリビニルアルコールからなる塗膜を設けたフィルム(特開昭56−4563号公報等)が開発されている。特開平10−7824号公報には、熱可塑性樹脂基材の片面に無機系層状化合物と水溶性高分子を主構成成分とする高湿度下でもガスバリヤー性を有し基材との密着性及び製袋後のガスバリヤー性を有するフィルムが記載されている。特開平11−129379号公報には、ヒートシール性を有する合成フィルムの片面に、無機層状化合物と樹脂からなる被覆層を塗布形成して設け、且つ被覆層を設けた反対面に外装材を設けた防湿性等のバリヤー性を向上したフィルムが記載されている。特開平11−342559号公報には、厚さ20μmでの透湿度が5g/m2以下のプラスチックフィルムの片面に無機層状化合物と樹脂とを含有するバリヤー層を設けた高湿度雰囲気下でも使用可能なバリヤー性包装材料が記載されている。また、特開平11−314318号公報には、無機層状化合物と樹脂とから調製された樹脂組成物からなる樹脂組成物層を備え、少なくとも3辺がヒートシールされている包装容器が記載されている。
【0003】
食品包装の分野において、炭酸ガスを選択的に透過するフィルムについては、例えば、特開平5−222215号公報にはポリビニルアルコール樹脂と、アルキレングリコール、ヒドロキシ酸の単量体及びそれらの重合体の群から選ばれた少なくとも1種であり、且つ、炭酸ガスと酸素ガスの溶解度比が30以上である化合物との組成物からなる食品包装用成形物についての開示がある。この成形物から得られるフィルムは炭酸ガスの発生が多く、酸素との接触を嫌う食品、例えばチーズ製品、コーヒー豆等を包装するのに適していることが記載されている。特開平9−316208号公報には、ポリアクリル酸と脂肪族ジアミンからなる反応混合物を熱処理することにより得られる皮膜は水に対する耐性を有し、且つ、炭酸ガス透過度と酸素ガス透過度との比が15以上を有することが記載されている。また、特開平11−538号公報には、ポリアミン構造を有する高分子からなるフィルムは炭酸ガスと酸素ガスとの透過度比が大きいとの記載がある。
このような気体選択透過性を有する材料に対しては、特に食品包装用材料としての用途開発が進展すると共に、食品衛生上の安全性を満たすと云う観点からの包装材料が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、アミノ基含有多糖類、多価アルコール及び無機層状化合物を含む組成物であって、該組成物からなる塗工膜(フィルム)自体の強度が大きく、高湿度下においても高い酸素ガスバリヤー性を有し、水に対して不溶性であり、食品衛生上の安全性が高く、且つ炭酸ガス透過度と酸素ガス透過度の比が大きい炭酸ガス選択透過性を有するフィルムを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特定キトサン、ポリビニルアルコール(PVA)及びモンモリロナイトからなる組成物からなる塗工膜は、モンモリロナイトの分散が良好で、優れた酸素ガスバリヤー性と炭酸ガス透過度と酸素ガス透過度の比が大きい炭酸ガス選択透過性を有すること、更に、塗膜自体が高い強度を有することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち本発明は、アミノ基含有多糖類、多価アルコール及び無機層状化合物を含む組成物を提供する。アミノ基含有多糖類と無機層状化合物の質量割合が99/1〜10/90である前記発明の組成物を提供する。アミノ基含有多糖類と多価アルコールの質量割合が99/1〜1/99である前記発明の組成物を提供する。無機層状化合物と、アミノ基含有多糖類及び多価アルコールの合計との質量割合が5/95〜70/30である前記発明の組成物を提供する。また、本発明は、アミノ基含有多糖類がキトサンである前記発明の組成物を提供する。アミノ基含有多糖類が脱アセチル化度70モル%以上のキトサンである前記発明の組成物を提供する。前記発明において多価アルコールが酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体である組成物を提供する。酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体のケン化度が60%以上である前記発明の組成物を提供する。前記発明において無機層状化合物がモンモリロナイト又はフッ素3ケイ素金雲母から選ばれた少なくとも1種である組成物を提供する。組成物から得られる成形体が水に不溶性であることを特徴とする前記発明の組成物を提供する。前記発明において、組成物から得られる成形体のX線回折でモンモリロナイトの(001)面の面間隔dが10Å以上である組成物を提供する。更に、本発明は、無機層状化合物を分散した水溶液に多価アルコール、次いでキトサンを溶解させ、基材表面に塗工することを特徴とする前記組成物の製造方法を提供する。
【0007】
本発明は、前記組成物からなる炭酸ガス選択透過性を有するフィルムを提供する。更に、23℃、相対湿度(RH)80%の条件におけるフィルムの1μm換算の酸素ガス透過度(O2TR)が100cm3/m2・d・atm以下である前記発明の炭酸ガス選択透過性を有するフィルムを提供する。炭酸ガス透過度と酸素ガス透過度の比(α=(CO2TR)/(O2TR))が8以上である前記発明の炭酸ガス選択透過性を有するフィルムを提供する。更に、αが10以上である前記発明の炭酸ガス選択透過性を有するフィルムを提供する。本発明は、また、前記発明のフィルムを少なくとも1層有する炭酸ガス選択透過性を有する積層フィルム及び、αが8以上である前記発明の炭酸ガス選択透過性を有する積層フィルム、並びに、αが10以上である前記発明の炭酸ガス選択透過性を有する積層フィルムを提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明は、アミノ基含有多糖類、多価アルコール及び無機層状化合物を含む組成物、及びそれからなる炭酸ガス選択透過性を有するフィルムに関する。
本発明で用いるアミノ基含有多糖類とは、分子中にアミノ基を有する多糖類であり、具体的には、キチン、キトサン等を挙げることができる。
これらの中、キトサンは、例えば海老や蟹などの殻の構成成分として自然界に広く存在するキチンを濃アルカリ中で固体状態で脱アセチル化して得ることができ、完全脱アセチル化したものは構成単位分子内に2個の水酸基と1個のアミノ基を有する塩基性多糖類である。遊離のものは水や有機溶媒に溶けないが、塩酸等の無機酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、酪酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、アスコルビン酸、アミノ酸等の有機酸の存在で塩を生成し酸塩溶液となる。本発明で用いるキトサンは、分子量10000〜1000000、更に10000〜500000、粘度(後記条件による)は1〜20000cp(1〜20000mpa・s)、更に1〜2000cp(1〜2000mpa・s)のものが後述の実施例で示すように塗工性及び溶液調製の点で好ましい。脱アセチル化度は70モル%以上、好ましくは80モル%以上である。尚、キチンを濃アルカリ中で処理して得られる脱アセチル化度が70モル%未満のキトサンは酢酸に溶解せず、製膜できない。
【0009】
本発明で用いる多価アルコールとは、分子内に2個以上の水酸基を有するアルコール系重合体であり、酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合体、PVAや糖類及び澱粉類を含むものである。なお、PVAはポリ酢酸ビニルの部分ケン化物に対しても用いられる呼称であり、そのケン化度は好ましくは80%以上、更に好ましくは88%以上であり、数平均重合度が通常300〜1500である。糖類としては、単糖類、オリゴ糖類及び多糖類を使用する。これらの糖類には、糖アルコールや各種置換体・誘導体、サイクロデキストリンのような環状オリゴ糖なども含まれる。これらの糖類は、水に溶解性のものが好ましい。
澱粉類は、多糖類に含まれるが本発明で使用される澱粉類としては小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、モチトウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉などの生澱粉(未変性澱粉)のほか、各種の加工澱粉がある。加工澱粉としては、物理的変性澱粉、酵素変性澱粉、化学分解変性澱粉、化学変性澱粉、澱粉類にモノマーをグラフト重合したグラフト澱粉などが挙げられる。
これらの澱粉類の中でも、焙焼デキストリン等やそれらの還元性末端をアルコール化した還元澱粉糖化物等の水に可溶性の加工澱粉が好ましい。澱粉類は、含水物であってもよい。また、これらの澱粉類は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明においては、多価アルコールの一構成成分をなす多糖類は、前記アミノ基を有する多糖類と区別するために、アミノ基を有しない多糖類を意味することとする。
多価アルコールの中、PVAが好ましく用いられる。本発明の塗工用組成物においては、PVAが無機層状化合物、中でもモンモリロナイトを効果的に分散することが見出された。
【0010】
本発明の組成物を構成する無機層状化合物は、層状の単位結晶層が重なって一つの層状粒子を形成している無機化合物の内粘土鉱物等であって、モンモリロナイト、フッ素3ケイ素金雲母から選ばれた少なくとも1種の無機層状化合物である。殊に天然スメクタイトのモンモリロナイト、及び合成マイカの内フッ素3ケイ素金雲母が好ましい。
【0011】
本発明の組成物は、前記アミノ基含有多糖類と多価アルコール及び無機層状化合物とを混合してなる。アミノ基含有多糖類としてキトサン、多価アルコールとしてPVA、無機層状化合物としてモンモリロナイトを使用する場合を具体例として、組成物、特に塗工用の組成物の製造方法を説明する。
キトサンは、取り扱い易さの点から、キトサン酸塩溶液として取り扱う。酢酸塩及び乳酸塩が価格及び食品安全性の点で好ましい。キトサン酸塩水溶液にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ケトン類等の親水性有機溶剤を希釈剤として用いてもよい。
一例として、先ず無機層状化合物を水などの溶媒に分散させた後に、この溶液にPVAを溶解させ、酢酸、イソプロピルアルコール(IPA)を加えた後、キトサンを溶解させることが取り扱い易さの点から好ましい。
PVAは、モンモリロナイトの分散性を増加し、同時に塗膜を形成したときの膜自体の強度を増加させる。本発明の組成物の製造方法では、モンモリロナイトは、PVA水溶液に分散して用いることが、好ましい。本発明の組成物から得られるフィルム等の成形体のX線回折によれば、観察されるモンモリロナイトの(001)面の面間隔dは、10Å以上、更に14.5Å以上、特には17Å以上であることが分散性の点から好ましい。
【0012】
無機層状化合物としてのモンモリロナイトの量が多いと、酸素ガスバリヤー性は向上するが、塗工膜の強度が損なわれることがある。アミノ基含有多糖類としてのキトサンとの質量割合は、特に制限はないがキトサン/無機層状化合物=99/1〜10/90(質量比)、更に98/2〜30/70が好ましい。また、アミノ基含有多糖類と多価アルコールとしてのPVAの質量割合は99/1〜1/99、更に98/02〜10/90が好ましい。
キトサン、PVA及びモンモリロナイトの塗工液を得るには、キトサン1質量部に対して酸、例えば、酢酸0.1〜10質量部、更に好ましくは0.2〜5質量部、モンモリロナイトを前記の好ましい範囲を目安にした適当量、PVAを前記の好ましい範囲を目安にした適当量、及び溶媒の5〜1000質量部を、水、モンモリロナイト、PVA、IPA、酢酸(IPAと酢酸は、どちらが先に混合されてもよい)、キトサンの順で混合し、撹拌し、調製すればよい。尚、原料の混合時は、添加順序(添加速度)等に注意して行うことが好ましい。溶媒としては水が好ましい。キトサン酸塩が溶解する範囲で溶媒として水と、この水に可溶な有機溶媒(例えば、イソプロピルアルコール及びエタノール等)との混合液を用いてもよい。
【0013】
前記塗工液のキトサン、PVA及びモンモリロナイトの固形分濃度は、基材への塗工のし易さから1〜20質量%、更に3〜18質量%が好ましい。また、該塗工液を基材に塗布する際、基材表面で塗工液が塗れ難く、はじかれてしまう場合に、上記希釈剤又は少量の界面活性剤を用いると塗布し易くなる。
フィルム、シート又は板等からなる基材に前記の塗工液を塗布し、基材フィルムと共に乾燥(例えば、30〜150℃、1秒〜30時間)してキトサン酸塩・PVA・モンモリロナイトの乾燥皮膜を得る。即ち、塗工液を金属板、ガラス板及びプラスチックフィルム等の支持体(基材)上に流延し、乾燥して皮膜を形成させる溶液流延法、或いは塗工液の高濃度の水溶液をエキストルーダーにより吐出圧力をかけながら細隙から膜状に流延し、含水フィルムを回転ドラム又はベルト上で乾燥する押出法、プラスチックフィルムに該水溶液を塗工した後、塗工したフィルムを加熱下で乾燥する方法などにより形成される。このようにして乾燥皮膜を得る。乾燥皮膜とは、塗工液を基材等に塗工又は流延して、乾燥させたものを云う。これらの製膜法の中でも、特に、溶液流延法(キャスト法、コーティング法)は、透明性に優れた乾燥皮膜を容易に得ることができるため好ましく用いられる。
【0014】
キトサン、PVA及びモンモリロナイトを含む乾燥皮膜中のキトサンは酸塩を形成している。この乾燥皮膜をアルカリ性水溶液で処理、例えば水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬(例えば、1規定水酸化ナトリウム水溶液に5〜60℃で、0.5秒〜48時間浸漬)した後、水洗(例えば、水道水中1秒〜1時間)することにより水に不溶性のキトサン・PVA・モンモリロナイトからなる膜が得られ、これを乾燥し(例えば、30〜200℃、0.5秒〜1時間)、水に不溶性の塗工膜(フィルム)を得ることができる。以後、本発明の塗工用の組成物から得られるこの塗工膜(成形物)をフィルムと称する。即ち、塗工膜とは、前記乾燥皮膜をアルカリ水溶液で処理して乾燥したものを云う。本発明で得られた塗工膜が水に不溶性であるとは、温度40℃の水に、30分間浸漬した後、90℃、20分間乾燥後、塗工膜の厚み減少率が20%以下であることを云う。なお測定は、塗工膜が厚い場合は、ダイアルゲージや光学顕微鏡で行うが、塗工膜が薄い場合は走査型電子顕微鏡或いは透過型電子顕微鏡などを用い、断面観察によって行う。この塗工膜(フィルム)自体は、機械的強度が大きい。このことはポリエチレンフィルムの片面に、接着剤(AD)を塗布したポリエチレンフィルムの接着剤の面と積層フィルムのキトサンを含む本発明の組成物の塗工面とを貼り合わせたラミネートフィルムのキトサンを含む層の凝集破壊による剥離の強度を評価する後述の剥離強度の測定結果が、高い強度を示していることからも理解できる。こうして得た塗工膜は、基材と共に、或いは基材から剥がして本発明のフィルムとして単独又は別の基材と共に積層フィルムの構成フィルムとして使用することができる。
【0015】
本発明の組成物からなるフィルム単独の23℃、80%相対湿度(RH)の条件における厚さ1μm換算の酸素ガス透過度(O2TR)が100cm3/m2・day・atm以下、更に70cm3/m2・day・atm以下、特に50cm3/m2・day・atm以下であることが好ましい。また、本発明のフィルムは、この酸素透過度の制限を満たし、又は制限に係わらず炭酸ガス透過度(CO2TR)と酸素ガス透過度(O2TR)の比(CO2TR/O2TR)が8以上、更に10以上、特に12以上の炭酸ガス選択透過性を有することが好ましい。
本発明のフィルムを単独で用いる場合、フィルム厚さは、好ましくは0.1〜50μm、更に好ましくは0.1〜5μmである。また、(CO2TR)はフィルムの厚みを調整することにより、前記の100cm3/m2・day・atm以上にすることができる。
【0016】
本発明のフィルム単独又は基材層と共に使用するフィルムを製造するときの支持体としての基材は、紙、不織布、布、段ボール、熱可塑性樹脂から選ばれた少なくとも1種の材料を用いることができる。用途及び基材層の気体透過度が極端に積層フィルムの炭酸ガス選択透過性能を妨げないこと等を考慮して、基材層を適宜選択することができる。
熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン等であり、好ましくはポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリオレフィン、ポリアミドである。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレート等、及びこれらの共重合体、ブレンド物、又はこれらと少量の他の樹脂とのブレンド物なども含まれる。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、延伸又は未延伸ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン共重合体、メタロセン触媒を用いて合成したポリオレフィン等が含まれる。これらの熱可塑性樹脂の積層体も基材層に含まれる。
【0017】
本発明の好ましい態様として、前記フィルムを少なくとも1層有する炭酸ガス選択透過性を有する積層フィルム及びαが8以上である前記積層フィルム、及びαが10以上を有する炭酸ガス選択透過性を有する積層フィルムが挙げられる。例えば、外側層、中間層及び内側層の少なくとも3層からなる積層フィルムであって、外側層及び内側層が熱可塑性樹脂からなり、該中間層が前記フィルムを含み、積層フィルムとしてのα(CO2TR/O2TR)が8以上である炭酸ガス選択透過性を有するフィルムを挙げることができる。中間層が前記フィルムを含む積層フィルムにおいて、外側層、及び内側層を構成する材料としては、前記の熱可塑性樹脂をそのまま用いることができる。基材は、前記のようにフィルム単独又は基材と共に使用するときの支持体として用いてもよいが、それ自体積層フィルムの外側層又は内側層として用いることもできる。例えば、延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムを基材とし、これにキトサン酸塩・PVA・モンモリロナイトからなる塗工液を塗布し、アルカリでキトサンに戻して得た積層フィルムの場合は、OPPフィルム層が外側層或いは内側層となる。別に用意したポリエチレンフィルムの表面に接着剤を塗布したフィルムの接着剤の面と先に得た積層フィルムのフィルム(塗工膜)の面とを貼り合わせることにより外側層から内側層の順でOPP層/フィルム(塗工膜)層/接着剤層/ポリエチレン層の積層フィルムを得る。OPP層とフィルム層の間の特に強い接着が必要な場合は、OPPフィルムにアンカー剤又は接着剤を塗布し、その上に塗工液を塗布し、アルカリ処理してキトサンとしてから、前記のポリエチレンフィルムの接着剤面を貼り合わすことによりOPP/接着剤層/フィルム(塗工膜)層/接着剤層/ポリエチレン層の積層フィルムを得ることができる。
【0018】
本発明の積層フィルムは、中間層が前記フィルムを含み、中間層の厚さは0.1〜5μm、更に0.1〜1μmであることが好ましい。場合により、外側層、内側層のいずれかに、補強の意味で、ポリオレフィン系不織布、多孔性ポリオレフィン層、多孔性ポリエステル層、多孔性ポリアミド層、紙から選ばれた少なくとも1層を設けることもできる。
【0019】
積層フィルムの内側層(被包装物に接する層)には、積層フィルムから袋等を製造する際、フィルム同士を熱接着する場合を考慮して熱シール、高周波シール、或いは超音波シール可能な材料(シ−ラント)を使用することが好ましい。熱シール可能な樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、メタロセン触媒を使用して得られたエチレン系共重合体、メタロセン触媒を使用して得られたプロピレン系共重合体、未延伸ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸塩共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン、ナイロン6・66共重合体、ナイロン6・12共重合体などのナイロン共重合体などが挙げられる。高周波シール可能な樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン6、ナイロン66などが挙げられる。外側層と内側層の材料は同じであっても、異なっていてもよい。
積層フィルムの各層の厚さは、中間層に含まれるフィルムの厚さを除き、特に制限されるものではないが、積層フィルム全体として30〜500μm、更に50〜150μmが好ましい。また、内側層をシール層として用いる場合は、内側層の厚さが10〜100μm、更に15〜80μmであることが、シール強度及びガス透過性の点から好ましい。
本発明の積層フィルムは、23℃、80%RH条件下における酸素透過度は90cm3/m2・day・atm以下、更に65cm3/m2・day・atm以下、特に50cm3/m2・day・atm以下であることが好ましい。積層フィルムの40℃、90%RH条件下における水蒸気透過度は、食品変色及び目減り抑制の観点から1〜100g/m2・day、更に1〜30g/m2・dayが好ましい。
【0020】
本発明のフィルム単独及び該フィルムを少なくとも1層含む積層フィルムは、好ましくは(CO2TR/O2TR)が8以上、更に10以上、特に12以上を有するので、炭酸ガスを発生し易く、酸素ガスを嫌う食品の包装に用いると効果的である。食品としては、上記の性質を有するもの、即ち、炭酸ガスを発生し易く、酸素ガスを嫌う食品であれば特に制限されないが、例えばコーヒー、チーズ類、ヨーグルト、味噌類、漬物類、根菜類、菌茸類、葉茎菜類、果菜類、生果類、糠床等を挙げることができる。
【0021】
コーヒーは、焙煎前及び後の豆状、破砕状のものが含まれる。チーズ類としては、例えば、エメンタール、チェダー、グリュイエール、ゴーダ等のナチュラルチーズ、或いはこれらを含有する加工チーズ等が挙げられる。味噌類としては、例えば、白味噌、赤味噌、生味噌等、特に発酵が継続しているような製品の味噌等が挙げられる。漬物類としては、例えば、らっきょ、しょうが、梅干し、白菜等の塩漬、奈良漬、わさび漬等の粕漬、べったら漬等の糀漬、山菜や大根等の味噌漬、千枚漬等の酢漬、たくあん漬等の糠漬、なすの辛子漬等の辛子漬、キュウリ漬等のもろみ漬、キムチ等の発酵漬物が挙げられる。根菜類としては、例えば、長イモ、ヤマトイモ、レンコン、馬鈴薯、しょうが、ゴボウ、里芋等が挙げられる。菌茸類としては、例えば、椎茸、ナメコ、マイタケ、エノキダケ、シメジ、マッシュルーム、モヤシ等が挙げられる。葉茎菜類としては、例えば、ほうれん草、アスパラガス、ニンニク、キャベツ、白菜、レタス、ニラ、カリフラワー等が挙げられる。果菜類としては、例えば、枝豆、サヤエンドウが、また生果類として、例えばミカン、リンゴ、ブドウ、モモ、ナシ、メロン、柿、梅、栗、杏等が挙げられる。この他にも切り花等が挙げられる。
これらの食品の生産或いは製造時の熟成、保存、製品の流通過程での保存、陳列時等に必要に応じて本発明の炭酸ガス選択透過性を有するフィルムを用いることができる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(酸素ガス及び炭酸ガス透過度の測定)
テストガスには、混合ガスとして巴商会(株)の炭酸ガス/酸素ガス混合標準ガスを用いた。一方、キャリアーガスとしては、巴商会(株)の高純度ヘリウムガスを用いた。また測定フィルムは23℃−80%RH雰囲気下で2日以上調湿したものを用いた。
酸素ガス及び炭酸ガス透過度は、積層フィルムの状態で測定した。混合ガス透過度測定装置(GLサイエンス(株)社製、フィルム両面加湿ガス透過試験機)を用い、温度23℃、相対湿度80%の条件で測定した。テストガスには混合ガス(CO2:O2=10:90体積%)を用いた。透過ガス検出器にはGLサイエンス(株)社製ガスクロマトグラフ(GC−390)、カラムはPorapak−Nを用いた。
【0023】
(炭酸ガス透過度と酸素ガス透過度の比:α=(CO2TR/O2TR))
前記測定法により得られた炭酸ガス透過度を酸素ガス透過度で徐することにより求めた。この比から炭酸ガス選択透過性を評価した。
(キトサン酸塩溶液の粘度)
キトサンの粘度の測定は、1.0質量%の酢酸塩水溶液にして、20℃に保持した水溶液をB型粘度計で測定した。
(脱アセチル化度)
0.5質量%の酢酸水溶液に0.5質量%となるようにキトサンを溶解し、キトサン−酢酸水溶液を得た。次いで、このキトサン溶液1gを取り出し、蒸留水を30ml加えた。得られた水溶液を1/400規定のポリビニル硫酸カリウムで滴定し、指示薬としてメチレンブルーを用いて脱アセチル化度を求めた。
(水蒸気透過度の測定)
水蒸気透過度は積層フィルムの状態で測定した。水蒸気透過度測定装置(Modern Control(株)社製、Permatran−W 3/31)を用い、40℃で測定した。また積層フィルムにおいて、シール層になる面を相対湿度90%RH、他の片面が相対湿度0%RHの条件とした。
(剥離強度)
剥離強度の測定は、ラミネートフィルムを用い以下のように行った。テンシロン(TOYO BALDWIN CO.,LTD.製 TMI RTM−100)を用い、23℃、50%RHで測定した。実施例及び比較例の各積層フィルムのキトサンを含む塗工面と、厚さ60μmのポリエチレン(PE:東セロ(製)、TUX−TCS)フィルムの片面に、厚さ2μmの接着剤(AD)を塗布したポリエチレンフィルムの接着剤の面とを貼り合わせラミネートフィルムとした。このラミネートフィルムをサンプル幅は15mmとして、基材の層と塗工膜の層とを一部剥がし両端を固定してクロスヘッドスピード200mm/min.で剥離したときの剥離強度を測定した。
(無機層状化合物の面間隔の測定)
RIGAKU社製、X線回折装置を用いて、キャストフィルムに対するエッジの広角回折及び小角散乱を測定した。また、その赤道面上のプロファイリングを行った。
(O2TRが100cm3に合わせたときのライン速度)
厚さ20μmのOPP基材フィルムの片面に、厚さ0.5μmのアンカー剤を塗工したフィルムに実施例で示した塗工液を連続的に塗工、乾燥して得た積層フィルムの酸素透過度を測定し、そのときの塗工膜厚さからO2TRが100cm3/m2・day・atmとなる塗工膜厚さを計算し、その塗工膜厚さになる塗布速度(m/min)を逆算した。ライン速度が大きいほど生産性が高いことを示す。
【0024】
(実施例1)
水115.2質量部に対して、水膨潤性のモンモリロナイト(クニミネ工業(株)製、商品名:クニピアG)を1.6質量部、ポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:「ポバールPVA−205」、ケン化度88%)を1.9質量部、酢酸を7.68質量部、IPA(イソプロピルアルコール)を76.8質量部、キトサン(大日精化工業(株)製、商品名:「ダイキトサン 100DVL」、脱アセチル化度100モル%、粘度:5〜7cp(mPa・S)[1質量%酢酸水溶液の1質量%キトサン濃度])を4.48質量部加えて、攪拌、溶解させ、塗工液を得た。クニピアGは粉末状のモンモリロナイトであり、25℃における4質量%水分散液の粘度は200〜400CPSである。得られた塗工液の水とIPAの重量比は60:40であり、モンモリロナイトとPVAとキトサンの重量比は20:24:56である。この塗工液を組成物(1)とした。
一方、ポリウレタンポリオール系樹脂(武田薬品工業(株)製、商品名:タケラック E−550)を100重量部、ポリイソシアネート系樹脂(武田薬品工業(株)製、商品名:タケネートD−140N)を60重量部及び酢酸エチル(和光純薬工業(株)製)を760質量部混合し、10質量%の濃度となるアンカー剤を調製した。このアンカー剤を厚さ20μmのOPPフィルム(二村化学(株)製、FOR)上に、グラビアコーターを用いて塗工(コーティング)した。この塗工物を連続的に乾燥機に入れ70℃、7秒間乾燥を行い、酢酸エチルを蒸発させて、OPPフィルム基材上に厚さ0.5μmのアンカー剤が塗工された積層フィルムを得た。
この積層フィルムのアンカー剤が塗工された面に先の組成物(1)をグラビアコーターを用いて塗工(コーティング)した。この塗工物を連続的に乾燥機に入れ110℃、20分間乾燥を行い、水を蒸発させて、OPPフィルム基材上にキトサン酢酸塩からなる厚さ1μmの乾燥被膜が塗工された積層フィルムを得た。この積層フィルムを20℃の1規定の水酸化ナトリウム水溶液に120秒間浸漬した。ついで、浸漬したフィルムを120秒間流水で洗浄後、乾燥機に入れ、90℃20分間乾燥を行い、水分を蒸発させて、厚さ1μmの塗工膜が積層された積層フィルムを得た。
【0025】
(実施例2)
実施例1と同じキトサンを3.2質量部、実施例1と同じモンモリロナイトを1.6質量部、実施例1と同じポリビニルアルコールを3.2質量部加えて、モンモリロナイトとPVAとキトサンの重量比を20:40:40にした以外は実施例1と同様な条件で行い、積層フィルムを得た。
【0026】
(実施例3)
実施例1と同じキトサンを0.64質量部、実施例1と同じモンモリロナイトを1.6質量部、実施例1と同じポリビニルアルコールを5.8質量部加えて、モンモリロナイトとPVAとキトサンの重量比を20:72:8にした以外は実施例1と同様な条件で行い、積層フィルムを得た。
【0027】
(実施例4)
実施例1と同じキトサンを5.04質量部、実施例1と同じモンモリロナイトを0.8質量部、実施例1とケン化度の違うポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:「ポバールPVA−105」、ケン化度98%)を2.2質量部加えて、モンモリロナイトとPVAとキトサンの重量比を10:27:63にした以外は実施例1と同様な条件で行い、積層フィルムを得た。
【0028】
(実施例5)
実施例1と同じキトサンを4.48質量部、実施例1と同じモンモリロナイトを1.6質量部、実施例4で用いたポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:「ポバールPVA−105」、ケン化度98%)を1.9質量部加えて、モンモリロナイトとPVAとキトサンの重量比を20:24:56にした以外は実施例1と同様な条件で行い、積層フィルムを得た。
【0029】
(実施例6)
実施例1と同じキトサンを3.92質量部、実施例1と同じモンモリロナイトを2.4質量部、実施例4で用いたポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:「ポバールPVA−105」、ケン化度98%)を1.7質量部加えて、モンモリロナイトとPVAとキトサンの重量比を30:21:49にした以外は実施例1と同様な条件で行い、積層フィルムを得た。
【0030】
(実施例7)
実施例1と同じキトサンを4.48質量部、実施例1と同じモンモリロナイトを1.6質量部、実施例1とケン化度の違うポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:「ポバールPVA−HC」、ケン化度100%)を1.9質量部加えて、モンモリロナイトとPVAとキトサンの重量比を20:24:56にした以外は実施例1と同様な条件で行い、積層フィルムを得た。
【0031】
(実施例8)
実施例1と同じキトサンを4.48質量部、実施例1と同じモンモリロナイトを1.6質量部、実施例1とケン化度の違うポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:「ポバールPVA−405」、ケン化度81%)を1.9質量部加えて、モンモリロナイトとPVAとキトサンの重量比を20:24:56にした以外は実施例1と同様な条件で行い、積層フィルムを得た。
【0032】
(実施例9)
実施例1と同じキトサンを4.48質量部、実施例1と同じモンモリロナイトを1.6質量部、実施例1とケン化度の違うポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:「ポバールPVA−HM」、ケン化度60%)を1.9質量部加えて、モンモリロナイトとPVAとキトサンの重量比を20:24:56にした以外は実施例1と同様な条件で行い、積層フィルムを得た。
(実施例10)
実施例2と同じ組成比で、塗工膜の厚さを0.5μmとしたことを除き、実施例2と同様な条件で行い、積層フィルムを得た。
(実施例11)
実施例2と同じ組成比で、塗工膜の厚さを0.2μmとしたことを除き、実施例2と同様な条件で行い、積層フィルムを得た。
【0033】
(比較例1)
実施例1と同じキトサンを7.2質量部、実施例1と同じモンモリロナイトを0.8質量部加えて、モンモリロナイトとキトサンの重量比を10:90にした以外は実施例1と同様な条件で行い、積層フィルムを得た。
(比較例2)
実施例1と同じキトサンを6.4質量部、実施例1と同じモンモリロナイトを1.6質量部加えて、モンモリロナイトとキトサンの重量比を20:80にした以外は実施例1と同様な条件で行い、積層フィルムを得た。
(比較例3)
実施例1と同じキトサンを5.6質量部、実施例1と同じモンモリロナイトを2.4質量部加えて、モンモリロナイトとキトサンの重量比を30:70にした以外は実施例1と同様な条件で行い、積層フィルムを得た。
(比較例4)
水96質量部に対して、実施例1と同じモンモリロナイトを4質量部加えて、攪拌・溶解させ、溶液を得た。この溶液をアクリル版上にキャストして室温で一晩乾燥させ、モンモリロナイト単体のフィルムを得た。
(比較例5)
実施例1と同じモンモリロナイトをイオン交換水(0.7μS/cm以下)に2質量%となるように分散させ、これを無機層状化合物分散液(A液)とする。また、実施例1と同じポリビニルアルコールをイオン交換水(0.7μS/cm以下)に2質量%となるように溶解させ、これを樹脂溶液(B液)とする。A液とB液とをそれぞれの固形分比(体積比)が無機層状化合物/樹脂=3/7となるように混合しこれを塗工液とした。これをグラビアコーターを用いて塗工速度1〜3m/min、乾燥温度60℃により、実施例1と同じ基材に塗工、製膜した。
(比較例6)
基材に用いた20μmのOPPフィルム単独のフィルムの物性を測定した。
【0034】
(水洗後の酸素ガス透過度の測定)
前記、実施例及び比較例で得られた積層フィルムについて、流水中に30分浸漬した後、乾燥機に入れ、90℃20分間乾燥を行い、水分を蒸発させた。このフィルムを前述の方法で酸素ガス透過度を測定した。これを水洗後のO2TRとした。
尚、基材としたOPPフィルムの20μmの酸素ガス透過度は、2100cm3/m2・day・atm、炭酸ガス透過度は6600cm3/m2・day・atmであることから、実施例、及び比較例で得られた酸素ガス、及び炭酸ガス透過度は、厚さ1μmの塗工膜のガス透過度を表すことになる。
【0035】
(ラミネート)
前記、実施例及び比較例で得られた積層フィルムについて、剥離強度測定用に以下の方法でラミネートを行った。
ポリエステル系樹脂のTM−329(東洋モートン(株)製)を100質量部、ポリエステル系樹脂のCAT−8B(東洋モートン(株)製)を100重量部及び酢酸エチル(和光純薬工業(株)製)を765重量部を混合し、15質量%の濃度となる接着剤(AD)を調製した。この接着剤(AD)を各積層フィルムのシール層を形成する厚さ60μmのポリエチレンフィルム(PE:東セロ(株)製、TUX−TCS)の片面上にメイヤーバーを用いて塗工し、塗工厚さ2μmとなる積層フィルムを得た。次いで、実施例1〜9、及び比較例1〜3の積層フィルムにおいて、キトサン−モンモリロナイト−PVA塗工膜が塗工された積層フィルムのキトサン−モンモリロナイト−PVA塗工膜の面と接着剤(AD)が塗工されているポリエチレンフィルムの接着剤の面とをラミネーターを用い、60℃の乾燥条件で貼り合わせ、各積層フィルムを得た。
【0036】
【表1】
【0037】
(実施例12〜26)
実施例1で調製したものと同じ10質量%濃度のアンカー剤を厚さ20μmのOPPフィルム(二村化学(株)製、FOR)(表中OPP#20)、厚さ30μmのOPPフィルム(二村化学(株)製、FOR)(表中OPP#30)上に、マルチコーター(ヒラノテクシード(株)製)を用いて塗工(コーティング)した。塗工方式はダイレクトグラビア方式を用いた。次いで、連続的に80℃で乾燥機に入れ水分を蒸発させて、それぞれのフィルム基材上に厚さ0.5μmのアンカー剤が塗られた積層フィルムを得た。装置のライン速度は3m/分とし、乾燥時間は20秒であった。
塗工液として、実施例2と同様に調製したものを使用した。この塗工液を0.5μmのアンカー剤が塗工されたOPPフィルムのアンカー剤塗工面、厚さ30μmのPEフィルム(表中PE#30)(東セロ(株)製、TUX−HC)の片面、厚さ15μmのNyフィルム(表中Ny#15)(ユニチカ(株)製、ONBC)の片面、厚さ12μmのPETフィルム(表中PET#12)(東レ(株)製、S−10)の片面、及び片面に紙をドライラミネートした厚さ30μmのPEフィルム(表中PE#30)のポリエチレン側にマルチコーター(ヒラノテクシード(株)製)を用いて塗工(コーティング)した。塗工方式はダイレクトグラビア方式を用いた。次いで、連続的に80℃で乾燥機に入れ水分を蒸発させて、それぞれのフィルム基材上にキトサンの酢酸塩からなる厚さ1μmの乾燥皮膜が塗工された積層フィルムを得た。装置のライン速度は1m/分とし、乾燥時間は60秒であった。
【0038】
次いで、乾燥皮膜を1規定の水酸化ナトリウム水溶液に120秒間浸漬させた。これを120秒間流水で洗浄後、乾燥機に入れ90℃20分間乾燥を行い、水分を蒸発させて、厚さ1μmの乾燥フィルム(A#1)が積層された積層フィルムを得た。得られたモンモリロナイト、PVA及びキトサンの塗工膜をここでは組成物Aと称する。
一方、前記の15質量%の濃度の接着剤(AD)を各積層フィルムのシール層を形成する厚さ40、60、80μmのポリエチレンフィルム(表中PE#40、PE#60、PE#80) (東セロ(株)製、TUX−TCS)、厚み35μmの延伸ポリエチレンフィルム(表中、延伸PE#35)(興人(株)製、コージンポリセットUM)及び厚さ30、40μmのエチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム(表中EVA#30、EVA#40)(タマポリ(株)製、SB−7)の片面上にメイヤーバーを用いて塗工し、塗工厚さ2μm(AD#2)となる積層フィルムを得た。
塗工膜が積層されたフィルムの塗工膜面と接着剤が塗工されているフィルムの接着剤の面をラミネーターを用い、60℃の乾燥条件で貼り合わせ、それぞれ表2−1に示した積層フィルムを得た。
【0039】
(実施例27〜41)
実施例1で調製したものと同じ10質量%の濃度のアンカー剤を厚さ20μmのOPPフィルム(表中OPP#20)、(二村化学(株)製、FOR)、厚さ30μmのOPPフィルム(表中OPP#30)、(二村化学(株)製、FOR)上に、マルチコーター(ヒラノテクシード(株)製)を用いて塗工(コーティング)した。塗工方式はダイレクトグラビア方式を用いた。次いで、連続的に80℃で乾燥機に入れ水分を蒸発させて、それぞれのフィルム基材上に厚さ0.5μmのアンカー剤が塗られた積層フィルムを得た。装置のライン速度は3m/分とし、乾燥時間は20秒であった。
塗工液として、実施例6と同様に調製したものを使用した。この塗工液を0.5μmのアンカー剤が塗工されたOPPフィルム(表中OPP#20)及び(表中OPP#30)のアンカー剤塗工面、厚さ30μmのPEフィルム(表中PE#30)(東セロ(株)製、TUX−HC)の片面、厚さ15μmのNyフィルム(表中Ny#15)(ユニチカ(株)製、ONBC)の片面、厚さ12μmのPETフィルム(表中PET#12)(東レ(株)製、S−10)の片面、及び片面に紙をドライラミネートした厚さ30μmのPEフィルム(表中PE#30)のポリエチレン側にマルチコーター(ヒラノテクシード(株)製)を用いて塗工(コーティング)した。塗工方式はダイレクトグラビア方式を用いた。次いで、連続的に80℃で乾燥機に入れ水分を蒸発させて、それぞれのフィルム基材上にキトサンの酢酸塩からなる厚さ1μmの塗工膜が塗工された積層フィルムを得た。装置のライン速度は1m/分とし、乾燥時間は60秒であった。
【0040】
次いで、乾燥皮膜を1規定の水酸化ナトリウム水溶液に120秒間浸漬させた。これを120秒間流水で洗浄後、乾燥機に入れ90℃20分間乾燥を行い、水分を蒸発させて、厚さ1μmの乾燥フィルムが積層された積層フィルムを得た。得られたモンモリロナイト、PVA及びキトサンの塗工膜をここでは組成物Bと称する。
一方、前記の15質量%の濃度となる接着剤(AD)を各積層フィルムのシール層を形成する厚さ40、60、80μmのポリエチレンフィルム(表中PE#40、PE#60、PE#80)(東セロ(株)製、TUX−TCS)、厚み35μmの延伸ポリエチレンフィルム(表中、延伸PE#35)(興人(株)製、コージンポリセットUM)及び厚さ30、40μmのエチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム(表中EVA#30、EVA#40)(タマポリ(株)製、SB−7)の片面上にメイヤーバーを用いて塗工し、塗工厚さ2μmとなる積層フィルムを得た。
モンモリロナイト−PVA−キトサン塗工膜が積層されたフィルムのモンモリロナイト−PVA−キトサン複合塗工膜面と接着剤が塗工されているフィルムの接着剤の面をラミネーターを用い、60℃の乾燥条件で貼り合わせ、それぞれ表2−1及び表2−2に示した積層フィルムを得た。
【0041】
(比較例7〜11)
ポリエステル系接着剤(AD)を実施例10で使用したのと同じ厚さ60μmのPEフィルム(東セロ(株)製、TUX−TCS)、厚み35μmの延伸ポリエチレンフィルム(興人(株)製、コージンポリセットUM)及び厚さ40μmのエチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム(タマポリ(株)製、SB−7)の片面上にメイヤーバーを用いて塗工し、塗工厚さが2μmとなる積層フィルムを得た。
実施例10、実施例16、実施例22、実施例24で使用したのと同じOPPフィルム(二村化学(株)製、FOR)、PEフィルム(東セロ(株)製、TUX−HC)の片面、厚さ15μmのNyフィルム(ユニチカ(株)製、ONBC)の片面、及び厚さ12μmのPETフィルム(東レ(株)製、S−10)の片面と接着剤が塗工されているフィルムの接着剤の面をラミネーターを用い、60℃の乾燥条件で貼り合わせ、積層フィルムを得た。
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、アミノ基含有多糖類、多価アルコール及び無機層状化合物を含む組成物であって、それからなる塗工膜(フィルム)は、それ自体強度が大きく、高湿度下においても高い酸素ガスバリヤー性を有し、水に対して不溶性で、食品衛生上の安全性が高く、且つ炭酸ガス透過度と酸素ガス透過度の比が大きい炭酸ガス選択透過性を有するフィルムの提供が可能であり、且つ、簡便、低コストの方法で該組成物の製造を可能とした。
Claims (19)
- アミノ基含有多糖類、多価アルコール及び無機層状化合物を含む組成物。
- アミノ基含有多糖類と無機層状化合物の質量割合が99/1〜10/90である請求項1記載の組成物。
- アミノ基含有多糖類と多価アルコールの質量割合が99/1〜1/99である請求項1又は2記載の組成物。
- 無機層状化合物と、アミノ基含有多糖類及び多価アルコールの合計との質量割合が5/95〜70/30である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
- アミノ基含有多糖類がキトサンである請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
- アミノ基含有多糖類が脱アセチル化度70モル%以上のキトサンである請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
- 多価アルコールが酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体である請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
- 酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体のケン化度が60%以上である請求項7記載の組成物。
- 無機層状化合物がモンモリロナイト又はフッ素3ケイ素金雲母から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
- 組成物から得られる成形体が水に不溶性であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
- 組成物から得られる成形体のX線回折でモンモリロナイトの(001)面の面間隔dが10Å以上である請求項9又は10記載の組成物。
- 無機層状化合物を分散した水溶液に多価アルコール、次いでキトサンを溶解させ、基材表面に塗工することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の組成物の製造方法。
- 請求項1〜11のいずれかに記載の組成物からなる炭酸ガス選択透過性を有するフィルム。
- 23℃、相対湿度(RH)80%の条件におけるフィルムの1μm換算の酸素ガス透過度(O2TR)が100cm3/m2・d・atm以下である請求項13記載の炭酸ガス選択透過性を有するフィルム。
- 炭酸ガス透過度と酸素ガス透過度の比(α=(CO2TR)/(O2TR))が8以上である請求項13又は14記載の炭酸ガス選択透過性を有するフィルム。
- αが10以上である請求項13〜15のいずれかに記載の炭酸ガス選択透過性を有するフィルム。
- 請求項13〜16のいずれかに記載のフィルムを少なくとも1層有する炭酸ガス選択透過性を有する積層フィルム。
- αが8以上である請求項17記載の炭酸ガス選択透過性を有する積層フィルム。
- αが10以上である請求項17又は18記載の炭酸ガス選択透過性を有する積層フィルム。
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