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JP2886457B2 - ガスバリヤー性フィルム及びその製造方法 - Google Patents

ガスバリヤー性フィルム及びその製造方法

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Publication number
JP2886457B2
JP2886457B2 JP6194944A JP19494494A JP2886457B2 JP 2886457 B2 JP2886457 B2 JP 2886457B2 JP 6194944 A JP6194944 A JP 6194944A JP 19494494 A JP19494494 A JP 19494494A JP 2886457 B2 JP2886457 B2 JP 2886457B2
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JP
Japan
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film
water
gas barrier
starch
oxygen gas
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Application number
JP6194944A
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智明 佐藤
弘行 大場
英明 田中
智久 長谷川
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Kureha Corp
Original Assignee
Kureha Corp
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Publication date
Application filed by Kureha Corp filed Critical Kureha Corp
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ガスバリヤー性フィル
ムに関し、さらに詳しくは、ポリ(メタ)アクリル酸な
どのポリカルボン酸と、ポリビニルアルコールまたは澱
粉などの糖類とを含有する混合物から形成された耐水性
で酸素ガスバリヤー性に優れたフィルム、及びその製造
方法に関する。本発明のガスバリヤー性フィルムは、耐
水性(水及び沸騰水に不溶性)、耐油性、及び酸素ガス
バリヤー性に優れたフィルムであるため、それ単独で、
あるいは他のプラスチックフィルム等との積層体とし
て、食品、医薬品、日常雑貨などの包装分野で好適に使
用できる。
【0002】
【従来の技術】包装材料には、一般に、内容物の品質劣
化を防ぐ機能が要求されるが、特に、内容物が変質、腐
敗し易い食品包装の分野では、酸素ガスバリヤー性など
のガスバリヤー性に優れていることが求められている。
従来、包装材料において、酸素ガスバリヤー性を付与す
るために、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、
エチレン・酢酸ビニル共重合体の部分けん化物(EVO
H)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)などのフィルム
が、それぞれ単独で、あるいは各種フィルムと複合して
用いられている。
【0003】これらのガスバリヤー性フィルムには、そ
れぞれ長所と共に短所もあり、各々改良が進められてい
る。例えば、PVAフィルムは、乾燥状態での酸素ガス
バリヤー性に優れているが、高湿度条件下では、吸湿に
より酸素ガスバリヤー性が著しく低下し、しかも水や沸
騰水に溶解するという欠点を有している。このため、P
VAフィルムを熱処理したり、二軸延伸することにより
結晶性を高めたり、あるいは多層構造のラミネートフィ
ルムにすることにより、酸素ガスバリヤー性の湿度依存
性の改良が図られている。しかしながら、従来の方法で
は、PVAフィルムの吸湿による酸素ガスバリヤー性の
低下や耐水性に対する改良効果は、いまだ不充分であ
る。また、PVDCフィルムは、PVAフィルムやEV
OHフィルムのような酸素ガスバリヤー性の湿度依存性
はないものの、焼却時に塩素ガスを発生するため、環境
汚染の問題点が指摘されている。
【0004】ところで、ポリ(メタ)アクリル酸または
その部分中和物は、水溶性の高分子であり、その親水性
を活かして、吸水材料、増粘剤、凝集剤、分散剤、紙や
繊維の処理剤等として産業上広く使用されている。ポリ
(メタ)アクリル酸またはその部分中和物は、その溶液
から流延法(キャスト法)によって容易に製膜が可能で
あり、得られたフィルムの乾燥条件下における酸素ガス
バリヤー性は、非常に優れている。しかしながら、この
フィルムは、親水性が強いため、高湿度条件下では、そ
の酸素ガスバリヤー性が著しく損なわれ、しかも水溶性
である。したがって、このフィルムは、多量の水分を含
有する食品の包装材料には適さない。
【0005】一方、多糖類に属する澱粉類のフィルム
は、耐油性や酸素ガスバリヤー性に優れているが、機械
的強度や耐水性に劣るという欠点を有している。澱粉類
は、主として植物から得られる天然多糖類であり、グル
コースがα(1−4)結合により直鎖状に繋がったアミ
ロースと、短いアミロースがα(1−6)結合を介して
分岐状に結合した高分子量のアミロペクチンとの混合物
である。澱粉類には、生澱粉のほか、分離精製アミロー
スなどの物理的変性澱粉、酸、加熱、酵素等によって加
水分解して冷水溶解性を高めた変性澱粉、エステル化、
エーテル化等の化学修飾を施した変性澱粉、アクリルア
ミド、アクリル酸、酢酸ビニル、アクリロニトリルなど
のモノマーをグラフト重合して得られるグラフト変性澱
粉などさまざまな加工澱粉がある。これら加工澱粉は、
ポリ(メタ)アクリル酸またはその部分中和物と同様
に、極めて親水性の高い高分子であり、産業上も食品工
業をはじめ、その親水性を活かして、吸水材料、増粘
剤、凝集剤、分散剤、紙や繊維の処理剤等として広く使
用されている。しかし、澱粉類は、親水性が強いため、
高湿度条件下では、酸素ガスバリヤー性が著しく損なわ
れる。そのため、澱粉類のフィルムは、多量の水分を含
有する食品の包装材料には適さない。
【0006】本発明者は、ポリ(メタ)アクリル酸また
はその部分中和物とPVAとの混合物からフィルムを作
成し、得られたフィルムを熱処理することにより、酸素
ガスバリヤー性に優れた耐水性フィルムの得られること
を見いだした(特願平5−31404号、特願平5−2
62958号)。また、本発明者らは、ポリ(メタ)ア
クリル酸またはその部分中和物と澱粉類との混合物から
フィルムを作成し、得られたフィルムを熱処理すること
により、酸素ガスバリヤー性に優れた耐水性フィルムが
得られることを見いだした(特願平5−285739
号)。これらのフィルムは、原料成分がいずれも親水性
であるにもかかわらず、高湿度条件下での酸素ガスバリ
ヤー性に優れると共に、水及び沸騰水に不溶性の耐水性
フィルムとして得ることができる。
【0007】これらの酸素ガスバリヤー性に優れた耐水
性フィルムは、各種熱可塑性フィルムと積層することに
より積層体を得ることができる(特願平6−23735
号、特願平6−23736号、特願平6−83881
号)。しかし、これらの酸素ガスバリヤー性に優れた耐
水性フィルムの中には、使用成分の種類や各成分の混合
割合等によっては、高湿度条件下での酸素ガスバリヤー
性や耐水性がやや不充分なものがあり、さらなる改善が
求められていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ポリ
カルボン酸と、PVAまたは澱粉などの糖類との混合物
からなるフィルムであって、高湿度条件下での酸素ガス
バリヤー性と耐水性が顕著に改善されたガスバリヤー性
フィルムを提供することにある。本発明者らは、上記目
的を達成するために鋭意研究を進めた結果、ポリカルボ
ン酸と、PVAまたは糖類との混合物に、さらに一価金
属塩または次亜リン酸塩を特定の範囲内で添加した混合
物から形成されたフィルムを熱処理することにより、乾
燥状態や低湿度条件下での酸素ガスバリヤー性に優れ、
しかも高湿度条件下での酸素ガスバリヤー性が顕著に優
れ、耐水性(水及び沸騰水に不溶性)も向上したガスバ
リヤー性フィルムが得られることを見いだした。本発明
は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものであ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】かくして、本発明によれ
ば、以下の1〜4の発明が提供される。 1.(A)ポリカルボン酸と(B)ポリビニルアルコー
ルまたは糖類とを重量比95:5〜25:75の割合で
含有し、さらに(C)一価金属塩を(A)成分と(B)
成分の合計量に対して1×10−5〜2×10−3mo
l/gの範囲内で含有する混合物溶液を製膜した後、乾
燥皮膜を熱処理してなるフィルムであって、温度30
℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸素ガス透過係
数が2.5×10−4ml(STP)cm/m・h・
atm{Pa}以下で、かつ、耐水性を有することを特
徴とするガスバリヤー性フィルム。
【0010】2.(A)ポリカルボン酸と(B)ポリビ
ニルアルコールまたは糖類とを重量比95:5〜25:
75の割合で含有し、さらに(D)次亜リン酸塩を
(A)成分と(B)成分の合計量に対して1×10−5
〜3×10−3mol/gの範囲内で含有する混合物
液を製膜した後、乾燥皮膜を熱処理してなるフィルムで
あって、温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定し
た酸素ガス透過係数が2.5×10−4ml(STP)
cm/m・h・atm{Pa}以下で、かつ、耐水性
を有することを特徴とするガスバリヤー性フィルム。
【0011】3.(A)ポリカルボン酸と(B)ポリビ
ニルアルコールまたは糖類とを重量比95:5〜25:
75の割合で含有し、さらに(C)一価金属塩を(A)
成分と(B)成分の合計量に対して1×10−5〜2×
10−3mol/gの範囲内で含有する混合物溶液を製
膜した後、乾燥皮膜を100℃(373K)以上の温度
で熱処理して、温度30℃、相対湿度80%の条件下で
測定した酸素ガス透過係数が2.5×10 −4 ml(S
TP)cm/m ・h・atm{Pa}以下で、かつ、
耐水性を有するフィルムを得ることを特徴とするガスバ
リヤー性フィルムの製造方法。
【0012】4.(A)ポリカルボン酸と(B)ポリビ
ニルアルコールまたは糖類とを重量比95:5〜25:
75の割合で含有し、さらに(D)次亜リン酸塩を
(A)成分と(B)成分の合計量に対して1×10−5
〜3×10−3mol/gの範囲内で含有する混合物
液を製膜した後、乾燥皮膜を100℃(373K)以上
の温度で熱処理して、温度30℃、相対湿度80%の条
件下で測定した酸素ガス透過係数が2.5×10 −4
l(STP)cm/m ・h・atm{Pa}以下で、
かつ、耐水性を有するフィルムを得ることを特徴とする
ガスバリヤー性フィルムの製造方法。なお、{Pa}
は、従来単位の[ml(STP)・cm/m・h・a
tm]または[ml(STP)/m・h・atm]
を、[mol・m/m・s・Pa]または[mol/
・s・Pa]に換算可能なことを示す符号であり、
JIS−Z1707にその標記例がある。
【0013】以下、本発明について詳述する。ポリカルボン酸とその部分中和物 本発明で使用するポリカルボン酸は、分子中に少なくと
も2個のカルボキシル基を含有するポリマーであって、
具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アク
リル酸−メタクリル酸共重合体、ポリマレイン酸、ある
いはこれらの2種以上の混合物などである。アクリル酸
またはメタクリル酸のホモポリマーや両者のコポリマー
が好ましく、これらの中では、アクリル酸のホモポリマ
ーやアクリル酸が優位量となるメタクリル酸とのコポリ
マーが、酸素ガスバリヤー性の点で、特に、好適なもの
である。ポリカルボン酸の数平均分子量は、特に限定さ
れないが、2,000〜250,000の範囲が好まし
い。
【0014】本発明で使用するポリカルボン酸には、分
子中のカルボキシル基を、例えば、水酸化ナトリウム、
水酸化リチウム、水酸化アンモニウム(アンモニア水を
含む)などのアルカリで部分的に中和して、カルボン酸
塩としたポリカルボン酸の部分中和物も含まれる。この
ような部分中和物は、通常、ポリカルボン酸の水溶液に
アルカリを添加し、反応させることにより所望の中和度
とすることができる。ポリカルボン酸の部分中和物を使
用する場合には、本発明が目的とする耐水性や酸素ガス
バリヤー性の範囲内で中和度を適宜選択することがで
き、おおよそ、0%を越え10%以下の範囲、好ましく
は0%を越え5%以下の範囲の中和度が好適である。な
お、中和度は、下記の式により求めることができる。 中和度=(A/B)×100(%) A:部分中和されたポリカルボン酸1g中の中和された
カルボキシル基のモル数である。 B:部分中和する前のポリカルボン酸1g中のカルボキ
シル基のモル数である。
【0015】ポリビニルアルコール(PVA) 本発明で使用するPVAは、けん化度が通常95%以
上、好ましくは98%以上であり、平均重合度が通常3
00〜2,500、好ましくは300〜1,500であ
る。
【0016】糖 類 本発明では、糖類(糖質類ともいう)として、単糖類、
オリゴ糖類、及び多糖類を使用する。これらの糖類に
は、糖アルコールや各種置換体・誘導体なども包含され
る。これらの糖類は、水溶性のものが好ましい。
【0017】<単糖類>単糖類とは、糖類のうちで加水
分解によってそれ以上簡単な分子にならない基本物質
で、オリゴ糖類や多糖類の構成単位となるものである。
単糖類は、通常、一般式Cn2nnで表されるが、その
うち、炭素数(n)が2、3、4、5、6、7、8、9
及び10であるものを、それぞれジオース、トリオー
ス、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトー
ス、オクトース、ノノース、及びデコースと呼ぶ。単糖
類は、アルデヒド基を持つものをアルドース、ケトン基
を持つものをケトースと分類する。n=3以上のもの
は、不斉炭素原子を持ち、不斉炭素の数に応じて立体異
性体が多数あり得るが、天然に知られているものはその
一部である。天然に存在するものは、ペントースとヘキ
ソースが多い。本発明で使用する単糖類としては、n=
5以上の鎖式多価アルコールのアルデヒドであるアルド
ースが、天然に多量に存在するために好ましい。このよ
うな単糖類としては、例えば、グルコース、マンノー
ス、ガラクトース、キシロースなどが挙げられるが、そ
の中でも、グルコースとガラクトースがより好ましい。
単糖類は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合
わせて使用することができる。
【0018】<糖アルコール>糖アルコールとは、アル
ドースまたはケトースを還元して得られるポリヒドロキ
シアルカンである。本発明で使用する糖アルコールとし
ては、鎖式多価アルコールが好ましい。このような糖ア
ルコールは、一般式Cn2n+1nで表すことができる。
nが3、4、5、6、7、8、9及び10の場合、それ
ぞれトリトール、テトリトール、ペンチトール、ヘキシ
トール、ヘプチトール、オクチトール、ノニトール、及
びデシトールと呼ぶ。それぞれの糖アルコールには、不
斉炭素原子の数に応じて立体異性体が多数存在する。本
発明では、n=3〜6の糖アルコールを用いることが好
ましい。糖アルコールの具体例としては、ソルビトー
ル、マンニトール、ズルシトール、キシリトール、エリ
トリトール、グリセリンなどを挙げることができる。糖
アルコールは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組
み合わせて使用することができる。
【0019】<オリゴ糖類>2個以上10個ぐらいまで
の単糖がグリコシド結合によって結ばれた構造をもつも
のをオリゴ糖(少糖)という。単糖の数によって、二
糖、三糖、四糖、五糖などに分類される。具体例として
は、スクロース、ラクトース、トレハロース、セロビオ
ース、マルトース、ラフィノース、スタキオースなどが
挙げられる。また、これらのオリゴ糖の末端をアルコー
ル化したもの(末端アルコール化オリゴ糖)も使用でき
る。
【0020】<多糖類>多糖類とは、単糖類がポリグリ
コシル化した高分子化合物(重合度10以上)の総称で
あり、構成糖の種類が1種の場合をホモ多糖(ホモグリ
カン)、2種以上のものをヘテロ多糖(ヘテログリカ
ン)という。多糖類は、動物・植物・微生物界に、貯蔵
多糖(澱粉類など)、構造多糖(セルロースなど)、機
能多糖(ヘパリンなど)として広く存在する。天然多糖
類は、主にアルドヘキソース及びアルドペントースを構
成単位とし、それらが、グリコシド結合で直鎖状、分岐
状または環状に繋がった高分子化合物である。アルドペ
ントース及びアルドヘキソースは、C1位のアルデヒド
とC5位のアルコールとの間で、分子内ヘミアセタール
結合によりピラノース環と呼ばれる6員環構造を形成す
る。天然多糖類分子中のアルドヘキソース及びアルドペ
ントースは、主にこのピラノース環構造をとっている。
天然多糖類の構成単位であるアルドヘキソース及びアル
ドペントースには、中性単糖の他、中性単糖の硫酸エス
テル、りん酸エステル、その他有機酸エステルやメチル
エーテル、第一アルコール基だけをカルボキシル基に酸
化したウロン酸、アルドヘキソースのC2位の水酸基が
アミノ基に置換されたヘキソサミンやその誘導体として
N−アセチルヘキソサミン、C3位とC6位の水酸基間で
エーテルを形成した3,6無水化アルドヘキソース等が
含まれる。
【0021】天然多糖類は、動植物界に広く分布し、植
物中には、高等植物や海藻類の細胞壁構成成分及び細胞
壁構成に関与しないもの、微生物類の細胞構成成分とし
て存在する。高等植物や海藻類の細胞壁構成に関与しな
いものとしては、細胞液に含まれる粘質物や澱粉等の貯
蔵物質がある。動物中では、グリコーゲン等の貯蔵物質
やヘパリンやコンドロイチン硫酸等の粘液の構成成分と
して存在する。天然多糖類をその構成成分によって分類
すると、中性多糖、酸性多糖、塩基性多糖に分類され
る。中性多糖には、ホモ多糖としてマンナンやグルカン
がある。また、ヘテロ多糖としては、ヘキソースのみか
らなるものがコンニャクやグァラン等に含まれており、
ペントースのみからなるものがキシランやアラボキシラ
ン等に含まれている。一方、ヘキソースとペントースを
含むものとしては、タマリンドやナシカズラ等が知られ
ている。酸性多糖としては、ウロン酸のみを含むもの、
ガラツロン酸と中性糖を含むものとしてトロロアオイや
ペクチン等が、グルクロン酸と中性糖を含むものとして
カミツレ、クサスギカズラ等があり、その他に中性糖の
硫酸エステル、りん酸エステル、有機酸エステル、メチ
ルエーテルや3,6無水物を含む酸性多糖がある。塩基
性多糖としては、グルコサミンやガラクトサミンを構成
単糖として含むものがある。
【0022】本発明で使用する多糖類には、これら天然
多糖類の他に、これらの多糖類を有機酸や無機酸、さら
にはそれらの多糖類の加水分解酵素を触媒として、固
相、液相または固液混合相にて、必要に応じて熱を加え
ることにより、加水分解して得られたもの、天然多糖類
及びそれらに前述の加水分解処理をほどこしたものに、
さらに加工処理を加えたものも含まれる。天然多糖類や
それらの加水分解物に対する加工処理としては、以下の
ようなものが例示される。 無機酸や有機酸によるエステル化処理やアリルエーテ
ル化、メチルエーテル化、カルボキシメチルエーテル化
等のエーテル化処理。 カチオン化処理:例えば、天然多糖類やそれらの加水
分解物と、2−ジエチルアミノエチルクロライドや2,
3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライ
ドとを反応させる方法が挙げられる。 架橋処理:例えば、ホルムアルデヒド、エピクロルヒ
ドリン、りん酸、アクロレイン等を用いて架橋する方法
が挙げられる。 グラフト化処理:例えば、天然多糖類やそれらの加水
分解物に、各種モノマーをグラフト重合させる方法が挙
げられる。モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プ
ロピオン酸ビニル、t−ブチルビニルエーテル、(メ
タ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、(メタ)ア
クリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロ
キシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシア
ルキルエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチ
レングリコールエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒド
ロキシ−3−クロロプロピルエステル、(メタ)アクリ
ル酸ジメチルアミノエチルエステル、メタクリル酸グリ
シジルエステル、アクリロニトリル、スチレン、無水マ
レイン酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0023】これら天然多糖類及びその加水分解生成物
ならびにそれらの加工処理生成物の中でも、水に可溶な
ものが好ましい。また、水に可溶な天然多糖類及びその
加水分解生成物ならびにそれらの加工処理生成物の中で
も、その構成単糖がグルコースであるホモ多糖類がより
好ましい。グルコースのホモ多糖類としては、例えば澱
粉類、セルロース類、デキストラン、プルラン、水溶性
のキチン類、キトサン類等がある。本発明では、前記天
然多糖類及びその加水分解生成物ならびにそれらの加工
処理生成物の代わりに、それらの糖アルコールを用いる
ことができる。ここでいう天然多糖類及びその加水分解
生成物ならびにそれらの加工処理生成物の糖アルコール
とは、それらの還元性末端のC1位のカルボニル基を還
元してアルコールにしたものをいう。それ以外にも、本
発明では、糖の分子鎖が環状につながったシクロデキス
トリン等の糖類も用いることができる。本発明で使用す
る多糖類は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み
合わせて用いることができる。
【0024】<澱粉類>澱粉類は、前記多糖類に包含さ
れるが、本発明で使用される澱粉類について、以下によ
り詳細に説明する。本発明で使用する澱粉類としては、
小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、モチトウモロコシ澱粉、
馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱
粉などの生澱粉(未変性澱粉)のほか、各種の加工澱粉
がある。加工澱粉としては、例えば、アルファー化澱
粉、分離精製アミロース、分離精製アミロペクチン、湿
熱処理澱粉などの物理的変性澱粉、加水分解デキスト
リン、酵素分解デキストリン、アミロースなどの酵素変
性澱粉、酸処理澱粉、次亜塩素酸酸化澱粉、ジアルデ
ヒド澱粉などの化学分解変性澱粉、エステル化澱粉
(酢酸エステル化澱粉、こはく酸エステル化澱粉、硝酸
エステル化澱粉、りん酸エステル化澱粉、尿素りん酸エ
ステル化澱粉、キサントゲン酸エステル化澱粉、アセト
酢酸エステル化澱粉等)、エーテル化澱粉(アリルエー
テル化澱粉、メチルエーテル化澱粉、カルボキシメチル
エーテル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、ヒ
ドロキシプロピルエーテル化澱粉等)、カチオン化澱粉
(澱粉と2−ジエチルアミノエチルクロライドとの反応
物、澱粉と2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモ
ニウムクロライドとの反応物等)、架橋澱粉(ホルムア
ルデヒド架橋澱粉、エピクロルヒドリン架橋澱粉、りん
酸架橋澱粉、アクロレイン架橋澱粉等)などの化学変性
澱粉、各種澱粉類にモノマーをグラフト重合したグラ
フト化澱粉〔モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、
プロピオン酸ビニル、t−ブチルビニルエーテル、(メ
タ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、(メタ)ア
クリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロ
キシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシア
ルキルエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチ
レングリコールエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒド
ロキシ−3−クロロプロピルエステル、(メタ)アクリ
ル酸ジメチルアミノエチルエステル、メタクリル酸グリ
シジルエステル、アクリロニトリル、スチレン、無水マ
レイン酸、イタコン酸等がある。〕などが挙げられる。
これらの澱粉類の中でも、水に可溶性の加工澱粉が好ま
しい。澱粉類は、含水物であってもよい。また、これら
の澱粉類は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み
合わせて使用することができる。
【0025】一価金属塩 本発明で使用する一価金属塩としては、水に可溶な無機
酸の金属塩及び有機酸の金属塩であれば特に限定はされ
ない。金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム
などのアルカリ金属を挙げることができる。一価金属塩
の具体例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩
化カリウム、臭化ナトリウム、亜リン酸水素二ナトリウ
ム、リン酸二水素ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウ
ム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、次亜硫酸ナ
トリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウ
ム、亜硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0026】次亜リン酸塩 本発明で使用する次亜リン酸塩としては、陰イオンが次
亜リン酸からなる水に可溶な金属塩であれば特に限定は
されない。金属としては、例えば、リチウム、ナトリウ
ム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのア
ルカリ土類金属などが挙げられる。次亜リン酸塩の好ま
しい例としては、次亜リン酸ナトリウム及び次亜リン酸
カルシウムが挙げられる。なお、次亜リン酸塩が次亜リ
ン酸ナトリウムのような一価金属塩である場合には、前
記一価金属塩と重複するが、一価金属塩の中でも次亜リ
ン酸塩は、幅広い添加割合で耐水性フィルムに顕著な酸
素ガスバリヤー性を付与することができ、その意味で、
選択性を有している。また、次亜リン酸塩の場合には、
一価金属塩に限定されず、次亜リン酸カルシウムなどの
二価金属塩であっても、耐水性フィルムに顕著な酸素ガ
スバリヤー性を付与することができる。
【0027】各成分の混合割合 (A)ポリカルボン酸と、(B)PVAまたは糖類との
混合割合(A:B)は、重量比で95:5〜25:7
5、好ましくは90:10〜40:60、より好ましく
は75:25〜50:50である。この混合割合が上記
範囲外であると、充分な酸素ガスバリヤー性を発現する
ことが困難である。一価金属塩は、(A)成分と(B)
成分の合計量に対して、1×10-5〜2×10-3mol
/gの範囲内で添加する。一価金属塩の添加量が上記範
囲外である場合には、少な過ぎても、あるいは多過ぎて
も、充分な酸素ガスバリヤー性の改善効果が得られな
い。一価金属塩の添加量は、好ましくは1×10-4
1.5×10-3mol/gの範囲内である。次亜リン酸
塩は、(A)成分と(B)成分の合計量に対して、1×
10-5〜3×10-3mol/gの範囲内で添加する。次
亜リン酸塩の添加量が上記範囲外である場合には、少な
過ぎても、あるいは多過ぎても、充分な酸素ガスバリヤ
ー性の改善効果が得られない。次亜リン酸塩の添加量
は、好ましくは1×10-5〜2×10-3mol/g、よ
り好ましくは5×10-4〜1.4×10-3mol/gの
範囲内である。本発明の上記範囲内の混合物からなるフ
ィルムは、熱処理により、水や沸騰水に不溶性の耐水性
フィルムとなる。
【0028】ガスバリヤー性フィルム及びその製造方法 本発明では、(A)ポリカルボン酸と、(B)PVAま
たは糖類とを含有し、さらに(C)一価金属塩または
(D)次亜リン酸塩を含有せしめた混合物からフィルム
を形成し、該フィルムを100℃(373K)以上の温
度で熱処理することにより、温度30℃、相対湿度80
%の条件下で測定した酸素ガス透過係数が2.5×10
-4ml(STP)cm/m2・h・atm{Pa}以下
で、かつ、耐水性を有するガスバリヤー性フィルムを製
造する。
【0029】ポリカルボン酸と、PVAまたは糖類との
混合物は、相溶性に優れており、任意の混合割合におい
て、例えば、水溶液にした場合に、均一な混合溶液が得
られる。一価金属塩及び次亜リン酸塩も水溶性である。
これらの混合物から耐水性フィルムを作成するには、一
般に、混合物の水溶液をガラス板やプラスチックフィル
ムなどの支持体上に流延し、乾燥して皮膜を形成させる
方法(溶液流延法)、あるいは混合物の高濃度の水溶解
液をエキストルーダーにより吐出圧力をかけながら乾燥
する方法(押出法)などがある。これらの製膜法の中で
も、特に溶液流延法は、透明性に優れた乾燥皮膜を容易
に得ることができるため好ましい。なお、本発明におい
て、溶液流延法とは、コーターによる塗布法をも包含す
る。
【0030】前記各成分の水溶液を調製する方法として
は、各成分を水に溶解させる方法、各成分の水溶液を混
合する方法、他の成分の存在下に(メタ)アクリル酸モ
ノマーやマレイン酸モノマーを重合させる方法、他の成
分の存在下に(メタ)アクリル酸モノマーやマレイン酸
モノマーを重合させた後、アルカリで中和する方法など
任意の方法が採用できる。水以外の溶剤を用いて混合物
の溶液を調製してもよい。溶液流延法では、固形分濃度
は、通常、1〜30重量%程度とする。水溶液を調製す
る場合、所望によりアルコールなどの水以外の溶剤や柔
軟剤、熱安定剤等を適宜添加してもよい。
【0031】各成分の混合物溶液からフィルムを作成す
るには、混合物溶液を、例えば、エアーナイフコータ
ー、キスロールコーター、メタリングバーコーター、グ
ラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディ
ップコーター、ダイコーターなどの装置、あるいは、そ
れらを組み合わせた装置を用いて、支持体上に、所望の
厚さにコーティングし、次いで、アーチドライヤー、ス
トレートバスドライヤー、タワードライヤー、ドラムド
ライヤーなどの装置、あるいは、それらを組み合わせた
装置を用いて、熱風の吹き付けや赤外線照射などにより
水分を蒸発させて乾燥させ、皮膜を形成させる。しかる
後、乾燥皮膜を熱処理する。
【0032】耐水性フィルムの厚みは、使用目的に応じ
て適宜定めることができるが、通常、0.1〜500μ
m、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは
0.5〜50μmである。他のプラスチックフィルム等
と積層して用いる場合などは、0.1〜15μm、さら
には0.5〜5μm程度の厚みでも優れた酸素ガスバリ
ヤー性を得ることができる。支持体(基材)としては、
特に限定されないが、前記乾燥皮膜の熱処理条件に耐え
る程度の耐熱性を有するものが好ましい。このような支
持体としては、ガラス板などの無機材料の板状体がある
が、連続的にフィルムを生産したり、あるいは積層体と
したりするには、耐熱性の高分子フィルムが好ましい。
【0033】耐熱性の高分子フィルムとしては、ビカッ
ト軟化点が、通常、100〜380℃、好ましくは15
0〜380℃、より好ましくは180〜380℃である
ものが望ましい。このような耐熱性の高分子フィルムと
しては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン
12、ナイロン6・66共重合体、ナイロン6・12共
重合体などのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート
(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポ
リブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネー
ト、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリフェニレンサル
ファイド、ポリプロピレンなどの高分子材料から形成さ
れたフィルムを挙げることができる。これらの高分子フ
ィルムは、未延伸フィルムまたは延伸フィルムであり、
シート状物をも包含する。
【0034】これらの中でも、特に、ポリアミド、PE
T、PENなどから形成されたビカット軟化点が180
℃以上の耐熱性フィルムが好ましい。なお、ビカット軟
化点は、JIS K−7206により測定することがで
きる。これら耐熱性フィルムの厚みは、特に限定されな
いが、耐水性フィルムと積層して使用する場合には、強
度及び柔軟性などの観点から、通常、5〜1000μ
m、好ましくは10〜100μm、より好ましくは10
〜30μm程度とすることが好ましい。
【0035】ポリカルボン酸と、PVAまたは糖類との
混合物から酸素ガスバリヤー性に優れた耐水性フィルム
を形成するには、混合物溶液から支持体上に製膜した
後、乾燥皮膜の熱処理を行うことが必要である。この熱
処理は、100℃(373K)以上、好ましくは100
〜350℃(373〜623K)の温度で行う。一般
に、熱処理温度が低い程、熱処理に長時間を要し、熱処
理温度が高くなるほど、熱処理時間は短くてよい。熱処
理法としては、特に限定されず、例えば、オーブン(加
熱炉)などの乾熱雰囲気下での熱処理法、熱ロールと接
触させる熱処理法などが挙げられる。
【0036】<熱処理条件1>(B)成分として糖類を
用いた混合物から製膜した後、乾燥皮膜を、乾熱雰囲気
下に、以下の関係式(a)及び(b)で規定する熱処理
温度と熱処理時間の関係を満足する条件下で熱処理を行
うと、フィルム厚3μm、温度30℃、相対湿度(R
H)80%での酸素透過度が20ml(STP)/m2
・day・atm{Pa}以下の耐水性フィルムを得る
ことができる。 (a)logt≧−0.0500×T+23.2 (b)373≦T≦623 (式中、tは熱処理時間(分)で、Tは、熱処理温度
(K)である。) この場合、30℃、80%RHの条件下で測定した耐水
性フィルムの酸素ガス透過係数は、2.5×10-4ml
(STP)cm/m2・h・atm{Pa}以下とな
り、しかも該耐水性フィルムは、水及び沸騰水に対して
不溶性である。
【0037】フィルム厚3μm、温度30℃、80%R
Hでの酸素透過度が10ml(STP)/m2・day
・atm{Pa}以下の耐水性フィルムを得るには、上
記(a)式にかえて下記の関係式(c)を満足させる条
件で熱処理すればよい。ただし、Tは、上記関係式
(b)を満足するものとする。 (c)logt≧−0.0586×T+27.4 この場合、30℃、80%RHの条件下で測定した耐水
性フィルムの酸素ガス透過係数は、1.25×10-4
l(STP)cm/m2・h・atm{Pa}以下とな
る。
【0038】フィルム厚3μm、30℃、80%RHで
の酸素透過度が1ml(STP)/m2・day・at
m{Pa}以下の耐水性フィルムを得るには、上記
(a)式にかえて下記の関係式(d)を満足させる条件
で熱処理すればよい。ただし、Tは、上記関係式(b)
を満足するものとする。 (d)logt≧−0.0873×T+41.4 この場合、30℃、80%RHの条件下で測定した耐水
性フィルムの酸素ガス透過係数は、1.25×10-5
l(STP)cm/m2・h・atm{Pa}以下とな
る。
【0039】<熱処理条件2>(B)成分としてPVA
を用いた混合物から製膜した後、乾燥皮膜を、乾熱雰囲
気下に、以下の関係式(1)及び(2)で規定する熱処
理温度と熱処理時間の関係を満足する条件下で熱処理を
行うと、フィルム厚3μm、30℃、80%RHでの酸
素透過度が20ml(STP)/m2・day・atm
{Pa}以下の耐水性フィルムを得ることができる。 (1)logt≧−0.0410×T+19.1 (2)373≦T≦623 (式中、tは熱処理時間(分)で、Tは、熱処理温度
(K)である。) この場合、30℃、80%RHの条件下で測定した耐水
性フィルムの酸素ガス透過係数は、2.5×10-4ml
(STP)cm/m2・h・atm{Pa}以下とな
り、しかも該耐水性フィルムは、水及び沸騰水に対して
不溶性である。
【0040】(B)成分としてPVAを用いた混合物か
ら製膜した後、乾燥皮膜を乾熱雰囲気下に熱処理して、
フィルム厚3μm、温度30℃、80%RHでの酸素透
過度が10ml(STP)/m2・day・atm{P
a}以下の耐水性フィルムを得るには、上記(1)式に
かえて下記の関係式(3)を満足させる条件で熱処理す
ればよい。ただし、Tは、上記関係式(2)を満足する
ものとする。 (3)logt≧−0.0498×T+23.2 この場合、30℃、80%RHの条件下で測定した耐水
性フィルムの酸素ガス透過係数は、1.25×10-4
l(STP)cm/m2・h・atm{Pa}以下とな
る。
【0041】(B)成分としてPVAを用いた混合物か
ら製膜した後、乾燥皮膜を乾熱雰囲気下に熱処理して、
フィルム厚3μm、温度30℃、80%RHでの酸素透
過度が1ml(STP)/m2・day・atm{P
a}以下の耐水性フィルムを得るには、上記(1)式に
かえて下記の関係式(4)を満足させる条件で熱処理す
ればよい。ただし、Tは、上記関係式(2)を満足する
ものとする。 (4)logt≧−0.0790×T+36.9 この場合、30℃、80%RHの条件下で測定した耐水
性フィルムの酸素ガス透過係数は、1.25×10-5
l(STP)cm/m2・h・atm{Pa}以下とな
る。
【0042】<熱処理条件3>乾燥皮膜を熱ロールと接
触させて熱処理する場合、乾熱雰囲気下における場合と
比較して、より短時間で効率よく熱処理を行うことがで
きる。熱ロールを使用して熱処理を行う場合、本発明者
らの検討結果によれば、(A)、(B)、及び(C)ま
たは(D)成分を含む混合物の溶液から製膜した後、乾
燥皮膜を下記の関係式及びを満足する条件で熱処理
することにより、フィルム厚3μm、温度30℃、80
%RHでの酸素透過度が20ml(STP)/m2・d
ay・atm{Pa}以下、即ち、酸素ガス透過係数が
2.5×10-4ml(STP)cm/m2・h・atm
{Pa}以下の水及び沸騰水に不溶性の耐水性フィルム
を得ることができる。 logt≧−0.0253×T+11.2 373≦T≦623 (式中、tは熱処理時間(分)で、Tは、熱処理温度
(K)である。)
【0043】フィルム厚3μm、温度30℃、80%R
Hでの酸素透過度が10ml(STP)/m2・day
・atm{Pa}以下、即ち、酸素ガス透過係数が1.
25×10-4ml(STP)cm/m2・h・atm
{Pa}以下の耐水性フィルムを得るには、上記式に
かえて下記の関係式を満足させる条件で熱処理すれば
よい。ただし、Tは、上記関係式を満足するものとす
る。 logt≧−0.0344×T+15.9
【0044】フィルム厚3μm、温度30℃、80%R
Hでの酸素透過度が1ml(STP)/m2・day・
atm{Pa}以下、即ち、酸素ガス透過係数が1.2
5×10-5ml(STP)cm/m2・h・atm{P
a}以下の耐水性フィルムを得るには、上記式にかえ
て下記の関係式を満足させる条件で熱処理すればよ
い。ただし、Tは、上記関係式を満足するものとす
る。 logt≧−0.0643×T+31.6
【0045】前記乾熱雰囲気下での熱処理、及び熱ロー
ルを用いる熱処理のいずれの場合も、熱処理温度Tは、
373K(100℃)〜623K((350℃)の範囲
で行う。熱処理温度が低い場合には、所望の酸素ガスバ
リヤー性を得るのに長時間の熱処理時間を必要とし、逆
に、熱処理時間が高い場合には、短時間の熱処理時間で
所望の酸素ガスバリヤー性を有する耐水性フィルムを得
ることができる。ただし、熱処理温度が高すぎると、フ
ィルムの分解や変色のおそれが生じる。好ましい熱処理
温度は、433K(160℃)〜523K(250℃)
である。
【0046】熱処理時間の下限は、酸素ガス透過係数が
2.5×10-4ml(STP)cm/m2・h・atm
{Pa}以下、好ましくは1.25×10-4ml(ST
P)cm/m2・h・atm{Pa}以下、より好まし
くは1.25×10-5ml(STP)cm/m2・h・
atm{Pa}以下の耐水性フィルムが得られる時間と
するが、熱処理時間の上限は、フィルムの熱分解や変色
等が生じない範囲内とする。
【0047】乾熱雰囲気下における熱処理条件は、好ま
しくは160〜250℃で、4時間〜1分間、より好ま
しくは180〜250℃で、2時間〜1分間、最も好ま
しくは200〜250℃で、30〜1分間である。熱ロ
ールなどの加熱体との接触下における熱処理条件は、好
ましくは160〜250℃で、180〜3秒間、より好
ましくは180〜250℃で、120〜3秒間、最も好
ましくは200〜250℃で、60〜3秒間である。生
産性の観点からは、前記好ましい熱処理条件の範囲内に
おいて、比較的高温の熱処理温度で、短時間の熱処理時
間を採用することが好ましい。
【0048】このような熱処理を行うことにより、前記
(A)、(B)、及び(C)または(D)の混合物から
形成されたフィルムであって、酸素ガスバリヤー性に優
れた耐水性フィルムを得ることができる。本発明の耐水
性フィルムは、熱処理されたPVA単体フィルムよりも
はるかに優れた酸素ガスバリヤー性を有し、しかも水や
沸騰水に対して不溶性である。(C)一価金属塩または
(D)次亜リン酸塩は、酸素ガスバリヤー性及び耐水性
の改善に有効である。
【0049】積層体 本発明の酸素ガスバリヤー性を有する耐水性フィルム
は、強度、水蒸気バリヤー性、シール性などを付与する
ために、その他の高分子フィルムと組み合わせて積層体
にすることができる。例えば、強度を付与するために
は、ナイロン6、ナイロン66,ナイロン6・12など
のフィルムと積層することが好ましい。この場合、前記
支持体として使用した耐熱性を有する高分子フィルム
を、本発明の耐水性フィルムと積層した状態で使用する
ことができる。
【0050】水蒸気バリヤー性を付与するためには、ポ
リエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンと積
層することが好ましい。また、包装材料として用いる場
合、シール性の付与は特に重要であり、本発明の耐水性
フィルムをシール性を有するフィルムと積層することが
好ましい。シール性を有するフィルムとしては、特に限
定されないが、高温シールが可能な場合は、結晶融点、
あるいはビカット軟化点が200℃以下のものが好まし
い。シール方法としては、ヒートシール、インパルスシ
ール、高周波シール、超音波シール等公知の方法を用い
ることができる。一般にはヒートシール、高周波シール
が好んで用いられるが、ヒートシールが可能なシーラン
ト層としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリ
エチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・
酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、エチレン・アク
リル酸共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合
体、エチレン・アクリル酸塩共重合体などのポリオレフ
ィンや共重合ポリアミドが好ましい。
【0051】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明に
ついてより具体的に説明するが、本発明は、これらの実
施例のみに限定されるものではない。なお、物性の測定
法は、次のとおりである。 <酸素透過度>ASTM D−3985に従い、Mod
ern Control社製の酸素透過試験器OX−T
RAN 2/20型を用い、30℃、80%RHの条件
で測定した。具体的には、支持体(基材)のPETフィ
ルム及び耐水性フィルム(熱処理フィルム)が形成され
た積層体の酸素透過度(30℃、80%RH)を測定
し、以下の計算式により耐水性フィルムの酸素透過度を
算出した。 1/Ptotal=1/Pfilm+1/PPETtotal :積層体の酸素透過度 Pfilm :耐水性フィルムの酸素透過度 PPET :基材のPETの酸素透過度 <耐水性>沸騰水(95℃)に10分間、フィルムを浸
漬させ、溶解するか否かを観察した。
【0052】[実施例1、比較例1〜2]ポリアクリル
酸(PAA)として、和光純薬工業(株)製のポリアク
リル酸(30℃で8,000〜12,000センチポイ
ズ、数平均分子量150,000)の25重量%水溶液
を用い、水で希釈して15重量%水溶液を調製した。澱
粉として、和光純薬工業(株)製の可溶性澱粉(馬鈴薯
澱粉を酸により加水分解し、水溶性にしたもの)を用
い、この15重量%水溶液を調製した。また、金属塩と
して、次亜リン酸ナトリウムを用いた。PAA水溶液と
可溶性澱粉水溶液を表1の実施例1及び比較例1〜2に
示すような種々の重量比(固形分比)になるように混合
し、混合物の水溶液(15重量%)を調製した。この水
溶液には、前記固形分1gに対して、次亜リン酸ナトリ
ウムとして和光純薬工業(株)製の次亜リン酸ナトリウ
ム一水和物を、1.31×10-3molの割合で添加し
た。
【0053】これらの水溶液を、厚み25μmの延伸P
ETフィルム上に、卓上コーター(RK Print−
Coat Instruments社製K303 PR
OOFER)を用い、メイヤーバーで枚葉でコーティン
グし、次いで、ドライヤーを用いて水分を蒸発させ、厚
み3μmの乾燥皮膜を有するコーティングフィルムを得
た。この乾燥皮膜が形成されたPETフィルムを厚紙に
ビニルテープで固定し、ギヤーオーブン中、473K
(200℃)で15分間熱処理した。得られた耐水性フ
ィルムの30℃、80%RHでの酸素透過度を測定し、
その結果を表1に示す。なお、実施例1の耐水性フィル
ムは沸騰水に不溶であった。
【0054】[実施例2、比較例3]実施例1と同じP
AAと可溶性澱粉を用い、PAAと可溶性澱粉との重量
比が70:30である系に、種々の量比の次亜リン酸ナ
トリウムを添加し、実施例1と同様にして、各混合物の
コーティングフィルム(厚み3μm)を作成し、オーブ
ン中、473K(200℃)で15分間熱処理した後、
30℃、80%RHでの酸素透過度を測定した。結果を
表1に示す。なお、実施例2のフィルムは沸騰水に不溶
であった。
【0055】
【表1】
【0056】[実施例3]実施例1と同じPAAと可溶
性澱粉を用い、PAAと可溶性澱粉との重量比が70:
30である系に、次亜リン酸ナトリウムを9.84×1
-4mol/gの割合で添加し混合物の水溶液を調製し
た。得られた混合物水溶液を、3本リバースを用いて、
延伸PETフィルム上にコーティングして、ロール状コ
ーティングフィルム(厚み1.5μm)を作成した。次
いで、コーティングフィルムを熱ロールにて、表2に示
したとおり、種々の加熱温度、及び熱処理時間(熱ロー
ル接触時間)で熱処理を行った後、30℃、80%RH
での酸素透過度を測定した。結果を表2に示す。フィル
ムは、いずれも沸騰水に不溶であった。
【0057】
【表2】
【0058】[実施例4]実施例1と同じPAAと可溶
性澱粉を用い、PAAと可溶性澱粉との重量比が70:
30である系に、種々の量比の次亜リン酸カルシウムを
添加し、実施例1と同様にして、各混合物のコーティン
グフィルム(厚み3μm)を作成し、オーブン中、47
3K(200℃)で15分間熱処理した後、30℃、8
0%RHでの酸素透過度を測定した。結果を表3に示
す。フィルムは、いずれも沸騰水に不溶であった。
【0059】[実施例5、比較例4]実施例1と同じP
AAと可溶性澱粉を用い、PAAと可溶性澱粉との重量
比が70:30である系に、種々の量比の塩化リチウム
を添加し、実施例1と同様にして、各混合物のコーティ
ングフィルム(厚み3μm)を作成し、オーブン中、4
73K(200℃)で15分間熱処理した後、30℃、
80%RHでの酸素透過度を測定した。結果を表3に示
す。なお、実施例5のフィルムは、沸騰水に不溶であっ
た。
【0060】[実施例6]実施例1と同じPAAと可溶
性澱粉を用い、PAAと可溶性澱粉との重量比が70:
30である系に、種々の量比の酢酸ナトリウムを添加
し、実施例1と同様にして、各混合物のコーティングフ
ィルム(厚み3μm)を作成し、オーブン中、473K
(200℃)で15分間熱処理した後、30℃、80%
RHでの酸素透過度を測定した。結果を表3に示す。フ
ィルムは、いずれも沸騰水に不溶であった。
【0061】[比較例5]実施例1と同じPAAと可溶
性澱粉を用い、PAAと可溶性澱粉との重量比が70:
30である混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様
にしてコーティングフィルム(厚み3μm)を作成し、
オーブン中、473K(200℃)で15分間熱処理し
た後、30℃、80%RHでの酸素透過度を測定した。
結果を表3に示す。
【0062】[比較例6]実施例1と同じPAAと可溶
性澱粉を用い、PAAと可溶性澱粉との重量比が70:
30である系に、塩化銅を5.18×10-4mol/g
の割合で添加し、実施例1と同様にして、混合物のコー
ティングフィルム(厚み3μm)を作成し、オーブン
中、473K(200℃)で15分間熱処理した後、3
0℃、80%RHでの酸素透過度を測定した。結果を表
3に示す。
【0063】[比較例7]実施例1と同じPAAと可溶
性澱粉を用い、PAAと可溶性澱粉との重量比が70:
30である系に、種々の量比の塩化マグネシウムを添加
し、実施例1と同様にして、各混合物のコーティングフ
ィルム(厚み3μm)を作成し、オーブン中、473K
(200℃)で15分間熱処理した後、30℃、80%
RHでの酸素透過度を測定した。結果を表3に示す。
【0064】
【表3】
【0065】[実施例7]PAAとして、実施例1で調
製した和光純薬工業(株)製のポリアクリル酸の15重
量%水溶液を用いた。PVAとして、クラレ(株)製ポ
リビニルアルコール ポバール105(けん化度98.
5%、重合度500)を用いた。PAAとPVAとの重
量比が70:30である混合物の水溶液(濃度15重量
%)に、次亜リン酸ナトリウムを1.31×10-3mo
l/gの割合で添加し、得られた混合物の水溶液を用い
て、実施例1と同様にしてコーティングフィルム(厚み
3μm)を作成し、オーブン中、473K(200℃)
で15分間熱処理した後、30℃、80%RHでの酸素
透過度を測定した。その結果、酸素透過度は、0.2m
l(STP)/m2・day・atm{Pa}であっ
た。なお、フィルムは、沸騰水に不溶であった。
【0066】
【発明の効果】本発明によれば、高湿度条件下でも酸素
ガスバリヤー性に優れた耐水性のガスバリヤー性フィル
ムが提供される。本発明のガスバリヤー性フィルムは、
単独で、あるいは各種高分子フィルム等との積層体とし
て、食品、医薬品、日常雑貨品等の包装材料として好適
に使用することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08L 3/02 C08L 3/02 29/04 29/04 33/02 33/02 (56)参考文献 特開 平4−68028(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08J 5/00 - 5/02 C08J 5/12 - 5/22 C08L 1/00 - 101/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)ポリカルボン酸と(B)ポリビニ
    ルアルコールまたは糖類とを重量比95:5〜25:7
    5の割合で含有し、さらに(C)一価金属塩を(A)成
    分と(B)成分の合計量に対して1×10−5〜2×1
    −3mol/gの範囲内で含有する混合物溶液を製膜
    した後、乾燥皮膜を熱処理してなるフィルムであって、
    温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸素ガ
    ス透過係数が2.5×10−4ml(STP)cm/m
    ・h・atm{Pa}以下で、かつ、耐水性を有する
    ことを特徴とするガスバリヤー性フィルム。
  2. 【請求項2】 (A)ポリカルボン酸と(B)ポリビニ
    ルアルコールまたは糖類とを重量比95:5〜25:7
    5の割合で含有し、さらに(D)次亜リン酸塩を(A)
    成分と(B)成分の合計量に対して1×10−5〜3×
    10−3mol/gの範囲内で含有する混合物溶液を製
    膜した後、乾燥皮膜を熱処理してなるフィルムであっ
    て、温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸
    素ガス透過係数が2.5×10−4ml(STP)cm
    /m・h・atm{Pa}以下で、かつ、耐水性を有
    することを特徴とするガスバリヤー性フィルム。
  3. 【請求項3】 (A)ポリカルボン酸と(B)ポリビニ
    ルアルコールまたは糖類とを重量比95:5〜25:7
    5の割合で含有し、さらに(C)一価金属塩を(A)成
    分と(B)成分の合計量に対して1×10−5〜2×1
    −3mol/gの範囲内で含有する混合物溶液を製膜
    した後、乾燥皮膜を100℃(373K)以上の温度で
    熱処理して、温度30℃、相対湿度80%の条件下で測
    定した酸素ガス透過係数が2.5×10 −4 ml(ST
    P)cm/m ・h・atm{Pa}以下で、かつ、耐
    水性を有するフィルムを得ることを特徴とするガスバリ
    ヤー性フィルムの製造方法。
  4. 【請求項4】 (A)ポリカルボン酸と(B)ポリビニ
    ルアルコールまたは糖類とを重量比95:5〜25:7
    5の割合で含有し、さらに(D)次亜リン酸塩を(A)
    成分と(B)成分の合計量に対して1×10−5〜3×
    10−3mol/gの範囲内で含有する混合物溶液を製
    膜した後、乾燥皮膜を100℃(373K)以上の温度
    で熱処理して、温度30℃、相対湿度80%の条件下で
    測定した酸素ガス透過係数が2.5×10 −4 ml(S
    TP)cm/m ・h・atm {Pa}以下で、かつ、
    耐水性を有するフィルムを得ることを特徴とするガスバ
    リヤー性フィルムの製造方法。
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