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JP2002307849A - 平版印刷版原版 - Google Patents

平版印刷版原版

Info

Publication number
JP2002307849A
JP2002307849A JP2001304521A JP2001304521A JP2002307849A JP 2002307849 A JP2002307849 A JP 2002307849A JP 2001304521 A JP2001304521 A JP 2001304521A JP 2001304521 A JP2001304521 A JP 2001304521A JP 2002307849 A JP2002307849 A JP 2002307849A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
lithographic printing
printing plate
treatment
aluminum
mass
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2001304521A
Other languages
English (en)
Inventor
Hirokazu Sawada
宏和 澤田
Akio Uesugi
彰男 上杉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Photo Film Co Ltd filed Critical Fuji Photo Film Co Ltd
Priority to JP2001304521A priority Critical patent/JP2002307849A/ja
Priority to US10/059,378 priority patent/US7037635B2/en
Priority to EP02002064A priority patent/EP1231075B1/en
Priority to AT02002064T priority patent/ATE324270T1/de
Priority to DE60210836T priority patent/DE60210836T2/de
Priority to CNB021052611A priority patent/CN1241062C/zh
Publication of JP2002307849A publication Critical patent/JP2002307849A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

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    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41NPRINTING PLATES OR FOILS; MATERIALS FOR SURFACES USED IN PRINTING MACHINES FOR PRINTING, INKING, DAMPING, OR THE LIKE; PREPARING SUCH SURFACES FOR USE AND CONSERVING THEM
    • B41N3/00Preparing for use and conserving printing surfaces
    • B41N3/03Chemical or electrical pretreatment
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41NPRINTING PLATES OR FOILS; MATERIALS FOR SURFACES USED IN PRINTING MACHINES FOR PRINTING, INKING, DAMPING, OR THE LIKE; PREPARING SUCH SURFACES FOR USE AND CONSERVING THEM
    • B41N1/00Printing plates or foils; Materials therefor
    • B41N1/04Printing plates or foils; Materials therefor metallic
    • B41N1/08Printing plates or foils; Materials therefor metallic for lithographic printing
    • B41N1/083Printing plates or foils; Materials therefor metallic for lithographic printing made of aluminium or aluminium alloys or having such surface layers

Landscapes

  • Printing Plates And Materials Therefor (AREA)
  • Photosensitive Polymer And Photoresist Processing (AREA)
  • Materials For Photolithography (AREA)
  • Electric Double-Layer Capacitors Or The Like (AREA)
  • Glass Compositions (AREA)
  • Organic Insulating Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】粗面化処理の効率および安定性に優れ、かつ、
バーニング処理を行った場合においても印刷中に平版印
刷版の疲労破断が発生しない平版印刷版原版の提供。 【解決手段】Al純度が99質量%以上のアルミニウム
板の表面に感光層を形成して得られる平版印刷版原版で
あって、300℃で7分間加熱した後の疲労破断強度
が、加熱を行う前の疲労破断強度に対して、75%以上
である平版印刷版原版。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は平版印刷版原版に関
し、詳しくは、耐熱軟化性に優れ、特に、バーニング処
理後の疲労強度に優れるため、版切れを起こさない平版
印刷版原版に関する。また、記録層との密着力が強く、
優れた耐刷性を有する平版印刷版原版に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、平版印刷版用支持体としてアルミ
ニウム板が用いられている。そして、このアルミニウム
板には、通常、感光層との密着性および非画像部におけ
る保水性を付与するために粗面化処理が施される。粗面
化処理の方法としては、従来、ボールグレイン、ブラシ
グレイン等の機械的粗面化法;塩酸、硝酸等を主体とす
る電解液を用いてアルミニウム板の表面を電解研磨する
電気化学的粗面化法;酸溶液やアルカリ溶液によりアル
ミニウム板の表面をエッチングする化学的粗面化法等が
知られているが、近年では、電気化学的粗面化法により
得られる粗面はピット(凹凸)が均質で、平版印刷版と
したときに印刷性能に優れることから、電気化学的粗面
化法により、または、電気化学的粗面化法と他の粗面化
法とを組み合わせることにより、粗面化処理を行うこと
が主流になってきている。このような粗面化処理に適し
た材料として、JIS A1050材に代表されるJI
S A1000系の材料が用いられることが多い。これ
は、A1000系の材料は、Al純度が高く不純物が少
ないため、電気化学的粗面化処理(電解粗面化処理)や
化学的粗面化処理を安定的に行うことができ、加えて、
機械的強度が適度であるため、機械的粗面化処理に対す
る適性にも優れるからである。
【0003】粗面化処理に引き続いて、表面の硬度を向
上させるとともに、支持体と感光層との密着性を向上さ
せるため、一般に陽極酸化処理が行われている。引き続
き、感光層を形成し、平版印刷版原版とされるが、必要
に応じて、感光層を形成する前に、界面処理や、下塗り
を行うことも一般的である。平版印刷版原版は、画像を
露光、現像したうえで、必要に応じてガム引きを行い平
版印刷版とされ、印刷機の版胴に取り付けられ、印刷に
供される。
【0004】また、平版印刷版は、印刷機の版胴に取り
付けられる際にその両端を折り曲げられ、折り曲げられ
た部分のそれぞれは、印刷機版胴のくわえ部、くわえ尻
部と呼ばれる2箇所のクランプに、平版印刷版を版胴に
密着させるように張力を加えたうえで固定される。オフ
セット印刷の場合、版胴に固定された平版印刷版にイン
キと湿し水が供給されると、親油性を示す画像部にはイ
ンキが付着し、親水性を示す非画像部には湿し水が付着
することで、画像に対応するインキの有無が生じる。画
像に対応したインキはブランケット胴と呼ばれる中間胴
に一旦転写された後、紙等に再転写されて印刷物ができ
る。ここで、平版印刷版の両端部の2箇所の折り曲げら
れた部分においては、折り曲げに対する反力のため、版
胴から浮き上がりやすくなる傾向があり、その状態で版
胴がブランケットに繰り返し押し付けられると、浮き上
がり部分が繰り返し曲げられるため、疲労破断が起こり
やすいという不具合がある。
【0005】一方、平版印刷版においては、露光し現像
した後に、バーニング処理(ポストベーキング処理)と
呼ばれる加熱処理を行うことも一般的に行われている。
バーニング処理は、用途によって異なるが、通常、20
0℃以上、特に240〜270℃前後で行われることが
多く、画像部の感光層をより硬化させることで、耐刷性
が向上し、より多くの枚数の印刷が可能となる。これ
は、画像部の感光層が硬化することにより、印刷中の摩
耗が抑制されるからである。しかしながら、このバーニ
ング処理を行うと、アルミニウム板が再結晶や回復を起
こして強度が低下するという問題が生じる場合がある。
【0006】このバーニング処理後の強度低下に対して
は、多くの提案がなされている。例えば、特公昭4−7
3394号公報や特開平7−126820号公報におい
ては、加熱後の0.2%耐力等を規定することが提案さ
れている。また、特開平7−39906号公報において
は、板断面の結晶粒の円相当径を規定することが提案さ
れている。また、特開平7−305133号公報におい
ては、Feの固溶量を規定することが提案されている。
また、合金成分からの対応策も数多く提案されている。
例えば、Mnを添加する方法が、特表平5−50158
5号公報、米国特許第5,009,722号明細書、特
公平4−19290号公報、米国特許第5,114,8
25号明細書において提案されている。また、Mgを添
加する方法が、特公平5−462号公報、特公平6−3
7116号公報、特公平4−73392号公報、特公平
3−68939号公報、特公平3−11635号公報に
提案されている。また、MnおよびMgの両方を添加す
る方法が、特公平5−76530号公報、特公平5−2
8197号公報において提案されている。また、上記の
MnやMgの添加と組み合わせまたは単独で、Zrを添
加する方法が、特公平4−72720号公報等に提案さ
れている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公昭
4−73394号公報、特開平7−126820号公報
等の加熱後の0.2%耐力等を規定する方法や、特開平
7−39906号公報の板断面の結晶粒の円相当径を規
定する方法や、特開平7−305133号公報のFeの
固溶量を規定する方法では、確かに、バーニング処理後
の引張強度の低下率が少なくなり、ある程度の効果が見
られたが、数多くの枚数の印刷を繰り返す中で、平版印
刷版の疲労破断が起こる場合があるという不具合があっ
た。一方、MnやMgを添加する方法は、印刷中の破断
を生じなくする効果があるが、粗面化処理の適性に優れ
るJIS A1000系の材料に比べて、粗面化処理の
効率および安定性に欠ける不具合があるとともに、所定
の微量元素を原材料として添加する必要があるので、原
材料コストが高くなるという不具合がある。本発明は、
このような状況に鑑みてなされたものであり、粗面化処
理の効率および安定性に優れ、かつ、バーニング処理を
行った場合においても印刷中に平版印刷版の疲労破断が
発生しない平版印刷版原版を提供することを目的とす
る。また、平版印刷版用支持体と記録層との密着力が強
固であり、画像部の剥離または部分的な脱落が生じない
耐刷性にきわめて優れた平版印刷版原版を提供すること
を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の課題
を解決すべく鋭意研究した結果、Al純度が99質量%
以上のアルミニウム板を原材料として用いて、300℃
で7分間加熱した前後の疲労破断強度の変化率を規定す
ることが有効であることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、Al純度が99質量%以上のアルミニ
ウム板の表面に感光層を形成して得られる平版印刷版原
版であって、300℃で7分間加熱した後の疲労破断強
度が、加熱を行う前の疲労破断強度に対して、75%以
上である平版印刷版原版を提供する。
【0009】本発明の平版印刷版原版は、前記300℃
で7分間加熱した後の0. 2%耐力が、加熱を行う前の
0.2%耐力に対して、65%以上であるのが好まし
い。
【0010】また、本発明は、Al純度が99質量%以
上のアルミニウム板の表面に感光層を形成して得られる
平版印刷版原版であって、該アルミニウム板の表面から
深さ50μmまでの領域に位置する結晶粒が、板圧延方
向に垂直な方向の幅が平均80μm以下、最大150μ
m以下であり、板圧延方向の長さが平均400μm以
下、最大500μm以下である平版印刷版原版を提供す
る。特に、Al純度が99質量%以上のアルミニウム板
の表面に感光層を形成して得られる平版印刷版原版であ
って、該アルミニウム板の表面から深さ50μmまでの
領域に位置する結晶粒が、板圧延方向に垂直な方向の幅
が平均80μm以下、最大150μm以下であり、板圧
延方向の長さが平均400μm以下、最大500μm以
下であり、かつ、300℃で7分間加熱した後の疲労破
断強度が、加熱を行う前の疲労破断強度に対して、75
%以上である平版印刷版原版は、本発明の好ましい態様
の一つである。
【0011】前記アルミニウム板が、Fe:0.15〜
0.5質量%、Si:0.03〜0.15質量%、T
i:0.003〜0.050質量%を含有し、かつ、C
u:0.001〜0.05質量および/またはMg:
0.001〜0.1質量%を含有するのが好ましい態様
の一つである。
【0012】本発明の平版印刷版原版は、アルミニウム
板の表面に粗面化処理および陽極酸化処理を行った後、
感光層を形成して得られるのが好ましい。
【0013】また本発明の平版印刷版原版は、粗面化処
理により前記アルミニウム板の表面に、凹状ピットのピ
ット開口部の平均開口径が0.6μm以下、かつ、ピッ
トの深さとピットの開口径比(ピット深さ/ピット径)
の平均値が0.15〜1.0である凹状ピットを形成さ
せた後、感光層を形成して得られるのが特に好ましい。
ここで、凹状ピットの平均開口径は、0.3μm以下で
あるのがより好ましく、また、0.02μm以上である
のがより好ましい。凹状ピットの深さ/開口径比の平均
は、0.2以上であるのがより好ましく、また、0.5
以下であるのがより好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明の平版印刷版原版に用いられるアルミニウ
ム板は、Al純度が99質量%以上であれば、特に限定
されないが、Alのほかに、Fe、Si、Ti、Cu、
Mg等を含有することができる。中でも、Fe:0.1
5〜0.5質量%、Si:0.03〜0.15質量%、
Ti:0.003〜0.050質量%を含有し、かつ、
Cu:0.001〜0.05質量および/またはMg:
0.001〜0.1質量%を含有するのが好ましい。
【0015】Feは、平版印刷版の強度と版胴に取り付
ける際のフィットネス性に影響を与えるため、Fe含有
量は、0.5質量%以下であるのが好ましく、0.4質
量%以下であるのがより好ましい。また、Feは原材料
のAl地金に不可避不純物として含有されているため、
0.15質量%未満にするためには、高価な高純度地金
を使用しなければならないことになり、現実的でない。
この点で、Fe含有量は、0.15質量%以上であるの
が好ましく、0.2質量%以上であるのがより好まし
い。
【0016】Siは、原材料のAl地金に不可避不純物
として含有されているため、原材料差によるばらつきを
防ぐため、意図的に微量添加されることが多い。その
際、Si含有量が0.15質量%を超えると、印刷時に
非画像部が汚れやすくなるという不具合が生じる場合が
ある。この点で、Si含有量は、0.15質量%以下で
あるのが好ましく、0.13質量%以下であるのがより
好ましい。一方、原材料によっては、既にSi含有量が
0.03質量%以上のことがあるため、0.03質量%
未満の含有量は現実的ではない。この点で、Si含有量
は、0.03質量%以上であるのが好ましく、0.05
質量%以上であるのがより好ましい。
【0017】Tiは、以前より、鋳造時の結晶組織を微
細にするために添加されている。Ti含有量が0.00
3質量%未満であると、微細化の効果が不十分となる場
合がある。この点で、Ti含有量は、0.003質量%
以上であるのが好ましく、0.005質量%以上である
のがより好ましい。一方、Ti含有量が0.050質量
%を超えると、それ以上の微細化効果が望めず、かえっ
て、過剰なTiB2 等のTi化合物が生成し、不純物と
して欠陥の原因になる場合がある。この点で、Ti含有
量は、0.050質量%以下であるのが好ましく、0.
04質量%以下であるのがより好ましい。TiはAl−
Ti合金またはAl−B−Ti合金として添加される。
【0018】Cuは、電解粗面化処理を制御する上で非
常に重要な元素であるとともに、平版印刷版の強度を向
上させる効果もある。この点で、Cu含有量は、0.0
01質量%以上であるのが好ましい。一方、Cu含有量
が0.05質量%を超えると、原材料コストが高くな
り、また、電解粗面化処理においても悪影響が出やすく
なるので、0.05質量%以下であるのが好ましい。
【0019】Mgは、電解粗面化処理を制御する上で重
要な元素であるとともに、平版印刷版の強度を向上させ
る効果もある。この点で、Mg含有量は、0.001質
量%以上であるのが好ましい。一方、Mg含有量が0.
1質量%を超えると、原材料コストが高くなるので、
0.1質量%以下であるのが好ましい。
【0020】アルミニウム板の残部は、Alと不可避不
純物である。不可避不純物としては、例えば、Ga、
V、Pbが挙げられる。
【0021】本発明の平版印刷版原版に用いられるアル
ミニウム板は、例えば、下記の方法により製造すること
ができる。まず、所望の元素を含有するアルミニウム溶
湯を調製する。ついで、このアルミニウム溶湯を清浄化
処理して、溶湯中に混入している水素等の不要ガスや、
固形の不純物を除去する。不要ガスを除去する清浄化処
理としては、例えば、フラックス処理;アルゴンガス、
塩素ガス等を使った脱ガス処理が挙げられる。また、固
形の不純物を除去する清浄化処理としては、例えば、セ
ラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィル
タ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナ
フレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、
グラスクロスフィルタ等を使ったフィルタリング処理が
挙げられる。また、脱ガス処理とフィルタリング処理と
を組み合わせた清浄化処理を行うこともできる。
【0022】ついで、アルミニウム溶湯を、DC鋳造法
に代表される固定鋳型を用いる鋳造法、および、連続鋳
造法に代表される駆動鋳型を用いる鋳造法のいずれかに
より、鋳造する。DC鋳造法の場合、板厚300〜80
0mmの鋳塊が製造されるので、常法に従い、面削によ
り表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmが切削
される。その後、必要に応じて、均熱処理が行われる。
均熱処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないよう
に、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。
また、1時間未満の場合は、均熱処理の効果が不十分と
なることがある。
【0023】その後、熱間圧延、冷間圧延を行ってアル
ミニウム板の圧延板とする。熱間圧延の開始温度は35
0〜500℃が適当である。冷間圧延の前もしくは後、
またはその途中において、中間焼鈍処理を行ってもよ
い。その条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて280〜60
0℃で2〜20時間、好ましくは350〜500℃で2
〜10時間加熱するか、連続焼鈍炉を用いて400〜6
00℃で6分以下、好ましくは450〜550℃で2分
以下加熱するかである。連続焼鈍炉を用いて10℃/秒
以上の昇温速度で加熱して、結晶組織を細かくすること
もできる。
【0024】本発明においては、アルミニウム板の表面
から深さ50μmまでの領域に位置する結晶粒が、板圧
延方向に垂直な方向の幅(以下、単に「幅」ともい
う。)が平均80μm以下(好ましくは50μm以
下)、最大150μm以下(好ましくは120μm以
下)であり、板圧延方向の長さ(以下、単に「長さ」と
もいう。)が平均400μm以下(好ましくは350μ
m以下)、最大500μm以下(好ましくは450μm
以下)であるのが好ましい。熱間圧延後に連続焼鈍炉に
よる焼鈍を行う方法や、熱間圧延後に冷間圧延を1回以
上行ってから連続焼鈍炉による焼鈍を行う方法により、
結晶粒を上述したように調整することができる。アルミ
ニウム板の所定の深さ領域に存在する結晶粒の大きさを
所定値以下とすると、単位面積あたりにより多くの結晶
粒が存在することになる。アルミニウム板の金属組織は
結晶粒とその境界である結晶粒界から成り立っているか
ら、より多くの結晶粒が存在するということは、より多
くの結晶粒と結晶粒界が存在することを意味する。そし
て、より多くの結晶粒と結晶粒界が存在すると、繰り返
し曲げで生じる微小なクラックの伝播が進みにくくな
り、従来問題であった平版印刷版の疲労破断が起こりに
くくなるのである。特に、微小なクラックは、板の表層
付近で発生しやすいので、表面から深さ50μmまでの
領域に位置する結晶粒が重要となる。
【0025】結晶粒の確認方法としては、一般的なマク
ロエッチングによる方法を用いることができるが、本発
明の平版印刷版原版は、少なくともその片面に粗面化処
理や感光層塗布が行われており、また、感光層塗布が行
われていない側の面にも、例えば、現像時のAl溶出抑
制のための保護層が塗布されていたりするので、単純な
マクロエッチングでは結晶粒を確認しにくい場合があ
る。そのため、一旦、機械的研磨または電気化学的研磨
で表面に略鏡面仕上げを施し、そのうえで、所定のエッ
チング液を用いてエッチングを行い結晶粒を観察しやす
くした後に、観察することが適当である。ここで、機械
的研磨の方法としては、例えば、研磨紙を用いる方法、
研磨剤とパフを用いる方法が挙げられる。電気化学的研
磨の方法としては、例えば、硫酸、リン酸等の中で直流
電解研磨する方法が挙げられる。結晶粒を観察するため
のエッチング液としては、フッ化水素酸の水溶液、複数
の酸を混ぜた水溶液等が使用できる。結晶粒の観察は、
以上のような、研磨とエッチングを行ったサンプルを偏
光フィルタを用いた光学顕微鏡を用いて写真撮影を行う
方法による。この写真を用いて結晶粒の幅と長さを測定
し、平均値および最大値を求めることができる。
【0026】焼鈍を行った後において、結晶粒を適当な
長さに引き延ばすため、冷間圧延を行うのが好ましい。
これにより、板の引張強度が向上するとともに、結晶粒
界が、圧延方向に引き延ばされるため、板幅方向にクラ
ックが伝播しにくくすることができる。ただし、必要以
上に引き延ばすと、単位面積あたりの結晶粒の数を減ら
してしまうため好ましくない。
【0027】冷間圧延で所定の厚さ、例えば、0.1〜
0.5mmに仕上げられたアルミニウム板は、更にロー
ラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって平面
性を改善してもよい。また、所定の板幅に加工するた
め、スリッタラインを通すことも通常行われる。
【0028】以上のようにして得られたアルミニウム板
は、表面に感光層を形成して平版印刷版原版とされる
が、表面に粗面化処理および陽極酸化処理を行った後、
感光層を形成して平版印刷版原版とされるのが好まし
い。
【0029】粗面化処理は、機械的粗面化処理、電解粗
面化処理、化学的粗面化処理等が、単独でまたは組み合
わせて用いられる。
【0030】粗面化処理により、アルミニウム板の表面
に、凹状ピットのピット開口部の平均開口径が0.6μ
m以下、かつ、ピットの深さとピットの開口径比(ピッ
ト深さ/ピット径)の平均値が0.15〜1.0である
凹状ピットを形成させた後、感光層を形成して得られる
平版印刷版原版が特に好ましい。アルミニウム板の機械
的粗面化処理、電解粗面化処理、化学的粗面化処理等
は、一般に用いられる方法、条件で行うことができる
が、前記の性状を有する凹状ピットを形成するには、ア
ルミニウム合金板を硝酸水溶液中で電気化学的な粗面化
処理を行った後、塩酸水溶液中で電気化学的な粗面化処
理を行う方法が好ましい。
【0031】またアルミニウム合金板は電気化学的粗面
化処理を含む粗面化処理を施され、機械的粗面化または
化学エッチング処理と組合わせて施してもよい。該化学
エッチング処理は、機械的粗面化処および電気化学的粗
面化処理の前後に行われるのが好ましい。また粗面化処
理と化学エッチング処理は、それぞれ2回以上行っても
よく、粗面化処理と化学エッチング処理の順序は、特に
限定されない。
【0032】特に好ましい製造方法は、アルミニウム板
を順に、 1)機械的に粗面化処理し、 2)アルカリ水溶液中でエッチング処理し、(第1アル
カリエッチング処理) 3)酸性水溶液中でデスマット処理し、(第1デスマッ
ト処理) 4)硝酸を主体とする水溶液中で電気化学的に粗面化処
理し、(第1電気化学的粗面化処理) 5)アルカリ水溶液中でエッチング処理し、(第2アル
カリエッチング処理) 6)酸性水溶液中でデスマット処理し、(第2デスマッ
ト処理) 7)塩酸を主体とする水溶液中で電気化学的に粗面化処
理し、(第2電気化学的粗面化処理) 8)アルカリ水溶液中でエッチング処理し、(第3アル
カリエッチング処理) 9)酸性水溶液中でデスマット処理し、(第3デスマッ
ト処理) する方法である。なお、上記1)〜9)の各工程(処
理)の間に水洗を行うことが望ましい。ただし、連続し
て行う2つの工程(処理)が同じ組成の液を使用する場
合は水洗を省いてもよい。
【0033】粗面化処理(機械的および電気化学的)お
よび化学エッチング処理は、前記したように一般的な条
件、方法を用いることができるが、本発明の凹状ピット
を形成させるためには以下に説明する方法、条件が好ま
しい。
【0034】機械的な粗面化処理は、毛径が0.2〜
1.61mmの回転するナイロンブラシロールと、アル
ミニウム板表面に供給されるスラリー液で機械的に粗面
化処理することが有利である。研磨剤としては公知の物
が使用できるが、珪砂、石英、水酸化アルミニウムまた
はこれらの混合物が好ましい。特開平6−13517
5、特公昭50−40047に詳しく記載されている。
スラリー液の比重は1.05〜1.3が好ましい。勿
論、スラリー液を吹き付ける方式、ワイヤーブラシを用
いる方式、凹凸を付けた圧延ロールの表面形状をアルミ
ニウム板に転写する方式などを用いても良い。その他の
方式としては、特開昭55−074898、特開昭61
ー162351、特開昭63−104889等に記載さ
れている。
【0035】アルカリ水溶液中での化学的なエッチング
処理に用いるアルカリ水溶液の濃度は1〜30wt%が
好ましく、アルミニウムはもちろんアルミニウム合金中
に含有する合金成分が0〜10wt%含有していてよ
い。アルカリ水溶液としては、とくに苛性ソーダを主体
とする水溶液が好ましい。液温は常温〜95℃で、1〜
120秒間処理することが好ましい。エッチング処理が
終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないために
ニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗を行
うことが好ましい。
【0036】第1アルカリエッチング処理におけるアル
ミニウム板の溶解量は、0.5〜30g/m2 が好まし
く、より好ましくは、1.0〜20g/m2 であり、特
に好ましくは、3.0〜15g/m2 である。第2アル
カリエッチング処理においては、アルミニウム板の溶解
量は0.001〜30g/m2 が好ましく、より好まし
くは、0.1〜4g/m2 であり、特に好ましくは、
0.2〜1.5g/m2 である。第3アルカリエッチン
グ処理においては、アルミニウム板の溶解量は0.00
1〜30g/m2 が好ましく、より好ましくは、0.0
1〜0.8g/m2 であり、特に好ましくは、0.02
〜0.3g/m2 である。
【0037】酸性水溶液中でのデスマット処理化学的な
エッチングをアルカリの水溶液を用いて行った場合は一
般にアルミニウムの表面にはスマットが生成するので、
この場合には燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、また
はこれらの2以上の酸を含む混酸でデスマット処理す
る。酸性水溶液の濃度は0.5〜60wt%が好まし
い。さらに酸性水溶液中にはアルミニウムはもちろんア
ルミニウム合金中に含有する合金成分が0〜5wt%が
溶解していても良い。液温は常温から95℃で実施さ
れ、処理時間は1〜120秒が好ましい。デスマット処
理が終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないた
めにニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗
を行うことが好ましい。
【0038】該支持体の製造法における電気化学的粗面
化処理に用いられる水溶液について説明する。硝酸を主
体とする水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気
化学的な粗面化処理に用いるものを使用でき、1〜10
0g/リットルの硝酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝
酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、等の硝酸イオン、塩
化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、
等の塩酸イオンを有する塩酸または硝酸化合物の1つ以
上を1g/リットル〜飽和まで添加して使用することが
できる。硝酸を主体とする水溶液中には、鉄、銅、マン
ガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のア
ルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよ
い。とくに好ましくは、硝酸0.5〜2wt%水溶液中
にアルミニウムイオンが3〜50g/リットルとなるよ
うに塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムを添加した液
を用いることが好ましい。温度は10〜90℃が好まし
く、40〜80℃がより好ましい。
【0039】塩酸を主体とする水溶液は、通常の直流ま
たは交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるもの
を使用でき、1〜100g/リットルの塩酸水溶液に、
硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウ
ム、等の硝酸イオン、塩化アルミニウム、塩化ナトリウ
ム、塩化アンモニウム、等の塩酸イオンを有する塩酸ま
たは硝酸化合物の1つ以上を1g/リットル〜飽和まで
添加して使用することができる。塩酸を主体とする水溶
液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグ
ネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金
属が溶解していてもよい。とくに好ましくは、硝酸0.
5〜2wt%水溶液中にアルミニウムイオンが3〜50
g/リットルとなるように塩化アルミニウム、硝酸アル
ミニウムを添加した液を用いることが好ましい。温度は
10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好まし
い。次亜塩素酸を添加してもよい。
【0040】交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用
いる硝酸を主体とする水溶液は、通常の直流または交流
を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用で
きる。有利には、前記硝酸を主体とする水溶液または塩
酸を主体とする水溶液から選ぶことができる。電気化学
的な粗面化に用いる交流電源波形は、サイン波、矩形
波、台形波、三角波などを用いることができるが、矩形
波または台形波が好ましく、台形波が特に好ましい。周
波数は0.1〜250Hzが好ましい。図1は、本発明
の電気化学的粗面化に好ましく用いられる交流電源波形
の一例である台形波を示す波形図である。図1におい
て、taはアノード反応時間、tcはカソード反応時
間、tpは電流が0からピークに達するまでの時間、I
aはアノードサイクル側のピーク時の電流、Icはカソ
ードサイクル側のピーク時の電流である。台形波におい
て、電流が0からピークに達するまでの時間tpは1〜
10msecが好ましい。電源回路のインピーダンスの
影響のため、tpが1未満であると電流波形の立ち上が
り時に大きな電源電圧が必要となり、電源の設備コスト
が高くなる。10msecより大きくなると、電解液中
の微量成分の影響を受けやすくなり均一な粗面化が行わ
れにくくなる。電気化学的な粗面化に用いる交流の1サ
イクルの条件が、アルミニウム板のアノード反応時間t
aとカソード反応時間tcの比tc/taが1〜20、
アルミニウム板がアノード時の電気量Qcとアノード時
の電気量Qaの比Qc/Qaが0.3〜20、アノード
反応時間taが5〜1000msec、の範囲にあるこ
とが好ましい。tc/taは2.5〜15であることが
より好ましい。Qc/Qaは2.5〜15であることが
より好ましい。電流密度は台形波のピーク値で電流のア
ノードサイクル側Ia、カソードサイクル側Icともに
10〜200A/dm2 が好ましい。Ic/Iaは0.
3〜20の範囲にあることが好ましい。電気化学的な粗
面化が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応
にあずかる電気量の総和は25〜1000C/dm2
好ましい。本発明で交流を用いた電気化学的な粗面化に
用いる電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型など公
知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開
平5−195300に記載のようなラジアル型電解槽が
とくに好ましい。電解槽内を通過する電解液はアルミニ
ウムウェブの進行とパラレルでもカウンターでもよい。
ひとつの電解槽には1個以上の交流電源が接続すること
ができる。電解槽は2個以上を用いることもできる。交
流を用いた電気化学的な粗面化には図2に示した装置を
用いることができる。図2において、50は主電解槽、
51は交流電源、52はラジアルドラムローラ、53
a,53bは主極、54は電解液供給口、55は電解
液、56は補助陽極、60は補助陽極槽、Wはアルミニ
ウム板である。電解槽を2つ以上用いるときには電解条
件は同じでもよいし異なっていてもよい。アルミニウム
板Wは主電解槽50中に浸漬して配置されたラジアルド
ラムローラ52に巻装され、搬送過程で交流電源51に
接続する主極53a、53bにより電解処理される。電
解液55は電解液供給口54からスリット56を通じて
ラジアルドラムローラ52と主極53a、53bとの間
の電解液通路57に供給される。主電解槽50で処理さ
れたアルミニウム板Wは次いで補助陽極槽60で電解処
理される。この補助陽極槽60には補助陽極58がアル
ミニウム板Wと対向配置されており、電解液55が補助
陽極58とアルミニウム板Wとの間の空間を流れるよう
に供給される。
【0041】直流を用いた電気化学的な粗面化処理と
は、アルミニウム板とこれに対向する電極間に直流電流
を加え、電気化学的に粗面化する方法を言う。電解液
は、公知の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化
処理に使用するものを用いることができる。有利には、
前記硝酸を主体とする水溶液または塩酸を主体とする水
溶液から選ぶことができる。温度は10〜80℃が好ま
しい。直流を用いた電気化学的な粗面化に用いる処理装
置は公知の直流を用いたものを使用することが出来る
が、特開平1ー141094に記載されているように一
対以上の陽極と陰極を交互に並べた装置を用いることが
好ましい。公知の装置の一例としては特願平5−682
04、特願平6−205657、特願平6−2105
0、特開昭61−19115、特公昭57−44760
などに記載されている。また、アルミニウム板に接触す
るコンダクタロールと、これに対向する陰極との間に、
直流電流を加え、アルミニウム板を陽極にして電気化学
的な粗面化処理を行っても良い。電解処理が終了した後
には、処理液を次工程に持ち込まないためにニップロー
ラーによる液切りとスプレーによる水洗を行うことが好
ましい。電気化学的な粗面化に使用する直流はリップル
率が20%以下の直流を用いることが好ましい。電流密
度は10〜200A/dm2 が好ましく、アルミニウム
板が陽極時の電気量は25〜1000C/dm2 が好ま
しい。陽極はフェライト、酸化イリジウム、白金、白金
をチタン、ニオブ、ジルコニウムなどのバルブ金属にク
ラッドまたはメッキしたものなど公知の酸素発生用電極
から選定して用いることが出来る。陰極はカーボン、白
金、チタン、ニオブ、ジルコニウム、ステンレスや燃料
電池用陰極に用いる電極から選定して用いることができ
る。
【0042】前記処理により支持体のアルミニウム合金
板の表面には、特定の性状、具体的には、凹状ピットの
ピット開口部の平均開口径が0.6μm以下、かつ、ピ
ットの深さとピットの開口径比(ピット深さ/ピット
径)の平均値が0.15〜1.0である凹状ピットが形
成される。凹状ピットの平均開口径は、0.3μm以下
であるのがより好ましく、また、0.02μm以上であ
るのがより好ましい。凹状ピットの深さ/開口径比の平
均は、0.2以上であるのがより好ましく、また、0.
5以下であるのがより好ましい。
【0043】アルミニウム支持体の表面の凹状ピットの
平均開口径および開口径に対する深さの比の平均は、以
下のようにして求めることができる。なお、アルミニウ
ム支持体としては、画像記録層を設ける前のアルミニウ
ム支持体を用いてもよく、平版印刷版原版から画像記録
層を除去したものを用いてもよい。
【0044】(1)凹状ピットの平均開口径 凹状ピットの平均開口径の測定方法は、以下のおよび
の2通りの方法が挙げられる。本発明者が測定したと
ころ、両者の結果はほぼ同じ値を示した。 電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM、例え
ば、日立製作所製のS−900)を用いて支持体の表面
を真上から倍率50000倍で撮影する。得られたSE
M写真またはそのコピーに、長さ10cm(2μm相
当)の直線を引き、直線が通過した凹状ピットについ
て、開口径(=(長径+短径)/2)を測定する。開口
径を測定した凹状ピットの数が少なくとも20個となる
まで開口径の測定を続け、その後、平均開口径を算出す
る。 FE−SEMを用いて支持体の表面を真上から倍率5
0000倍で撮影する。得られたSEM写真をスキャナ
ーでコンピュータに画像データとして取り込み、市販の
画像処理ソフトを用いて、凹状ピットの平均開口径を求
める。
【0045】(2)凹状ピットの開口径に対する深さの
比の平均 凹状ピットの開口径に対する深さの比の平均の測定方法
は、以下の〜の4通りの方法が挙げられる。本発明
者が測定したところ、いずれの結果もほぼ同じ値を示し
た。 アルミニウム支持体を粗面化処理を施した面が外側に
なるように90゜以上折り曲げて、試料台に導電性ペー
ストを用いて固定する。FE−SEMを用いて折り曲げ
た部分における陽極酸化皮膜が割れた部分を倍率500
00倍で撮影する。少なくとも10個の凹状ピットにつ
いて開口径および深さを求め、開口径に対する深さの比
の平均を算出する。なお、凹状ピットの開口径の測定方
法は、上記(1)の方法を用いることができる。ま
た、凹状ピットの深さとしては、最も深い部分の深さを
用いる。 アルミニウム支持体を樹脂に包埋させ、自動研磨機で
研磨して断面を作成しする。以下、上記と同様の方法
で、FE−SEMを用いて測定する。 ミクロトームを用いてアルミニウム支持体の断面を削
り出す。以下、と同様の方法で、FE−SEMを用い
て測定する。 上記との方法を組み合わせてアルミニウム支持体
の断面を作成する。以下、と同様の方法で、FE−S
EMを用いて測定する。
【0046】前記微小な凹状ピットがアルミニウム板表
面に成形されると、アルミニウム板の表面積が増大し、
記録層(画像部)との密着力が強固となり、平版印刷版
原版としたときに画像部の剥離または部分的な脱落が起
こらず、極めて優れた耐刷性を有する。
【0047】粗面化処理に引き続いて、アルミニウム板
の表面の耐磨耗性を高めるために陽極酸化処理が行われ
るのが好ましい。陽極酸化処理に使用される電解質は、
多孔質酸化皮膜を形成することができるものであれば、
いかなるものでもよい。一般には、硫酸、リン酸、シュ
ウ酸、クロム酸、またはこれらの混合物が用いられる。
電解質の濃度は、電解質の種類等によって適宜決められ
る。陽極酸化処理の条件は、電解質によってかなり変動
するので、特定しにくいが、一般的には電解質の濃度が
1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度1〜60A
/dm2 、電圧1〜100V、電解時間10〜300秒
であればよい。
【0048】アルミニウム板は、好ましくは上記のよう
にして粗面化処理および陽極酸化処理を行った後、表面
に感光材を塗布し乾燥して、感光層を形成して平版印刷
版原版とされる。感光材は、特に限定されず、通常、感
光性平版印刷版に用いられているものを用いることがで
きる。例えば、ノボラック樹脂とナフトキノンジアジド
を含有するボジ型の感光層、ジアゾ系樹脂やフォトポリ
マー樹脂を用いたネガ型の感光層が挙げられる。これら
の感光層を形成して得られる平版印刷版原版は、リスフ
ィルムを用いて画像を焼き付け、現像処理、ガム引き処
理を行うことで、印刷機に取り付けることができる平版
印刷版とすることができる。
【0049】また、レーザに感度を持つ素材を用いた感
光層を設けると、レーザを使って画像を直接焼き付ける
こともできる。例えば、赤外線吸収剤、熱によって酸を
発生させる化合物、および、酸によって架橋する化合物
を含有する感光層;赤外線吸収剤、熱によって酸を発生
させる化合物、および、酸によって分解する結合部を有
する化合物を含有する感光層;レーザ光照射によってラ
ジカルを発生させる化合物、アルカリ可溶のバインダ
ー、および、多官能性のモノマーまたはプレポリマーを
含有する層と、酸素遮断層との2層を含む感光層;物理
現像核層と、ハロゲン化銀乳剤層との2層からなる感光
層;多官能性モノマーと多官能性バインダーからなる重
合層と、ハロゲン化銀および還元剤からなる層と、酸素
遮断層との3層を含む感光層;ノボラック樹脂とナフト
キノンジアジドを含有する層と、ハロゲン化銀を含有す
る層との2層を含む感光層;有機光導電体を含有する感
光層;レーザ光照射によって除去されるレーザ光吸収層
と、親油性層および/または親水性層とからなる感光
層;エネルギーを吸収して酸を発生させる化合物、酸に
よってスルホン酸またはカルボン酸を発生させる官能基
を側鎖に有する高分子化合物、および、可視光を吸収す
ることで酸発生剤にエネルギーを与える化合物を含有す
る感光層が挙げられる。他には、例えば特願2001−
276265号に記載の画像記録層(感光層)が挙げら
れる。
【0050】このようにして得られた本発明の平版印刷
版原版は、300℃で7分間加熱した後の疲労破断強度
が、加熱を行う前の疲労破断強度に対して、75%以
上、好ましくは80%以上であることを特徴とする。上
記範囲であると、バーニング処理を行った場合であって
も、印刷中に疲労破断が生じない。バーニング処理は、
通常、200℃以上、特に240〜270℃前後で行わ
れることが多いが、本発明者は、これよりも高温の30
0℃で7分間加熱した後のの疲労破断強度と加熱を行う
前の疲労破断強度に注目して、加熱後の疲労破断強度
が、加熱前の疲労破断強度に対して一定の割合以上であ
る場合には、バーニング処理を行った場合であっても、
印刷中に疲労破断が生じないことを見出し、本発明を完
成したのである。300℃で7分間加熱した後の疲労破
断強度と、加熱を行う前の疲労破断強度とを上記関係に
する方法としては、例えば、表面から深さ50μmまで
の領域に位置する結晶粒が、板圧延方向に垂直な方向の
幅が平均80μm以下、最大150μm以下であり、板
圧延方向の長さが平均400μm以下、最大500μm
以下であるアルミニウム板を用いる方法が挙げられる。
【0051】本発明において、疲労破断強度は、以下の
ようにして測定する。まず、平版印刷版原版に、画像部
の面積が全面積の50%になるように網点状の画像部を
全面に焼き付ける。画像部の焼き付けは、リスフィルム
を密着させて露光する方法や、レーザ直描型の感光材を
用いている場合にはレーザを所定の網点ができるように
走査させる方法を用いることができる。その後、現像を
行い、全面積の50%の網点状の画像部と、非画像部と
を有する平版印刷版を得る。現像処理は、現像液によっ
て非画像部を除去する方法や、50〜150℃の軽度の
加熱を行う方法で行うことができる。なお、このような
画像部を設けるのは、加熱を全面で均一に行うためであ
る。つぎに、得られた平版印刷版を、疲労破断試験用の
大きさに、具体的には板圧延方向に垂直な方向の幅が2
0mm、板圧延方向の長さが100mmとなるように切
断する。同一の平版印刷版から得られた複数のサンプル
を、加熱後の疲労破断強度を求めるためのサンプルと、
加熱前の疲労破断強度を求めるサンプルとに分ける。
【0052】その後、加熱後の疲労破断強度を求めるた
めのサンプルについて、300℃で7分間加熱する。加
熱は、全面を均一に加熱することができる装置を用いて
行う。そのような加熱装置としては、例えば、輻射式加
熱装置が挙げられる。具体的には、輻射式加熱装置とし
て、富士写真フイルム社製のPLANO PSバーニン
グプロセッサ 1300が挙げられる。加熱したサンプ
ルと加熱しなかったサンプルのそれぞれについて、断面
積あたりの張力が1. 0kg/mm2 程度となるよう
に、軽度の張力を与え、一端を固定したうえで、他端の
振幅が5mm程度となるように振動を与え、破断するま
での振動回数を測定する。このようにして、300℃で
7分間加熱した後の疲労破断強度および加熱を行う前の
疲労破断強度が求められる。
【0053】本発明の平版印刷版原版は、300℃で7
分間加熱した後の0. 2%耐力が、加熱を行う前の0.
2%耐力に対して、65%以上であるのが好ましい。上
記範囲であると、加熱を行った後も、平版印刷版原版の
曲げに対する剛性が適度であるため、版胴に取り付ける
ための折り曲げを問題なく行うことができる。上記範囲
にない場合は、加熱後の折り曲げを幅方向に均一に行う
ことが難しくなり、版胴への取り付けを均一に行うこと
ができず、そのため印刷中に版切れが生じやすくなる。
本発明において「0.2%耐力」とは、引張試験におい
て、永久伸びが0.2%となるときの荷重をいう。例え
ば、JIS Z2241−1993の規定に準じて求め
ることができる。なお、加熱の方法は、疲労破断強度の
場合と同様である。
【0054】
【実施例】以下に実施例を示して本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらに限られるものではない。 (実施例1〜3および比較例1〜4) 1−1.平版印刷版原版の製造 第1表に示す組成のアルミニウム合金1〜3をDC鋳造
し、その鋳塊を面削した後、均熱処理、熱間圧延、中間
焼鈍および冷間圧延を順次行って、板厚0.29mmの
アルミニウム板を得た。ここで、中間焼鈍条件および熱
間圧延条件を変えて、平版印刷版原版としたときのアル
ミニウムの結晶粒の大きさが異なったものになるように
した。なお、アルミニウム合金1および2は本発明に用
いられるAl純度が99質量%以上のJIS A100
0系材であり、アルミニウム合金3はAl純度が99質
量%未満のJIS A3000系材である。得られた各
アルミニウム板について、パミストン懸濁液を板の表面
に供給しながらブラシグレイン処理を行い、機械的な粗
面化処理を施した。ついで、表面を水洗してから、カセ
イソーダ水溶液で化学エッチング処理を行い、水洗後、
硝酸水溶液でデスマット処理を行った。水洗後、硝酸水
溶液中で、交流電解を行うことで電気化学的粗面化処理
を行った。水洗後、希薄カセイソーダ水溶液で軽くエッ
チング処理を行い、水洗後、硫酸水溶液でデスマット処
理を行った。そして、水洗後、硫酸水溶液中で直流電解
を行うことにより陽極酸化皮膜を形成して、平版印刷版
用支持体を得た。更に、赤外線吸収剤、熱によって酸を
発生させる化合物、および、酸によって分解する結合部
を有する化合物を含有する感光層を形成して、平版印刷
版原版を得た。
【0055】
【表1】
【0056】1−2.疲労破断強度の測定 得られた各平版印刷版原版について、レーザ書き込み装
置(トレンドセッター、クレオ社製)を用いて、画像部
の面積が全面積の50%になるように網点状の画像部を
全面に焼き付け、現像処理を行った。得られた平版印刷
版から、幅20mm、長さ100mmのサンプルを各1
0枚切り出した。10枚のうち、5枚は加熱せずに疲労
破断強度を測定し、残りの5枚は300℃に加熱した輻
射式加熱装置(PLANO PSバーニングプロセッサ
1300、富士写真フイルム社製)内で7分間加熱し
た後、疲労破断強度を測定した。結果を第2表に示す。
【0057】1−3.粗面化処理の安定性の評価 得られた各平版印刷版原版について、感光層を除去した
後、粗面化表面を走査型電子顕微鏡(T−20、日本電
子社製)を用いて観察し、粗面化形状、特に電解粗面化
処理により生じた粗面化形状から、粗面化処理の安定性
を評価した。結果を第2表に示す。
【0058】1−4.原材料コストの評価 得られた各平版印刷版原版について、用いたアルミニウ
ム合金1〜3の原材料コスト(Al地金コストと微量成
分添加用母合金コストとの和)を求め、評価した。結果
を第2表に示す。なお、原材料コストは、アルミニウム
合金2を100とした相対値で示した。
【0059】1−5.印刷試験 得られた各平版印刷版原版を露光し現像して平版印刷版
とし、更に、約250℃でバーニング処理を行った。こ
のようなサンプルを各平版印刷版原版から100枚ずつ
作製し、印刷試験に供した。印刷枚数は100万枚と
し、印刷中に折り曲げられた部分で版切れが生じた割合
(印刷中の破断率)を求めた。結果を第2表に示す。
【0060】1−6.0.2%耐力の測定 得られた各平版印刷版原版について、引張試験を行い、
0.2%耐力を求めた。0.2%耐力は、JIS Z2
241−1993の規定に準じて求めた。なお、加熱
は、疲労破断強度の測定の場合と同様の方法で行った。
結果を第2表に示す。
【0061】1−7.結晶粒の大きさの測定 得られた各平版印刷版原版について、感光層をすべて除
去した後、表面を#800の耐水研磨紙で表面粗さRa
(JIS B0601−1994に規定される算術平均
粗さ(カットオフ値0.8mm、評価長さ4mm))が
0.2となる程度に仕上げ、更にアルミナ懸濁液(粒子
径0.05μm)を用いて約1〜1.5μmバフ研磨し
た後、10%フッ化水素酸水溶液で約0.5〜1.0μ
mエッチング処理を行った。このようにして、結晶粒界
を観察することができるようにし、偏光顕微鏡で結晶組
織を写真撮影して、アルミニウム板の表面から深さ50
μmまでの領域に位置する結晶粒20個について幅と長
さを測定し、平均値および最大値を求めた。結果を第2
表に示す。
【0062】本発明の平版印刷版原版(実施例1〜3)
は、300℃で7分間加熱した後の疲労破断強度が、加
熱を行う前の疲労破断強度に対して、75%以上であ
り、また、300℃で7分間加熱した後の0.2%耐力
が、加熱を行う前の0.2%耐力に対して、65%以上
であり、更に、用いたアルミニウム板の表面から深さ5
0μmまでの領域に位置する結晶粒が、板圧延方向に垂
直な方向の幅が平均80μm以下、最大150μm以下
であり、板圧延方向の長さが平均400μm以下、最大
500μm以下であったことが分かる。そして、本発明
の平版印刷版原版は、平版印刷版としたときに、印刷中
の疲労破断が皆無であったことが分かる。
【0063】これに対して、加熱による疲労破断強度の
低下率が大きい場合(比較例1〜3)は、印刷中に疲労
破断が発生することがあった。これらのうち、比較例1
および3は、加熱による0.2%耐力の低下率は小さい
が、結晶粒の幅および長さが大きい。比較例2は、加熱
による0.2%耐力の低下率が大きく、結晶粒の幅およ
び長さが大きい。また、Al純度が低いJIS A30
00系材のアルミニウム板を用いた場合(比較例4)
は、粗面化処理の安定性に劣り、また、原材料コストが
高い。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】なお、上記実施例においては、粗面化処理
として、機械的粗面化処理と電解粗面化処理とを組み合
わせ、感光層として、赤外線吸収剤、熱によって酸を発
生させる化合物、および、酸によって分解する結合部を
有する化合物を含有する感光層を用いた例を示したが、
本発明は、耐熱軟化性に優れ、特に、バーニング処理後
の疲労破断強度に優れることで、印刷中に版切れを生じ
ない平版印刷版原版を提供するものであって、上記実施
例には限定されず、バーニング処理を施すすべての平版
印刷版原版に適用できることはいうまでもない。
【0067】(実施例4〜7) 2−1.平版印刷版原版の作製 第1表に示す組成のアルミニウム合金板2を、実施例1
〜3と同様に処理してアルミニウム板を得た。得られた
アルミニウム板に、以下の粗面化処理を施して平版印刷
版用支持体を得た。具体的には、実施例4は粗面化処理
(3)、実施例5は粗面化処理(1)、実施例6は粗面
化処理(2)、実施例7は粗面化処理(3)を行った。
更に、赤外線吸収剤、熱によって酸を発生させる化合
物、および、酸によって分解する結合部を有する化合物
を含有する感光層を形成して、平版印刷版原版を得た。
【0068】<粗面化処理(1)>各工程の粗面化処理
の後には水洗処理を行った。粗面化処理および水洗の後
にはニップローラで液切りを行った。 (a)機械的粗面化処理 軽石を粉砕し、 その中に含まれる粒子の平均粒径が40
μmとなるように分級した研磨剤と水の縣濁液(比重
1.12)を研磨スラリー液として、スプレー管にてア
ルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状
ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤
のモース硬度は5であった。研磨剤の成分としては、S
iO2 が73質量%、Al2 3 が14質量%、Fe2
3 が1.2質量%、CaOが1.34質量%、MgO
が0.3質量%、K2 Oが2.6質量%、Na2 Oが
2.7質量%を占めていた。ナイロンブラシの材質は6
・10ナイロンを使用し、毛長は50mmの3号ブラシ
を用いた。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス
製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラ
シは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ
200mm)の距離は300mmであった。ブラシロー
ラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシロ
ーラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して
管理し、粗面化処理後のアルミニウム板の平均表面粗さ
(Ra)が0.45〜0.55μmになるように押さえ
つけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向
と同じであった。ブラシの回転数は250rpmであっ
た。
【0069】(b)アルカリ水溶液中でのエッチング処
理 アルミニウム板に、カセイソーダ濃度27質量%、アル
ミニウムイオン濃度6.5質量%含有する水溶液を、温
度70℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理
を行った。後の工程で電気化学的に粗面化処理する面の
アルミニウム板のアルミニウム溶解量は10g/m2
あった。 (c)酸性水溶液中でのデスマット処理 次に、硝酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマ
ット処理に用いる硝酸水溶液は、次工程の電気化学的な
粗面化に用いた硝酸の廃液を用いた。その液温は35℃
であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて4秒
間デスマット処理を行った。
【0070】(d)硝酸水溶液中での電気化学的な粗面
化処理 液温50℃、硝酸濃度9.5g/Lの水溶液に硝酸アル
ミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を5g/L
に調整した電解液を用いた。交流電流を発生する電源を
用いて電気化学的な粗面化処理を行った。その交流電流
の周波数は、 60Hz、電流のゼロからピークに達する
までの時間Tpは0.8msecであった。交流のdu
ty(ta/T)は0.5であった。電流密度は交流の
ピーク時でアルミニウム板のアノード反応時60A/d
2であり、アルミニウム板がアノード反応時の電気量
の総和とカソード反応時の電気量の総和の比は0.95
であった。アルミニウム板に加わる電気量は、 アルミニ
ウム板のアノード反応時の電気量の総和で200C/d
2 であった。
【0071】(e)アルカリ水溶液中でのエッチング処
理 アルミニウム板に、カセイソーダ濃度27質量%、アル
ミニウムイオン6.5質量%含有する水溶液を、温度7
0℃でスプレー管により吹き付けてアルミニウム板のエ
ッチング処理を行った。後の工程で電気化学的に粗面化
処理する面のアルミニウム板のアルミニウム溶解量は
3.5g/m2 であった。 (f)酸性水溶液中でのデスマット処理 次に硫酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマッ
ト処理に用いる硫酸水溶液は、 硫酸濃度300g/L、
アルミニウムイオン濃度5g/Lの液を用いた。その液
温は60℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き
付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0072】(g)塩酸水溶液中での電気化学的な粗面
化処理 液温35℃、塩酸濃度7.5g/Lの水溶液に塩化アル
ミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g
/Lに調整した電解液を用いた。台形波交流を発生する
電源を用いて電気化学的な粗面化処理を行った。その交
流電流の周波数は、 50Hz、電流のゼロからピークに
達するまでの時間Tpは0.8msecであった。交流
のduty(ta/T)は0.5であった。電流密度は
交流のピーク時でアルミニウム板のアノード反応時50
A/dm2であり、アルミニウム板がアノード反応時の
電気量の総和とカソード反応時の電気量の総和の比は
0.95であった。アルミニウム板に加わる電気量は、
アルミニウム板のアノード反応時の電気量の総和で50
C/dm2 であった。
【0073】(h)アルカリ水溶液中でのエッチング処
理 アルミニウム板に、カセイソーダ27濃度質量%、アル
ミニウムイオン6.5質量%含有する水溶液を、温度4
5℃でスプレー管により吹き付けてアルミニウム板のエ
ッチング処理を行った。電気化学的に粗面化処理した面
のアルミニウム板のアルミニウム溶解量は0.3g/m
2 あった。 (i)酸性水溶液中でのデスマット処理 次に、陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸170g
/L水溶液中にアルミニウムイオン5g/Lを溶解)を
用い、液温35℃で4秒間デスマット処理を行った。
【0074】(g)硫酸水溶液中での陽極酸化処理 硫酸濃度170g/L、アルミニウムイオン5g/Lの
液中で平均電流密度20A/dm2 で直流電解を行い、
陽極酸化皮膜が2.7g/m2 できるように陽極酸化処
理を行った。液温は40℃、電圧は5〜30V、時間は
10秒であった。
【0075】<粗面化処理(2)>前記(h)アルカリ
水溶液中でのエッチング処理におけるアルミニウム板の
アルミニウム溶解量が0.1g/m2 であること以外
は、表面処理(1)と同様に粗面化処理を行った。
【0076】<粗面化処理(3)>前記(h)アルカリ
水溶液中でのエッチング処理におけるアルミニウム板の
アルミニウム溶解量が0.8g/m2 であること以外
は、表面処理(1)と同様に粗面化処理を行った。
【0077】2−2.アルミニウム支持体表面の凹状ピ
ットの性状 得られた各平版印刷版原版について、感光層を除去した
後、アルミニウム支持体の表面の凹状ピットの平均開口
径および開口径に対する深さの比の平均を、以下のよう
にして求めた。結果を第3表に示す。 (1)凹状ピットの平均開口径 FE−SEM(S−900、日立製作所製)を用いて支
持体の表面を真上から倍率50000倍で撮影した。得
られたSEM写真のコピーに、長さ10cm(2μm相
当)の直線を引き、直線が通過した凹状ピットについ
て、開口径(=(長径+短径)/2)を測定した。開口
径を測定した凹状ピットの数が20個となるまで開口径
の測定を続け、その後、平均開口径を算出した。
【0078】(2)凹状ピットの開口径に対する深さの
比の平均 アルミニウム支持体を粗面化処理を施した面が外側にな
るように90゜以上折り曲げて、試料台に導電性ペース
トを用いて固定した。FE−SEMを用いて折り曲げた
部分における陽極酸化皮膜が割れた部分を倍率5000
0倍で撮影した。10個の凹状ピットについて開口径お
よび深さを求め、開口径に対する深さの比の平均を算出
した。なお、凹状ピットの開口径の測定方法は、上記
(1)の方法を用いた。また、凹状ピットの深さとして
は、最も深い部分の深さを用いた。
【0079】2−3.印刷試験 得られた各平版印刷版原版を露光し現像して平版印刷版
とし、更に、約250℃でバーニング処理を行った。こ
のようなサンプルを各平版印刷版原版から100枚ずつ
作製し、印刷試験に供した。印刷枚数は100万枚と
し、印刷中に折り曲げられた部分で版切れが生じた割合
(疲労破断率)を求めた。結果を第3表に示す。
【0080】2−4.画像欠落枚数 得られた各平版印刷版原版を露光し現像して平版印刷版
とし、更に、約250℃でバーニング処理を行った後、
印刷試験に供した。印刷中、画像の欠落が発生した枚数
を評価した。結果を第3表に示す。
【0081】
【表4】
【0082】本発明の平版印刷版原版(実施例4〜7)
は、ピット平均開口径およびピット深さ/ピット径比の
平均値のいずれもが所定範囲にある微小な凹状ピットが
特定のアルミニウム板表面に成形されているため、アル
ミニウム板の表面積が増大し、記録層(画像部)との密
着力が強固となり、平版印刷版原版としたときに画像部
の剥離または部分的な脱落が起こらず、極めて優れた耐
刷性を有することが分かる。また、本発明の平版印刷版
原版は、平版印刷版としたときに、印刷中の疲労破断が
皆無であったことが分かる。
【0083】
【発明の効果】本発明の平版印刷版原版は、JIS A
1000系材を代表とするAl純度が99質量%以上の
アルミニウム板を用いているため、粗面化処理の効率お
よび安定性に優れ、かつ、300℃で7分間加熱した後
の疲労破断強度が、加熱を行う前の疲労破断強度に対し
て、75%以上であるため、通常、200℃以上、特に
240〜270℃前後で行われることが多いバーニング
処理を行った場合においても、印刷中に版切れが全く起
こらない。また、アルミニウム板の表面に特定の微小ピ
ットを有するため、アルミニウム板の表面積が増大し、
記録層(画像部)との密着力が強固となり、平版印刷版
原版としたときに画像部の剥離または部分的な脱落が起
こらず、極めて優れた耐刷性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電気化学的粗面化に好ましく用いられ
る台形波交流電源波形の一例を示す波形図である。
【図2】本発明の電気化学的粗面化に用いられる電解装
置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
ta アノード反応時間 tc カソード反応時間 tp 電流が0からピークに達するまでの時間 Ia アノードサイクル側のピーク時の電流 Ic カソードサイクル側のピーク時の電流 50 主電解槽 51 交流電源 52 ラジアルドラムローラ 53a,53b 主極 54 電解液供給口 55 電解液 56 補助陽極 60 補助陽極槽 W アルミニウム板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2H025 AA10 AA12 AA14 AB03 DA20 2H096 AA06 CA03 2H114 AA04 AA10 AA14 AA23 BA01 DA02 DA04 DA64 DA75 EA03 EA08 FA01 FA02 GA01 GA08

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Al純度が99質量%以上のアルミニウム
    板の表面に感光層を形成して得られる平版印刷版原版で
    あって、300℃で7分間加熱した後の疲労破断強度
    が、加熱を行う前の疲労破断強度に対して、75%以上
    である平版印刷版原版。
  2. 【請求項2】300℃で7分間加熱した後の0.2%耐
    力が、加熱を行う前の0.2%耐力に対して、65%以
    上である請求項1に記載の平版印刷版原版。
  3. 【請求項3】Al純度が99質量%以上のアルミニウム
    板の表面に感光層を形成して得られる平版印刷版原版で
    あって、該アルミニウム板の表面から深さ50μmまで
    の領域に位置する結晶粒が、板圧延方向に垂直な方向の
    幅が平均80μm以下、最大150μm以下であり、板
    圧延方向の長さが平均400μm以下、最大500μm
    以下である平版印刷版原版。
  4. 【請求項4】前記アルミニウム板が、Fe:0.15〜
    0.5質量%、Si:0.03〜0.15質量%、T
    i:0.003〜0.050質量%を含有し、かつ、C
    u:0.001〜0.05質量および/またはMg:
    0.001〜0.1質量%を含有する請求項3に記載の
    平版印刷版原版。
  5. 【請求項5】前記アルミニウム板が、その表面に、凹状
    ピットのピット開口部の平均開口径が0.6μm以下、
    かつ、ピットの深さとピットの開口径比(ピット深さ/
    ピット径)の平均値が0.15〜1.0である凹状ピッ
    トを有する請求項1〜4に記載の平版印刷版原版。
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