JP2002285236A - フェライト系耐熱鋼の加工方法および耐水蒸気酸化性に優れたフェライト系耐熱鋼 - Google Patents
フェライト系耐熱鋼の加工方法および耐水蒸気酸化性に優れたフェライト系耐熱鋼Info
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Abstract
ルの形成が抑制でき、加熱・冷却サイクル下でも実質的
に酸化スケールの剥離が生じないフェライト系耐熱鋼の
加工方法および耐水蒸気酸化性に優れたフェライト系耐
熱鋼の提供。 【解決手段】質量%で、C:0.02〜0.3%、Si:0.02〜
0.6%、Mn:0.01〜2%、Cr:9.5〜15%を含有するフェ
ライト系耐熱鋼を、900℃以上の温度で焼ならし処理
し、A 1変態点以下の温度で焼もどし処理した後、鋼表
面に粒子を吹きつけてショット加工層を形成する。
Description
酸化性(本明細書では、「耐水蒸気酸化性」と称する)
を付与するためのフェライト系耐熱鋼の加工方法および
この加工方法により加工した耐水蒸気酸化性に優れたフ
ェライト系耐熱鋼に係り、より詳しくは、ボイラの過熱
器管、再熱蒸器管や蒸気配管あるいは原子力、化学工業
の分野で使用される熱交換器管など水蒸気に曝される部
位に使用される鋼に対して用いるのに適したフェライト
系耐熱鋼の加工方法およびこの加工方法により加工した
耐水蒸気酸化性に優れたフェライト系耐熱鋼に関する。
エネルギー化を達成する技術の開発や地球資源のリサイ
クルが求められることに加え、近年では、世界的な取り
組みとして地球の温暖化を防止するために化石燃料の燃
焼に伴うCO2の排出量を低減させることが社会的に求
められている。現在、化石燃料を燃焼させる発電用ボイ
ラの高効率化は、世界各国において重要なエネルギー政
策のひとつとなっており、ボイラ発電の高効率化のため
には、ボイラの蒸気温度と蒸気圧力を高めた、いわゆる
超超臨界圧ボイラの新設が世界中で進められている。
ボイラに比べて蒸気温度および蒸気圧力が一段と高く、
ボイラの過熱器管、再熱器管などの熱交換器管や、高温
蒸気をタービンに送る主蒸気管、再熱蒸気管などの配管
の温度と圧力は、通常のボイラに使用される鋼管が達す
る温度と圧力を超えて上昇することから、これらの鋼管
には、高温強度と高温耐食性が求められる。
長時間曝されることによって酸化スケールが形成される
が、酸化スケールが剥離した場合、タービンブレードを
損傷させるだけでなく、酸化スケールが鋼管の曲部など
に堆積した場合には、水蒸気の流れが悪くなるため、酸
化スケールが堆積した部分が局所的に過熱され、最悪の
場合は噴破事故にもつながる。そのため、超超臨界圧ボ
イラに用いられる鋼管には、上記の高温強度と高温耐食
性に加え、鋼管内面には耐水蒸気酸化性も求められる。
て、オーステナイトステンレス鋼が挙げられる。しか
し、オーステナイトステンレス鋼は、熱膨張率が大き
く、鋼管として用いた場合、酸化スケールが剥離しやす
い。そのため、酸化スケールに対する対策を施した発明
が開示されている。
ーステナイトステンレス鋼に溶体化処理をした後、ショ
ット加工などの冷間加工を施し、再度、溶体化処理を加
えることで、鋼管の表面を細粒化し、耐水蒸気酸化性を
高めたステンレス鋼の製造方法の発明が開示されてい
る。
ステナイトステンレス鋼管に加工率20%以上の冷間加
工を行い、次いで2.9℃/sec以下の昇温速度で固溶化す
る温度まで昇温させることで、耐水蒸気酸化性を付与し
たオーステナイトステンレス鋼管の熱処理方法の発明が
開示されている。
の元素を含有する溶体化処理されたオーステナイトステ
ンレス鋼管の管内表面に粒子吹き付けピーニング加工層
を付与することで耐水蒸気酸化性を高めたボイラ用鋼管
の発明が開示されている。
は、オーステナイト鋼をベースとした発明であり、いず
れも高価なNiを含有するために製造コストが高くなる。
一方、製造コスト増を避け、Niをほとんど含有しないフ
ェライト系耐熱鋼をベースにした発明も多数開示されて
いる。
Crの添加量が任意の範囲を満たすように規定したフェラ
イト系ボイラ鋼管用鋼の発明が開示されている。この発
明では、フェライト鋼の成分元素を調整することで、耐
水蒸気酸化性を向上させるとともに、高温強度を有する
鋼を得ている。
Yを添加することで母材と酸化被膜との界面近傍に1μ
m以下の径の極微細な酸化物を形成し、酸化被膜と母材
との密着性を高めて耐水蒸気酸化性を向上させたフェラ
イト系耐熱鋼の発明が開示されている。
体心立方晶の鉄基合金中の各元素のd電子軌道エネルギ
ーレベルMdと各元素のFeとの結合次数Boが一定の関
係を満たすことにより耐水蒸気酸化性を向上させたボイ
ラ用フェライト系耐熱鋼の発明が開示されている。
酸化性を向上させる発明は多数開示されているが、これ
らの発明は、いずれも化学成分の調整のみによって耐水
蒸気酸化性を向上させることにとどまっている。一般
に、フェライト系耐熱鋼は、オーステナイト鋼に比べ熱
膨張率が小さいため、酸化スケールの剥離が起こりにく
い。しかし、近年、発電用ボイラでは、水蒸気の高温・
高圧化に加え、電力の省エネルギー化を促進するため、
ボイラを頻繁に起動・停止させて電力の需要変動を調整
させていることから、従来では酸化スケールの剥離が問
題とならなかった温度域で使用されても、スケールの剥
離が起こるといった問題が生じるようになった。前述し
たように、酸化スケールの剥離は、タービンブレードの
損傷や噴破事故を引き起こす。
価なオーステナイトステンレス鋼に匹敵する高温強度と
高温耐食性をもつ既存のフェライト系耐熱鋼をベースと
し、酸化スケールの形成を抑制し、加熱・冷却サイクル
下でも実質的に酸化スケールの剥離が生じないフェライ
ト系耐熱鋼の加工方法および耐水蒸気酸化性に優れたフ
ェライト系耐熱鋼を提供することにある。
うな問題を解決するために、フェライト系耐熱鋼の耐水
蒸気酸化性に関し、鋼表面に施した冷間加工の影響につ
いて種々検討した。
ては、耐水蒸気酸化性を付加するために、ショット加工
が行われてきた。溶体化処理した後、ショット加工した
オーステナイトステンレス鋼を高温の水蒸気に接触させ
ると、酸化スケールの生成の初期段階において成長速度
の遅いCr2O3スケールが極めて薄く鋼表面に生成す
る。このCr2O3スケールは保護性に富み、安定した状
態で存在するので、オーステナイトステンレス鋼に耐水
蒸気酸化性を付与することができる。
9.5%以下のフェライト系耐熱鋼では、同様にショット
加工を行っても、母材からCrが十分に供給されないた
め、安定したCr2O3スケールを形成することができ
ず、オーステナイトステンレス鋼に見られたに耐水蒸気
酸化性の効果は発揮されないと思われてきた。これは、
フェライト系耐熱鋼中のCrの拡散はオーステナイト鋼の
Crの拡散に比べて100倍程度速いため、ショット加工を
行っても拡散を速めることは期待できないと考えられて
いたためである。しかし、この常識に反し、フェライト
系耐熱鋼でも安定したCr2O3スケールを形成すること
ができれば、フェライト系耐熱鋼に耐水蒸気酸化性を付
与することができると考えた。
分元素を調整し、熱処理した後、フェライト系耐熱鋼の
地金表面にショット加工をすることにより、高温の水蒸
気に接触させることで、酸化スケール生成の初期段階に
安定なCr2O3被膜が形成されるような下地を作れば、
耐水蒸気酸化性に優れた鋼を得ることができると考え
た。
たものであり、その要旨は、下記(1)に記載のフェラ
イト系耐熱鋼の加工方法および下記(2)に記載の耐水
蒸気酸化性に優れたフェライト系耐熱鋼にある。 (1)質量%で、C:0.02〜0.3%、Si:0.02〜0.6%、
Mn:0.01〜2%、Cr:9.5〜15%を含有するフェライト系
耐熱鋼を、900℃以上の温度で焼ならし処理し、A1
変態点以下の温度で焼もどし処理した後、鋼表面に粒子
を吹きつけてショット加工層を形成するフェライト系耐
熱鋼の加工方法である。
1〜1.5%、Mo:0.1〜3%、W:0.1〜3%、Cu:0.01〜3
%、N:0.005〜0.2%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜
0.5%、Ti:0.01〜0.5%、Ca:0.0001〜0.2%、Mg:0.0
001〜0.2%、Al:0.0001〜0.2%、B:0.0001〜0.2%、
希土類元素:0.0001〜0.2%のうちの1種あるいは2種
以上を含有することが好ましい。また、焼もどし処理し
た後、鋼表面に形成された酸化スケール層に粒子を吹き
つけてショット加工層を形成することが好ましい。 (2)質量%で、C:0.02〜0.3%、Si:0.02〜0.6%、
Mn:0.01〜2%、Cr:9.5〜15%を含有するフェライト系
耐熱鋼であって、鋼表面にショット加工層が形成されて
いる耐水蒸気酸化性に優れたフェライト系耐熱鋼であ
る。
1〜1.5%、Mo:0.1〜3%、W:0.1〜3%、Cu:0.01〜3
%、N:0.005〜0.2%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜
0.5%、Ti:0.01〜0.5%、Ca:0.0001〜0.2%、Mg:0.0
001〜0.2%、Al:0.0001〜0.2%、B:0.0001〜0.2%、
希土類元素:0.0001〜0.2%のうちの1種あるいは2種
以上を含有することが好ましい。また、このフェライト
系耐熱鋼が、鋼表面に酸化スケール層を備えることが好
ましい。
工方法に関する発明であり、より詳細にはフェライト系
耐熱鋼を加工して耐水蒸気酸化性を付与する方法の発明
である。また、本発明は耐水蒸気酸化性に優れたフェラ
イト系耐熱鋼に関する発明である。
素、熱処理およびショット加工層の形成に分けて詳述す
る。 (a)組成元素 本発明のフェライト系耐熱鋼は、C、Si、Mn、Crを必須
元素として、以下のような元素を含有する。なお、以下
に述べる化学組成の%表示はいずれも質量%を意味す
る。
高くする効果を有する。その効果を発揮させるために
は、C含有量を0.02%以上とすることが必要である。ま
た、C含有量が0.3%を超えると、溶接性が低下する。
好ましくは0.04〜0.2%である。
性を向上させる効果を有する。その効果を発揮させるた
めには、Si含有量を0.02%以上とすることが必要であ
る。また、Si含有量が0.6%を超えると、加工性が低下
する。好ましくは、0.05〜0.4%である。
し、熱間加工性を向上させる効果を有する。その効果を
発揮させるためには、Mn含有量を0.01%以上とすること
が必要である。また、Mn含有量が2%を超えると、加工
性や溶接性が低下する。
効果を発揮させるためには、Cr含有量を9.5%以上とす
ることが必要である。9.5%未満の場合は、安定なCr2O3
皮膜を生成させることができない。また、Cr含有量が15
%を超えると、フェライト系耐熱鋼を焼ならし・焼もど
ししてもマルテンサイト組織に変態する量はごく少量に
限られ、δフェライト相が多く残留し、σ相の析出も起
こる。その結果、靱性や加工性が損なわれ、高温強度や
溶接性も低下する。好ましくは、10〜13%である。
好ましい。その効果を発揮させるためには、Ni含有量を
0.1%以上とすることが必要である。また、Ni含有量が
1.5%を超えると、クリープ破断強さが低下する。
が好ましい。その効果は、MoあるいはWの少なくとも一
方を0.1%以上添加することで発揮される。また、Mo含
有量、W含有量が3%を超えると、加工性、溶接性を損
ない、高温組織が不安定になり強度が低下する。
性を確保するのに有効なことから、含有させることが好
ましい。その効果を発揮させるためには、Cu含有量を0.
01%以上とすることが必要である。また、Cu含有量が3
%を超えると、加工性、延性が低下する。
ることから、含有させることが好ましい。その効果を発
揮させるためには、N含有量を0.005%以上とすること
が必要である。また、N含有量が0.2%を超えると、フ
ェライト系耐熱鋼の溶解時にブローホールが生成した
り、溶接欠陥となる。
化物を生成し、析出強化に寄与することから、含有させ
ることが好ましい。その効果は、V、NbあるいはTiの少
なくとも一種を0.01%以上含有させることで発揮され
る。また、V含有量、Nb含有量あるいはTi含有量が0.5
%を超えると、加工性が損なわれる。
Al:0.0001〜0.2%、B:0.0001〜0.2%、希土類元素
(La、Ce、Y、Pd、Ndなど):0.0001〜0.2% Ca、Mg、Al、Bおよび希土類元素は、いずれも強度、加
工性、耐水蒸気酸化性を向上させる効果がある。その効
果は、0.0001%以上含有させることで発揮される。ま
た、これらの含有量が0.2%を超えると加工性や溶接性
が損なわれる。 (b)熱処理 本発明のフェライト系耐熱鋼の加工方法では、フェライ
ト系耐熱鋼を900℃以上の温度で焼ならし処理し、A1
変態点以下の温度で焼もどし処理する。焼ならし処理
は、不均一になった結晶粒や組織を均一化して機械的性
質を改善する熱処理のことであり、焼もどし処理は、焼
入れ後のマルテンサイトを再度、加熱軟化する熱処理の
ことである。焼ならし処理は1000〜1150℃の温度で、焼
もどし処理は750〜800℃以上で行うことが好ましい。
イト系耐熱鋼は焼もどしマルテンサイト組織が主体の鋼
となる。このとき、完全にマルテンサイトに変態してい
る必要はなく、鋼組織に30vol%以下のδフェライトが
残留していてもなんら問題はない。
程であるショット加工層の形成工程での下処理の役割も
果たす。すなわち、これらの熱処理を行うことで、粗大
なCr炭化物が均質固溶あるいは一部が微細に析出する。
このような組織を有する地金表面に対してショット加工
して、水蒸気の雰囲気下におくと容易にCr2O3被膜を
形成させることができる。
れれば、本発明の効果を得ることができる。実際の焼な
らし処理、焼もどし処理では、少なくとも2分間以上そ
れぞれの処理温度で保持される。 (c)ショット加工層の形成 焼もどし処理をした後は、鋼表面に粒子を吹きつけてシ
ョット加工層を形成する。一般に鋼表面に粒子を吹きつ
けて表面層を加工硬化させることをショットピーニング
(サンドブラスト、ショットブラスト、ショット加工な
どともいう)という。この処理方法を用いて鋼表面に粒
子を吹きつけると、ビッカース硬さが270以上であるシ
ョット加工層が形成される。ショット加工層はその深さ
が0.01mm以上であることが好ましい。このショット加工
層が形成されることで、酸化スケール生成の初期段階に
安定なCr2O3被膜が形成するので、得られるフェライ
ト系耐熱鋼の耐水蒸気酸化性は向上する。
材質、形状は問われない。鋼球、鋼製グリッド、カット
ワイヤ、ガラスビーズ、珪砂、アルミナ等の砥粒を用い
ることができる。また、吹きつけ方法も問われない。圧
縮空気や遠心力で噴射し吹きつければよい。
はその表面に酸化スケール層が形成される。この酸化ス
ケール層は切削、酸洗などで除去してから、粒子を吹き
つけてショット加工層を形成してもよいが、焼もどし処
理した後、鋼表面に形成された酸化スケール層に直接、
粒子を吹きつけてショット加工層を形成することが好ま
しい。粒子を吹きつけることで酸化スケール層が除去で
きることに加え、得られるフェライト系耐熱鋼の耐水蒸
気酸化性が、切削、酸洗などで除去した場合に比べ、高
くなるからである。
れることが好ましい。しかし、たとえ部分的にでも形成
されていれば、使用目的によっては、鋼に十分な性能を
付与することができる。また、ショット加工層を形成
後、熱処理や酸洗を行うとショット加工層が消失するの
で、ショット加工層を形成したまま使用する。例えば、
本発明のフェライト系耐熱鋼に溶接や熱間曲げ加工を施
した場合、ショット加工層は消失するが、所定部に再
度、ショット加工を行えば、ショット加工層が形成され
るので、消失前と同等の性能を得ることができる。
イト系耐熱鋼を用意し、それらに本発明の加工方法を適
用して、ショット加工層が形成されたフェライト系耐熱
鋼を作製した。まず、フェライト系耐熱鋼となるように
組成を調整し、各50kgずつ溶解炉で真空誘導により溶製
したインゴットを鍛造と圧延により、厚さ10mmの板状に
して供試材とした。
る。表1において、鋼種AはSTBA26鋼、鋼種Bは火力発
電用の耐熱鋼である(火)STBA28鋼で、ともにCr含有量
が低く本発明で規定する組成範囲に属さない鋼である。
また、鋼種Cは鋼種Bと同じく、火力発電用の耐熱鋼で
ある(火)SUS410J3鋼、鋼種Dは主に欧州で用いられて
いるDIN17175規格のX20CrMoV121鋼で本発明で規定する
組成範囲に属する鋼である。さらに、鋼種E〜Hは鋼種
A〜Dのような規格鋼ではないが、本発明で規定する組
成範囲に属する鋼である。なお、鋼種A〜Hはいずれも
オーステナイトステンレス鋼に匹敵する高温強度と高温
耐食性を有する鋼である。
室温まで空冷する焼ならし処理をし、続いて780℃で1
時間保持した後、室温まで空冷する焼もどし処理を施し
た。焼ならし処理、焼きもどし処理した各供試材には、
酸化スケール層が表面に形成される。そのため、ショッ
トピーニングをしてショット加工層を形成する前に、前
処理として、5%HF-10%HNO3で酸洗する、あるい
は切削する処理を行い、酸化スケール層を除去した供試
材を作製した。
材、前処理を行わず酸化スケール層が形成されたままの
供試材について、ショットピーニングを行った。ショッ
トは吹きつけ圧力980N/cm2で直径0.2mmの鋼球を供試
材に吹きつけて行い、供試材の表面を加工硬化させた。
なお、ショットピーニングした供試材にビッカース硬さ
試験を行い、硬さによりショット加工層が形成されてい
るかを確認した。その結果、供試材によってバラツキは
あったが、ビッカース硬さHVが270以上である領域が
供試材の表面から0.05〜0.2mm程度の厚さに形成されて
いることがわかった。
った。この試験では、酸洗した供試材、切削した供試
材、前処理を行わず酸化スケール層が形成されたままの
供試材にショットピーニングを行った3種の供試材に加
え、酸化スケール層を切削し、5%HF-10%HNO3で
酸洗しただけでショットピーニングを行わなかった供試
材の合計4種の供試材を用い、これらの供試材を水蒸気
の雰囲気下650℃で1000時間保持した後、空冷した。各
供試材では、表面に酸化スケール層が形成され、その酸
化スケール層の厚みを1つの供試材につき10点測定
し、その厚みの平均値を算出した。
化スケール層の厚みを示している。表2において、「酸
洗後ショット」は酸洗した後ショットピーニングを行っ
た供試材、「切削後ショット」は切削した後ショットピ
ーニングを行った供試材、「酸化スケールにショット」
は前処理を行わず酸化スケール層が形成されたままショ
ットピーニングを行った供試材、「ショットなし」は酸
化スケール層を切削し、5%HF-10%HNO3で酸洗し
ただけでショットピーニングを行わなかった供試材であ
ることを示す。
は、酸化スケールの厚みはCr含有量との相関が大きく、
Cr含有量が少ないほど、酸化スケールの厚みは厚くな
る。また、ショットを行った供試材についても、Cr含有
量が少ないほど、酸化スケールの厚みは厚くなる傾向が
あるが、本発明で規定する組成範囲に属さない鋼である
鋼種A、Bについては、ショットの有無で酸化スケール
の厚みの差に大差はないが、本発明で規定する組成範囲
に属する鋼である鋼種C〜Hでは、ショットなしの場合
に比べ、酸化スケールの厚みが半分以下になり、耐水蒸
気酸化性が向上したことがわかった。特に、「酸化スケ
ールにショット」では、酸化スケールの厚みが極めて薄
くなり、耐水蒸気酸化性が著しく向上した。
0分加熱後、約500℃/hで室温まで放冷する加熱・冷却
サイクルを水蒸気の雰囲気中で1000回施し、試験後、酸
化被膜の剥離について調べた。その結果、本発明で規定
する組成範囲に属さない鋼である鋼種A、Bについて
は、いずれの供試材についても酸化スケールの剥離が見
られたが、本発明で規定する組成範囲に属する鋼である
鋼種C〜Hについては、ショットを行った供試材には酸
化スケールの剥離が見られなかった。
Cの「酸化スケールにショット」の供試材と鋼種Aの
「ショットなし」の供試材および「酸化スケールにショ
ット」の供試材について、SEMによるEDX分析を行
うことにより断面構造を観察した。C鋼では、水蒸気の
雰囲気下に置くことで新たに形成された酸化スケールと
地金表面との界面に極めて薄いCr2O3からなる層が確
認できた。一方、A鋼では、「ショットなし」の供試材
および「酸化スケールにショット」の供試材ともに、酸
化スケールと地金表面との界面にCr2O3の層は存在し
なかった。
する鋼に、ショットピーニングを行えば、酸化スケール
層と地金表面との界面にCr2O3が形成され、水蒸気の
雰囲気下に置かれても高い耐水蒸気酸化性が発揮される
ことがわかった。
方法を用いれば、鋼表面に酸化スケールを形成すること
が困難になり、かつ酸化スケールが形成されても剥離し
ない耐水蒸気酸化性に優れたフェライト系耐熱鋼を得る
ことができる。本発明に係るフェライト系耐熱鋼の加工
方法を用いて加工した鋼管は水蒸気に対する酸化性が優
れているため、ボイラの熱交換器管などに用いる鋼管と
して使用されるのに十分な特性を有する。
Claims (6)
- 【請求項1】質量%で、C:0.02〜0.3%、Si:0.02〜
0.6%、Mn:0.01〜2%、Cr:9.5〜15%を含有するフェ
ライト系耐熱鋼を、900℃以上の温度で焼ならし処理
し、A 1変態点以下の温度で焼もどし処理した後、鋼表
面に粒子を吹きつけてショット加工層を形成するフェラ
イト系耐熱鋼の加工方法。 - 【請求項2】前記フェライト系耐熱鋼が、Ni:0.1〜1.5
%、Mo:0.1〜3%、W:0.1〜3%、Cu:0.01〜3%、
N:0.005〜0.2%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5
%、Ti:0.01〜0.5%、Ca:0.0001〜0.2%、Mg:0.0001
〜0.2%、Al:0.0001〜0.2%、B:0.0001〜0.2%、希
土類元素:0.0001〜0.2%のうちの1種あるいは2種以
上を含有し、残部がFeおよび不純物からなる請求項1に
記載のフェライト系耐熱鋼の加工方法。 - 【請求項3】焼もどし処理した後、鋼表面に形成された
酸化スケール層に粒子を吹きつけてショット加工層を形
成する請求項1または2に記載のフェライト系耐熱鋼の
加工方法。 - 【請求項4】質量%で、C:0.02〜0.3%、Si:0.02〜
0.6%、Mn:0.01〜2%、Cr:9.5〜15%を含有するフェ
ライト系耐熱鋼であって、鋼表面にショット加工層が形
成されていることを特徴とする耐水蒸気酸化性に優れた
フェライト系耐熱鋼。 - 【請求項5】前記フェライト系耐熱鋼が、Ni:0.1〜1.5
%、Mo:0.1〜3%、W:0.1〜3%、Cu:0.01〜3%、
N:0.005〜0.2%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5
%、Ti:0.01〜0.5%、Ca:0.0001〜0.2%、Mg:0.0001
〜0.2%、Al:0.0001〜0.2%、B:0.0001〜0.2%、希
土類元素:0.0001〜0.2%のうちの1種あるいは2種以
上を含有し、残部がFeおよび不純物からなる請求項4に
記載の耐水蒸気酸化性に優れたフェライト系耐熱鋼。 - 【請求項6】鋼表面に酸化スケール層を備えることを特
徴とする請求項4または5に記載のフェライト系耐熱
鋼。
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Cited By (8)
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