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JP2010229441A - 高靭性高張力厚鋼板の製造方法 - Google Patents

高靭性高張力厚鋼板の製造方法 Download PDF

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智之 横田
Kimihiro Nishimura
公宏 西村
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Abstract

【課題】引張強さ590MPa級以上で、高靭性を有する高張力厚鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.05〜0.6%、Mn:0.3〜2%、sol.Al:0.002〜0.07%、更にNb、V、Cr、Mo、Cu、Ni、B、Ti、Caの1種又は2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼を、熱間圧延は加熱後、圧延終了温度Ar点以上で圧延し、加速冷却は前記熱間圧延終了後、直ちに、冷却速度2℃/秒以上で冷却終了温度Ar点未満まで加速冷却し、焼入れは、700℃以上の温度範囲において加熱速度1℃/秒以上、最高到達温度Ac点以上で加熱後、Ar点以上から300℃以下となるまで2℃/秒以上の冷却速度で冷却し、焼戻しは、Ac未満の温度範囲において加熱速度2℃/秒以上、最高到達温度Ac未満で加熱する。
【選択図】図1

Description

本発明は、建築、橋梁、水圧鉄管、低温貯蔵タンク、圧力容器、ラインパイプ、船舶、海洋構造物および建産機等に用いられる高張力厚鋼板の製造方法に関し、特に引張強さ590MPa級以上で、高靭性を有する高張力厚鋼板の製造方法に関するものである。
建築、橋梁、水圧鉄管、低温貯蔵タンク、圧力容器、ラインパイプ、船舶海洋構造物および建産機等の大型構造物が脆性破壊を生じた場合、経済、環境に及ぼす影響が大きいため、これらの大型構造物には高度の安全性が求められている。
このため、これらの構造物に使用される鋼材に対しては低温靭性が要求されることが多く、その要求水準は極寒地における開発の進展、構造物の大型化、および信頼性要求基準の引き上げなどにより年々厳しくなっている。また、比較的低温靭性の確保が難しい厚肉材の需要が増加している。
一般に、590MPa級以上の高張力鋼は、焼入れ焼戻し熱処理により製造されており、その組織は主にベイナイトもしくはマルテンサイトまたはそれらの混合組織からなっている。
焼入れ処理は、従来、圧延後に室温まで冷えた鋼片を再加熱することにより行われているが、多大なエネルギーコストを要し、処理時間も長いため、圧延後に直接焼入れを行う技術が開発され、コスト低減、工期短縮が図られている。
しかし、直接焼入れは、再加熱焼入れに比べて、加熱温度が高いために加熱時のオーステナイト粒径が大きく、最終的に得られる組織も結晶粒の粗い組織となるため靭性の面で不利である。例えば、直接焼入れ法により製造される590MPa級以上の高靭性高張力鋼は、オーステナイト粒径が粗くなることによる靭性不安定要因を避けられない。
特許文献1は直接焼入れ鋼材の靭性改善方法に関し、焼戻し熱処理時に急速加熱に加えて加速冷却を行う技術が開示されている。
特許文献2は、高靭性高張力鋼の製造方法に関し、急速加熱時の焼戻しパラメーターを規定して当該焼戻しパラメーターが特定の条件を満足するように焼戻しを行う技術が開示されている。急速加熱を実現するための具体的な装置としては誘導加熱装置が示唆されている。
特開平4−358022号公報 特開2002−241837号公報
特許文献1,2は基本的に、急速加熱焼戻し時に析出するセメンタイトを均一微細に分散させることで、通常の熱処理炉による焼戻しを施した鋼板と比較して低温靭性を改善するもので、焼入れ前の旧オーステナイト粒径は、再加熱焼入れの場合に比べて粗いことが推定される。
そこで、本発明は、焼入れ焼戻しにおいて、焼入れ前のオーステナイト粒を微細にし、かつ、焼戻し時に析出するセメンタイトを微細分散させることにより、靭性に優れた引張強さ590MPa級以上の高靭性高張力厚鋼板を製造することができる、高靭性高張力厚鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
一般に、再加熱焼入れ処理によってベイナイトもしくはマルテンサイトまたはそれらの混合組織を主体とする鋼を得る場合、その旧オーステナイト粒径を微細にするためには、オーステナイト粒の核生成速度を大きくし、生成したオーステナイトの粒成長を抑制することが重要となる。オーステナイト粒の核生成速度を大きくするためには、(1)再加熱前に鋼板に加工を加えて核生成サイトを増やすこと、あるいは(2)加熱時の加熱速度を大きくしてオーステナイト化の駆動力を大きくすることが挙げられる。生成したオーステナイトの粒成長を抑制するためには、(3)加熱温度をできるだけ低くすること、(4)AlやNb、Tiなどのオーステナイト粒ピンニング元素を適正に添加することが挙げられる。
これらのうち、(1)の技術は、再加熱に先立って厚鋼板を冷間あるいは温間で圧延することになるため実生産上現実的でない。一方、(3)や(4)のオーステナイト粒成長抑制に関しては、厚鋼板の再加熱熱処理において確立された技術として利用されている。しかし、いっそうの特性改善のためには、オーステナイト粒の核生成促進によるオーステナイト粒微細化技術の革新が求められており、本発明者は(2)の技術に着目した。加熱時の加熱速度を大きくして加熱温度をできるだけ低くすれば加熱オーステナイト粒径が微細になることは周知の事実であり、特に機械構造用鋼として使用される、C量0.3%以上の中炭素鋼においては多くの実用例がある。しかし、本発明が対象とする、高靭性を有するC量:0.25%以下の高張力鋼板についての検討例はほとんどなく、特に、焼戻し時に析出するセメンタイトの微細分散化まで同時に考慮した例はない。
本発明者は、焼入れ時のオーステナイト粒を微細化し、焼戻し時の析出セメンタイトを微細分散させる具体的プロセスについて鋭意研究を重ねた結果、熱間圧延後、Ar点未満まで冷却した厚鋼板を700℃以上での加熱領域を1℃/秒以上で加熱するとオーステナイト粒径が顕著に微細化することを知見した。本発明者は、焼戻しの保持時間、加熱速度、冷却速度とセメンタイトの凝集粗大化の関係を調べたところ、加熱速度と冷却速度がセメンタイト凝集粗大化に及ぼす影響は等価ではなく、冷却時に比べて加熱時の寄与がかなり大きいことを見出した。 本発明は、上記知見を基に更に検討を加えてなされたもので、すなわち、本発明は、
1.質量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.05〜0.6%、Mn:0.3〜2%、sol.Al:0.002〜0.07%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼を、熱間圧延後、加速冷却し、焼入れ後焼戻しを行う高靭性高張力厚鋼板の製造方法であって、
前記熱間圧延は加熱後、圧延終了温度Ar点以上で圧延し、
前記加速冷却は前記熱間圧延終了後、直ちに、冷却速度2℃/秒以上で冷却終了温度Ar点未満まで加速冷却し、
前記焼入れは、700℃以上の温度範囲において加熱速度1℃/秒以上、最高到達温度Ac点以上で加熱後、Ar点以上から300℃以下となるまで2℃/秒以上の冷却速度で冷却し、
前記焼戻しは、Ac未満の温度範囲において加熱速度2℃/秒以上、最高到達温度Ac未満で加熱することを特徴とする、高靭性高張力厚鋼板の製造方法。
2.鋼成分に更に、質量%で、Nb:0.05%以下、V:0.1%以下、Cr:3%以下、Mo:1%以下、Cu:3%以下、Ni:3%以下、B:0.005%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする1記載の高靭性高張力厚鋼板の製造方法。
3.鋼成分に更に、質量%で、Ti:0.03%以下、Ca:0.004%以下の1種又は2種を含有することを特徴とする1または2記載の高靭性高張力厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、引張強さ590MPa級以上の高靭性高張力厚鋼板の製造方法が得られ、産業上極めて有用である。
本発明の適用に好適な厚鋼板のオンラインでの急速加熱焼入れ・急速加熱焼戻しが可能な設備列の構成例を示す図。
本発明は、成分組成、製造条件を規定する。
[成分組成]以下の説明において%は質量%とする。

Cは強度を確保するために含有するが、0.05%未満ではその効果が十分でなく、一方、0.25%を超えると母材強度が高くなりすぎ、靭性が劣化するとともに溶接性が著しく劣化する。そのため含有量は0.05〜0.25%とする。
Si
Siは製鋼段階の脱酸剤及び強度向上元素として含有するが、0.05%未満ではその効果が不十分であり、一方、0.6%を超えると母材および溶接熱影響部の靭性が劣化するとともに溶接性が著しく劣化する。そのため含有量は0.05〜0.6%とする。
Mn
Mnは強度を確保するために含有するが、0.3%未満ではその効果が不十分であり、一方、2%を越えると溶接熱影響部の靭性が劣化するとともに溶接性が著しく劣化する。そのため含有量は0.3〜2%とする。
sol.Al
Alは脱酸のために添加する。sol.Al量で0.002%未満の場合にはその効果が十分でなく、一方、0.07%を超えて含有すると、鋼材の表面疵が発生し易くなる。そのため、sol.Alとしての含有量を0.002〜0.07%とする。尚、sol.Alとは、Alなどの酸化物になっていないAlであり、酸可溶Alとも呼ばれるものである。
本発明では、更に所望の特性を向上させるため、Nb:0.05%以下、V:0.1%以下、Cr:3%以下、Mo:1%以下、Cu:3%以下、Ni:3%以下、B:0.005%以下、Ti:0.03%以下、Ca:0.004%以下の1種又は2種以上を添加することが可能である。
Nb
Nbはマイクロアロイング元素として強度を向上させるために添加する。但し、0.05%を超えると溶接熱影響部の靭性を劣化させる。そのため、添加する場合には、Nb含有量を0.05%以下に限定する。

Vはマイクロアロイング元素として強度を向上させるために添加する。但し、0.1%を超えると溶接熱影響部の靭性を著しく劣化させる。そのため、添加する場合には、V含有量を0.1%以下に限定する。
Cr
Crは強度を向上させるために添加する。但し、3%を超えると溶接性及び溶接熱影響部の靭性が劣化する。そのため、添加する場合には、Cr含有量を3%以下に限定する。
Mo
Moは強度を向上させるために添加する。但し、1%を超えると溶接性及び溶接熱影響部の靭性が著しく劣化する。そのため、添加する場合には、Mo含有量を1%以下に限定する。
Cu
Cuは強度を向上させるために添加する。但し、3%を超えて添加するとCu割れの懸念が高まる。そのため、添加する場合にはCu含有量を3%以下に限定する。
Ni
Niは強度と靭性を向上させるために添加する。但し、3%を超えるとコストの上昇が著しい。そのため、添加する場合にはNi含有量を3%以下に限定する。

Bは焼入れ性を高め強度を向上させるために添加する。但し、0.005%を超えると靭性の劣化が著しい。そのため、添加する場合にはB含有量を0.005%以下に限定する。
Ti
TiはTiNを生成し、オーステナイト粒径を微細化し、母材靭性並びに溶接熱影響部の靭性をより一層向上させる。但し、その含有量が0.03%を超えると溶接熱影響部の靭性を劣化させる。そのため、添加する場合には、Ti含有量を0.03%以下に限定する。
Ca
Caは硫化物系介在物の形態を制御し靭性をより一層向上させる。但し、その含有量が0.004%を超えると効果が飽和し、逆に清浄度を低下させて靭性を劣化させる。そのため、添加する場合には、Ca含有量を0.004%以下に限定する。
上記以外の残部は、Fe及び不可避的不純物であるが、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記以外の成分の含有、たとえば、靱性改善を目的として、0.0050%以下のMg及び/または0.02%以下のREM(希土類金属)の含有、を拒むものではない。
[製造条件]
製造条件として、圧延条件と焼入れ条件、焼戻し条件を規定する。説明において、温度は、板厚平均温度を指す。また、加熱速度、冷却速度は、所定の温度域での平均加熱速度、平均冷却速度を指す。
鋼材の肉厚が大きい場合や冷却速度、加熱速度が速い場合には、板厚方向の各部位で温度履歴が異なるため、平均温度および平均速度とする。尚、板厚平均温度および平均冷却速度、平均加熱速度は、表面温度および冷却条件等が与えられた場合に、シミュレーション計算等により求められるものを用いることができる。
圧延条件
焼入れ処理の前組織として主にベイナイトもしくはマルテンサイトまたはそれらの混合組織を得るために、焼入れ開始時の組織をほぼオーステナイト単相とする必要がある。フェライト組織が焼入れ前に存在すると、急速加熱によるオーステナイト微細化効果が低減することが懸念される。このため、少なくとも圧延中にフェライト変態が始まらないように、圧延終了温度はAr点以上とする。尚、Ar点は、例えば下式で求めることができる。
Ar(℃)=910−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni−80Mo
但し、各元素記号は質量%表示の含有量とする。
圧延終了後、加速冷却を行う。冷却速度が2℃/秒未満であると、フェライト変態が生ずる場合がある。粗い初析フェライト組織が焼入れ前に存在すると、急速加熱によるオーステナイト粒微細化効果が低下するため、冷却開始から冷却停止の間の冷却速度を2℃/秒以上とする。加速冷却の停止温度は、変態を終了させるためにAr点未満とする。
なお、圧延終了後の加速冷却が終了した後に焼入れを実施する時期は、前記加速冷却後、鋼材が一旦室温まで下がってから焼入れのための加熱を行ってもよいし、加速冷却時にAr未満の温度に冷却された直後に焼入れのための加熱を開始してもよい。
焼入れ条件
焼入れ条件は本発明で最も重要な要件で、加熱時のオーステナイト粒径を微細化して靭性を向上させるため、700℃からAc以上の温度域において加熱速度1℃/秒以上とする。
厚鋼板を誘導加熱すると、700℃を超えてフェライトの磁気変態点やフェライト⇒オーステナイト変態を生ずるに伴って加熱速度は急激に低下するが、700℃からAc以上の温度域における最高加熱温度までの温度範囲において加熱速度1℃/秒以上とすると、加熱時のオーステナイト粒径が微細化される。
最高加熱温度がAc未満の場合、オーステナイト化が不完全となって、フェライトとオーステナイトとの二相組織からの焼入れとなり靭性が劣化するため、最高加熱温度はAc以上とする。
急速加熱後の冷却は、Ar点以上から300℃以下となるまで、2℃/秒以上の冷却速度で冷却する。
冷却開始温度がAr点未満の場合、フェライト変態が開始され、所定の組織が得られない。冷却速度が2℃/秒未満であると、フェライト変態やパーライト変態が生じて所定の組織が得られず、焼入れしても所定の強度が得られない場合がある。冷却方法は特に限定されないが、例えば、水冷を適用することができる。
冷却停止温度が300℃を超えると、十分な焼入れ効果が得られず、所定の強度が得られない。
なお、Ac点および後述のAc点は、例えば下式で求めることができる。
Ac(℃)=854−180C+44Si−14Mn−17.8Ni−1.7Cr
Ac1(℃)=723+22Si−14Mn−14.4Ni+23.3Cr
ただし、各元素記号は質量%表示の含有量とする。
焼戻し条件
焼戻し条件は焼戻し時に析出するセメンタイトを均一微細なものとすることにより、靭性を向上させることを目的として限定する。
焼戻しは、Ac未満の温度範囲において2℃/秒以上でAc未満の温度範囲に加熱して行う。最高加熱温度がAcを超えると、フェライトとオーステナイトとの二相組織の状態を経ることにより靭性が劣化するため、Ac未満の温度範囲で加熱する。加熱速度が2℃/秒未満の場合、セメンタイトの凝集粗大化が抑制されず高靭化を達成することはできない。
なお、焼入れから焼戻しまでの熱処理は、焼入れ後、一旦室温まで下がってから焼戻しのための加熱を行ってもよいし、焼入れ時に500℃以下の温度に冷却された直後に焼戻しのための加熱を開始してもよい。
本発明では上述した製造条件を適用する具体的製造設備は特に規定せず、焼入れ炉、焼戻し熱処理炉の配置は、オフライン上でもオンライン上でもかまわないが、エネルギーコストの観点からは、焼入れ直後に焼戻しのための加熱が可能なオンライン上の配置が好ましい。オフラインの熱処理炉を使った従来の焼入れ焼戻し熱処理での、多大なエネルギーコストや長い工期が解消される。
図1は本発明の適用に好適な厚鋼板のオンラインでの急速加熱焼入れ・急速加熱焼戻しが可能な設備列の構成例を示す図である。
(1)は、圧延機、冷却設備A、急速加熱設備A、冷却設備B、急速加熱整備Bがオンラインにこの順に並ぶ例である。この場合、圧延後、冷却設備Aにおいて加速冷却された鋼板は、急速加熱設備Aにおいて急速加熱された後、冷却設備Bにより急冷されて焼入れされる。その後、急速加熱設備Bにて焼戻し温度まで加熱された後、放冷されて焼戻し処理が完了する。
(2)は、急速加熱設備を単一配置とし、焼入れ用の加熱および焼戻し用の加熱を単一の加熱設備で兼用するものである。この場合は、冷却設備Bにおいて焼入れされた鋼板を上流側に逆送し、急速加熱設備で焼戻しの加熱を実施するものである。
(3)は、逆に、冷却設備を単一配置として、圧延後の加速冷却と焼入れのための冷却を1台の冷却設備で兼用するものである。この場合は、圧延後の鋼板を、まず、急速加熱設備Aでは加熱せずに素通りさせて冷却設備に装入して加速冷却を施し、その後、上流側に逆送して急速冷却設備Aにて鋼材を急速加熱し、その鋼材を再び冷却設備に投入して焼入れするものである。
(4)および(5)は、急速加熱設備および冷却設備をそれぞれ単一設置する例で、鋼材を上流側から下流側へ、あるいは、下流側から上流側へと、適宜搬送方向を調整することにより、所望の熱処理を実施できる。
また、圧延機と冷却設備との間、および/または冷却設備と急速加熱設備との間、さらに、図1(3)や(5)のような場合には、圧延機と急速加熱設備との間、などに、鋼板形状を矯正するための矯正機を設置することは、通板安定性の向上、加熱効率および/または冷却効率の向上の観点から有効である。
なお、本発明を適用するにあたり、上記以外の設備列を有する製造設備においても適用可能であることはいうまでもない。
本発明によれば、鋼の組織として、均一微細なセメンタイトが析出した、主にベイナイトもしくはマルテンサイトまたはそれらの混合組織が得られる。機械的性質に大きな影響を及ぼさない範囲であれば、フェライト、残留オーステナイト、パーライト等の、ベイナイトとマルテンサイト以外の組織を少量含んでも良い。具体的には、均一微細なセメンタイトが析出した、主にベイナイトもしくはマルテンサイトまたはそれらの混合組織以外の組織の体積分率が、10%以下であれば、許容される。以下、本発明を実施例を用いて説明する。
表1に実施例で用いた供試鋼の成分を示す。鋼種A〜Dは、成分組成が本発明の範囲内の鋼であり、一方、鋼種EはC量が本発明の範囲外となっている。これらの鋼組成を有する鋳片を加熱後、板厚20mmの厚鋼板に圧延し、圧延後、種々の焼入れ、焼戻し条件で熱処理を行って16種類の厚鋼板を製造した。
表2に、各厚鋼板(鋼番1〜16)の製造条件と機械的特性を合わせて示す。各種温度および加熱速度、冷却速度は全て板厚1/4t位置での熱電対による実測値である。シミュレーション計算により算出した板厚平均温度は、1/4tの温度と概ね一致する。
得られた厚鋼板について、強度(降伏応力:YS、引張強度:TS)、靭性(延性脆性破面遷移温度:vTrs)を求めた。引張試験は、JIS4号試験片を圧延方向と直角な方向に採取し試験を行った。衝撃試験は、JIS−4号標準試験片を圧延方向と平行に採取し試験を行った。
本発明範囲は、引張強さ590MPa以上、靭性は、vTrsにより評価し、−100℃以下とした。
表2において、鋼番1〜8、12、13、17、18は、本発明例であり、強度は目標とするTS≧590MPaを満足している。又、靭性は、従来鋼のvTrsがおおよそ−100℃以上であるのに対して、すべて−100℃以下と優れている。
一方、鋼番9は、C添加量が0.3%と高いため、強度が高くなりすぎ、靭性が劣化している。鋼番10は、圧延終了温度が低く、フェライトが析出した後に冷却されているため、焼入れ前組織として適切ではなく、オーステナイト粒径微細化効果が小さかったため靭性が低下している。
鋼番11も鋼番10と同様、圧延後の空冷で生じたフェライトにより、オーステナイト粒径微細化効果が小さくなって靭性が低下している。鋼番14は、焼入れの加熱速度が小さいため、オーステナイト粒径が粗大になって靭性が劣化している。
鋼番15は、焼入れの最高到達温度が二相温度域であり、二相組織となったため、靭性が劣化している。鋼番16は、焼入れ処理のため加熱した後、水冷せずに空冷としたため冷却速度が不足し、強度が確保できず、また靭性も低下している。
鋼番19は、焼戻しの加熱速度が小さく、セメンタイトが粗大となったため、靭性が低下している。鋼番20は焼戻しの最高到達温度が二相温度域であり、二相組織となったため、靭性が劣化している。
Figure 2010229441
Figure 2010229441

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.05〜0.6%、Mn:0.3〜2%、sol.Al:0.002〜0.07%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼を、熱間圧延後、加速冷却し、焼入れ後焼戻しを行う高靭性高張力厚鋼板の製造方法であって、
    前記熱間圧延は加熱後、圧延終了温度Ar点以上で圧延し、
    前記加速冷却は前記熱間圧延終了後、直ちに、冷却速度2℃/秒以上で冷却終了温度Ar点未満まで加速冷却し、
    前記焼入れは、700℃以上の温度範囲において加熱速度1℃/秒以上、最高到達温度Ac点以上で加熱後、Ar点以上から300℃以下となるまで2℃/秒以上の冷却速度で冷却し、
    前記焼戻しは、Ac未満の温度範囲において加熱速度2℃/秒以上、最高到達温度Ac未満で加熱することを特徴とする、高靭性高張力厚鋼板の製造方法。
  2. 鋼成分に更に、質量%で、Nb:0.05%以下、V:0.1%以下、Cr:3%以下、Mo:1%以下、Cu:3%以下、Ni:3%以下、B:0.005%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の高靭性高張力厚鋼板の製造方法。
  3. 鋼成分に更に、質量%で、Ti:0.03%以下、Ca:0.004%以下の1種又は2種を含有することを特徴とする請求項1または2記載の高靭性高張力厚鋼板の製造方法。
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