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JP2001139569A - キノンフルギド誘導体とその用途 - Google Patents

キノンフルギド誘導体とその用途

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Publication number
JP2001139569A
JP2001139569A JP32333799A JP32333799A JP2001139569A JP 2001139569 A JP2001139569 A JP 2001139569A JP 32333799 A JP32333799 A JP 32333799A JP 32333799 A JP32333799 A JP 32333799A JP 2001139569 A JP2001139569 A JP 2001139569A
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JP
Japan
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general formula
quinone
fulgide
group
represented
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JP32333799A
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Tetsuyuki Saiga
哲行 雑賀
Yasushi Yokoyama
泰 横山
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Osaka Soda Co Ltd
Original Assignee
Daiso Co Ltd
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Publication date
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  • Plural Heterocyclic Compounds (AREA)
  • Heterocyclic Carbon Compounds Containing A Hetero Ring Having Oxygen Or Sulfur (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】光着色状態が熱的に安定で繰り返し耐久性に優
れた性能を有する光応答性と電気応答性を併せ持つ光−
電気応答システムを提供する。 【解決手段】下記一般式(I)−Eで表わされる光応答
性のフルギド部位と電気化学応答性のキノン部位を複合
化した新奇なキノンフルギド化合物は光−電気により相
互変換可能な複数の化学構造をとる。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規なエレクトロ
クロミック及びホトクロミック共役機能分子とその用途
である光−電気応答化学システムに関する。
【0002】
【従来技術及び解決すべき課題】光−電気応答化学シス
テムに有用なエレクトロクロミック及びホトクロミック
共役機能分子としては、これまでホトクロミックなアゾ
部位とエレクトロクロミックなキノン部位を持つアント
ラキノン類が特開昭63-68553に開示されている。しか
し、このものは光異性体の熱安定性が十分でなく室温に
おいても数時間から数日で熱異性化が起こってしまう欠
点があった。
【0003】本発明の目的は光着色状態が熱的に安定で
繰り返し耐久性に優れた性能を有する光応答性と電気応
答性を併せ持つ新規なエレクトロクロミック及びホトク
ロミック共役機能分子とその製法の提供であり、更には
新しい光−電気応答システムを提供することを究極目標
とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく検討を重ねた結果、フルギド部位を光応
答部位とし、キノン部位と共役させることにより、光異
性体が熱的に安定な光−電気応答システムに供するに適
したキノンフルギド誘導体を見出し本発明を完成するに
至った。
【0005】即ち、本発明は、下記一般式[I]−E、[I]
−Z、[II]、[III]−E、[III]−Z又は [IV]
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】 (上記全ての式中、いずれも、R1はメチル基又はエチル
基を、また、R2はメチル基、エチル基、n-プロピル基、
iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基又はter-ブ
チル基を意味する。R3及びR4は同一であっても異なっ
ていてもよく、メチル基、エチル基又はアダマンチリデ
ン基を意味する。R5及びR6はこれらが共同で置換若しく
は無置換の芳香環を形成するか、又は同一であっても異
なっていてもよく、水素原子、炭素数が1〜20のアル
キル基、メトキシ基、シアノ基、ジメチルアミノ基、塩
素原子若しくは臭素原子を意味する。Xは酸素原子、硫
黄原子又は炭素数が1〜20のアルキルアミノ基を意味
する。)で示されるいずれかのキノンフルギド誘導体で
ある。
【0006】本発明の特徴はこれら6種の化合物が下記
に示すように光異性化と電気化学的酸化還元により可逆
的に相互変換可能な化学系を提供することである。
【化30】 すなわち、キノンフルギド化合物[I]は二重結合の光
異性化によりE(Entgegen)体とZ(Zusammen)体の状態を
示す。さらに特定波長の光照射により閉環異性体[II]
に変換されるから、化合物[I]−E、[I]−Z、[II]は光に
より相互変換可能である。また、ハイドロキノンフルギ
ド[III]もE体とZ体、光閉環体[IV]があり、光に
より相互変換可能である。
【0007】キノンフルギド[I]−E, Zとハイドロキ
ノンフルギド[III]−E, Zは電気化学的酸化還元によ
りそれぞれ相互変換可能であり、キノンフルギド閉環体
[II]とハイドロキノンフルギド閉環体[IV]も電気化
学的酸化還元により相互変換可能である。従って、化合
物[I]−E、[I]−Z、[II]、[III]−E、[III]−Z及び [I
V]は、光と電気により相互変換可能な化学系を構築して
いる。
【0008】本発明のキノンフルギド誘導体の具体例を
下記表1−1乃至表1−3に挙げる。なお、キノンフル
ギド誘導体の光−電気により相互変換可能な[I]−E,
[I]−Z,[II], [III]−E, [III]−Z, [IV]の系を代表さ
せて[I]−E異性体のみを示す。
【化31】
【化32】
【化33】
【0009】光異性化は有機溶媒中、あるいは透明プラ
スチックのようなマトリックス中において容易に行われ
る。光異性化は通常吸収スペクトル変化により容易に検
出され、アウトプットとしては吸光度変化が一般的であ
る。また、蛍光スペクトルや非線型光学効果などもアウ
トプットとして用いられる場合もある。
【0010】電気化学的酸化還元による相互変換は電解
液、高分子電解質を用いて行われる。相互変換による色
変化を信号としてアウトプットとする場合には透明ガラ
ス電極を用いることができる。酸化還元電位、電流をア
ウトプットとする場合には通常の金属電極やマイクロ電
極を用いることができる。酸化還元にともなう物質の出
入りを重量で測定しアウトプットとする場合には水晶振
動子などを電極として用いることができる。これらの検
出技術はいずれも電気化学的センサーなどに良く知られ
ているものが応用できる。また化合物[I]と[III]、
[II]と[IV]の相互変換は酸化剤、還元剤を用いた化
学的な酸化還元によっても可能である。
【0011】一般式[I]乃至[IV]の化合物群はいず
れも新規物質であって、次式(1)の方法により合成す
ることができる。
【0012】即ち、本発明のキノンフルギド誘導体は式
[VI]で示される水酸基の保護されたハイドロキノン化
合物と式[VII]で示されるコハク酸誘導体の塩基によ
る縮合により得られる、式[VIII]で示されるラクトン
化合物を重要中間体とする製造法により合成される。
【化34】
【0013】式[VI]に対応するキノン誘導体はキノン
の強い電子吸引性のためコハク酸誘導体[VII]との縮
合反応が進行せず対応するラクトン化合物を得る事が困
難である。また、水酸基を保護しないハイドロキノンで
は水酸基が塩基を消費し反応が進行しない。
【0014】縮合反応はストッブ縮合として公知の諸条
件下で行うことが可能である。特にテトラヒドロフラン
(THF)などエーテル系無水溶媒中において、塩基とし
てセリウムクロライド−LDA系を用いることが好まし
い。
【0015】ストッブ反応により得られたラクトン化合
物[VIII]は、下記に示すようにアルカリ加水分解によ
りジカルボン酸に導かれ、さらに脱水されて酸無水物
[V]に導かれる。
【化35】 アルカリ加水分解はラクトンの加水分解として公知に知
られる諸条件下で行われる。代表的な溶媒としては水、
アルコール、エーテル系溶媒、あるいはその混合溶媒が
挙げられる。アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸
化カリウム、カリウムt−ブトキシド(t-BuOK)、カリ
ウムメトキシド(MeOK)などのアルカリ金属アルコラー
トが挙げられる。
【0016】脱水反応には通常のコハク酸誘導体の脱水
剤、脱水条件が適用できる。特にN−トリフルオロアセ
チルイミダゾールをTHF中で反応するのが有効である。
得られたフルギド誘導体[V]は、適当な方法でハイドロ
キノンの保護基をはずすことによりキノンフルギド
[I]、あるいはハイドロキノンフルギド[III]に導かれ
る。合成されたキノンフルギド[I]、あるいは、ハイド
ロキノンフルギド[III]はE体、Z体の混合物であるこ
とがある。これらはカラムクロマトグラム等により単離
することも可能であるし、光照射により一方の異性体の
みに変換することも可能である。
【0017】
【発明の実施の形態】
【0018】以下に実施例を挙げてこの発明を具体的に
説明する。このキノンフルギド化合物の化学構造は核磁
気共鳴スペクトル(H-NMR、 分解能270MHz使用、内部標
準としてTMS使用)、高分解能質量分析スペクトル
(HRMS)、低分解能質量分析スペクトル(LRMS)、赤外
吸収スペクトル(IR)、紫外-可視吸光スペクトルによ
り決定した。電気化学的酸化還元挙動の測定にはサイク
リックボルタモグラムを用いた。作用電極、対向電極に
は白金電極を用い、標準電極は飽和カロメル電極(SC
E)を用いた。
【0019】実施例1 ラクトン中間体8の合成
【化36】 塩化セリウム(III) 七水和物 983 mg(2.64mmol)を二つ
口フラスコに入れて減圧下135℃で6時間加熱し結晶水
を除去し、窒素置換後、室温に冷却してTHF 6mlを加え
た。3−アセチル−4,9−ジメトキシ−2−メチルナフ
トフラン 500 mg (1.76mmol)をTHF 6mlに溶かした溶液
を加え、−50℃に冷却した。一方、ジイソプロピルアミ
ン (2.82mmol)、触媒量の2,2−ビピリジルの5ml THF
溶液にn−ブチルリチウム(2.82mmol)を加えてLDAを調整
し、ジメチルイソプロピリデンサクシナート0.49g(2.6m
mol)のTHF溶液を加えて-50℃1時間反応させた。この反
応液を先に調整した塩化セリウム(III)/3−アセチル−
4,9−ジメトキシ−2−メチルナフトフランの混合液に
滴下し、ゆっくりと室温まで戻した後、4日間攪拌し
た。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を終了
し、セライトろ過を行った後、酢酸エチルで抽出して乾
燥し、フラッシュカラムクロマトグラムによりラクトン
中間体8を精製した。収量380.7mg(0.8682 mmol)、収率4
9% (3−アセチル−4,9− ジメトキシ−2−メチルナ
フトフランより)。 H-NMR (CDCl3) δppm 1.76(3H,s),1.92(3H,s),2.23
(3H,s),2.65(3H,s),3.84(3H,s),4.15(3H,s),4.22(3
H,s),4.80(1H,s),7.45-7.48(2H,m),8.14-8.17(1H,
m),8.24-8.28(1H,m) IR(KBr) γ/cm-1 1752(C=O),1736(C=O)
【0020】実施例2 合成中間体5の合成
【化37】 実施例1で得られたラクトン体8を下記方法で加水分解
しジカルボン酸とした後、脱水してフルギド中間体5を
得た。ラクトン体380.7mg(0.8682mmmol)を15mlのt−ブ
タノール(t-BuOH)に溶かしたものをt-BuOK 487.1mg
(4.341mmmol)のt-BuOH 4ml溶液に滴下して1時間環
流して加水分解し、ハーフエステルを得る。反応溶液に
THF 4ml, 水 2ml, KOH 1gを加えてさらに2.5時間環流を
続けジカルボン酸を得る。反応混合物から定法によりジ
カルボン酸の粗製物202mgを得た。ジカルボン酸をTHF 5
mlに溶解し、N−トリフルオロアセチルイミダゾール 0.
2ml(1.74 mmol)を加え、3時間攪拌して脱水する。生成
したフルギド中間体を酢酸エチルで抽出し、フラッシュ
クロマトグラムで精製してフルギド中間体5のE体6.3 m
g (0.016 mmol),Z体 112.7 mg (0.2773 mmol)を得
た。 5-E体:H-NMR(CDCl3) δ/ppm 1.26(3H,s),2.19(3H,
s),2.31(3H,s),2.82(3H,s),3.85(3H,s),4.27(3H,
s),7.48-7.52(2H,m),8.13-8.17(1H,m),8.27-8.13(1
H,m) 5-Z体:H-NMR(CDCl3) δ/ppm 2.14(3H,s),2.38(3H,
s),2.43(3H,s),2.52(3H,s),3.71(3H,s), 4.30(3H,
s),7.44-7.48(2H,m),8.10-8.14(1H,m),8.26-8.30(1
H,m) IR (KBr) γ/cm-1 1808(C=O), 1758(C=O) HRMS (EI,70eV) m/z=406.1415(found),406.1416 (cal
cd for C24H22O6)
【0021】実施例3 フルギド中間体5-Z体より脱保護によりキノンフルギド1
-Z体の合成
【化38】 フルギド中間体5-Z 412.4mg (1.019 mmol)をTHF 150ml,
水15mlの混合溶媒に溶かし−10℃に冷却した。これにC
AN 2.792 g (5.093 mmol)の20ml水溶液を滴下し、−10
℃で1時間攪拌し酸化した。反応液に水を加えキノンフ
ルギドを酢酸エチルで抽出し、フラッシュクロマトグラ
ムにより精製し、キノンフルギド1-Z体を236 mg (0.627
mmol)を得た。収率 62% (フルギド中間体 5-Z体よ
り)。 H-NMR (CDCl3) δ/ppm 2.18(3H,s),2.25(3H,s),2.41
(3H,s),2.50(3H,s),7.72-7.78(2H,m),8.08-8.11(1H,
m),8.20-8.23(1H,m) IR (KBr) γ/cm-1 1816(C=O),1764(2C=O,quinone) HRMS (EI, 70eV) m/Z=376.0949 (found), 376.0947 (ca
lcd for C22H16O6)
【0022】実施例4 光反応によるキノンフルギド1-Z体から閉環体2への変換
【化39】 キノンフルギド1-Z体の1.13 x 10-4Mのトルエン溶液に
波長405nmの単色光を照射して閉環体に誘導した。吸収
スペクトル変化を図1に示す。1-Z体は390nmに吸収極大
を示すが405nmの単色光照射によりこの吸収極大は減少
し、新たに500nmに吸収極大を示す吸収帯が現れた。こ
の吸収スペクトル変化は1-Z体から1-E体を経て閉環体2
に変換されたことを示すものである。得られた閉環体2
は溶液のまま室温に放置してもまったく開環体1-Z,1-E
に熱異性化はせず極めて安定である事が確認された。
【0023】参考例5 フルギド中間体5-E体より脱保護によるキノンフルギド1
-E体の合成。
【化40】 フルギド中間体5-E体 32.5mg (0.0800 mmol)をTHF 25m
l, 水3mlの混合溶媒に溶かし−10℃に冷却した。これに
CAN 0.219 g (0.400 mmol)の3ml水溶液を滴下し、−10
℃で1時間攪拌し酸化した。反応液に水を加えキノンフ
ルギドを酢酸エチルで抽出し、フラッシュクロマトグラ
ムにより精製し、キノンフルギド1-E体を18.1mg (0.048
1 mmol)を得た。収率 60% (フルギド中間体5-E体よ
り)。 H-NMR (CDCl3) δ/ppm 1.41(3H,s),2.22(3H,s),2.
29(3H,s),2.67(3H,s),7.78-7.81(2H,m),8.16-8.19(1
H,m),8.22-8.25(1H,m) IR (KBr) γ/cm-1 1812(C=O),1673(2C=O,quinone) LRMS (EI, 70eV) m/Z (rel intensity) 376(M+,66)
【0024】参考例6 キノンフルギド1-Z体を下記に示すごとくNa2S2O4により
還元してハイドロキノンフルギド3-E体を得る事ができ
た。
【化41】 Na2S2O4 281mg (1.61 mmol)を6mlのTHFに溶かしたもの
に、キノンフルギド1-Z体40.4mg (0.107 mmol)を6ml TH
Fに溶かしたものを滴下し0℃で2時間反応させ、定法
により抽出、フラッシュクロマトグラムにより精製して
ハイドロキノンフルギド3-E体3.8 mg (0.010 mmol)を得
た。 H-NMR (CDCl3) δ/ppm 0.78(3H,s), 1.48(3H,s), 2.63
(3H,s), 2.70(3H,s), 7.52-7.57(1H,m), 7.60-7.66(1H,
m), 7.84-7.87(1H, d, J=7.92Hz), 8.30-8.33(1H,m) IR (KBr) /cm-1 3405 (OH), 1832 (C=O), 1764(C=O) LRMS (EI, 70eV) m/Z (rel intensity) 378(M+, 100)
【0025】実施例7 キノンフルギド1-Zからハイドロキノン3-Zへの電気化学
的還元(プロティク溶媒中)
【化42】 キノンフルギド1-Zの0.9mmol dm-3アセトニトリル/硫酸
溶液(0.1 mol dm-3 TBAP, 0.01 mol dm-3 H2SO4)のサ
イクリックボルタモグラムを図2に示す。図2に示された
サイクリックボルタモグラムは還元ピーク電位−262m
V、酸化ピーク電位+166mVの可逆なサイクルを示し、電
極上でキノンフルギド1-Zとハイドロキノンフルギド3-Z
が電気化学的な還元・酸化により可逆的に相互変換可能
である事を示した。CVにおいて還元ピークと酸化ピーク
の差が通常の酸化還元の場合より大きい事はハイドロキ
ノンの水酸基とフラン酸素との間に水素結合が有るため
酸化に対して抵抗力が働くためと考えられる。
【0026】実施例8 キノンフルギド1-Zからハイドロキノン3-Z2-への電気化
学的還元(アプロティック溶媒中)
【化43】 キノンフルギド1-Zの0.9mmol dm-3無水アセトニトリル
溶液(0.1 mol dm-3 TBAP)のサイクリックボルタモグ
ラムを図3に示す。キノン化合物のアプロティック溶媒
中の電気化学的酸化還元ではプロトンを得る事ができな
いためセミキノンラジカルを経由してハイドロキノンの
ジアニオンに還元される。図3に示されたサイクリック
ボルタモグラムの還元ピーク−915mVは1-Zからセミキノ
ンラジカルへの還元を示し、続く−1447mVの還元ピーク
はハイドロキノンジアニオン3-Z2-への還元を示す。こ
の2段の還元に対応して酸化側も−1185mV、−796mVの酸
化ピークを示した。すなわち1-Zはセミキノンラジカル
を経由した可逆な酸化還元サイクルを示し、電極上でキ
ノンフルギド1-Zがセミキノンラジカル中間体をへてハ
イドロキノンフルギドジアニオン3-Z2-に相互変換可能
である事を示した。
【0027】実施例9 キノンフルギド1-Eからハイドロキノン3-Eへの電気化学
的還元(プロティック溶媒中)
【化44】 キノンフルギド1-Eの0.9mmol dm-3アセトニトリル/硫酸
溶液(0.1 mol dm-3 TBAP, 0.01 mol dm-3 H2SO4)のサ
イクリックボルタモグラムは酸化ピーク−302mV、還元
ピーク+232mVを示した。還元ピークと酸化ピークの差
が通常の酸化還元の場合より大きい事は1-Zの場合と同
様にハイドロキノンの水酸基とフラン酸素との間に水素
結合が有るため酸化に対して抵抗力が働くためと考えら
れる。すなわち、電極上でキノンフルギド1-Eとハイド
ロキノンフルギド3-Eが電気化学的な還元・酸化により
可逆的に相互変換可能である事を示した。
【0028】実施例10 キノンフルギド1-Eからハイドロキノン3-E2-への電気化
学的還元(アプロティック溶媒中)
【化45】 キノンフルギド1-Eの0.9mmol dm-3無水アセトニトリル
溶液(0.1 mol dm-3 TBAP)のサイクリックボルタモグ
ラムは−882mV、−1428mVの還元ピークを示し、−1237m
V、−786mVに対応する酸化ピークを示した。すなわち1
-Eは1-Zと同様にアプロティック溶媒中ではプロトンが
得られないのでセミキノンラジカルを経由したハイドロ
キノンジアニオン3-E2-に相互変換可能である事を示し
た。
【0029】実施例11 キノンフルギド閉環体2の化学還元によるハイドロキノ
ンフルギド閉環体4への変換
【化46】 キノンフルギド閉環体2はTHF/水混合溶媒中Na2S2O4に
より容易に化学還元可能であった。しかしながら、得ら
れたハイドロキノンフルギド閉環体4は空気酸化により
容易に2に再変換されるため単離する事は困難であっ
た。図4に2から4への化学還元による吸収スペクトル
変化を示す。枝付き吸光セルに2 (濃度約1.5x10-4
M)のTHF溶液を調整し窒素をバブリングして空気を追い
出し封印した。2は432nmに極大吸収、504nmにショルダ
ー吸収を示した(実線)。この枝付きセルにあらかじめ
窒素で置換したNa2S2O4水溶液を加えると2は還元され4
32nm, 504nmの吸収帯は消えて360nmにショルダー吸収を
示す4に変換された(一点鎖線)。枝付きセルの封印を
はずし、溶液を空気に触れさせるとすぐに432nm, 504nm
の吸収帯が増加し、空気酸化により2に変換されること
が解った。
【0030】実施例12 キノンフルギド閉環体2とハイドロキノンフルギド閉環
体4の電気化学的酸化還元による相互変換
【化47】 実施例9で調整したキノンフルギド1-Eの0.9mmol dm-3
アセトニトリル/硫酸溶液(0.1 mol dm-3TBAP, 0.01 mo
l dm-3 H2SO4)に405nmの光を照射して閉環体2に変換し
た。光定常状態においてサイクリックボルタモグラムを
測定すると酸化ピーク−282mV、還元ピーク+245mVを示
す可逆な酸化還元サイクルを示した。すなわち、電極上
でキノンフルギド閉環体2とハイドロキノンフルギド閉
環体4が電気化学的な還元・酸化により可逆的に相互変
換可能である事を示した。
【0031】参考例1 ハイドロキノンフルギド3-Eのトルエン溶液に紫外光を
照射して光閉環反応を試みたが全く起こらなかった。
【0032】
【効果】本発明のキノンフルギドの相互変換の過程は独
立ではなく相互に関与しあっている。例えば、[I]-E/[I
II]-E, [I]-Z/[III]-Z, [II]/[IV]の電気化学的酸化還
元の挙動は異なってくる。通常は光異性体の異性化は吸
収スペクトルにより観察されるが、キノンフルギドでは
酸化還元挙動により観察することも可能になる。すなわ
ち、光−電気応答化学系では光り信号をインプットとし
て引き起こされる光異性化を電気信号としてアウトプッ
トすることが可能である。通常光異性化による光記録は
光で検出する際に逆反応を起こし非破壊読み出しが難し
いが、光−電気応答系では光記録を電気信号で読み取る
ため下記のように非破壊読み出しが可能である。
【化48】 また、一分子が図1に示す6つの状態をとることが可能
であるから光−電気信号による多重記録も可能である。
フルギドの光閉環体は熱安定であり室温では開環せず、
光応答が極めて安定であることが大きな特徴である。
【0033】
【図面の簡単な説明】
【図1】 1-Zの光照射による閉環体2への吸収スペクト
ル変化
【図2】 1-Zと3-Zの電気化学的酸化還元を示すサイク
リックボルタモグラム
【図3】 1-Zと3-Z 2-の電気化学的酸化還元を示すサ
イクリックボルタモグラム
【図4】 キノンフルギド閉環体2、ハイドロキノン閉
環体4の吸収スペクトル(化学還元による吸収スペクト
ル変化)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C09K 9/02 C09K 9/02 A B

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記一般式[I]−E、[I]−Z、[II]、[III]
    −E、[III]−Z又は [IV] 【化1】 【化2】 【化3】 【化4】 【化5】 【化6】 (上記全ての式中、いずれも、R1はメチル基又はエチル
    基を、また、R2はメチル基、エチル基、n-プロピル基、
    iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基又はter-ブ
    チル基を意味する。R3及びR4は同一であっても異なっ
    ていてもよく、メチル基、エチル基又はアダマンチリデ
    ン基を意味する。R5及びR6はこれらが共同で置換若しく
    は無置換の芳香環を形成するか、又は同一であっても異
    なっていてもよく、水素原子、炭素数が1〜20のアル
    キル基、メトキシ基、シアノ基、ジメチルアミノ基、塩
    素原子若しくは臭素原子を意味する。Xは酸素原子、硫
    黄原子又は炭素数が1〜20のアルキルアミノ基を意味
    する。)で示されるいずれかのキノンフルギド誘導体。
  2. 【請求項2】一般式[I]−Z 【化7】 (式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びXは、前掲と同
    じ基を意味する。)で示されるキノンフルギド誘導体を
    下記一般式 [III]−Zで示され、上記一般式[I]−Zと対
    応する 【化8】 キノンフルギド誘導体と電気化学的酸化還元により相互
    変換を行うエレクトロクロミック材料。
  3. 【請求項3】一般式[I]−E 【化9】 (式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びXは、前掲と同
    じ基を意味する。)で示されるキノンフルギド誘導体を
    下記一般式 [III]−Eで示され、上記一般式[I]−Eと対
    応する 【化10】 キノンフルギド誘導体と電気化学的酸化還元により相互
    変換を行うエレクトロクロミック材料。
  4. 【請求項4】一般式[II] 【化11】 (式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びXは、前掲と同
    じ基を意味する。)で示されるキノンフルギド誘導体を
    下記一般式[IV]で示され、上記一般式[II]と対応する 【化12】 キノンフルギド誘導体と電気化学的酸化還元により相互
    変換を行うエレクトロクロミック材料。
  5. 【請求項5】一般式[I]−E 【化13】 (式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びXは、前掲と同
    じ基を意味する。)で示されるキノンフルギド誘導体を
    下記一般式[I]−Zで示され、上記一般式[I]−Eと対応
    する 【化14】 キノンフルギド誘導体と光照射により相互変換を行なう
    か、又は、下記一般式[II]で示され、上記一般式[I]−E
    と対応する 【化15】 キノンフルギド誘導体と光照射により相互変換を行なう
    ホトクロミック材料。
  6. 【請求項6】一般式 [III]−E 【化16】 (式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びXは、前掲と同
    じ基を意味する。)で示されるキノンフルギド誘導体を
    下記一般式 [III]−Zで示され、上記一般式[I]−Eと対
    応する 【化17】 キノンフルギド誘導体と光照射により相互変換を行なう
    か、又は、下記一般式 [IV]で示され、上記一般式[III]
    −Eと対応する 【化18】 キノンフルギド誘導体と光照射により相互変換を行なう
    ホトクロミック材料。
  7. 【請求項7】一般式[V] 【化19】 (式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びXは、前掲と同
    じ基を意味する。また、Yは水酸基の保護基であって、
    メチル、メトキシメチル、トリアルキルシリル又はベン
    ジルを意味する。)で表わされるいずれかの合成中間
    体。
  8. 【請求項8】一般式[VIII] 【化20】 (式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、X及びYは前掲と同
    じ基を意味する。また、R7はメチル基又はエチル基を意
    味する。)で表わされるいずれかのラクトン中間体。
  9. 【請求項9】一般式[VI] 【化21】 (式中、R1、R2、R5、R6、X及びYは、前掲と同じ基を
    意味する。)の化合物と一般式[VII] 【化22】 (式中、R3、R4 及びR7は、前掲と同じ基を意味す
    る。)の化合物を縮合反応させることを特徴とする、一
    般式[VIII] 【化23】 (式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、X及びYは前掲
    と同じ基を意味する。)で表わされるラクトン中間体の
    製造法。
  10. 【請求項10】下記一般式[I]−E、[I]−Z、[II]、[II
    I]−E、[III]−Z又は [IV]で示される化合物の光異性
    化、電気化学的酸化還元を利用することを特徴とする相
    互変換可能な光−電気応答化学システム。
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