国内メーカーが発売したカメラをまとめながら「カメラ業界の1年」を振り返る、年末恒例の企画。2024年は、フラッグシップモデルからエントリーモデルまで注目度の高いカメラがいくつも登場した1年だった。
2024年は、キヤノン「EOS R1」(左上)、ソニー「α9 III」(右上)など高性能なミラーレスカメラがいくつも登場
2024年に発売された国内メーカー製の一眼カメラを調べてみたところ、ミラーレスカメラを手掛ける主要メーカーから新製品が登場しており、その数は計14モデルだった。(※価格.comマガジン調べ、派生モデル/限定モデル/追加レンズキットは除く)。2023年は15モデル、2022年は13モデル、2021年は15モデル、2020年が19モデルだったので、製品数に関してはほぼ横ばいなのだが、注目してほしいのは数より質。2024年はハイエンドモデルからエントリーモデルまで、充実した内容のカメラがいくつも登場した1年だった。
Z50II(2024年12月13日発売)
Z6III(2024年7月12日発売)
EOS R1(2024年11月29日発売)
EOS R5 Mark II(2024年8月30日発売)
α1 II(2024年12月13日発売)
VLOGCAM ZV-E10 II(2024年8月 2日発売)
α9 III(2024年1月26日発売)
X-M5(2024年11月下旬発売)
GFX100S II(2024年6月28日発売)
X-T50(2024年6月28日発売)
LUMIX GH7(2024年7月26日発売)
LUMIX S9(2024年6月20日発売)
LUMIX G100D(2024年1月26日発売)
※LUMIX G99IIは2024年12月17日発表で発売は2025年2月20日
OM SYSTEM OM-1 Mark II(2024年2月23日発売)
2024年のカメラ市場を語るうえで外せないのが、キヤノンから同社ミラーレスカメラ「EOS Rシリーズ」初のフラッグシップモデル「EOS R1」(2024年11月29日発売)が登場したことだ。ソニー、ニコンに続いてキヤノンも遂にフラッグシップ機を一眼レフからミラーレスに移行したということで、カメラ史に残る歴史的な出来事だったと言っていいだろう。
「EOS R1」は、キヤノンの最先端技術を惜しげもなく投入することで、プロ向けの動体撮影用カメラとして圧倒的な性能を実現したモンスターマシンだ。新しいエンジンシステム「Accelerated Capture」を採用し、「EOS Rシリーズ」史上最高のAFシステムと最高約40コマ/秒の超高速連写を達成。ローリングシャッター歪みを極限まで低減しているのもポイントで、電子シャッター時の動体歪みは「EOS-1D X Mark III」のメカシャッターと同等レベルにまで抑えられているという。価格は約100万円でかなり高額だが、その価格に見合う価値のある製品に仕上がっている。
キヤノン「EOS R1」(2024年11月29日発売)
なお、キヤノンは、2024年にハイアマチュア向けのハイスペックモデル「EOS R5 Mark II」(2024年8月30日発売)もリリースしている。「EOS R1」と同じ「Accelerated Capture」システムを採用し、有効最大約4500万画素と最高約30コマ/秒連写を両立しているのが特徴だ。8K/60p RAW動画のカメラ内記録も可能。ハイアマチュア向けの本命モデルとして人気を集めている。
キヤノン「EOS R5 Mark II」(2024年8月30日発売)
2024年は、「EOS R1」以外にも高性能なカメラが多く登場した1年だった。なかでも話題を集めたのはソニー。フラッグシップの第2世代モデル「α1 II」(2024年12月13日発売)と、ハイエンドモデル「α9 III」(2024年1月26日発売)をリリースした。
「α1 II」は、従来モデル「α1」(2021年3月発売)から4年近く経過して登場した後継機。有効約5010万画素のメモリー内蔵積層型CMOSセンサー「Exmor RS」と画像処理エンジン「BIONZ XR」を継承しつつ、被写体認識専用の「AIプロセッシングユニット」など、この4年間でソニーが積み上げてきた技術を追加することで、プロ機として着実な進歩を遂げているのが特徴だ。
ソニー「α1 II」(2024年12月13日発売)
「α9 III」は、フルサイズ対応の一眼カメラとして世界で初めて「グローバルシャッター方式」の撮像素子を搭載した話題作。全画素同時露光で読み出しを行うグローバルシャッター方式によって、原理的に動体の歪み(画像の歪み)を完全に抑えられるのが、これまでにはない特徴だ。フラッシュの同調速度にもほぼ制限がなくなるという、まさに“夢”のような性能を実現したカメラである。
ソニー「α9 III」(2024年1月26日発売)
このほか、マイクロフォーサイズ機ではパナソニックから「LUMIX GH7」(2024年7月26日)が、OMデジタルソリューションズから「OM SYSTEM OM-1 Mark II」(2024年2月23日)がリリースされた。どちらもマイクロフォーサイズ機のフラッグシップモデル。「LUMIX GH7」は、像面位相差AFに対応するうえ、動画RAW内部記録に対応するなど動画フラッグシップ機としての性能が向上した。
パナソニック「LUMIX GH7」(2024年7月26日)
「OM SYSTEM OM-1 Mark II」は、ボディ内手ブレ補正、被写体認識性能、連写持続性などが向上。ハーフNDフィルターの効果が得られる新機能「ライブGND」も追加されている。
OMデジタルソリューションズ「OM SYSTEM OM-1 Mark II」(2024年2月23日)
APS-Cサイズの撮像素子を採用するミラーレスがいくつか発売されたのも2024年の見逃せないトピックだ。エントリー向けとして以下の3モデルが登場した。
ニコン「Z50II」(2024年12月13日発売)
ソニー「VLOGCAM ZV-E10 II」(2024年8月 2日発売)
富士フイルム「X-M5」(2024年11月下旬発売)
ニコン「Z50II」は、従来モデル「Z50」から約5年ぶりのリニューアル。フラッグシップモデル「Z9」と同じ画像処理エンジン「EXPEED 7」を搭載することで、AFや連写などの使い勝手が大きく向上している。エントリー向けではあるものの、本格的な動体撮影にも対応できる性能を持つのが特徴だ。
ニコン「Z50II」(2024年12月13日発売)
ソニー「VLOGCAM ZV-E10 II」と富士フイルム「X-M5」は、電子ビューファインダー(EVF)を省略したコンパクトなボディに、充実した動画撮影機能を搭載する入門機だ。両モデルとも、入門機とはいえ上位機種譲りの基本スペックを搭載しており、性能は十二分に高い。
「VLOGCAM ZV-E10 II」は、有効約2600万画素の裏面照射型「Exmor R」CMOSセンサーと、最新の画像処理エンジン「BIONZ XR」を採用。動画撮影時の高性能な手ブレ補正「アクティブモード」やブリージング補正機能などを搭載するうえ、インテリジェント3カプセルマイクも備えており、高音質に記録できるのも特徴だ。
ソニー「VLOGCAM ZV-E10 II」
「X-M5」は、有効約2610万画素の裏面照射型「X-Trans CMOS 4」センサーに、最新の画像処理エンジン「X-Processor 5」を組み合わせている。動画撮影では、9:16比率の縦長動画の記録が可能。富士フイルムのデジタルカメラとして初めて内蔵マイクを3つ搭載するのも特徴だ。ダイヤル操作で「フィルムシミュレーション」を選択できる専用ダイヤルも採用している。
富士フイルム「X-M5」
ここ数年、一眼カメラの中心は高性能なフルサイズミラーレスでハイエンド志向が高まっていたが、2024年は入門機としてこれらAPS-Cミラーレス3モデルが登場したのはうれしいニュースだった。価格も10万円台前半に抑えられており、比較的購入しやすいのも魅力だ。
一眼カメラ以外に目を向けてみると、2024年は、高級コンパクトデジカメやフィルムカメラでも注目度の高い製品が発売された。
高級コンパクトデジカメでは、富士フイルム「X100VI」(2024年3月28日発売)が、世界中で爆発的な人気を集めたのが記憶に新しい。「X100シリーズ」として初めてボディ内5軸手ブレ補正を搭載するなど、非常に充実したスペックを採用し、予約開始から人気が集中。発売から9か月が経過した現在でも品薄の状態が続いている。
富士フイルム「X100VI」(2024年3月28日発売)
2024年発売の高級コンパクトデジカメでは、国内メーカー製ではないものの、ライカ「LEICA Q3 43」(2024年9月27日発売)が人気を集めているのも報告しておきたい。有効6030万画素の裏面照射型CMOSセンサーと、焦点距離43mmの「アポ・ズミクロン」レンズを搭載した超高級モデル。100万円を超える価格ながら、“納期未定”の人気モデルとなっている。
ライカ「LEICA Q3 43」(2024年9月27日発売)
話題性という点では、リコーイメージングのコンパクトフィルムカメラ「PENTAX 17」(2024年7月12日発売)も2024年を代表する製品と言えるだろう。「PENTAX」ブランドのフィルムカメラとしては約21年ぶりの新製品。マニュアル操作にこだわったハーフサイズ機として登場し、一時期、供給不足によって注文受付を停止するほど人気が集中した。
リコーイメージング「PENTAX 17」(2024年7月12日発売)
発売された製品から1年を振り返ると、2024年は、フラッグシップモデルからエントリーモデルまで、さまざまなタイプのミラーレスが登場した1年だったと言える。フラッグシップモデルでは、やはりキヤノン「EOS R1」が話題に。技術的にはソニー「α9III」のグローバルシャッター方式は新しい時代を感じさせるものだった。エントリーモデルでは、本格的な仕様のニコン「Z50II」が人気を集めている。
CIPA(一般社団法人カメラ映像機器工業会)が公開しているデジタルカメラの出荷数量を見ると、2024年は、4月と9月を除いて前年同月を上回る水準で推移しており、比較的堅調な1年だったことが読み取れる。新製品や人気モデルのなかには品薄で購入できないものもあり、「欲しいものが欲しいときに手に入る」状況とまでは言えないのだが、特定の製品で供給不足が極端に長く続くケースは徐々に減ってきている。
2022年〜2024年のレンズ交換式デジタルカメラの出荷数量グラフ(2024年10月まで)。青の破線が2022年、黒線が2023年、オレンジが2024年。2024年は前年と同等か上回る水準で推移している(出典:一般社団法人カメラ映像機器工業会)
こちらは、レンズ固定式を含めてデジタルカメラ全体の出荷数量を示すグラフ(2024年10月まで)。デジタルカメラ全体で見ても前年と同等か上回る水準で推移している(出典:一般社団法人カメラ映像機器工業会)
来年2025年にどんなカメラが登場するのか期待は尽きない。ハイエンド向けのミラーレスに限れば、製品サイクル的には、ニコンからフラッグシップモデル「Z9」の後継機が登場してもおかしくないだろう。コンパクトデジカメでは「GR III」の後継がそろそろリリースされるかもしれない。いろいろな噂が飛び交っているが、まずは、カメラと写真映像のワールドプレミアショー「CP+2025」(2025年2月27日〜3月2日開催)のタイミングで登場する新製品に注目したい。