ニコン「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」は、2022年1月に発売された、Zマウント用のフルサイズ対応・標準ズームレンズ。開放F4通しの標準ズームとしては広いズーム域を持ち、そのうえ小型・軽量で高画質ということもあって、発売以来非常に高い人気を維持しています。
本レンズは、価格.com「レンズ」カテゴリーの人気売れ筋ランキングにおいて、ほぼ全期間にわたりトップ10に入っています。しかもユーザーからの評価が高く、2024年11月28日時点での価格.comユーザーレビューの満足度は4.74(5点満点、レビュアー計69人の平均値)。「レンズ」カテゴリー全体の平均値は4.58ですので、いかに評価されているのかがわかりますね。
「Zマウントユーザーのための神レンズ」とまで言われる本レンズ。なぜここまで人気を集め、評価されているのかを、改めて確認してみたいと思います。
発売以降、価格.comで高い人気を誇る「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」。最新のフルサイズミラーレスカメラ「Z6III」と組み合わせて撮影してみました
「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」の人気売れ筋ランキングの推移(週間、2023年11月27日〜2024年11月24日)。直近1年間はほとんどの期間でランキングのトップ10に入っています
開放F4通しのフルサイズ対応・標準ズームといえば、ズーム域は焦点距離24mm〜105mmくらいが一般的なスペックです。そうしたなかで、「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」は、望遠端を伸ばして120mmまでの5倍ズームをカバーしています。
ファンの人であればご存じだと思いますが、ニコンは、焦点距離24mm〜120mm/開放F4通しの標準ズームとして一眼レフ用(Fマウント用)の「AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR」を2010年9月に発売しています。このレンズと同じ焦点距離/開放絞り値のスペックを持つミラーレス用(Zマウント用)として登場したのが、今回取り上げる「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」というわけです。
光学設計を一新するなど、ミラーレス用での強化点はいくつもありますが、大きなポイントは、レンズの品質が大きく向上していること。本レンズは、「NIKKOR Z レンズ」のなかでも設計基準と品質管理を厳格化した高性能な「S-Line」に属しています。
高性能な「S-Line」のレンズです
「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」の特徴としてもうひとつ押さえておきたいのが「コンパクトさ」です。サイズは約84(最大径)×118(全長)mmで、重量は約630gに収まっています。このサイズ感は、「広角側の焦点距離が24mm」「望遠側が105mm〜120mm」「開放絞り値がF4以下」のフルサイズ対応・標準ズームとしてクラス最軽量になるそうです。
開放F4通しのフルサイズ対応・標準ズームのなかではクラス最軽量
特に全長が約118mmというのは、ずいぶん頑張って短くしたことが理解できるところ。以下の画像は、全長が最も短い広角端(焦点距離24mm)の状態を撮影したものです。
広角端(焦点距離24mm)に伸縮した状態
その状態から、望遠端(焦点距離120mm)まで伸長させたのが以下の画像なのですが、いかがでしょう? それほど無理のないズームに収まっているのではないかと思います。実際に撮影していても、ズーミングによる重量バランスの変化をほとんど意識することなく、自然に使うことができました。
望遠端(焦点距離120mm)に伸長した状態。広角端から5.5cmくらい繰り出します
レンズ先端から見て、リング類は「フォーカスリング」「ズームリング」の順で、ほかの「NIKKOR Z レンズ」のズームレンズと共通の仕様になっています。
レンズ先端から「フォーカスリング」「ズームリング」の順で並んでいます
スイッチ、ボタン類については、好みの機能を割り当てることのできる「L-Fnボタン」と、AFとMFを切り替えられる「フォーカスモード切り換えスイッチ」が装備されており、標準ズームの基本仕様としては十分な内容です。
スイッチ、ボタン類としては「L-Fnボタン」と「フォーカスモード切り換えスイッチ」が装備されています
花型のレンズフード「HB-102」が同梱。ズームレンズに最適化された有用なレンズフードです
2022年1月の発売以来、「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」が長く人気を保っている理由のひとつが、高性能な「S-Line」に属するレンズならではの、ズーム全域における描写性能の高さだと思います。
広角端24mmの絞り開放F4で撮影したのが以下の写真です。諸収差や色収差の類はほとんど見られず、画面全体で高い解像感を見せてくれています。画面の中心部はもちろん、周辺部に至っても画質の劣化は少なく、画面全体で安定した解像感を保っているあたりはさすが「S-Line」のレンズといったところです。
Z6III、Z 24-120mm f/4 S、24mm、F4、1/500秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(6048×4032、17.3MB)
絞り開放F4でも十分満足できる画質があるのですが、さらに1段絞ったF5.6にするだけで解像感はグンと向上し、「まだ上があったのか!」と驚かされます。より高い解像感が欲しい場合は、条件の許す限り、F5.6以上の絞り値を選択するとよい結果が得られることと思います。
Z6III、Z 24-120mm f/4 S、24mm、F5.6、1/250秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(6048×4032、17.4MB)
望遠端120mmの絞り開放F4で撮影したのが以下の写真です。望遠端での画質も確かなもので、広角端と同様に画面全体で安定した解像感が得られました。望遠端が105mm程度の一般的な開放F4通し標準ズームと比べると、多少くらいは設計上のしわ寄せが出るかと思いましたが、それは杞憂にすぎなかったようです。
Z6III、Z 24-120mm f/4 S、120mm、F4、1/800秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(6048×4032、17.1MB)
広角端では、開放絞り値と、そこから1段絞って撮った写真で解像感に違いが認められましたが、望遠端ではそうしたことは確認できず、絞り開放から高い解像性能が得られています。あえて言えば、絞り込むことで本当にわずかな解像感の向上は見られますが、それほど気にする必要のないレベルに収まっています。
Z6III、Z 24-120mm f/4 S、120mm、F5.6、1/400秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(6048×4032、16.7MB)
「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」の人気が高いのは、ズーム域が広く高画質というだけでなく、使い勝手にすぐれるのも大きいと思います。その使い勝手のよさを象徴しているのが、クローズアップ性能の高さです。
本レンズの最短撮影距離はズーム全域で0.35m。広角端でも望遠端でも変わりないのですが、焦点距離24mmで最短撮影距離0.35mというのは正直ちょっと遠いです。広角端24mmの最短撮影距離で撮影した写真が以下になりますが、被写体を大きく写しながら背景を広く画面に入れるワイドマクロ的な撮影はやや苦手と言えるかもしれません。
Z6III、Z 24-120mm f/4 S、24mm、F5.6、1/320秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(6048×4032、10.4MB)
ところが、望遠端になると近接撮影性能の状況は一変します。望遠端120mmでの最短撮影距離は広角端と同じく0.35mで、このときの最大撮影倍率は0.39倍。最大撮影倍率0.39倍ならば、小さな被写体でも思った以上に大きく写すことができるということになり、ここに望遠端の焦点距離が120mmで、最短撮影距離がズーム全域不変の0.35mである意味が出てくるというものでしょう。
Z6III、Z 24-120mm f/4 S、120mm、F5.6、1/500秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(6048×4032、8.3MB)
「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」は、斜めからの入射光を抑制するニコンお得意の「ナノクリスタルコート」と、垂直に入射する光を効果的に抑制する「アルネオコート」を採用しています。逆光性能は極めて高く、広角域で太陽光が画面内に入るような場合でも、安心して撮影できます。
Z6III、Z 24-120mm f/4 S、24mm、F5.6、1/8000秒、ISO400、ホワイトバランス:8000K、ピクチャーコントロール:オリジナルのカスタムピクチャーコントロール
撮影写真(6048×4032、9.5MB)
AF駆動にはステッピングモーターを採用。本レンズは複数のフォーカス群を複数のAFユニットで高効率に駆動する「マルチフォーカス方式」を採用しているため、広いズーム域において正確かつ静粛なピント合わせが可能です。
Z6III、Z 24-120mm f/4 S、68mm、F5.6、1/250秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(6048×4032、9.6MB)
望遠端120mmまで対応する標準ズームですので、当然のことスナップ撮影でも大いに活躍してくれます。以下の写真は標準域である焦点距離49mmで撮影しましたが、ズーム中間域であるこの焦点距離でも高い画質が安定しているのは、本レンズの素性がよいことの証だと言えるでしょう。
Z6III、Z 24-120mm f/4 S、49mm、F5.6、1/50秒、ISO800、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(4032×6048、15.3MB)
そのまま撮影位置を変えずにズームアップして、焦点距離120mmで撮影できるのが本レンズのいいところ。焦点距離105mmの、あと一歩先の画角を自由に得られるというのは、やはり大きな魅力だと思います。
Z6III、Z 24-120mm f/4 S、120mm、F5.6、1/500秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(6048×4032、12.7MB)
今回組み合わせて使った「Z6III」は、「ピクチャーコントロール」の設定を撮影者の好みに合わせて詳細に調整できる「フレキシブルカスタムピクチャーコントロール」機能を備えています。その機能を利用することで、本レンズの活用範囲はさらに広がり、より楽しんで使えることでしょう。
Z6III、Z 24-120mm f/4 S、51mm、F5.6、1/1000秒、ISO400、ホワイトバランス:8000K、ピクチャーコントロール:オリジナルのカスタムピクチャーコントロール
撮影写真(6048×4032、8.4MB)
「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」は、最新設計のレンズだけあって、一眼レフ用(Fマウント用)の「AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR」と比べて描写性能や操作性が格段に進化しています。
光学式手ブレ補正機構は非搭載ですが、現行の「Zシリーズ」のミラーレスの多くはボディ内手ブレ補正機構を内蔵しているので、問題となるようなことはあまりないでしょう。ミラーレス用の標準ズームとしては小型・軽量であることのほうがより大切だと思います。
使っていて満足感の高い本レンズの価格.com最安価格は13万円台後半(2024年11月28日時点)。これほどの性能でありながら、何とも良心的な価格で驚いてしまいます。高性能な「S-Line」の標準ズームが、比較的手に入れやすい価格だというのは、ユーザーにとってありがたいことですね。使用してみて人気の理由がよくわかりました。