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レビュー

キヤノン「EOS R1」の驚異的な動体撮影性能をレビュー! 100万円の価値はあるか?

キヤノンのミラーレスカメラ「EOS Rシリーズ」としては初のフラッグシップモデル「EOS R1」が2024年11月下旬に発売される。報道やスポーツなどの分野で活躍するプロ機材として注目度の高い超ハイスペック機だ。製品発表時のニュース記事に続き、本記事では、野鳥や飛行機など動体の撮影を通じてこのカメラをレビューしよう。

超望遠ズームレンズ「RF200-800mm F6.3-9 IS USM」などと組み合わせて「EOS R1」を試用した

超望遠ズームレンズ「RF200-800mm F6.3-9 IS USM」などと組み合わせて「EOS R1」を試用した

トラッキング性能が半端ない! 超高性能AFに感動

「EOS R1」で動体撮影を試してみて特に驚かされたのがAFだ。ディープラーニング技術を活用した新世代のAFシステム「デュアルピクセル Intelligent AF」を採用するうえ、縦線検出と横線検出のクロスAFにも対応しており、スペックを見るだけでもかなりの進化がうかがえるのだが、実際の性能は試用前の予想を大きく上回るものであった。

ひと言で言うと「トラッキング性能が半端ない!」。被写体の検出・追尾能力がとにかく高いのだ。今回、ダンス踊る人物、不規則に動く野鳥、高速で移動する飛行機といった動体を撮影してみたが、これまでには体験したことがない感覚でAF撮影が行えた。

以下に、人物と野鳥を検出・追尾している画面を記録した動画を掲載する。性能の一端しかキャプチャーできていないが、トラッキング性能の高さは十分に感じられるはずだ。

ダンスを踊る人物に対しては左右/前後の動きをしっかりと検出・追尾できている。野鳥は素早くて不規則な動きでもとらえて離さないし、障害物がある場合でも粘り強くトラッキングしている。飛び立つ瞬間もしっかりとフレームが追尾している。

飛行する飛行機を追尾している様子。被写体が非常に小さい状態でもしっかりと検出してくれる

飛行する飛行機を追尾している様子。被写体が非常に小さい状態でもしっかりと検出してくれる

「EOS R1」のAFを体験した限りでは、
・高速連写時のAFの食いつき
・被写体が非常に小さい場合の検出
・被写体の前に障害物が入る場合の検出
・被写体が前後に素早く動く場合のトラッキング
・同じような被写体が交錯する場合の粘り強さ
が着実に進歩していると感じた。

最新のミラーレスはどれも高性能な被写体検出機能を持ち、AFの合焦速度も速い。とはいえ、被写体の動き方によっては検出が外れてしまったり、追尾しきれなかったり、AFフレームは追尾していてもピントが追い切れていなかったりするときもあるのだが、「EOS R1」は、少なくとも人物、野鳥、飛行機を撮るうえで「追えないものはない」といっても過言ではないくらいの性能を発揮してくれた。超望遠ズームレンズ「RF200-800mm F6.3-9 IS USM」をメインに使用して計2万枚ほどシャッターを切ったが、設定・操作ミスによる失敗カットを除けば、ピントが外れた写真を探すほうが難しいくらいだった。

筆者は、これまで、キヤノンのフルサイズミラーレスでは「EOS R3」や「EOS R5」など使用した経験があり、そのたびにAF性能に驚かされてきたのだが、「EOS R1」ではそれらの機種を使ったとき以上の感動があった。まさにフラッグシップの仕上がりだ。「EOS R1」の製品ページを見ると「“つかみ”と“追尾”が進化した新次元のトラッキング」と銘打たれているが、まさにそのとおり。「EOS Rシリーズ」史上最高のAFなのは間違いない。

人物、動物優先(犬、猫、鳥、馬)、乗り物優先(モータースポーツ:車/バイク、鉄道、飛行機)の被写体検出に対応

人物、動物優先(犬、猫、鳥、馬)、乗り物優先(モータースポーツ:車/バイク、鉄道、飛行機)の被写体検出に対応

特定の人物を優先して検出・追尾する「登録人物優先」も搭載。カメラに人物を登録(最大10名)しておくことで、複数の人物がいる場合でも特定の人物を優先して検出できる

特定の人物を優先して検出・追尾する「登録人物優先」も搭載。カメラに人物を登録(最大10名)しておくことで、複数の人物がいる場合でも特定の人物を優先して検出できる

AF関連の機能では「サーボAF中の全域トラッキング」が便利だ。「する」に設定すると、選択したAFエリアでAFを開始した後に画面全域で追尾を続けてくれる

AF関連の機能では「サーボAF中の全域トラッキング」が便利だ。「する」に設定すると、選択したAFエリアでAFを開始した後に画面全域で追尾を続けてくれる

最高約40コマ/秒の超高速連写が持続する

動体の撮影はAFだけでなく連写の性能も重要だ。コマ速に注目しがちだが、撮り逃しを防ぐには連写がどのくらい持続するのかにも注目したい。

「EOS R1」は電子シャッター時に最高約40コマ/秒の超高速連写が可能。メカシャッター/電子先幕時は最高約12コマ/秒に対応している。スペック上の連続撮影可能枚数(連写の持続性)は以下のとおり。

電子シャッター時
JPEGラージ:500枚
RAW:230枚
C-RAW:410枚
RAW+JPEGラージ:220枚
C-RAW+JPEGラージ:380枚

メカシャッター/電子先幕時
JPEGラージ:1000枚以上
RAW:1000枚以上
C-RAW:1000枚以上
RAW+JPEGラージ:1000枚以上
C-RAW+JPEGラージ:1000枚以上

「高速連続撮影+」時に電子シャッターで最高約40コマ/秒連写が可能。コマ速はドライブモードごとに細かく設定できる

「高速連続撮影+」時に電子シャッターで最高約40コマ/秒連写が可能。コマ速はドライブモードごとに細かく設定できる

メモリーカードにNextorageの「NX-B1PROシリーズ」を使って最高約40コマ/秒連写の持続性を試した限りでは、撮影する被写体・シーンにもよるがJPEGラージで750枚前後、RAW+JPEGラージで250枚前後、C-RAW+JPEGラージで450枚前後まで連続して撮ることができた。有効画素数を最大約2420万画素に抑えているとはいえ、この数字は他社のフラッグシップミラーレスを凌駕している。特にRAW+JPEG時の持続性が高いのがポイントだ。

もちろん、電子シャッター時に発生するローリングシャッター歪みも大幅に低減している。電子シャッター時の同調速度が1/320秒(クロップ時は1/400秒)と高速なことからも読み取れるように、撮像素子の読み出し速度が速く、「EOS-1D X Mark IIIのメカシャッター撮影時と同等レベルにローリングシャッター歪みを抑制している」とのこと。今回、上空を高速に移動する飛行機を追尾しながら(動きに対してレンズを素早く振りながら)連写してみたが、気になるような歪みは一切出なかった。うたい文句どおり、メカシャッターと同等に使えると言ってよいだろう。

没入感の高い高品位ファインダー

「EOS R1」を試用してみてAFに匹敵するくらい感動したのが電子ビューファインダー(EVF)だ。

「EOS Rシリーズ」史上最高となる約944万ドット/0.64型の有機ELデバイスを採用するうえ、光学系も刷新し、倍率は0.9倍に達している。同じようなスペックのEVFはほかにもあるが、「EOS R1」がすばらしいのは、非常に明るくてクリアな見え方を実現していること。高解像度で視野が広いため奥行き感を感じられるのがポイントで、ライブビュー映像への没入感が非常に高い。このEVFを覗きながらのブラックアウトフリーでの連写撮影の心地よさは、少なくとも「EOS Rシリーズ」の他モデルでは得られないものだ。

約944万ドット/倍率0.9倍のEVFを採用。明るくてクリアな見え方が特徴だ

約944万ドット/倍率0.9倍のEVFを採用。明るくてクリアな見え方が特徴だ

「表示フレームレート設定」を「なめらかさ優先」にすると最高119.88fpsのリフレッシュレートで映像が滑らかに表示される。ただし、最高約40コマ/秒連写時のフレームレートの上限は59.94fps

「表示フレームレート設定」を「なめらかさ優先」にすると最高119.88fpsのリフレッシュレートで映像が滑らかに表示される。ただし、最高約40コマ/秒連写時のフレームレートの上限は59.94fps

「ブラックアウトフリー表示」を「する」に設定すると、連写1コマ目の撮影直前を含めて常時ブラックアウトフリーとなる

「ブラックアウトフリー表示」を「する」に設定すると、連写1コマ目の撮影直前を含めて常時ブラックアウトフリーとなる

瞳の動きでAF操作が行える「視線入力」にも対応。メガネをかけた状態で試してみたが、「EOS R3」よりも動作が安定している印象を受けた。視線に対して反応がよく、的確に追従してくれた

瞳の動きでAF操作が行える「視線入力」にも対応。メガネをかけた状態で試してみたが、「EOS R3」よりも動作が安定している印象を受けた。視線に対して反応がよく、的確に追従してくれた

実写作例

人物

ダンスを踊る人物の前後の動きを、カメラまかせの全域トラッキングで連写撮影。3秒程度(120枚程度)の動きだが、すべてのコマで瞳や頭部にピントが合っていた。
※連写のサムネイルは120コマから17コマを抜き出しています

EOS R1、RF24-70mm F2.8 L IS USM、24mm、F2.8、1/2000秒、ISO2000、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:ポートレート、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG撮影写真(6000×4000、7.0MB)

EOS R1、RF24-70mm F2.8 L IS USM、24mm、F2.8、1/2000秒、ISO2000、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:ポートレート、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(6000×4000、7.0MB)

野鳥

アオサギが飛び立つ瞬間を「プリ連続撮影」を使って撮影。シャッターボタンを押すタイミングよりも前の動きを含めて記録できた。
※連写のサムネイルは連続した17コマを抜き出しています

EOS R1、RF200-800mm F6.3-9 IS USM、432mm、F8、1/4000秒、ISO2000、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG撮影写真(6000×4000、8.2MB)

EOS R1、RF200-800mm F6.3-9 IS USM、432mm、F8、1/4000秒、ISO2000、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(6000×4000、8.2MB)

飛行機

EOS R1、RF200-800mm F6.3-9 IS USM、338mm、F7.1、1/8000秒、ISO1600、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG撮影写真(6000×4000、7.5MB)

EOS R1、RF200-800mm F6.3-9 IS USM、338mm、F7.1、1/8000秒、ISO1600、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(6000×4000、7.5MB)

EOS R1、RF200-800mm F6.3-9 IS USM、800mm、F10、1/4000秒、ISO1250、-0.3EV、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG撮影写真(6000×4000、7.3MB)

EOS R1、RF200-800mm F6.3-9 IS USM、800mm、F10、1/4000秒、ISO1250、-0.3EV、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(6000×4000、7.3MB)

EOS R1、RF200-800mm F6.3-9 IS USM、800mm、F10、1/5000秒、ISO2000、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG撮影写真(6000×4000、7.5MB)

EOS R1、RF200-800mm F6.3-9 IS USM、800mm、F10、1/5000秒、ISO2000、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(6000×4000、7.5MB)

EOS R1、RF200-800mm F6.3-9 IS USM、800mm、F10、1/8000秒、ISO2500、-0.7EV、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG撮影写真(6000×4000、7.8MB)

EOS R1、RF200-800mm F6.3-9 IS USM、800mm、F10、1/8000秒、ISO2500、-0.7EV、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(6000×4000、7.8MB)

パワフルな次世代エンジンシステム「Accelerated Capture」を採用

「EOS R1」はキヤノンの新しいフラッグシップモデルだけあって、先に紹介した高性能AFや超高速連写に代表される最新技術をふんだんに搭載している。それらの技術を下支えしているのが次世代のエンジンシステム「Accelerated Capture」だ。

「Accelerated Capture」は、高速読み出しに対応する裏面照射積層CMOSセンサー(最大約2420万画素)と映像エンジン「DIGIC X」に、AF/AE検出などの解析処理を行う「DIGIC Accelerator」を新たに組み合わせたもの。「EOSシリーズ」史上最もパワフルなシステムに進化を遂げている。

この新世代エンジンによって、撮影画像の画素数を4倍(縦/横2倍)にアップスケールする「カメラ内アップスケーリング」や、RAW現像時によりノイズを低減した画像を生成する「ニューラルネットワークノイズ低減」のカメラ内対応などの新機能も実現している。

裏面照射積層CMOSセンサー、「DIGIC X」、「DIGIC Accelerator」を組み合わせたエンジンシステム「Accelerated Capture」

裏面照射積層CMOSセンサー、「DIGIC X」、「DIGIC Accelerator」を組み合わせたエンジンシステム「Accelerated Capture」

【まとめ】ラインアップの頂点に君臨する「憧れの1台」

「EOS R1」の直販価格は1,089,000円、2024年11月14日時点での価格.com最安価格は980,100円(いずれも税込)。製品発表時に約100万円というプライスを見たときは、昨今の経済状況を加味しても「少し高い」という印象を持った。

しかし、実際に使ってみて最初の印象は大きく変わり、性能を考慮すると「100万円は妥当」と思うようになった。圧倒的なAF性能、持続性にすぐれた超高速連写、明るくてクリアなEVF。これらを駆使した動体撮影は、ほかのカメラでは得られないような体験であった。

試用を終えて「このカメラが欲しい!」と素直に思ったものの、やはり約100万円のカメラにはなかなか手が出せない。本格的な動体撮影を行っているハイアマチュアでも、おいそれと購入できるものではないはずだ。「憧れの1台」としてラインアップの頂点に君臨するモンスターマシンと言えるだろう。

現実的には、「EOS R1」と同じ「Accelerated Capture」システムを採用する「EOS R5 Mark II」を狙いたいところ。2024年11月14日時点での価格.com最安価格は約59万円(税込)だ。クロスAFには対応していないものの、AFシステムは最新の「デュアルピクセルIntelligent AF」で、連写は最高約30コマ/秒と十二分。有効画素数が最大約4500万画素と高画素なのも魅力だ。8K/60p RAW動画のカメラ内記録にも対応している。

真柄利行(編集部)
Writer / Editor
真柄利行(編集部)
フィルム一眼レフから始まったカメラ歴は、はや約30年。価格.comのスタッフとして300製品以上のカメラ・レンズをレビューしてきたカメラ専門家で、特にデジタル一眼カメラに深い造詣とこだわりを持っています。フォトグラファーとしても活動中。パソコンに関する経験も豊富で、パソコン本体だけでなく、Wi-Fiルーターやマウス、キーボードなど周辺機器の記事も手掛けています。
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