空母(くうぼ)とは、航空機の運用能力に特化した軍艦のことである。
英語名は「aircraft carrier」。スカイママではない。
本来は「航空母艦(こうくうぼかん)」が正式な名称だが、一般的には、略語の「空母」が使われる。
一言で言えば、「海の上を移動する飛行場、基地」である。
艦橋や煙突などは目立たず、飛行場同様、滑走路となる飛行甲板があり、凹凸の無いつるぺた平らなシルエット(いわゆる「フラットトップ」)が外見上の特徴である。
右舷側に艦橋を有するアイランド型空母(島型空母)が現代では主流である。
攻撃兵器で武装する他の種類の水上戦闘艦と異なり、ほとんどが自衛用の対空兵器程度の武装にとどまっている。 但し、搭載された固定翼・回転翼の航空機(→艦載機)を戦力として運用することにより制空権、制海権を確保し、海上交通路を確保する能力を有している。大型艦かつ航空機の整備運用を行うため乗組員は300人~6000人の乗組員を必要としている。 そしてすっごい金食い虫
戦争で攻撃を行う際は、準備も力も蓄えられた相手のホームグラウンドにケンカを売りにいく形となる。陸続きの国同士ならば戦車だの歩きだので行けるが、海を隔てているとなるとそうもいかない。
海が遠ければ遠いほど、戦闘機の航続距離には無理があり(というか戦闘機は長距離戦闘のために作られたわけではない)、エンジントラブルや燃料切れを起こしても戻るに戻れず途中で落っこちることもありうる。もし相手の国にたどり着いたとしても、補給地も近くて地の利もある状態で上空でスタンバっている相手の戦闘機との戦いが待っており、ヘロヘロの状態で戦えば確実に分が悪い。また、そこで傷ついたとしても修理も補給も不可能で、助かる手段など限られている。
そこで、相手の土地においても戦闘機に弾薬や燃料などを補給してあげられるのが空母である。空母で戦闘機ごと現地まで運ぶことによって、相手の国や遠い場所においても自国の航空戦力を万全の状態で展開でき制空権・制海権をとりやすくなる。また、補給だけでなくパイロットの休息や戦闘機の修理なども行えるので、長距離を移動して戻らなくても安全で良いという利点がある。
あなたが学生か社会人なら、自宅から最寄り駅まで全力でダッシュし続けるのとバスに乗って運ばれるのとでは、どっちの方が万全の状態かはお分かりのはずである。ちなみに陸上で兵士をまとめて運ぶ装甲兵員輸送車(APC)も空母と同じ理屈である。
また、空母の運用によって制空権・制海権をとると、海上を移動するだけでも撃沈されかねなかった地上用戦力を運ぶ船が攻撃を受けにくくなるという副次的な効果があり、現代の戦争においては航空戦力を展開するための要となっている。
そして空母およびその航空戦力が戦略的な優位性を発揮できる役割がある。海洋を隔てた遠隔地に長期間かつコントロールされた軍事的支配を及ぼすことが可能である、という点だ。
搭載している艦載機はミサイルや砲に比べて柔軟な運用が可能であり、沿岸から内陸部にいたるまで望む形で航空兵力を投入できるほか、シーレーンの防衛などが可能になるなどのメリットがあり、そのパワー・プロジェクション(戦力投射)能力は示威行為としての心理的効果的にも優れているため、現代に蘇る形での砲艦外交(Gunboat Diplomacy)もまた可能になっている。 領海外において、海上優勢を獲得できるだけの海軍力をもつ海軍だけが空母の能力を完全に発揮できるのだ。
全地球的なスケールであらゆる強度の紛争に対応できるその能力は現代海軍の精華であると言えよう。
しかし、移動基地にも等しい役割をこなす関係上、空母は1000人単位の人員が乗ることになる。それに加えて複数の航空機を収納しつつ、修理パーツ・燃料・弾薬補給なども潤沢に揃えて対応できるようにする必要性があるため、空母を建造・維持するのには莫大な資金や資源、技術力などが必要になる。
実際のところは一隻保有するだけでもすごい大変な、建造するのも維持するのもかなり難しい代物だったりする。やっぱり金食い虫じゃん
以上のことから、世界においては、空母を保有することがその国家の技術力や軍事力をはかる目安となっている。単独で世界最高クラスの空母を10隻以上も建造・維持しているアメリカがどれだけチートな存在かが伺えるだろう。
日本も戦前は空母を6隻、戦時中のものもふくめると10数隻以上も保有する世界有数の海洋強国であったが、よりによって空母を50隻以上作れるチート国家にケンカを売ったのが悪かった。
日露戦争の日本海海戦における近代戦艦同士の決戦、そしてイギリスのドレッドノート級戦艦に始まる弩級戦艦の完成により20世紀の初頭は大型戦艦を筆頭とする主力艦による砲撃戦を主流とする大艦巨砲主義が世界の海軍を席巻した。 しかし第一次世界大戦における英独海軍による弩級戦艦同士が対決するユトランド海戦がおこわなれるが、消極的な戦いであったため期待するほどの戦果は得られなかった。大戦後、世界各国は戦艦の大型化、近代化による強化を目指すことになる。
その一方で、潜水艦とともに戦争の形態を大きく変えたのが航空機の登場である。戦線を遠く離れた地域への爆撃、砲撃の弾着観測に運用された気球、爆撃機とそれを迎撃するための戦闘機の登場により空も新たな戦場と化すこととなった。
ライト兄弟が世界初の有人動力飛行を成功させたのは1903年だが、それから10年も経たないうちに水上機を搭載する「水上機母艦」が就役。その後は大型艦に甲板を設けて陸上機を発艦させる実験などを経て、第一次世界大戦末期の1918年9月に、全通甲板を持つ世界初の空母「アーガス」がイギリス海軍で就役した(カタパルトを空母に初めて採用したのもイギリス海軍で、1938年に就役した「アーク・ロイヤル」に油圧式のカタパルトが搭載された)。[1]
第一次世界大戦後の各国の建艦競争は国家の予算を逼迫する事態を招き、1920年以降軍縮条約が締結され、戦艦の建造の一時的停滞といくつかの戦艦の改造空母化が進むこととなる。
1922年に日本海軍は最初から空母として設計された「鳳翔」を竣工、2年後にイギリス海軍も「ハーミーズ」を竣工させた。 また、航空機自身も爆発的な進化をとげ、1921年には米陸軍が実験で航空機の爆撃により戦艦を撃沈することに成功した。しかしながら、各国の海軍の主流は依然として大型戦艦、大艦巨砲主義のままで、航空機と航空母艦は補助的戦力の一部でしかなかった。
大日本帝国とアメリカ合衆国との間で始まった太平洋戦争では、地続きの欧州大陸と異なり何百キロと離れた島々と広大な太平洋をめぐる戦いであった。その中で多数の航空機を集中的に運用し水平線の遥か彼方から大規模な攻撃を可能にする航空母艦を中心とする機動部隊が汎用的な戦力として八面六臂の活躍をした。(欧州戦線でも大西洋、地中海で空母に搭載した航空機が輸送船、潜水艦狩りに活躍した)
第二次世界大戦により戦争は大きく変わり、空母は一躍海軍の花形として開花することとなったのである。
一方大型戦艦は高速な航空機とは違い、巨体故の鈍足さと運用効率の悪さによって前線に赴くことは稀であった。 そして1940年秋のイギリス軍空母部隊のタラント空襲によるイタリア戦艦撃沈を皮切りに、ドイツ戦艦ビスマルクの撃破、日本海軍航空隊の真珠湾攻撃、マレー沖海戦によるイギリス海軍の戦艦の撃沈によって、十分な制空権と対空火力がない戦艦は航空機の反復攻撃によって沈められうることが全世界に知らしめられた。そして世界最大の戦艦大和も350機に及ぶの米軍機の攻撃により坊ノ岬沖に沈み、大艦巨砲主義はここに潰えることになった。
航空機の大型化とジェット化は第二次世界大戦期の航空母艦の陳腐化を一気に進めてしまった。そして戦艦並みの運用員と費用を必要とする空母は各国の予算を圧迫し、核戦力の充実化により大国対大国における空母の戦略的意味が薄れることとなった。
しかし1950年以降にイギリス軍が開発した大型蒸気カタパルト、離着艦を独立させたアングルド・デッキの開発、着艦誘導装置の改良によりジェット機の運用も可能となった。そして朝鮮戦争における即時移動可能な航空基地としての再評価によって冷戦期の重要な戦力になった。(後に艦載機にも戦術核搭載能力を有することが可能になった)
1950年代、長期間行動可能かつ高圧の蒸気カタパルトを使用できる利点と艦載機の着艦の阻害になる煙突を排除した原子力空母が計画され、1962年にアメリカ海軍が世界初の原子力空母「エンタープライズ」を完成させる。
しかしながら莫大な費用がかかる固定翼機運用可能な大型空母はアメリカ合衆国以外での運用は困難になり、フランスを除く世界各国では新規の大型正規空母の建造に踏み出せなかった。
1970年代に入り、垂直離着陸が可能なVSTOL戦闘機ハリアーが完成し、イギリス海軍は退役する正規空母から中型サイズの空母にハリアーを搭載した軽空母の運用に転換。1982年のフォークランド紛争においてイギリス艦隊の防空の要として活躍し、ソ連やほかの欧州各国でも軽空母が運用されることとなる。
1920年代の軍縮条約により日本は欧米より低い比率の主力艦保有を余儀なくされた。これに対応するため、山本五十六海軍中佐などを中心に、戦艦に代わり航空機の集中運用による欧米海軍に対抗する航空主兵論が台頭する。しかしながら日本海海戦の大勝利を忘れられない大艦巨砲主義派と対立し、結果的に太平洋戦争中盤まで大艦巨砲主義による艦隊決戦が日本海軍の戦略方針のままであった。
大艦巨砲主義派が主導する中、空母を中心とし護衛艦を伴わせる機動部隊を編成し、戦艦を中心とする艦隊とは分離し航空戦力の攻撃力を中核とする艦隊を創り上げた。詳しくは第一航空戦隊を参照。
日本海軍は開戦までに戦艦改造空母2隻、正規空母4隻、軽空母数隻を保有し先進国海軍の中で有数の空母保有国となった。
機動部隊は熟練搭乗員と零戦など優れた性能を持つ艦載機を搭載し、太平洋戦争緒戦の圧倒的な戦果を上げるもミッドウェー海戦における敗北、ソロモン諸島の戦いにおいて空母、熟練搭乗員を損耗し戦力は低下した。戦争中盤に日本海軍はやっと航空戦力を中心とする戦力の整備に乗り出すが、時すでに遅く損失した航空戦力と空母の補充は最後まで間に合わず、練成途中におきたマリアナ沖海戦にて機動部隊は壊滅する。
対してアメリカ軍は開戦後航空兵力の有用性を認め、戦争中盤には工業力に物を言わせて高性能の航空機・空母を大増産し、航空機搭乗員を大量に養成し一大機動部隊を整備した。そして年月をかけて整備した大型戦艦及び水雷艦艇を中心とした日本海軍の戦力は、機動部隊を筆頭とする連合軍の圧倒的な航空戦力により完膚なきまでに叩きのめされることとなった。(もちろん航空戦力だけが連合軍の勝利要因ではないが)
現在はアメリカやイギリスなど一部の先進国にとどまらず、インドやブラジルなどの新興国も保有している。
また、インドもロシアからの中古空母を購入して改造し「ヴィクラマーディティヤ」として就役させた。しかしブラジルの「サン・パウロ」は費用面などの問題で改装は最優先事項に上がっておらず、後継候補のないまま退役が予定されている。
現状もっとも空母に意欲的になっているのが中国である。中国はウクライナより購入した中古空母を改造して「遼寧」を完成・就役させ、その運用データをフィードバックした初の国産空母となる二隻目も建造中である。また、三隻目はカタパルトが搭載される予定とも伝わっている。
アメリカも上記の中国の軍備増強には懸念を示したためか、抑制気味だったバラク・オバマに代わって大統領についたドナルド・トランプはこれまでの10隻体制を改めて12隻体制にすると発表。2017年には11隻目となる「ジェラルド・R・フォード」が完成・就役した。
現代の空母は大まかに4種類に分けることができる。[2]
※日本海軍は起工時から空母として設計していたものを(改装空母と対比して)正規空母と呼んでいた。[3]
種類 | 内容 |
---|---|
CTOL空母 | 原子力空母は全長260m以上、満載排水量4万~10万トンクラスの大型艦艇であり、乗員数1千~4千人超、航空師団2千人超の大所帯である。 ニミッツ級空母「ジョージ・ワシントン」では、艦乗組員約3,200名、航空要員2,480名。合わせて5500名以上が乗り込んでおり、ちょっとした街が移動するようなものと考えてもよいだろう。 空母といえば、原子力空母が蒸気カタパルトで艦上機を離艦させる風景がおなじみだが、カタパルト非搭載の通常型空母もある。カタパルト非搭載だが変わりにスキージャンプ(傾斜甲板)を使うのが大抵のケースであり、これらスキージャンプ搭載空母(STOBAR空母)で運用される航空機は離艦するために燃料弾薬類の搭載重量が制限される。カタパルト非搭載空母の運用上の問題点はその一点に尽きる。 |
軽空母 VSTOL空母 |
軽空母/VSTOL空母は、垂直離着陸の可能なVSTOL機とヘリを運用する空母である。 長大な滑走路を必要とするCTOL機ではなくVSTOL機とヘリの運用に限定することで艦体を小さく出来、正規空母より安価に航空戦力を有することができる。しかしVSTOL機やヘリは航続距離や搭載弾薬量でCTOL機に劣るため、それを考慮した兵力運用が必要となる。 |
ヘリ空母 | ヘリ空母(ヘリコプター空母)は、上記のような空母とはやや性格が異なり、海に潜む潜水艦に対処する対潜哨戒ヘリコプターを運用する、艦隊やシーレーンなどの「防衛」を強く意識した艦艇となる。 「ヘリ空母はVSTOL空母へ改装することが可能」との議論もあるが、スキージャンプ付のVSTOL空母を書類上ヘリ空母として建造し、後から法改正してハリアーを搭載したイタリアとかは除き、有効な改装例は現在のところはない。 日本のひゅうが型護衛艦やいずも型護衛艦などは国際的にはこの分類に入る(政府公式としては空母ではなくあくまでも護衛艦としている)。 |
その他 | 地上部隊の上陸作戦を担う揚陸艦/輸送艦などで、ヘリコプターやVSTOL機の運用能力を持つものも、空母(型)の一部に数えられる場合がある。 加えて近年の海軍では災害派遣や海賊対処、国連平和維持活動のようないわゆる「戦争以外の軍事行動」の比重が高まっているため、同一の艦種に航空機の運用能力や地上部隊の輸送能力を持たせるいわゆる「多目的艦」の建造が盛んになりつつあり、揚陸艦/輸送艦とヘリ空母/軽空母の境目も若干薄くなりつつある。 |
ここではさらに細かいが、各空母の「どうやって戦闘機を離発着しているのか」について説明する。「どうでもいい」という人は読み飛ばしてもらって構わない。
アメリカではほぼお馴染みの発艦方式。圧力タンクにパワーを貯め、戦闘機に誘導フックをかけてシャトルで一気に引っ張り、急加速させるという仕組み。とても分かりやすく言えば、Y字の枝にゴムをかけて物を飛ばすパチンコの要領である。近年はフックで引っ張るのではなくシャトルに引っ掛ける専用バーが戦闘機の前輪に付いているようだ。
原子力空母「ジョージ・ワシントン」は全長300m程度だが、発艦と着艦を同時に行えるようにするという関係上、着艦用エリアは200m、発艦用エリアは100m程度しかない。そのため、極めて強い力で引っ張るようになっており、アメリカの艦載機パイロットはカタパルト発進時のGに備える訓練が必須である。
なお、アメリカの映画を見慣れている人には「空母といえばカタパルトが一般的」というイメージがあるかもしれないが、現状では一部の先進国のみがこれらの技術を保有しており、戦略的な理由で他国には秘匿され続けているため普及しておらず、これをフル活用しているのはアメリカぐらいである。
主にカタパルトを搭載していない空母で採用されている発艦方式。スキージャンプ搭載空母(STOBAR空母)で運用される航空機は、離艦するためには燃料弾薬類の搭載重量が制限される。カタパルト非搭載空母の運用上の問題点はその一点に尽きる。
しかし傾斜(ジャンプ台)がついているため、傾斜のない空母に比べて風や波に影響されにくい状態で発進でき、コスト面や技術面でカタパルトが導入できない国にも生産しやすいという利点がある。
フォークランド紛争でも当時のメイン空母だったインヴィンシブル級空母に採用されている。英国公認の信頼性。当初は効果が疑問視されていたが、実際に運用したところ、
……などといったこれまでの予想を覆す結果が判明。これにより、カタパルトなし空母でも全長の短い空母でも、戦闘機を発進させられるという利点が明らかになった。
空母に着艦する戦闘機を捕まえる(Arrest)ためのワイヤー(Wire)。大まかに言うと、空母側では鋼鉄ワイヤーを横に数本張りめぐらせる。戦闘機ではワイヤーに引っ掛けるためのフックを機体後部から伸ばし、着艦時にワイヤーに引っ掛ける。張られたワイヤーのどれかに棒が引っかかれば急ブレーキがかかり、戦闘機を止めてくれるという方法である(空母は一般の航空機と違って長い滑走路がないため、発進させるのも着陸させるのもかなり強引にならざるを得ない)。
ただし、ワイヤーを通過してしまったりフックの出し忘れといったアクシデントもありうる。ブレーキのないまま着艦をしてしまうと失速して墜落したり空母を超えて海に落っこちたりといったことにもなるため、艦載機パイロットは問題が発生した場合でも一時着艦したあとすぐまた飛び立てるように訓練されている。それがニュースでも話題になったことのある「タッチ・アンド・ゴー」訓練である。
なお、空母艦載機の着艦とアレスティング・ワイヤーについては、在日アメリカ海軍司令部の公式ツイッターが日本語で説明してくれているため、そちらを参照するほうが良いだろう。
甲板上に寝かせてある支柱を起こしてネットを張ることで突っ込んできた戦闘機を受け止める方法。空母側でワイヤーが張れない事態が生じたり、艦載機のフックが故障している場合に使われる。
空母が艦載機を発着させる場合、艦首を常に風上に向けて30ノット以上で航行し、強い向かい風を発生させる必要がある。つまり、空母が港に停泊している間は、ヘリコプターを除いて艦載機を発着させることができない。
空母が港に入る場合は、入港前に艦載機を近くの飛行場に移動させておき、出港後に戻す。こうすることで、空母が入港中に艦載機を発進させる必要が生じても対応できる。したがって、空母が入港する港には、艦載機を降ろすための飛行場を併設する必要がある。
海上自衛隊は創設当初から日本経済を支える海路(シーレーン)を行き交う船舶の安全確保のための空母保有論がたびたび持ち上がるのだが、諸外国に比べて少ない防衛費による予算面の問題、左派勢力並びに防衛庁の反対派の抵抗により何度も頓挫することになった。また、80年代には海上自衛隊の役割をアメリカ海軍第7艦隊の補助戦力としか捉えていないアメリカからの理解を得られなかった一面もある。
その代わりに導入されたのが複数のヘリ搭載能力を有するヘリコプター搭載護衛艦(DDH)のはるな型護衛艦、しらね型護衛艦、そしてイージスシステムを導入した高度な防空能力を備えたこんごう型護衛艦である。
しかし冷戦終結後の情勢変化により、海自は本格的な全通甲板をそなえた護衛艦の建造をすすめることになる。1998年には全通甲板を備えたおおすみ型輸送艦が就役。そして強力な対潜能力、指揮通信能力を搭載し、複数のヘリの同時運用が可能となったひゅうが型護衛艦が2009年に就役。海上自衛隊に本格的なヘリ空母タイプの護衛艦が誕生し、護衛艦隊に所属することとなった。更に航空機搭載能力を拡大し人員・車両輸送能力を備えた発展型のいずも型護衛艦を2015年に就役させ、2020年代からF-35Bの運用を開始する。
日本はあくまで空母の保有を認めておらず、ひゅうが型、いずも型ともヘリコプター搭載護衛艦(DDH)に分類しているが、その能力そのものはヘリ空母とみなして差し支えない。どのみち艦艇の分類基準など、建造した国の胸先三寸で決まるものなので、あまり気にしないほうが吉である。
冷戦前期は通常動力型正規空母のフォレスタル級、ミッドウェイ級を運用していた。世界に先駆けて原子力空母空母エンタープライズを1962年に完成させるが、建造費の増大から建造は一隻に留まり、安価な通常動力型のキティホーク級空母が建造された。
1975年、退役するミッドウェイ級空母にかわり、成熟した原子力技術と空母運用の技術の集大成としたニミッツ級原子力空母が就役。改良を重ねながら計10隻が就役し、アメリカ海軍の象徴として君臨する。
縮小したイギリス海軍と敗北した日本海軍に代わって、太平洋・大西洋の軍事的象徴としてソ連と対峙し、冷戦終結以降は「世界の警察官」たるアメリカ合衆国の軍事的プレゼンスの象徴たる非核戦力として活躍する。(世界のどこかで軍事的問題が起きた場合、アメリカが真っ先に行うことがその地域に一番近い空母の位置の確認と言われている)
現在アメリカ海軍は正規空母を中心としたイージス艦、ミサイル駆逐艦、攻撃型原子力潜水艦、その他支援艦で構成される空母打撃群(06年以前は空母戦闘群)を洋上戦闘部隊の中心として運用している。
2017年には新技術の投入とオートメーション化による人員削減により運用コストを低減させた、新型原子力空母「ジェラルド・R・フォード」が完成・就役した。ドナルド・トランプ大統領はこれまで10隻体制だった空母の配備を12隻体制に増やし、軍備を再増強することを明言している。
日本では西太平洋を管轄する第7艦隊のニミッツ級原子力空母「ジョージ・ワシントン」が横須賀に配備されている。
その一方、1950年代から余剰となった大戦型航空母艦を改装して輸送用ヘリコプター母艦としての運用を開始したのを皮切りにVSTOL空母に準じた航空機運用能力を持つ強襲揚陸艦も9隻保有している。
1960年代、ソ連軍は対潜哨戒ヘリの運用装備を備えたヘリコプター巡洋艦モスクワ級が就役。
1975年には発展型としてキエフ級重航空巡洋艦が完成し、VSTOL戦闘機Yak-38フォージャーを搭載し軽空母としての運用を確立した。(重航空巡洋艦とは、黒海から地中海へとつながるトルコ領内の海峡を航空母艦が航行することを条約で禁止されているため、分類上ロシアが公称してるだけであり、実質軽空母である。)
1990年、キューバ危機における反省とアメリカ空母戦闘群に対抗するために計画された固定翼機運用可能な正規空母クラスの重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフが完成するが翌年ソ連は崩壊する。崩壊後10年は予算不足により満足な行動すらできなかったが、21世紀以降は艦載機を搭載し北大西洋で演習するなど活発に行動している。
現在ロシア政府は新型の原子力空母の建造を目指しているが、新たな情報はない。
一方でフランスから2隻のミストラル級強襲揚陸艦を導入することが決まり、準備が進められていた矢先、ウクライナ問題でキャンセルされ、兵装以外はほぼ完成した2隻はエジプトが購入することが決まった[5]。
イギリス海軍は1970年までは固定翼機を運用可能な正規空母を保有していたが、退役に伴いVSTOL空母インヴィンシブル級を運用。フォークランド紛争で活躍する。しかしハリアーが退役しヘリ空母として運用された後に2014年までに全艦が退役。一時は派生型の揚陸艦オーシャン1隻のみとなったが2017年にはF-35Bを搭載する新型正規空母クイーン・エリザベス級が就役する予定である。
フランス海軍は1960年代に正規空母クレマンソー級を2隻就役させ90年代末まで活躍。現在は原子力空母シャルル・ド・ゴール1隻を保有している。
また、2006年からはミストラル級揚陸艦3隻の運用をしている。
イタリア海軍はヘリコプターを複数機運用するアンドレア・ドーリア級巡洋艦の運用実績を元に1980年代にハリアーを運用する軽空母ジュゼッペ・ガリバルディを就役させた。更に2008年には輸送艦能力を有する軽空母カヴールを就役させている。更にジュゼッペ・ガリバルディの更新用としてF-35Bを運用できる新型揚陸艦トリエステが2019年に進水した。
スペイン海軍は1960年代にアメリカから旧型軽空母を提供され対潜用のヘリ空母として運用した後、1970年代からハリアーの運用を開始、その実績とアメリカで中止された軽空母計画を組み合わせたプリンシペ・デ・アストゥリアスを1980年代に就役させた後、2010年に多機能化したファン・カルロス1世を就役させ積極的に輸出を行っている。
各国とも空母が1~2隻という少数だがEU圏やNATOとしての欧州全体の枠組みの一つとして空母を複数保有しているとしている。(整備ローテーションの問題でタイミングによっては空母が1隻もいない事態も)
アメリカに代わって太平洋の覇者たろうとする中国はアメリカ海軍並みの空母戦闘群を計画しており、ソ連崩壊後ウクライナにて建造中止になっていた旧ソ連の空母「ワリャーグ」を購入。大整備の末2012年練習空母「遼寧」が完成。同じくウクライナにあった艦載機の実験機を購入、研究し国産化に成功する。現在航空部隊の練成中と試験航海を行っている。
更に改良型空母が2017年に進水し、艤装中である。
更に2019年には全通甲板を備えた海南級強襲揚陸艦が進水した。
インドも、1961年にイギリス海軍から正規空母「ヴィクラント」を購入し印パ戦争で活躍する。1987年には退役したイギリス海軍のVSTOL空母を購入、「ヴィラート」とし、冷戦期にアジアで唯一空母を保有する海軍であった。2013年にロシアからキエフ級重航空巡洋艦を改装した正規空母「ヴィクラマーディティヤ」を受領。また同年国産の空母「ヴィクラント(二代目)」が進水した。
韓国は現在独島級強襲揚陸艦を保有しており、独島級の追加配備とか空母3隻の保有とか色々と景気のいい話だけは聞こえているが『お察しください』状態が続いている。
それでも独島級2番艦というか改良型・馬羅島が進水済みである。
タイ海軍もスペインから輸入した王室ヨット軽空母を保有しているが予算不足により満足に運用されていない。
2010年代になって中東諸国では保有する軍艦の更新に伴い、新型艦開発・他国からの輸入が盛んになっており、その中には空母型艦船も含まれる。
まず、エジプト海軍が2016年にロシアが配備するはずだったミストラル級揚陸艦2隻を購入した。固定翼機は運用できないがロシアから対艦ミサイルを装備した攻撃ヘリ購入の打診がされており、実現すれば戦力的地位は大きくなる。
更にトルコ海軍はスペインからファン・カルロス1世級の派生型導入を契約し建造を開始した。完成の暁にはF-35Bの配備が想定されているがアメリカとの関係悪化により実現は厳しくなっている。
ブラジル海軍は1952年にイギリスから中古軽空母を購入して空母の運用を開始し、2000年にフランスからの中古正規空母の購入で更新したが予算不足により2017年に退役させ、改めてイギリスから中古のヘリコプター揚陸艦を購入した。
アルゼンチン海軍は1959年から1997年にかけてイギリスから購入した中古軽空母を連続で1隻づつ運用していたが能力不足からフォークランド紛争で戦果を挙げることなく、空母の運用を終了した。
オーストラリアは1982年にイギリスから購入した空母が退役して以降、正規空母は保有していなかったが、2014年にスペインのファン・カルロス1世級の派生型キャンベラ級強襲揚陸艦の配備を開始し、2隻を整備する予定だが固定翼機の運用予定は2015年現在はない。
現状では、上記のとおり、空母そのものについての存在価値が揺らいできているという指摘もある。
戦艦がそうであったように、空母がその影響力を発揮するためには艦載機の運用数を増やすことが望ましい。そのためには艦艇サイズが大きくなる傾向があり、必然と運用コストが過大になる。一方、限定的な運用、例えばVTOL機運用の軽空母、ヘリ空母ではその効果は限られる傾向にある。
さらには自国領土に近い領域の防衛には地上にある空軍基地からの航空戦力で十分間に合うこと、一時的な奇襲ならば陸上基地からの空中給油機と攻撃機の遠距離奇襲攻撃の方がコストパフォーマンスが高いこと、更には航空機技術の発展及びミサイルの長射程化など、空母の相対的なパフォーマンスが低下しているのは否めない事実と言えるだろう。
空母の歴史(全7回)
世界の空母
フランス自動車メーカーシトロエンの有名TVCM「飛びまーす!♡」ロケ地:クレマンソー級航空母艦。
アメリカ | 大日本帝国海軍 | 海上自衛隊 |
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ロシア | イギリス | フランス |
中国 | その他 | |
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アメリカ | ヨーロッパ | 艦載ヘリコプター | 第二次世界大戦 | |
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,'⌒,ー、 _ ,,.. X
〈∨⌒ /\__,,.. -‐ '' " _,,. ‐''´
〈\ _,,r'" 〉 // // . ‐''"
,ゝ `く/ / 〉 / ∧_,. r ''"
- - - -_,,.. ‐''" _,.〉 / / . {'⌒) ∠二二> - - - - - - -
_,.. ‐''" _,,,.. -{(⌒)、 r'`ー''‐‐^‐'ヾ{} +
'-‐ '' " _,,. ‐''"`ー‐ヘj^‐' ;; ‐ -‐ _- ちょっとコンビニ行ってくる
- ‐_+ ;'" ,;'' ,'' ,;゙ ‐- ー_- ‐
______,''___,;;"_;;__,,___________
///////////////////////
コンビニは人気者!皆大好き!左の動画に登場の艦上機はアメリカ海軍のF-18ホーネットorスーパーホーネット。
上記AAはアメリカ海軍のF-14トムキャットのAAである。
掲示板
1296 ななしのよっしん
2025/01/01(水) 09:47:51 ID: 5TBKFmqXGd
先手取れないってのは専守防衛の意味を理解してないのでは?
1297 ななしのよっしん
2025/01/01(水) 10:00:53 ID: UcY8vEoYH9
少なくとも相手が飛行機飛ばしてこないうちにこっちから飛ばして攻撃するのは無理でしょうね
相手国の地上基地と海上の空母と日本の地上基地との距離関係や稼働させられる戦闘機の数を考えると、一つだけ突出しててしかも他より防衛体制脆い上再建スピートも遅いんだしただの的で終わる
1298 ななしのよっしん
2025/01/12(日) 19:09:14 ID: HoVbNSd/3n
>>1296
そういう君が一番理解できてないようにしか見えんが、
ふっかける位なら専守防衛とやらを説明できるの?あんまり期待はして無いけど。
>>1297
小競り合いの中で後の先(敵が攻撃しだしたので先に撃墜する)
みたいな事は出来る事になってるとは言え、自衛の範囲でしか出来ないからな
空母と言う巨大な戦術単位を意味あるものに出来る範囲の先手
(敵基地を先制攻撃して破壊する等)は、日本の政治体制では
どう考えても取れっこないのは目に見えてるからね
んな事出来るなら尖閣の油田基地位なんとかしてるだろうし
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最終更新:2025/01/13(月) 22:00
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