潜水艦は(特に原子力潜水艦の場合)出航、入港時以外は常に海中で航行しているため、他の水上艦艇とは違い衛星などでも探知しづらく、レーダーにも反応しない。潜水艦を探知することができるのはソナー、つまり音による探知だけである。その性質上、位置を知ることも困難である一方、多種多様な任務をこなせることから現在の海軍の影の主力といってもいいかもしれない。
ただしその隠密性に反し、一度見つかってしまうと非常に脆い性質も併せ持つ。特に航空機(哨戒機や対潜ヘリ等)は天敵と言っていい存在で、航空機側はソナーや爆雷、対潜ミサイルなどで発見・攻撃が可能なのに対し、潜水艦側は航空機を攻撃はおろか探知することすらまず不可能。もちろん、海域を絞って捜査しなければ見つからないので、広大な海こそが潜水艦の唯一最大の武器である。
また発見されて撃沈されると乗組員はまず助からず、船体の回収すらままならないため、特長である隠密性の裏には決死というリスクも存在する。そのような事情から、潜水艦勤務は海軍の中でも比較的"快適"な生活を送れることが多い。
日本では潜水艦といえば「沈黙の艦隊」や各種ゲームのおかげでイメージがしやすくなっただろう。もっとも、あの作品に描かれているような潜水艦同士の戦いは現在(公表されているかぎり)発生していない。一応念のために書いておくけど、発生してないのは潜水艦同士の戦いであって、「沈黙の艦隊」や「Battlestation」で起きているようなトンデモ仮想戦ではないのであしからず!
艦内に原子炉を搭載し、そこで発生させた電力を推進機や艦内の電力に使用する。初期の原潜は原子炉で発生させた蒸気で直接タービンを回し、減速歯車を介してスクリューに伝えていたので、歯車が発生させる騒音で探知される危険性があったが、現在は発電機で発生させた電力でモーターを回すので騒音は激減している。ただ、原子炉を冷却するポンプなどは止められないので、それら補機類の雑音低減の努力もなされているが、原理的には通常型のほうが静かになる。
原子炉による事実上無限の航続力と、ふんだんに使える電力が原潜の大きな利点になっている。また、水上艦と違って造波抵抗が無い分、原潜が最も高速を出せる軍艦になっている。当然ながら建造費や維持費は通常型より高い。
早い話が「原子炉以外の動力で動く潜水艦」。ディーゼルエンジンで発電して蓄電池に蓄えた電力でモーターを回し航行する。しかし出力や航続時間は原子力潜水艦と比べれば僅少である。また内燃機関を使う関係上、充電時の浮上航行または浅深度でのシュノーケル航行によって継続的に空気を取り入れねばならないため、水上や空中から発見されるリスクが高い。一方、主な騒音源である機関を任意に停止させバッテリ駆動で航行することができるため、原子力潜水艦に比べると静粛性では有利である場合が多く、隠密性に長ける。近年はバッテリ技術の進歩により、潜行できる時間も以前に比べ格段に長くなっているとされる(しかし前述の通り空気補給時の被発見リスクを加味すると必ずしも原潜より静粛性で優れているとは言い難い)。
AIP(Air Independent Propulsion)は「大気非依存型推進装置」を意味し、用語からは原子力推進を連想させるが、一般的には通常動力型潜水艦の推進装置の一種である。
具体的には、潜水艦に酸素タンクを備え、空気の代わりにこの酸素を使用して発電機を回し発電する。酸素が残っている限りはマストを海面上に出す必要がないので、従来に比べ長時間潜航したまま航走できる。しかし現在のAIPは大出力を出せないので、従来のディーゼルとバッテリーを組み合わせたシステムを補完する(低速時はAIP、高速時はバッテリーを使用)形で使用されると考えられている。
代表的なAIPとして、スターリングエンジン、CCDE(Closed Cycle Diesel Engine)、MESMA(Module d'Energie Sous-Marine Autonome)、燃料電池が研究されている。
潜水艦の任務は大別すると二つに分けられる。
タイプ | 説明 |
---|---|
攻撃型潜水艦 |
敵水上艦、輸送艦、輸送船などに対する攻撃を主任務とする。最近では特殊部隊の輸送、ミサイルによる対地/対艦攻撃、敵拠点の監視、機雷戦など様々な用途に用いられる。一般に潜水艦の多くはこちらに属する。 |
戦略型潜水艦 |
戦略核ミサイル(潜水艦発射型弾道ミサイル)を搭載し、敵の都市を標的とした相互確証破壊(MAD)を担う。戦略爆撃機、地上発射ICBMと並び核戦略では重要な要素で、海中深く潜行し位置を秘匿しつつ移動できるため抗堪性は最も高いとされる。米英露仏中が運用し、北極海などに常に展開している。 長期間潜行して核抑止を担う関係上ほとんどが原子力駆動の潜水艦である。また、弾道弾を撤去して多数の巡航ミサイルを搭載したものを巡航ミサイル潜水艦(SSGN)として区別する場合がある(巡航ミサイル運用専門に開発されたものもある)。 |
米海軍の表記法が一般的に使われている。SSは潜水艦一般を指すと同時に通常動力の攻撃型潜水艦の代名詞としても使われる。末尾のNはnuclear propulsionの頭文字で、これが付けば原潜である。Bはballistic missile、弾道ミサイルを搭載している潜水艦に付く。Gはguided missile、誘導ミサイル(巡航ミサイル)を搭載している潜水艦に付けられる。[3]
米海軍の戦略原潜であればSSBNになる。米海軍の攻撃型潜水艦ならSSNになるが、巡航ミサイルも搭載していればSSGNになる。
潜水艦は、第二次世界大戦以前までの「可潜艦(サブマージブル)」と、それ以降の本格的な「潜水艦(サブマリン)」に分けることができる。
可潜艦は作戦行動の大半を水上航行し、敵に発見された時や魚雷攻撃を行なう時など、限定された状況にのみ潜航するため、船体下面が水上航行に適した形になっているが、第二次世界大戦以降の本格的な潜水艦は、水中航行を前提に設計・開発されており、水中航行時の抵抗ができるだけ少なくなる船体形が採用されている。
今現在、世界で潜水艦を独自に開発、建造している国は少ない。これは潜水艦の動力、あるいは水圧に耐えられる鋼材や耐圧構造などにかなりの技術蓄積が必要なためでもある。以下は主な潜水艦建造国。
国家 | 原潜 | 通常 | 状況 |
---|---|---|---|
アメリカ | ● | ● |
対地攻撃用の巡航ミサイルや特殊戦部隊投入能力など、研究・発展にも余念がない。 世界初の原子力潜水艦ノーチラスを就航させた後、現在ではすべてを原子力潜水艦として、攻撃型原子力潜水艦(SSN)ロスアンゼルス級、シーウルフ級、ヴァージニア級をはじめ、戦略型潜水艦オハイオ級も含め計71隻を配備しており、非常に強力な潜水艦戦力をもつ。 |
ロシア | ● | ● |
アメリカと異なり、沿岸警備などの理由から通常動力型潜水艦も建造しており、ソ連時代からは大幅に減少したものの、原子力潜水艦とあわせて計70隻あまりを保持している。中でもキロ級は攻撃能力・静粛性において高い性能を誇り、輸出も好調なため各国で運用されている。 原潜に関しては初期にはあまりに低い放射線遮断技術や原子炉の安全性の問題があったものの、アルファ級・シエラ級・アクラ級といった高性能艦を次々と登場させアメリカを驚かせた。 有名な潜水艦としては映画「レッド・オクトーバーを追え」などで有名になった戦略型潜水艦タイフーン級(世界最大の潜水艦)・攻撃型原子力潜水艦アルファ級など。ただしこれらの艦名はNATOコード名なので、ソ連、ロシアで実際はタイフーン級は「アクラ」(→後にドミトリー・ドンスコイへ改名)(project941)。アルファ級「リーラ」(project705)と呼ばれていた。 また、中国などはロシアから潜水艦を購入、あるいはロシア系技術を用いて潜水艦を建造しているなど、ドイツと並んでロシアの(流れをうけつぐ)潜水艦は世界に広まっている。 |
イギリス | ● | ● |
現在も数隻規模であるものの独自に建造した原子力潜水艦をもつ。戦略型4隻、攻撃型6隻の編成である。特に注目すべきは世界でも珍しいポンプジェット方式で推進する攻撃型原子力潜水艦トラファルガー級。また原子力潜水艦でただ一隻、水上艦艇を撃沈させたチャーチル級「コンカラー」などが有名。現在、トラファルガー級の代替としてアスチュート級が建造中。 |
フランス | ● | ● |
第二次世界大戦以前より潜水艦を建造していた歴史のある国で、現在も原子力潜水艦を建造、配備している。 ド・ゴール大統領の積極的な核戦力保有政策で戦略型原潜を最優先で開発し、攻撃型原潜の開発を後回しにするという類を見ない開発計画を行った(通常、攻撃型原潜の運用実績を元に戦略型原潜を開発するのが普通)。 最新型はル・トリオンファン級原潜(戦略型、4隻)がある。攻撃型原潜としてリュビ級(6隻)があるが、次世代攻撃型原潜として、シュフラン級の建造が計画されている。 |
中国 | ● | ● |
ソ連時代に潜水艦を供与されたのがスタート。ただし、お世辞にいって建造技術は褒められたものではなく、一世代前の騒音レベルだとか色々評価は散々だった。日本の領海を通っていた漢級の一件が最たるもので、台湾-アメリカ-日本と延々と追跡されることになった事件まである(ただし2004年当時の時点で漢級は中国においても旧式扱いであったことを留意すべし)。 ただ、最近はロシアのキロ級通常動力型潜水艦を導入する一方、建造技術をいろいろな国から習得しているようで、パキスタン経由でフランスのAIP機関技術など取り入れ静粛性はかなり向上した模様(ロシアのヴィクターIII級、あるいはアメリカのロスアンゼルス級原子力潜水艦相当ともいわれる)。093型、094型といわれる最新型の戦略型、攻撃型原子力潜水艦を建造・あるいは導入中ともいわれる。 |
ドイツ | ● |
第一次大戦で、圧倒的な海軍力を持つイギリスのシーレーンを絶つために、潜水艦技術を発展させた。二つの世界大戦で猛威を振るったUボートは特に有名であり、潜水艦=ドイツという1つの固定観念すら出来上がっている。 その血統なのか、通常動力型潜水艦を今でも多く建造し、世界各国に輸出、あるいはライセンス供与している。特に209型なんかは輸出ベストセラー潜水艦である。また214型は財政危機の国が導入することと不良に定評がある。 建造する潜水艦は比較的小型で、沿岸向けの通常動力型潜水艦でAIP推進が主体なので使い勝手が良いようだ。もっとも、最新型はあまりいい評判が流れてこないようだ。 |
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スウェーデン | ● |
武装中立の国是から独自の軍事技術の確立に力を入れており、意外と知られていないが、コンパクトな潜水艦を建造している。実はスターリング・エンジンを潜水艦AIPとして取り入れた最初の国。ゴトランド級潜水艦は数年前にアメリカにも貸し出しされたほど。 |
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インド | ● | ● |
インドの原潜の歴史はまだ浅く、80年代ソ連製の原潜アクラⅡ級「ネルパ」をインドが購入、「チャクラ」と名づけられて2012年にロシアからインドへと引き渡された。ただ、インドでは初の国産ミサイル原潜としてアリハント型(Arihant)も開発され、2015年から配備されている。 |
イスラエル | ● |
地政学的にあまり海軍を重視していないイスラエルであるが、沿岸防御のために1950年代からイギリスから中古のS級・T級潜水艦を輸入して運用していた。 しかし湾岸戦争でイラクの弾道ミサイル攻撃を受けたことにより、報復攻撃が可能な攻撃型潜水艦の取得を強く望むようになった。 |
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日本 | ● |
対潜訓練の目標艦と要員養成を主眼として整備された海自の潜水艦部隊は、51大綱(1976年)で「重要港湾や主要海峡の防衛用」として宗谷、津軽、対馬海峡防備のために6個隊16隻体制となり、16大綱(2004年)では「東シナ海・日本海の海上交通の要衝等において情報収集に当たる潜水艦を配備し得る体制」として4個隊16隻になった。[5]22大綱(2010年)では6個隊22隻体制への変更が明示され、これは「たいげい」の就役によって完了している。 海自の潜水艦は、最初に導入した米海軍貸与のガトー級を除けばすべて国産の通常動力潜水艦を使用しており、昭和40年以降はほぼ年に1隻のペースで新造艦を就役させている。 特徴として、通常動力型潜水艦であるにもかかわらず、その船体の大きさがあげられるだろう。荒天がつづく日本海や太平洋をふくむ広大な領海があるため、艦の安定性確保や長期間の航海任務につく必要性があること、さらには乗組員が三直制で艦の運用にあたるなど日本特有の事情のため、沿岸での活動を主とするロシア、ドイツなど他国の通常動力型潜水艦に比べてほぼ二倍のサイズとなっている。 サイズ的にはもはや小型の攻撃型原子力潜水艦とほぼ同じサイズとなっており、このようなサイズの通常動力型潜水艦を建造しているのは日本しかないのだが、それも理由があってのことである。スターリング機関などAIP技術の取得にも取り組んでおり、最新潜水艦として「そうりゅう」型が建造されている。 自衛艦の中で、潜水艦だけは艦名と番号を書いていない。所属や型式を知られないようにするため、1976年度から消している。[6] |
ドイツ |
ロシア |
日本 |
アメリカ |
その他 |
純粋な『潜水艦』 |
副次的な『潜水艦』
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掲示板
466 ななしのよっしん
2024/12/31(火) 20:31:19 ID: hIWs6L/OX4
たいげい型の推定バッテリー量は10ktで10時間くらいだから200kmってのはいい線いってるな
ただその想定は行きに使う分と作戦行動分のバッテリー消費、帰りにバッテリーが切れたらシュノーケル上げる必要があるって前提を忘れてる
行きと作戦行動中はに水中巡航速度の4ktで移動すればバッテリーを7割くらい残せるけど、今度はピンポイントの海域をピンポイントの時間でしか狙えなくなる(SSKはそう言うものだが)
実験室レベルの全固体電池(容量5倍)が実用化したら作戦の幅はかなり広がるけど、それでも原潜の巡航速力である20kt出したら数時間でバッテリー切れになるんで、実質航続距離無限のSSNとSSKじゃ超えられない差があるのよ
467 ななしのよっしん
2025/01/05(日) 09:25:00 ID: 38CcIf3pfC
原潜との性能格差などはプロは当然把握してるはずだが
今のところ海自も政治も原潜艦隊配備をゴールに動いてる気配はないな
国産するなら技術開発、輸入するなら外交的な根回し、人材育成、配備地や炉心交換設備の選定と地元の説得などなど国を挙げた大事業になるはずだが
この辺は韓国が原潜持ち上がたがってるのを隠してないから後追いでやる事になるかも知れない
468 467
2025/01/05(日) 09:28:07 ID: 38CcIf3pfC
最後誤字があった
持つ上がたがる→持ちたがってる
急上昇ワード改
最終更新:2025/01/13(月) 22:00
最終更新:2025/01/13(月) 22:00
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