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マンション価格も金利も上昇の今、狙い目は各駅停車駅!試してみたい3つの「ちょい駅ズラし」テクニック

2024年12月20日公開(2024年12月20日更新)
山本久美子:住宅ジャーナリスト

毎月のように、首都圏の新築マンションの価格上昇の話題が続く。住宅ローンの金利も上昇局面に移行した。物価の上昇もあり、購入する住宅の予算はあまり引き上げられないというのが現実だろう。では、予算の範囲内で満足度の高いマイホームを手に入れるには、どうしたらよいのだろうか? 新築ではなく中古を検討したり、郊外を検討したりなどさまざまあるが、今回、試してほしいのが「ちょい駅ズラし」のテクニックだ。(住宅ジャーナリスト/山本久美子)

中古マンションは各駅停車駅がねらい目!人気の駅はどこ?

 急行停車駅のほうが、都心部への移動時間は短いものの、各駅停車に目を向ければ住宅価格は下がる場合が多い。あえて各駅停車駅を狙うというのも、賢い方法だ。

 LIFULL HOME’Sが発表した「各駅停車しか停まらないのに人気の駅ランキング」は、物件ごとの問い合わせ数を把握できる不動産ポータルサイトならではのランキングで、対象は賃貸物件。問い合わせ数が多い=人気という想定だ。

 その一例を紹介すると、東京都の各駅停車の人気駅は、ファミリー・シングル共に「綾瀬」が1位になった。綾瀬駅は、JR常磐線と東京メトロ千代田線が乗り入れ、千代田線の始発駅となる場合もあり、利便性が良くて、コスパの良い街として知られている。

【関連記事】
>>あの「コンクリ事件」の足立区・綾瀬がなぜ? 地価上昇率ナンバーワンの理由を徹底解剖

マンション購入者はまだ各駅停車駅への関心が高まっていない?

 このランキングを調査したLIFULL HOME'S PRESS編集部の渋谷雄大さんに「なぜ各駅停車駅のランキングを調べたのか」を聞いてみた。

 同編集部ではいろいろなマーケット情報を提供しているが、2022年度から2023年度にかけてのデータをもとに「人気の上がった駅ランキング」を、2024年5月に公表した。その際、地域の拠点となる駅から1駅、2駅離れたところで人気が上がっていることが分かった。これを受け、各駅停車駅に絞って、ファミリー・シングル別に人気の駅ランキングを公表したのだという。

 今回の人気の駅ランキングは賃貸物件を対象としていたため、売買物件(中古マンション)の状況を知りたいと、2022年から2024年(いずれも1月~9月)の価格と問い合わせの上昇率を独自に調べてもらった。渋谷さんによると、賃貸物件と売買物件では、少し状況が異なるのだという。

 まず、賃貸物件で急行停車駅と各駅停車駅を比べると、賃料は急行停車駅のほうが上がっているものの、問い合わせ件数で見ると、各駅停車駅の方が上がっている。このことから、賃貸ユーザーは、賃料の安い各駅停車駅に注目し始めていることがうかがえる。

 一方、売買物件で比べると、価格は各駅停車駅のほうが急行停車駅よりも上昇幅が大きい。これに対して、問い合わせ件数は、急行停車駅のほうが上昇しているので、購入ユーザーの中では、まだ各駅停車駅への関心が高まっていないと推測する。

 なお、価格の上昇については、「急行停車駅の価格が先に上昇し、それに遅れて各駅停車駅が上昇しているのではないか」と渋谷さんは見ている。首都圏全体の2024年の価格を2022年と比べると、各駅停車駅が上昇しているが、2016年と比べると急行停車駅と各駅停車駅でほぼ同等であるからだ。

急行停車駅と各駅停車駅の中古マンションの価格差は? 1駅ずらせば大きく変わる場合も

二子新地駅(出典:PIXTA)

 さて、同じ沿線内での住宅価格は「急行停車駅が高く、各駅停車のみの駅が安い」といった波のような曲線を描く。そして都心部に向けて右肩上がりになるのが一般的だ。では実際に、どの程度の価格差があるのだろう。

 LIFULL HOME'Sに掲載された物件の2024年の第1~第3四半期(1月~9月)の平均価格でまずは人気沿線の「田園都市線」を見てみよう。

 世田谷区の「二子玉川」は平均価格が1億円を超えるが、多摩川を越えて川崎市に入ると、急行停車駅の「溝の口」でも4,934万円とかなり手ごろになる。溝の口より手前の各駅停車駅「二子新地」や「高津」は溝の口よりも100万円程度安い。次の急行停車駅「鷺沼」は4,253万円だが、それより手前の各駅停車駅「宮崎台」や「宮前平」は鷺沼より300万円~600万円ほど安い。

 やはり、急行と各駅の停車駅で波のようなアップダウンをしていることがわかる。ただし田園都市線の場合は、横浜市に入る「たまプラーザ」以降は平均価格が一段上がるのが特徴だ。

■田園都市線(一部)の2024年1月~9月の中古マンションの平均価格

  急行/各駅停車(◎) 平均価格
田園都市線 駅名 各駅停車のみ(●) 2024年1月~9月
世田谷区 二子玉川 1億212万円
川崎市 二子新地 4,808万円
高津 4,829万円
溝の口 4,934万円
梶が谷 4,878万円
宮崎台 3,941万円
宮前平 3,909万円
鷺沼 4,253万円
横浜市 たまプラーザ 5,860万円
あざみ野 5,904万円
江田 5,199万円
市が尾 4,981万円
藤が丘 4,901万円
青葉台 4,700万円
田奈 4,642万円
長津田 4,946万円

出典:LIFULL HOME'S PRESS編集部作成

 次に「大井町線」も見てみよう。急行の止まる「旗の台」は8,629万円、次の急行停車駅「大岡山」は9,451万円だが、その間の各駅停車駅「北千束」は6,444万円だ。これは、かなりの価格差といえるだろう。「大井町」から「旗の台」の間の各駅停車駅もおおむね6,000万円台におさまっていた。

 もちろん平均価格は、土地のブランド性や他沿線との乗り入れ状況、そのときの売り出し物件の状況など、さまざまな条件によって変動する。そのため各駅停車駅でどの程度価格が下がるかは一概には言えないが、値ごろ感は明確にあるようだ。

妥協できるのは「バス便」より「各駅停車駅」

 また、こんなデータもある。LIFULL HOME'Sでは、共働き子育て世帯を対象とした「理想の住宅立地」に関する調査を行っている。まず、共働き子育て世帯が理想とする通勤時間は「30分以上1時間未満」(43.5%)が最多となった。

 そして通勤経路において許容できる乗り換え回数は「乗り換え1回」(53.1%)が最多で、過半数に達している。

 また、駅を選ぶ際に妥協できるポイントは、1位が「乗り換えが発生する」(62.6%)、2位が「急行が停まらない駅」(55.5%)となった。バス便は許容しがたいが、急行に乗り換える各駅停車のみの駅というのは、意外と許容範囲なのかもしれない。

おススメしたい「ちょい駅ズラし」テクニック3選

北品川駅(出典:PIXTA)

 渋谷さんがおススメする「ちょい駅ズラし」には、いくつかのテクがある。1つ目が、「都心ターミナル駅から少しズラした駅」。たとえば「新宿」なら「大久保」、「渋谷」なら「神泉」、「品川」なら「北品川」など、1駅ズラすという方法が一つ。

 2つ目がこれまで説明してきた「急行停車駅から少しズラした各駅停車駅」。駅によっては、各駅と急行が同じホームのまま対面で乗り換えできる場合もあり、そうした場合は乗り換えのストレスも小さい。

 さらに、先ほどの田園都市線のような人気沿線は住宅価格が高いが、乗り換え路線へのちょいズラしもあるのではないかと、取材時に話が盛り上がった。そこで3つ目のテクとして、「急行停車駅とクロスするちょいズラし」も加わった。

 たとえば、今人気急上昇のつくばエクスプレスの急行停車駅の「流山おおたかの森」駅。平均価格は5,152万円だが、同駅から東武野田線に乗り換えて1駅の「初石」(3,233万円)や「豊四季」(3,350万円)ならぐんと価格が下がる。

 まとめると下記の通りとなる。

■おススメしたい「ちょい駅ズラし」3テクまとめ
(1)都心ターミナル駅の周辺駅
(2)同一沿線の急行停車駅に近い各駅停車駅
(3)人気沿線に乗り入れる別路線の周辺駅

お手頃で満足度が高い「ちょい駅ズラしテクニック」

 これまでLIFULL HOME'Sの調査データを紹介してきたが、次にSUUMOのランキングを紹介しよう。「住みたい街ランキング」を毎年公表しているSUUMOが、「住み続けたい街ランキング2024」を公表した。

 今回の目玉は、「家賃が手ごろで満足度が高い『住み続けたい街』ランキング」も公表していること。そのなかから、東京都市部と埼玉県の「家賃が手ごろで満足度が高い『住み続けたい街』ランキング」を見ていこう。

■東京市部でファミリーに手ごろな住み続けたい街(家賃相場12万円以下)
1位:谷保
2位:砂川七番
3位:南大沢

■埼玉県でファミリーに手ごろな住み続けたい街(家賃相場11万円以下)
1位:北大宮
2位:加茂宮
3位:大宮公園

 東京市部や埼玉県では、知名度の低い駅が上位にランキングされた。東京都市部の「谷保」(南武線)と「砂川七番」(多摩都市モノレール)はJR中央線の立川駅や国立駅の生活圏に近い。

 埼玉県の「北大宮」「大宮公園」(東武野田線)と「加茂宮」(埼玉新都市交通伊奈線)はJRの大宮駅の生活圏に近い。いずれも生活圏に大型の商業施設や文化施設、公園などが多く、お手ごろでありながら、地域の拠点駅の利便性を享受できるという点で、満足度が高くなっているという。

 SUUMOの手ごろな住み続けたい街も、実は「ちょい駅ズラし」の駅なのだ。例えば東京23区のシングルタイプ家賃8万円以下の住み続けたい街でも、1位「山下」は東急世田谷線というややマイナーな沿線だが、小田急線豪徳寺に乗り換えできる。2位の「南阿佐ヶ谷」は、JR中央線荻窪駅から東京メトロ丸の内線で1駅だ。3位の「西荻窪」はJR中央線の荻窪と吉祥寺の間の駅で、休日は快速電車に通過される駅だ。

 「ちょい駅ズラし」では乗り換えが必要だったり、急行停車駅より本数が少なかったりといったデメリットはあるが、それを許容できれば、「お手ごろ」でかつ「満足度が高い」ということが、このランキングからも分かる

駅遠より各駅停車駅のほうが資産性を保ちやすい?

 近年、若い世代では住宅の資産性を重視する傾向が見られる。ついのすみかを探すというより、ライフスタイルが変わればそれに適した住まいに住み替えるという志向があるからだといわれている。

 一方で、最寄り駅から遠くなると資産性が保ちにくいということは、さまざまなデータが指摘している。こうして見ていくと、「ちょい駅ズラし」は検討する価値があるように思えるのだが、みなさんはどう思われるだろうか。

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