2019 年 9 月にサービスインした、国内「位置ゲー」(位置情報を利用したスマホゲーム)の大本命 ”ドラゴンクエストウォーク”。サービスイン後わずか 2 か月あまりで 1,000 万ダウンロードを記録した大ヒット作品です。その地図情報部分には Google Maps Platform が利用されています。Google Maps Platform を採用した真意はどこにあるのか? ドラゴンクエストウォークの開発の経緯を、スクウェア・エニックスの柴プロデューサーと、開発を担当したコロプラ エンジニア陣に伺いしました。



Google エンジニアとの丁々発止のやり取り


位置情報を活用したスマートフォン ゲームが世の中に登場するなかでスタートした、スクウェア・エニックスとコロプラによる『ドラゴンクエストウォーク』の共同開発プロジェクト。当初、ゲームに必要となる地図情報をどのようにして入手するかの検討から始まりました。コロプラでサーバーサイドの開発を担当している佐藤さんが当時のようすを次のように語ってくれました。

「開発初期は Google Maps Platform ではない地図情報サービスを使うことを検討していました。しかし、位置情報の精度が十分ではなく悩んでいたところ、Google が Unity との連携にも対応するゲーム向けの Google Maps Platform Gaming Solution を開発していることを耳にしました。位置情報の精度が低いとゲームをしている人が今どこにいるか迷ってしまい、ゲームの楽しさも半減してしまいますからね。もちろんその後も、並行していくつかの選択肢を検討したのですが、約 1 年間検証を重ねて、データの精度や安定性で図抜けていた Google Maps Platform を採用することを決めました。将来的にますます進化していくだろうという期待感も大きかったですね。」(佐藤さん)

開発チームが地図データに求めるのは、細かい道までしっかり表示してくれる精度の高さ。そして、それに加えてより豊かな情報量だったと柴プロデューサーは言います。

「『ドラゴンクエストウォーク』をどのようなゲームにするかは、本当にいろいろな形を検討しました。ただ、どのような形にするにせよ、地図上の POI(Point of interest)データをたくさん持っているサービスの方が、ゲームとの親和性が高いだろうと考え、 Google Maps Platform の採用を決めています。日本の Google Maps Platform 担当者がドラゴンクエスト世代の方で、熱心に本社サイドを説得してくれたおかげで、しっかりとした協力体制を持って開発を進められるようになったんですよ。」(柴さん)

ただし、ドラゴンクエストウォークを開発するために必要な機能はまだまだ不十分だったそうです。

「Google Maps Platform はいろいろな POI データを持っているものの、ゲーム開発で使える機能はまだ十分には整っていませんでした。当初は道を表示するだけ、建物を追加するだけというシンプルなもので、ドラゴンクエストの世界観を表現するには十分ではありませんでした。ただ、そこから議論を重ねた結果、データを加工できるようになったり、どこにいるのか分かるよう、地名を表示できるようになったり、少しずつ求める機能が追加されていきました。」(佐藤さん)

こうした機能要望をよりダイレクトに伝えるため、佐藤さんと小林さんが、Google のシドニーオフィスを訪問。Google Maps Platform Gaming Solution 開発の中核メンバーに、さまざまな機能追加をリクエストしたそうです。

「当時は Google 側も、このゲームにどういった情報が必要なのか分からないという状況でしたから、とにかくこちらからどんどんオーダーしていかなければなりません。ただ、それに対するフィードバックはものすごく速かったです。たとえば本作では人が集まるところにモンスターが湧きやすいようにしているのですが、新宿駅のような混み合う場所でそれをやると大混雑の原因になるので、駅は避けられるようにしたいとか、たくさんの機能を追加していただきました。なお、このやりとりは現在も継続中で、今後はその対応によってどんどん新しいことができるようになるはずです。」(柴さん)
株式会社スクウェア・エニックス
『ドラゴンクエストウォーク』プロデューサー 柴 貴正 氏

毎日を冒険に変える


「ドラゴンクエスト」の世界観を使い、Google Maps Platform の地図データを駆使して開発された『ドラゴンクエストウォーク』ですが、当然、それだけでは「ゲーム」になりません。このタイトルをどのような「位置ゲー」にしていくかも非常に悩ましい問題だったと言います。

「そもそも、何もない場所に人(ユーザー)を動かすことがゲームでできるのだろうかという点から心配でした。100 メートルなら動いてくれたとしても 1 キロメートルになったら無理なんじゃないのとか。目的地にアイテムを置いたら移動してくれるのか、当初は本当に自信が持てませんでしたね。ただ、そんな中でガラケー時代から位置ゲー(『コロニーな生活』)を作っていた代表(馬場功淳氏)が『大丈夫だ』と背中を押してくれました。それで不安を乗り越えられたところもありますね。」(小林さん)
株式会社コロプラ エンターテインメント本部 Cスタジオ マネージャー 小林 傑 氏(写真左) エンターテインメント本部 エンジニア部 第 5 グループ マネージャー 佐藤 光 氏


「目的地に向かうという基本システム自体も 5 回くらい作り直しています。初期は自分の周辺に勝手に目的地が表示されて、強制的にそこに向かわされるシステムだったり、完全に自由に目的地を選べるシステムだったこともありました。最終的に目的地の設定は選択制になりましたが、その選択肢は Google Maps Platform の Playable Locations API のスコアを活用しています。移動してもらう以上、知られている場所、人が集まる場所にしたかったんです。また、近しいユーザーがなるべく同じ場所を目指すようにして、そこで出会ったり、協力したりということも狙いました。」(佐藤さん)

「こうした工夫を練り込み、既存の位置ゲーとは異なる新しいものを目指していたのですが、位置ゲーの一番難しいところは、ある程度のところまで開発してからでないと実際に外に出てプレイ感を試せないことなんですよね(笑)。それなりにできあがってからやっと試せるんですが、やってみたら思っていたよりつまらなかったり、ストレスが溜まったり……。移動・回復・成長などの概念をどのように組み合わせていくかの調整には本当に時間をかけています。」(柴さん)

もちろん、サービス開始から半年以上が経過した今も、『ドラゴンクエストウォーク』は進化し続けています。

「位置ゲーならではの楽しみは、現実世界との交差。もう少し具体的なふれあいがあったり、現実の何かとコラボレーションしたり。実は、ネタはもうたくさん仕込んであるので、Google Maps Platform が必要なデータを提供してくれれば実現できるはずです。『ドラゴンクエストウォーク』で特筆すべきは、地方にお住いのユーザーからの不満があまり大きくないことです。これは、Google Maps Platform の提供する地図の精度が高く、POI が充実しているからだと思っています。とある旅先で『こんなところにもモンスターが湧いているのか!』と驚かされました。これも、Google Maps Platform ならではのメリットだと思います。」(柴さん)

株式会社スクウェア・エニックス 
エンタテインメント分野において、創造的かつ革新的なコンテンツ / サービスのヒット作品を生み続けるリーディング カンパニー。自社 IP の代表作には「ドラゴンクエスト」シリーズ(累計出荷・ダウンロード販売本数 8,100 万本以上)、「ファイナルファンタジー」シリーズ(同 1 億 4,900 万本以上)、「トゥームレイダー」シリーズ(同 7,500 万本以上)、「スペースインベーダー」シリーズなど。

株式会社コロプラ 
創業社長である馬場 功淳氏が、ゲーム開発会社在職中に立ち上げた、携帯電話向け位置情報ゲーム『コロニーな生活』事業を法人化する形で 2008 年に創業。2011 年からスマートフォン ゲーム開発にも進出し、現在は『クイズ RPG 魔法使いと黒猫のウィズ』(2013 年~)、『白猫プロジェクト』(2014 年~)など、多くのヒットタイトルを擁する。従業員数はグループ全体で 1,350 名(2019 年 12 月末時点)。



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Posted by 丸山 智康 (Tomoyasu Maruyama) - Google Maps テクニカル アカウントマネージャ