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技術者たち ~エンタメ業界が求めるエンジニアの力~

システムエンジニア:煩雑な作業をITの力で効率化! 転職を経て知った、自分らしく働ける喜び

2025.02.25

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さまざまなエンタテインメントビジネスを手がけるソニーミュージックグループで、専門的な知識とスキルを持って働く技術者(エンジニア)に話を聞く連載企画。

第14回は、ソニーミュージックグループで使用する会計システムなどの開発、運用に携わる増田千晶に話を聞いた。

  • 増田千晶

    増田千晶

    Masuda Chiaki

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

グループ内で使用する会計システムを担当

──増田さんは、ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)でITシステムの開発や運用を担う部門に所属しています。現在は、具体的にどのような仕事に携わっていますか?

ソニーミュージックグループのスタッフが日々の業務で使用する社内アプリケーションは、数多くあるのですが、そのなかで私が担当しているのは会計システムのアプリケーションです。スタッフが使用した経費の精算アプリ、取引先への支払いを登録するアプリの開発や運用に携わっています。

──運用の具体的な内容を教えてください。

アプリのリリースまでのスケジュール確認から、リリース前に不具合がないかの最終確認を行なうこと、またリリース後のアプリの改修要請への対応がメインの業務ですね。

ですが、入念に確認したアプリでも、実際に動かしてみると想定外の動きをして、不具合が発生することもあります。その際には、必要に応じて開発をお願いしているITベンダー企業に改修を依頼し、スケジュール調整や品質管理などを行なっています。

また、インボイスなどの新制度ができた関係で、会計の処理方法が変更になってしまうこともありますよね。そういった場合に必要となる、システムの改修も対応することがあります。ほかにも、システムを運用する我々でなければ削除や改変ができないデータを処理する“データメンテナンス”と呼ばれる作業など、会計システムに関わるところを幅広く担当しています。

白いトップスを着た増田千晶

──増田さんは中途採用での入社ですが、前職ではどんな仕事を経験しましたか?

現在とは逆で、前職では依頼を受けてシステムを実際に開発するITベンダー企業に勤めていました。実際に手を動かしてプログラムを書く仕事ですね。

──大学でも情報系を専攻していたのでしょうか。

いえ、大学時代は心理学を学んでいました。私は、“モノから受ける印象”について学びまして、卒業論文では、音楽と映像の組み合わせによる印象の変化について研究していました。文系ではありますが、心理学の実験、統計や分析も行なっていましたね。

──心理学を専攻して、IT系を志望するというケースも面白いですね。

実は、就活時、最初に志望したのは不動産業界で……。インターンシップを受けたときに、お客さまに物件を提案する仕事がすごく楽しかったので、不動産会社を中心にエントリーをしていたんです。

ただ……よくよく考えてみると、土日にしっかり休みを取りたい私には、合わない業界だと途中で気づきまして(苦笑)。そこで唯一不動産業界以外で内定をいただいていたITベンダー企業に入社することにしました。

前職を経て気づいた、自分らしい働き方

──前職のITベンダー企業から転職を考えたきっかけを教えてください。

前職ではクライアント企業に出向き、相手先のオフィスで仕事をする“客先常駐”という働き方でした。入社したばかりのころは、転職しなくてもいろいろな企業を経験でき、幅広いシステムに携われる点にメリットを感じていましたが、働き続けるうちに“私が所属している会社はどこなんだろう”という気持ちになってしまって。

自分には帰属意識が意外と大事だったらしく、ひとつの会社で地に足をつけて働きたいと感じるようになりました。そして入社5年目ぐらいのころに転職を考えようになったんです。

──ほかに転職を決意した理由はありますか?

自分が手がけている業務を最後まで見届けたいという思いもありました。前職の仕事は、発注されたシステムを開発することですが、“なぜこのシステムが必要なんだろう”と腑に落ちないことがあり、それが少しずつモヤモヤした気持ちに変わっていったんです。

もうこれはその人の性格によると思うんですが、ともかく、効率良く、いかに完璧なシステムを構築するかに注力したい人もいれば、システムを作る理由から関わって、そのシステムが正常に動作するところまで見届けたいという人もいます。私の場合は、完全に後者のほうだったことに気づいたので転職を決意しました。

──転職先はどのようにして検討しましたか。

小さいころからピアノを習っていたこともあって、小学生のときには“音楽関係の仕事に就きたい”という思いがありました。それを登録していた転職エージェントの方に伝えたところ、「ちょうどSMEが中途採用を行なっていて、あと1週間で締切ですよ」と教えていただいて。エントリーしたところ、運良く採用試験に合格し、2023年に入社しました。

音楽が流れ、自由に働けるオフィス

──実際に入社してみて、ギャップを感じたことはありますか?

入社する前は、エンタメ業界にすごく華やかなイメージを持っていたんです。私はひとりで黙々と仕事をしたいタイプなので、そんな雰囲気の会社に馴染めるか不安もありました。でも、いざ入社してみると、全然そんなことなくて良かったです(笑)。

──部署の雰囲気はどうでしたか?

オフィスの雰囲気は、今まで見てきた会社とさほど変わらないのですが、フロアに音楽が流れていたり、周りの皆さんが話している雑談がアーティストやアニメ作品の話だったりするのは、エンタメ企業らしいなと思いますね。そして皆さん、机の上も個性的で。マンガを並べている人もいれば、大きな人形やフィギュアを飾っている人もいて、自分らしく働いているところに魅力を感じました。

笑顔で話す増田千晶

──SMEでは発注する側の立場になって、仕事面でのギャップはありましたか?

もともと、“要件定義”と言われるシステム開発の上流工程に興味があって。どのようなシステムを開発するのかをまとめる工程に携われたことが、うれしかったですね。そのうえで、ベンダーの方々が、どのように開発し、どこが難しいのかも、ある程度理解しているので、開発をお願いする方々とも話がしやすいです。

逆に、会計システムを利用する経理部門の方々に対しては、システム関連の専門用語を噛み砕いて伝える必要があります。いかにわかりやすく翻訳して伝えるかが問われるので、そこについては、現在も勉強しながらトライしているところです。

入社後、すぐに携わることになった重要プロジェクト

──関わった業務で、特に印象深かったプロジェクトを教えてください。

大変という意味で印象的なのは、取引先への支払い登録を行なうアプリの開発プロジェクトです。入社した時点で既にプロジェクトが進んでいて、私は途中から参加したのですが、ちょうどインボイス制度が始まるタイミングだったので、その機能も搭載したものをリリースしなければならなくて。経理とアプリを使用するグループ内のスタッフにも協力してもらって、なんとか期日に間に合わせることができました。

また、前職では会計システムを開発する機会がなく、経理業務のことが何もわからない状態だったので、一般的な経理の知識から学ぶ必要がありましたし、加えてソニーミュージックグループならではの仕組みやルールをシステムに組み込まなければならなくて。業務知識のキャッチアップがとても大変だったのが印象深く残っています。

──そのプロジェクトで得たもの、糧になったことはありますか?

一番大きかったのは、業務知識がついたことです。また、初めて要件定義をする側でプロジェクトに携わり、“こうやればスムーズに話が進む”“こうなるとアクシデントにつながる”と実地で勉強することができたのも大きかったです。一度経験したアクシデントを繰り返さないよう、準備を行ない、プロジェクトに取りかかることを心がけています。

融通が利く環境で、ワークライフバランスを実現

──最初にお休みの話もあがりましたが、ワークライフバランスは実現できていますか?

働き方に関しては、とても融通が利きますね。決められた業務形態のなかであれば、出社や退社の時間も自分でコントロールできますし、私がいる部署では在宅勤務も利用可能です。

もちろんプロジェクトが佳境になると忙しくなるので、ときには遅くまで働くときもありますし、場合によっては休日出勤が必要なときはあります。でも、その分、代休を取得したり、それ以外のときはなるべく早めに帰るなどしてバランスを取っています。

そして、それらを自分でコントロールできるのが、私がこの会社で働きやすいと感じるポイントだと思います。

真剣な表情を見せる増田千晶

納得した仕事を納得のいく形で進めるために

──増田さんが仕事をするうえで大切にしている考え、信条はありますか?

できる限り、その仕事に対する理解度を高め、できる限り納得のいく形で進めたいと思っています。例えば経理スタッフの要望でアプリを改修するときに、どこに課題があり、どこを改修する必要があるのか腑に落ちないまま進めてしまうと大事なところを見落としてしまうなど、事故につながりかねません。それに、こちらが理解できていない機能の開発は、ベンダー企業の方々にお願いするのも心苦しいですよね。

ですから、なぜそのプロジェクトに取り組まなければならないのか、誰が困っているのかを明確にし、「そういう困りごとがあるなら解決しなきゃ」と思えるように、背景をしっかり取材したうえで仕事に取り組むようにしています。

──今の部署では自分発信でプロジェクトを立ち上げることもあるのでしょうか。

ありますね。実際に私が今取り組んでいるのは、システム内部の効率化です。会計システムはすべて自動化されているわけではなく、手作業で行なわなければいけないものも多く残っていて。

例えば、経理から“このデータを週1回抽出してほしい”という依頼があったとします。もし、その抽出したいデータのなかに、機械的な判断が難しいものが含まれていた場合には対象のデータをひとつずつ”これは必要、これは不要”と確認しなければなりません。こうした作業の効率を上げるため、自動化できないか自発的にシステムを開発しているところです。

これ以外にも、ちょっとしたものではありますが、既にいくつか完成した機能もあります。そんなささやかなシステムでも、作業時間の削減につながれば、より本腰を入れるべき大きなプロジェクトに時間を使えますし、それぞれの問い合わせにも素早く対応できます。何より自分自身がより働きやすくなるんですよね。自分の力で、さらに働きやすい環境を作っていきたいと思います。

煩雑な作業を省力化し、グループ全体の効率化に貢献したい

──どんな人がエンタメ業界のエンジニア職に向いていると思いますか?

やっぱりエンタテインメントが好きな人は、会社にいるだけで気分が上がると思います。仕事に関しては日々いろいろな問題や課題が発生するので、専門知識がある人、専門知識はないけれど向上心のある人が仲間になってくれたらうれしいです。

そして、ソニーミュージックグループは音楽からアニメ、キャラクター、エンタテインメントソリューションまで幅広いエンタテインメント領域でビジネスを展開しているので、ITエンジニアとして、いろいろな世界を見て、いろいろなことにチャレンジしたい人には、ぴったりの環境だと思います。

やわらかい表情を見せる増田千晶

──増田さんが今後挑戦したいこと、エンジニアとしての野望はありますか?

向いている人の答えを転じたことになりますが、さまざまな開発プロジェクトに対応できるエンジニアになりたいです。アプリの運用では、いろいろな問題が発生しますが、それに対して“こうすればいいのでは”というあたりをつけられるくらいのスキルを身につけたいです。そのために、今は場数を重ねて“もっとこの分野の勉強が必要だな”と実務を通して学んでいるところです。

個人的には、仕事はきっちりしつつも早く帰りたいタイプです(笑)。先ほどお話したシステム内部の自動化をさらに進めることで、私だけでなくほかのスタッフも自分の時間を作れるようにしたいです。

例えば、領収書をスキャンしたら自動的に経費精算システムに登録される仕組みができれば、全スタッフの作業効率化にもつながりますよね。クリエイティブに関わらない作業をITの力で省力化することで、グループ全体に貢献できたらと思います。

文・取材:野本由起
撮影:冨田 望

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