六本木に近い天然温泉浴場「麻布十番温泉」(東京都港区)が、老朽化などを理由に3月いっぱいで廃業、約60年の歴史に幕を下ろす。長年のファンから惜しむ声が上がっている。 戦後間もなく都会に近接しながら下町風情が味わえる麻布十番で開業。空襲で被害を受けた銭湯の土地と煙突を現経営者の平岡久枝さんの父親が買い取って始めたという。六本木ヒルズを見上げる好立地にあり、外国人にも親しまれていた。 地元の常連客、松本逸子さん(77)は「数少ない楽しみだったのに」と残念がる。だが、客の減少に加え、安全設備の見直しなどで経費が増える見込みになったことが、廃業を決断する引き金となった。平岡さんは「後継ぎもなく、新しい施設をつくる余力はありません」と無念そうだ。