伊東(以下――) 今回は声とメディア、そしてテクノロジーの問題を、音楽家の観点から、枠組みを超えて考えてみたいと思います。僕が大学時代、最初にセミナーをやっていただいたのは1986年と思うんですが・・・。 湯浅 譲二 ええ。 ―― 大阪万博から見れば16年後ですね。この当時、武満徹さんのように、すっかりテクノロジーから離れてしまった人も多かったわけですが・・・当時僕は彼の雑誌の創刊スタッフをしていたので、実際そう思いました・・・実は音楽情報のデジタル化、LP(レコード)がCDになったり、工業規格として「MIDI(電子楽器デジタルインタフェース)」が作られたり、また社会全般にパソコンが普及したりとか、今考えるとあの頃から、本当に時代が変わり始めてもいたわけで・・・。 湯浅 そうですね。 ―― あの時伺った「A Study in White」という作品、あれはスタディー、つまり習作と言っていい