分裂病の患者さんの言葉や書いたものには、なんともいえない独特の魅力がある。いわゆる「電波系」ってやつですか。 なんでまた彼らの書くものが我々にとって奇妙かといえば、それは「われわれの言語が健康な人間の世界の日常的使用のためにつくられ、狂気の世界を記述するのに適していないから」(クラウス・コンラート)だろう。自分の体験を素直に表現すれば、それは奇妙になるしかないのである。 そんな彼らの表現の中でも、もっとも奇異で魅力的(というと語弊があるが)なのが、「言語新作」(neologism)という現象。「誰にも通用しない、自分だけの新しい言葉を作ってしまう」という症状である。 関忠盛「言語新作――言語学的・形象論的試論――」(臨床精神医学1977年9月)という総説には、患者本人が書いたいくつもの実例が載っているので、そこからいくつか紹介してみよう。 まず、ある精神分裂病の患者は、面接時には「かんべん