古典的名著だが,なぜこのタイミングで取り上げるかというと,とうとう本書の内容が高校世界史に降りてきたという喜ばしい事態が訪れたゆえである。そこで,本書の内容を簡潔に取りまとめておく。 これまでのナポレオン3世の業績というと,以下のように説明されていた。 「ナポレオン3世は叔父の人気によりかかって政権を奪取した。前期は権威主義的に政権を運営し,労働者と資本家の対立を煽り,その勢力均衡を図って政権を維持した(いわゆるボナパルティズム)。しかし,1860年以降となると民主化の要求に耐えられなくなり,立憲帝政へ移行していった。外征を繰り返したのも,国民の人気を保とうとしたがゆえであった。ゆえに戦敗がかさむと政権が倒れた。」 このような説を唱えていたのはカール・マルクスとヴィクトル・ユゴーの二人であり,20世紀も末になって彼らの権威が崩れ,ようやく実証的な研究が進んできた。これらの説明はほとんどデタ