数年前、「キモくて金のないおっさん」というキーワードがバズった。弱者救済活動をされてた左翼の方が、どうしても現場で救いようがない、誰も救いたいと思わないような、清潔さもなければ好感も持ちえないような高齢男性たちを指してそう呼んだのである。活動家の人々に彼らを救いたいという気持ちがわかないのは「おまえたちがキモいと感じているからだろう」という、ある種のボランティア活動における欺瞞を暴くワードであった。 この話を聞いたとき、思い出したのはマザー・テレサだった。マザー・テレサは、誰にも目を留められることのない道端で倒れそして死んでいく人々を救おうとした。彼女の活動は、そうした人々に「幸福な死」を与えることであった。死ぬ間際、自分は孤独ではなかった、誰にも愛されたこともない人生ではなかった。そう思えて最期を迎える、その手伝いをすることがマザー・テレサの活動だった。 ある時、マザー・テレサはそんな男