「多摩丘陵は自分にとって原風景」と話す神保さん。手前にある懐中電灯は蛾の調査用で少年時代から20年以上の愛用品(つくば市の国立科学博物館動物研究部で) 「無限のような多様性に引かれます」。研究対象の蛾(が)について、昆虫学者の神保宇嗣(うつぎ)さん(37)が言った。手元の標本箱には針で留められた蛾がぎっしりと並ぶ。 確認されているだけで世界で26万種、日本だけでも6000種。さらに未発見の蛾はそれぞれ14万種、1000種はいると推定される。はねを広げると25センチ近くになるヨナグニサンから1センチ足らずのハマキガの仲間、幾何学模様や宝石のような金属光沢のはねを持った種もいる。 「自分の寿命までにどれだけ解明を進められるか。ふと、気が遠くなることがありますよ」。神保さんは標本を整理する手を動かしながら語った。標本箱のガラスのふたには苦笑する顔が映った。 日野市で生まれ育ち、都立大(現首都大学