ソクラテスは死をどう捉えていたかソクラテスが生きた時代は、死、戦争、そして病によって人の生きざまが支配された、計り知れないほど荒っぽい時代。 ですが、当時の過酷な基準からしても、彼の死に対する親和性は強いものでした。ソクラテスは軍人であり、戦争の英雄のような存在でもありました。 紀元前432年のポティデアの包囲戦では、後にアテナイの指導者となるアルキビアデスの救出に貢献しました。それだけに、21世紀に生きるほとんどの人々よりも、死の必然性をはるかに身近に感じていたのです。 古代ギリシャ社会において、死は、冥界へと向かう霊的な変遷と捉えられていました。肉体から離れる魂は、最期に吐き出される息という形で具現化されると考えられていたのです。 一方で、ソクラテスによる死の解釈は、それほど超自然的なものではありませんでした。ソクラテスは死について、懐疑的とは言わないまでも、きわめて現実的な言葉で語っ