紗綾(さや)とは、表面がなめらかで光沢のある絹織物の一種を指します。多くは白生地で後から加工されて用いられてきました。そして、紗綾に卍(まんじ)を斜めにかさねた「万字繋ぎ」(紗綾形)が頻繁に織り出されたことから、織物の呼び名が紗綾形という文様の名称になったと言われています。現在も地紋としてきものへ頻繁に使われていますし、どこかで一度は目にしている文様でしょう。 紗綾形という名称は江戸において使われていたようで、江戸時代の流行・風俗をまとめた『守貞謾稿』(天保8年[1837]起稿)では「万字繋(まんじつなぎ)」として紹介されていて「万字つなぎ、京坂の俗は綸子形と云ひ、江戸には紗綾形と云ふ。綸子および紗綾ともに専らこの紋を織る。」とあります。江戸と京坂で呼び方は異なっていたようですが、いずれも織物に頻繁に使われた文様がそのまま呼称になっていたようです。 さて、織物の地紋として定着している紗綾形