これは不条理漫才と言ってしまってよいと思う。 不条理とは何か。カフカの小説「変身」を例に挙げよう。主人公はある朝突然虫に変わる。理由は分からない。最後まで分からない。理屈にも常識にも合わない。だからこそ主人公は苦悩し、現実に抗おうともがく。これが不条理である。 原理はこの漫才でも同じだ。徳井は冷蔵庫のことで興奮しだす。理由は分からない。最後まで分からない。だからこそ福田は困惑し、徳井という不条理な現実になんとか対処しようと奮闘する。このネタに限らず、漫才の徳井のキャラクターは大雑把に「変人」とか「変態」と呼ばれるが、もう少し狭めて言うなら、徳井は「不条理な変人」なのである。ポイントとなるのは「理由が分からない」ことだ。もし徳井が自らの興奮について「冷蔵庫のこういうところが好きだから」などと合理的に説明してしまうと、不条理性が失われ、福田と徳井のディスコミュニケーションの面白みは強度を失って