ヴァイキングという言葉から連想される一般的なイメージは、欧州沿岸を容赦なく略奪してまわる北方の荒ぶる海賊たちだろう。角の生えた冑(かぶと)をかぶりロングシップ上で戦斧を振り回す赤ら顔の巨漢たち、おそらくは北方の社会からもあぶれた、ならず者の集まりか・・・というのは通俗的なイメージで、実際には彼らはその大多数が普段は広大な農園を持つ領主層とその従士たちであり、略奪だけではなく交易にも積極的で、夏の一時期だけ略奪と交易を行う遠征に出て、それ以外は農地を耕し、土地の支配者として振る舞う人々であった。 ヴァイキングはスカンディナヴィアの貴族・豪族による組織的な活動であって、無法者たちの好き勝手な暴虐ではない。本書は、そんなヴァイキングの略奪と交易、その行為を支えるヴァイキング社会の慣習と名誉、贈与の習慣を紹介した一冊である。 ヴァイキングとは何か、九世紀初頭から十一世紀半ばにかけての二世紀半、バル