リベラルとは何か 17世紀の自由主義から現代日本まで (中公新書) 作者:田中拓道 中央公論新社 Amazon ●ワークフェア競争国家 「ワシントン・コンセンサス」は、「底辺への競争」論とともに、新自由主義が世界を席巻しつつあることの象徴として語られてきた。しかし、これらは1990年代以降の先進諸国の実態とは必ずしも対応していない。すでに第1節で見たとおり、先進国の多くでは、税収も公的社会支出も減っておらず、「底辺への競争」は見られないからである。 さらに、「ワシントン・コンセンサス」もそのままあてはまるかどうか疑問である。たしかに、1980年代のアメリカやイギリスでは新自由主義的改革が試みられた。しかし、どちらの国でも「小さな政府」は実現できなかった。国内で格差が広がると、新自由主義への反発が強まり、1990年代に入ると政権交代が起こった。経済界、金融財政エリートの意向だけでは、新自由主