音楽DVDが意外に伸びてきている
── 具体的に何が伸びましたか?
津田 例えば、JASRACの資料を見ると、「ビデオグラム」、つまり音楽DVDが成長していることが分かります。これはビジュアルも含めて、音楽を楽しみたいというニーズが増えてきていることを示しているでしょう。
もともと宣伝目的で作られているプロモーションビデオ(PV)は市場がなかったんですが、最近では意外とPVを好む人も増えてきました。映画なども含めて、DVD全体で見ると実は市場が飽和してきていて、最近ではBlu-rayにスイッチしつつありますが、その中でも音楽DVDは地味に健闘しているんです。
初回限定盤はDVD付きというのも当たり前になりましたしね。昨年は、EXILEのDVD付きCDが圧倒的に売れたりしています。それだけじゃなく、着うたフルの伸びも順調だったということが今回の使用料増加につながったのでしょう。
JASRACの取り立ては厳しい?
── 使用料の徴収という話からめて、ネットには「JASRACは訴訟も辞さずに厳しく使用料を取り立てる」と見る風潮があります。やっぱりそうなんですかね?
津田 これは本当にケースバイケースで、一概にJARACが厳しいとは言えるかどうかは微妙です。
JASRACも料金を払わない業者や個人に対していきなり訴訟を起こすことはないんです。訴訟まで大体行くのは「払う払う」と言っておいて払わなかったり、バッくれてしまうようなケース。そういうことが何度も繰り返されると、大体現場の徴収員とトラブルになるみたいですね。数あるカラオケ店やライブハウスの中には、故意に著作権使用料を払わないオーナーもいる。
ただ、一方でライブハウスの現場の人に話を聞くと、非常に態度が横柄な徴収員がいるというのも確かなんですよね。一部の徴収員の中には、お役所的仕事の中で利用者に対する態度が悪くなってしまっている人も確実にいる。
ただ、問題は報道などで表面化するJASRACの徴収に関するトラブルが、利用者側の利用料を払わない態度に問題があるのか、それとも一部の徴収員の横柄な態度が原因でもつれているの分かりにくいってことなんですよね。
JASRACは500人近くいる全国的な組織です。体的な統制も当然取りづらくなっている部分があるでしょう。でもこれだけネットでいろいろな情報が開示されてしまう時代ですから、JASRACには今一度社会的な責任を認識してもらって、徴収員の教育や著作権制度の啓蒙に力を入れてもらいたいと思いますね。
筆者紹介──津田大介
インターネットやビジネス誌を中心に、幅広いジャンルの記事を執筆するジャーナリスト。音楽配信、ファイル交換ソフト、 CCCDなどのデジタル著作権問題などに造詣が深い。「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」や「インターネット先進ユーザーの会」(MiAU)といった団体の発起人としても知られる。近著に、小寺信良氏との共著 で「CONTENT'S FUTURE」。自身のウェブサイトは「音楽配信メモ」。
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