はてなキーワード: 有意水準とは
相関係数が低ければ有意にはなりにくいって自分で書いてんじゃん 相関係数がp値に関係するって自分で書いておきながらなんで最後で逆のことを言い出すんだ
いや、たとえば有意水準5%で検定をする、と決めて始めたときに、p値が0.06となるか0.04となるかは大違いだけど、0.04となるか0.01となるかには違いはない。仮説検定というのはそういう通るか通らないかのゼロイチのもので、0.04よりは0.01の方が精度が高いロバストな結果と評価するものじゃないよ。相関係数が低いとp値(2変数でのt検定だとほぼ同義に近い)は高くなり棄却に失敗しやすいが、それが意味を持つのはあくまで事前に設定した有意水準のところより上か下かだけ。だから先程のような書き方(ちゃんと、「有意という結果が出た下では」って書いてあるよね)になったわけだけど。で今回の、論理的思考力の高さと斎藤氏は陥れられたとみなすことに有意な相関が見られたというのに対して、有意と言っても相関係数が低い(p値がギリギリなくらい大きい)から信頼性の無い結果だとか、これがもっと相関係数が高い・p値が小さい結果だったらもっと信頼性が高かったみたいな評価をしてはならないんだよ。p値はそんな風に使えるものではないからね。
あと、どうしてベイズって言うかだって?だってまさにやりたかった、ゼロイチだけではない証拠の強さを表せるものとしてベイズファクターがあるから。ベイズファクターならそういう使い方が出来るけど、p値は無理。相関係数が高ければ高いほど、p値が低ければ低いほど強い証拠が得られたなんて使い方はできないものなの。
もしかしてp値を「帰無仮説が正しい確率」のようなものとして理解している?もしそう誤解していたら、確かに低ければ低いほど帰無仮説が間違っている(つまりその余事象の対立仮説が正しい)確率が高い、信頼性が高いって評価できるように思うかも知れないけど……
それとも、p値が小さければ有意水準5%だけでなく有意水準1%や0.5%でも有意に帰無仮説と異なると言えるぜ、そうなりゃ非常に高い統計学的有意性が得られたぜ、みたいな話?でも、仮説検定では有意水準は事前に決めなければならないものだから、後からより低いもので有意となるp値が得られたとしても意味はない。
もちろん実際には、とても低いp値が得られるような時にはそうでない場合よりもベイズファクターのような証拠の強さを表せる方法での分析を採用していたら強い結果が得られた可能性は高いだろう。逆にギリギリのp値だったら弱い結果となる可能性は高い。でもそれは、仮説検定を行うという研究デザインでやっているものに対して有効な批判にはならないんだよ。まさに筋違いな批判であって。
事前に設定した有意水準のもと、帰無仮説を棄却するだけの差があるならたとえそれがギリギリ棄却となるような低い相関係数であっても仮説検定としては何も問題はない。仮説検定というのは棄却するかどうかという定性的なものであって、小さなp値で棄却できた方が頑健な結果というような解釈が出来る定量的なものではない。仮説検定で有意という結果が得られた後にやって意味がある定量的な分析は、効果量がどれくらいかを見ること。具体的には各メディア情報への信頼指数が1σ変化することに対応する斎藤氏への評価の変化幅はどれくらいかといった分析。これは相関係数が低くても大きなものになり得るし、その逆もあり得る。相関係数は線形度合いを見ているだけだから、各メディア情報への信頼指数が1σ変化することに対応する斎藤氏への評価の変化幅が全て2倍になったり半分になってもほぼ変わらない。つまり、相関係数では効果量は測れない。当然、相関係数が小さく見えるといったことも分析上の問題にはならない。繰り返しになるが、仮説検定は帰無仮説を棄却するかどうかが全てであって、より大きな相関係数で棄却出来ればより頑健な結果が得られたといったような評価を出来るものではない。
(t)検定というのはゼロイチで結果が決まるものだから、有意という結果が出た下では相関係数が大きい小さいは関係ないというか、そのことで検定の結果や評価に問題があるとは言えないよ。
もちろん相関係数が低ければt検定が有意にはなりにくいわけだが、有意になった上では相関係数が大きいものの方が説得力が高いとはならない。
いや高いだろ
相関係数が低ければ有意にはなりにくいって自分で書いてんじゃん 相関係数がp値に関係するって自分で書いておきながらなんで最後で逆のことを言い出すんだ
そういうことをやりたいならベイズでないとね。
なんでこういう半端に統計かじった感じの人ってベイズを妄信しがちなんだろうね
ま、もっとも執筆者当人が「非常に弱くではあるが認められた」といった強弱含む評価をしていて、検定とはどういうものかを誤解している可能性はあるけど、これはnoteでの殴り書きでなく論文にするならその過程で指摘を受けて直ると思う。
検定の話と相関の強弱の話は両立しうるだろ なんでこんなバカみたいなことすらわからずにウエメセで評論を書けるのかりかいできない
そもそもこの程度のことさえ指摘できない連中が査読してるパターンなんて無数にあるだろ ウエメセで馬鹿なこと書いてドヤってる奴もすぐわいてくるくらいだし
あと、相関係数が低いものを有意と言うことはそもそもp-hackingとは言わないよ。これがたとえば裏でSRSやCRT以外にも様々な数値とで検定を行っていて、その中で有意となったがSRSやCRTだけだったときに、有意とならなかったものを公表せずSRSやCRTの結果だけを出していたならp-hackingの一種だけど。
でも今時の論文は最初に(検定などをする前に)SRSやCRTを使うという設定や有意水準の設定など決め事をした上でやるのが最低限の流儀なんで、それくらいは守ってるんじゃないかな。
ここは同意
有意水準は低ければ低いほど良い分析ではない。ある特定の判別器(データとモデル)を使っている以上、Type ⅠエラーとType Ⅱエラーは完全なトレードオフだから、どちらかを極端に低くするということはもう片方のエラーを大きく許容するということになって分析が無意味化するだけ。
「本当は差がないにも関わらず、差があると主張してしまう誤り」の確率は仮説検定をする時に決めた有意水準そのものであって、それは相関係数の大きさ≒t値の大きさ≒p値の低さで変わってくるものではない。今回で言えば「論理的思考力が高くても本当は陰謀論的な思考をしがちではないにも関わらず、そうしがちであると主張してしまう誤り」の確率は相関係数が小さくても高まらない。相関係数が小さく見える≒p値が閾値は下回るものの高めに見える、ということからは論理的思考力が高いほど陰謀論的な思考をしがちという今回のモデルスペシフィケーションに対する誤りを指摘することはできない。
相関係数の目安って、、、それを判定しているのが有意水準だろ。なんで有意水準での判定をした上で、さらに追加で目安なんて基準でもう一度判定する必要があるんだ。しかも分布が全然違う、サンプルサイズもバラツキも違った別データでどれくらいかなんて何の基準にもならん。
(t)検定というのはゼロイチで結果が決まるものだから、有意という結果が出た下では相関係数が大きい小さいは関係ないというか、そのことで検定の結果や評価に問題があるとは言えないよ。もちろん相関係数が低ければt検定が有意にはなりにくいわけだが、有意になった上では相関係数が大きいものの方が説得力が高いとはならない。そういうことをやりたいならベイズでないとね。ま、もっとも執筆者当人が「非常に弱くではあるが認められた」といった強弱含む評価をしていて、検定とはどういうものかを誤解している可能性はあるけど、これはnoteでの殴り書きでなく論文にするならその過程で指摘を受けて直ると思う。
あと、相関係数が低いものを有意と言うことはそもそもp-hackingとは言わないよ。これがたとえば裏でSRSやCRT以外にも様々な数値とで検定を行っていて、その中で有意となったのがSRSやCRTだけだったときに、有意とならなかったものを公表せずSRSやCRTの結果だけを出していたならp-hackingの一種だけど。でも今時の論文は最初に(検定などをする前に)SRSやCRTを使うという設定や有意水準の設定など決め事をした上でやるのが最低限の流儀なんで、それくらいは守ってるんじゃないかな。
前半("トリチウムの話も含めてあらゆる科学理論は証明されておらず、すべての理論は仮説だと言えるよ。"まで)は正しい。
反証という日本語は正しくないので帰無仮説と呼ぶ。帰無仮説になる「安全であるない」は一般に状況証拠の積み上げで否定する。
ある集団が健康被害を訴えた。彼らの共通点は処理水を放出した海域で泳いでいたあるいは海域で捕獲された魚を食していた。彼らは内部被ばくをしていた。彼らの体内の三重水素の比率が、そうでない人の体内の三重水素の比率に比べて有意に多い。
これは直接的に海洋放出が健康被害の原因であることを示すものではない、いわゆる状況証拠であるがこれでよい。
「安全である」は「安全でない」を統計的に否定したものなので、帰無仮説成立の可能性を有意水準の範囲で否定できなくなった時点で「安全である」とは言えなくなる。
そうやって今までの四大公害や食中毒や得体のしれないものの原因を突き止めてきた。最近では沖縄米軍基地や横田基地のPFASが記憶に新しい。
海域モニタリングも同じ話。現在多くの国が原発処理水を放出し続けている中で
今後のモニタリングで異常値の原因なんか特定できるはずもない。
仮に今後異常値が出たとして、「処理水放出が原因とは断定できない」というしかないんじゃないかな。
(冒頭で正しいと書いた)前半部分では一般的な方法論を述べているにも関わらず、ここにきてケース固有の現実の技術水準の話にすりかえている。
特に海域モニタリングについては、主観の域を全く出ていない。異常値が出たら放出口近辺を調べることによって放出が原因か否かを科学的(確率的・統計的)に判断することができる。
危険の判定を下すことは十分に可能(否定の根拠が増田の主観でしかない)なのでこれ以降は語る必要がないのだが、以下については論理に飛躍があり過ぎるので一つずつ潰しておく。
処理水放出が危険だったという判定を下す、つまり反証をできないのであれば、反証に繋がりそうな事例を否定するに終止するしない。
反証可能性は否定できていないので事例を否定するに終始する必要はないし、むしろ被害者救済を担う国は早く見つけたいだろう。
「処理水放出は安全である」という主張は、そもそも確率的/統計的なもので絶対ではない。科学とはそういうもの。
従って、健康被害が発生した場合は政府として何が原因なのかは当然調査することになる。システムのフェールなのかそもそも構造的にトリチウムで健康被害が生じないというのが誤りだったのか。ただし、ことトリチウムに限って言えば実績が十分にあり過ぎるので、否定されることは考えにくいが(もちろん絶対ではない)。
①処理水放出は科学理論だよ。主張する当の日本政府がそう言ってるよ。
①言いたいことはわかるが正しい日本語を使いましょう。処理水放出=科学理論って何ですか?
③状況証拠の積み上げだよ。工学に数学のような厳密な証明は必要ないし一般にできるとは限らないから詳細なメカニズムの解明は後で十分だよ。その状況証拠を統計的に否定する責任は東電と政府にあるので第三者は詳細メカニズムの解明までする必要はないよ。
じゃあ俺は有意水準を0.9にするぜ!
それは何かの原理から定まるものではない。「有意水準を0.05と設定したならばこういう結論が言える」までしか統計学に言えることはない。
このことは別にネイマンピアソン流の統計学に限らずデータだけから何かを言う統計的方法ではすべて同じで、何らかの恣意的な仮定をおいた時に結論はこうです、という論理構造にしかなり得ない。
そういうところをちゃんと理解したいなら統計学のファウンデーションを勉強するとよいだろう。これ一冊読めばOKみたいなのは思いつかないけど、竹村の現代数理統計学とかなら一通り書いてあるんじゃなかろうか。あんま読んでないからわからんけど。
ググったら統計学極右の書いた本が落ちてたわ。https://www.gwern.net/docs/statistics/decision/1972-savage-foundationsofstatistics.pdf パッと見かなり面白そうだなと思うけど、読むのは全くオススメしない。
どんな話でも(特に断定的な話し方をされると)
統計的根拠は?どういう理屈?どういう過程(実験)でその事実が導かれた?前提となってる条件は?その区別に意味はあるのか、逆に区別する必要はないのか?
みたいな理詰め的なツッコミを考えながら話を聞くようになってしまった。
仏法とか偉い人の話とかを聞いていると話の飛躍がありすぎてまもとに聞けない、というかむしろイライラしてくる。
特に偉そうに語る人ってサンプルの少ない話を断定的に話すからイライラして仕方ない、統計的に有意水準60%もないんじゃねって話だ。
いろいろと悪い評判があるAO義塾だが、
やっていることは必ずしも悪いことではないと思う。
前年度の合格実績の不当な操作に引き続き、今年も高くもない合格率を
「高い」と称して生徒を集めている疑いがあるのだ。
2016年2月、初回の東京大学推薦入試の結果を受けて、AO義塾は、「東大推薦入試でAO義塾が合格者NO.1へ!」と発表した。
全合格者77名中、14名の合格者をAO義塾から出したのだという。
しかし、AO義塾公表の数字は無料講座を受講した生徒を含めたものであることがその後すぐに明らかになった。
さらにその内実は、すでに一次選考合格した者に対して提供した講座分も加えての数字だったのだ。
これは予備校業界のガイドラインにも反するだけでなく、スカイプで無料講座を受講した者も含めた、「どんぶり勘定」による数字の操作ということになる。
このことが世の人の知るところになり、AO義塾の評判も見事に炎上したことも記憶に新しい。
それだけではない。
AO義塾の無料講座を受講した生徒と、そうでない生徒の合格率に差がないことも判明した。
<参考記事>
「東大推薦入試が塾に攻略された」は誤解だ 「14名合格」のAO義塾に疑問をぶつけてみた
http://toyokeizai.net/articles/-/110872
東大推薦入試の「合格実績」は誰の手柄なのか AO義塾・報道の矛盾の真相があきらかに
http://toyokeizai.net/articles/-/110931
以下のAO義塾のページを見てほしい。
http://aogijuku.com/tokyo/todaisuisen2017.html
カウント対象が、「AO義塾で書類対策を行った塾生」に変わっている。
それにともない、合格者数も 6名 に変更されていた。
たったの6名。
特に入塾試験や選抜を行わず、全希望者を東大対策クラスとして受け入れてのこの数字です。受験者全体の書類通過率は約86.1%(173名中149名)・全体の合格率は約44.5%(173名中77名)でしたから、その差は歴然としています。
だが、統計上とはいえ「無駄な講座」しか提供できないAO義塾が高い合格率を出すというのは一見して不自然だろう。
その数字を検証したところ、やはり、統計的有意性を持たない(有意水準 p < 0.1)ことがわかった。
つまり、「AO義塾のおかげ」と言えるような、合格率の意味のある差は統計上存在しないということだ。
サンプル数が少なすぎるだけかもしれないが、責任ある会社ならそれを考慮して宣伝すべきである。
少なくとも、数字に誠実に向き合えば、「歴然」などとは言えないはず。
これに対して、あくまで数字を単純に比較しただけと擁護する意見もあるだろう。
しかし、研究者なら捏造と言われかねないようなデータの扱いであることは間違いない。
AO義塾は、統計の基本も使えないで、研究者への道も示されている東京大学推薦入試を突破できる指導ができるのだろうか。
疑問と言わざるをえない。
<参考>
この記事の元増田にあたる「HPVワクチンの副反応に関する3/16の発表に関して」を投稿してから早3ヶ月が経過した(Oh...)。
この3ヶ月で、池田氏の症例報告(*1)はパブリッシュされ、村中璃子氏による池田氏の発表を対象とした一連の記事は完結を迎えた。
この追記記事では、池田氏の症例報告、一部ブコメへの返答、村中氏の記事に対する批評を主としておこなう。
なお、字数オーバーしてしまったため、前後編に分けて投稿する。
3/16時点ではIn pressであった氏らの症例報告について批判をおこなう。
Abe et al. (2016) Monoarthropathy or Polyarthritis in Adolescent Japanese Girls Who Received Immunization with the Human Papillomavirus Vaccine. Case Reports in Clinical Medicine, 5, 109-114.
http://www.scirp.org/journal/PaperInformation.aspx?PaperID=64855
この症例報告はHPVワクチン接種後に単関節炎または多関節炎を発症した2人の日本人少女についての報告である。
細かい内容は各自に読んでいただくとして、この報告の問題点を端的に表すのは以下の一文である。
4. Conclusion
日本語に訳せば「結論:HPVワクチンは、稀に関節病変を引き起こすかもしれない」といった感じか。
元増田でも指摘したが、疫学的に調査しなければワクチンと疾患の因果関係は明らかにできない。
それにもかかわらず、たった2人の症例報告でこのような結論に達するというのは、どう考えても言い過ぎである。
文章自体は弱い表現(may occasionally)を使っているが、疫学的にはHPVワクチンと各疾患の関連は概ね否定されているため、結果として強い表現になっており、極めて不適切な結論であると言わざるを得ない。
ROYGB http://www.kobe-np.co.jp/news/iryou/201510/0008513286.shtml のような重い症状の人が未接種者にもいるのかどうかが知りたいところ。
まず前提として、HPVワクチンの接種によって各疾患の発症リスクは上昇しないというエビデンスが存在する。
これは元増田で示しており、コメントを下さった方もそれは承知していると思われる。
したがって、上記のブクマコメントは「HPVワクチンの接種によって、自然に罹患した疾患が重症化するリスクが上昇するのではないか?」という意見だと受け取らせていただいた。
名古屋市の調査結果(*2)を見ていただくとわかるが、「物覚えが悪くなった」「普通に歩けなくなった」「杖や⾞いすが必要になった」等の症状の頻度は接種者と非接種者の間で差がなかった。
また、複合性局所疼痛症候群(CRPS)などの疾患においては記憶障害や運動障害が症状に含まれることが知られており (*3)、HPVワクチン接種者に特有の症状というのは今のところ見つかっていない。
よって、HPVワクチン接種による疾患の重症化リスクの上昇は恐らくないものと結論付けても良いだろう。
重症化リスクに着目した論文が見当たらなかったため少々歯切れは悪いが、これで疑問への回答となっただろうか?
もし納得いただけたなら幸いである。
子宮頸がんワクチンと遺伝子 池田班のミスリード ― 利用される日本の科学報道(前篇)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6418
これらの記事は主に、HPVワクチン副反応とHLA型が関連しているという主張および池田氏の発言について批判している。
指摘の内容は基本的に私の書いたものとほぼ同じであり、これについては特に付け加えることもない。
ただ、私がスルーしてしまった点として、鹿児島大のデータで示されている有意差について実際に計算すると有意にならないということが示されている。
試してみると、確かにFisher’s Exactでもカイ二乗でもP<0.001にはならず、なぜ資料ではこんな値が出されていたのか、大いに疑問である。
実は有意水準ではなくP値の方を1/10してしまったなんてことは......まあ流石に無いだろう。
(後編へ続く)
*1 Abe, R. , Kinoshita, T. , Hineno, A. and Ikeda, S. (2016) Monoarthropathy or Polyarthritis in Adolescent Japanese Girls Who Received Immunization with the Human Papillomavirus Vaccine. Case Reports in Clinical Medicine, 5, 109-114.
http://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/cmsfiles/contents/0000073/73419/sokuhou.pdf
*3 Schwartzman, R. (2012) Systemic Complications of Complex Regional Pain Syndrome. Neuroscience & Medicine, 3, 225-242.
HPVワクチンで脳障害が!というニュースが話題を集めている。
マスコミ各社で大体の論調は同じだが、最もブクマ数が多そうなのは以下の記事である。
子宮頸がんワクチン副反応「脳に障害」 国研究班発表 (TBS系JNN)
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20160317-00000008-jnn-soci
まず言っておくとすれば、マスコミの記事は強くミスリードを誘うものであるという点だ。
詳しくは後述するが、元の資料では「脳に障害」が起こったとは書かれておらず、またそれがワクチンの副反応であるという根拠も書かれていない。
ヒトパピローマウイルス感染症の予防接種後に生じた症状に関する厚生労働科学研究事業成果発表会
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000116636.html
子宮頸がんワクチン接種後の神経障害に関する治療法の確立と情報提供についての研究 池田修一氏 発表資料(PDF:23,903KB)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000116634.pdf
以下ではこの資料を元に今回の発表の内容について解説していく。
なお、特に注釈がない場合、HPVワクチンという単語はサーバリックスとガーダシルの双方を指すものとして扱う。
本資料は3部分に分割できる。
信州大学を受診した123名の患者の中から、HPVワクチンの副反応が否定できない98例についてその症状を詳しく見て報告した、というものである。
主な病態としては、末梢性交感神経障害(起立性調節障害{OH、POTS}、複合性局所疼痛症候群{CRPS})、
高次脳機能障害(学習障害、過睡眠、奇異な麻痺)、自己免疫疾患の併発(RA、SLE他)が挙げられている。
なお、自己免疫疾患の併発については根拠が弱く、資料中でも疑問符付きで述べられていたことを付け加えておく。
また、HPVワクチンの副反応が否定された(他疾患と判断された)25例についても、
一部の疾患(てんかん、SLE、若年性関節リウマチ)はHPVワクチンに関連しているかもしれないと仄めかしている。
個々の患者のデータ自体は、それが副反応で有るにせよ無いにせよ有用なものであり、患者の救済・治療の観点からも重要である。
しかしながら問題点もあり、その最たるものが「副反応が否定できない」が途中で根拠なく「副反応」にすり替わっていることであろう。
この研究はControl(非接種群)と比較をおこなっておらず、各症状が接種者に特有なのか、接種者で発症頻度が高いのか等は分からないのにも関わらずだ。
さらに、他疾患との関連については、論文(*1)を引用してHPVワクチンでは自己免疫疾患や横断性脊髄炎の発生リスクがあると述べているが、
その論文では「他のワクチンと比べて発症頻度は高くない」と結論付けられているため、誤読か意図的なミスリードが疑われる。
症例報告で自己免疫疾患の併発が示唆されたことに関連付けてなのか、患者のHLA型を鹿児島大と信州大で調査したという内容である。
その結果、HLA-DPB1*0501の頻度が一般的な日本人の頻度より高かったと述べられている。
鹿児島大のデータ(n=19)ではDPB1*0501の頻度(恐らく保有率)が84%、
これに2名を追加したデータ(n=21)では保有率が85.7%、遺伝子頻度が57.1%であった。
Controlの遺伝子頻度は40.7%であり、患者側で有意に高かったようだ(P<0.001)。
信州大のデータ(n=14)では、DPB1*0501の保有率が71%、遺伝子頻度が46%であった。
Controlの遺伝子頻度は38.4%で、記述がないことから、恐らく有意差は無かったと思われる。
上記で保有率と遺伝子頻度を強調表示したが、それはこの2つが混同して語られているからだ。
ごく単純に説明すると、保有率の方はヘテロ接合でもホモ接合でも保有者1名として(つまり個体単位で)計算するが、
遺伝子頻度は遺伝子プール内の対立遺伝子の頻度で計算するため、ヘテロ/ホモ接合の割合によって保有率と遺伝子頻度は異なる値を示すことになる。
鹿児島大のデータを例に出すと、患者21名のうちDPB1*0501のホモ接合が6名、ヘテロ接合が12名であり、
保有率は(6+12)/21=85.7%なのに対し、遺伝子頻度は(6×2+12×1)/42=57.1%となる。
マスコミ各社の記事で見られた「8割で同じ型を保有」というのは保有率のことであろうが、
それと比較している一般的な日本人のHLA型は遺伝子頻度で示されている。
したがって、異なる指標を比較していることになり、これは印象操作以外にほとんど意味のない行為と言える。
遺伝子頻度で見れば、一般的な日本人のDPB1*0501の頻度は38.4~40.7%で、患者群が46~57.1%となり、それほど高いようには思われない
(少なくとも、「普通は4割なのに患者は8割!超高いじゃん!」というマスコミ報道よりは)。
また、健康な日本人(Control)のDPB1*0501遺伝子頻度が55% (*2) や64% (*3)の論文も存在している。
一応、鹿児島大のデータでは患者側で有意に頻度が高いという結果(10遺伝子座も調べてる割に有意水準が少し高いように思われるのだが)
が得られたことから、DPB1*0501が副反応"疑い"の症状と関連している可能性は否定できない(実際にワクチンの副反応かは別として)。
自己免疫疾患を生じ易いNF-κBp50欠損マウスに、インフルエンザワクチン、B型肝炎ワクチン、HPVワクチン(サーバリックス)、
PBS(Control)を注射した結果、サーバリックス接種群のみ海馬に自己抗体の沈着が見られた。
また、(恐らく)サーバリックス接種群でのみ末梢神経に病変が見られた。
マスコミ(少なくともTBSの)記事で「脳に障害」とされたのはこの海馬への自己抗体の沈着である。
しかし、あくまで沈着していただけであり、これによって脳に障害が起こったとは少なくとも資料中では全く述べられていない。
しかもこれはマウス実験であり、ただちにヒトの脳に適用できるものでもない。
「子宮頸がんワクチンを打ったマウスだけ、脳の海馬・記憶の中枢に異常な抗体が沈着。海馬(記憶の中枢)の機能を障害していそうだ」(国の研究班の代表 信州大学 池田修一医学部長) (太字・下線は引用者による)
の2行後には
「明らかに脳に障害が起こっている。ワクチンを打った後、こういう脳障害を訴えている患者の共通した客観的所見が提示できている」(国の研究班の代表 信州大学 池田修一医学部長) (太字・下線は引用者による)
と、推測から断定への鮮やかな飛躍が見られる。
これがマスコミの誘導や切り貼りによるものか、御本人の認識なのかは不明だが、どちらにせよ不注意な発言であろう。
また、話の流れ的にも「少女たちに何が起きているのでしょうか。」からマウス実験の内容に飛ぶのはおかしくはないだろうか。
どちらかと言えば症例報告の話((1)の内容)につなげる方が自然に思えるのだが。
さらに、マウスに接種されたのはHPVワクチンのうちサーバリックスのみであり、もう一方のガーダシルは用いられていないのは疑問である。
HPVワクチンを主眼に据えている以上、ガーダシルで実験をしていないというのは考えにくいのだが、何か理由があるのだろうか。
個々の内容(症例報告、HLA型の調査、マウス実験)はいずれもまっとうなものであり、特に今回の症例報告は患者の治療を進める上でとても有用であろう。
しかしながら、各症例をHPVワクチンの副反応であると根拠なく断言し、HLA調査では「ワクチン副反応の予防法の確立」等、
マウス実験でも「神経障害の機序の解明」等のHPVワクチンによる副反応を自明とした表現が目立つ。
プレゼン資料で少し強めのことを言ってしまうというのはよくあることだが、それにしてもこれらは言い過ぎなように思われる。
薄弱な根拠でHPVワクチンの害を喧伝することは、患者救済という観点から見ても決して適切な方法ではない。
願わくは、不用意な発言は避け、研究内容に相応の穏当な表現でもって語っていただきたいところである。
今回のニュースのブクマでよく見かけたのが「WHOの安全声明は間違っていたのか」「ワクチン擁護者はどんな言い訳をするのか」等のコメントである。
ここまで読んでいただいた方なら分かっているとは思うが、池田氏の発表からは各症状がHPVワクチンの副反応であるとは言えない。
それを言うには、ワクチン接種者と非接種者を比較して、各症状の頻度が接種者で高いことを明らかにする必要があるのだ。
WHOの安全声明(*4,5)は、HPVワクチン接種者と非接種者では自己免疫疾患等の発症率に有意な差は無いという疫学的な調査の結果に基づいてなされている。
調査対象の疾患のなかには池田氏らの症例報告にもあるPOTSやCRPS等も含まれており、そのリスクも接種者と非接種者で差は無かった。
これらは日本国外での調査であるが、国内においても名古屋市の約3万人の調査(*6)では、接種の有無による疾患リスクの増加はほとんどないことが示されている。
また、池田氏の発表資料と同じページに載っている牛田氏の発表資料(*7)も必見である。
その主な内容は、器質的な原因に由来しない疼痛への対応や治療、ケアに関するものであるが、
子供の起立性調節障害や慢性疼痛といったHPVワクチンの副作用として疑われている症状が、もともと一定の頻度で存在していたことも示唆している。
以上より、今回の池田氏らによる研究発表は、HPVワクチンの安全性について既存の評価を覆すものではないということがお分かりいただけたと思う。
この文章が、報道を聞いて不安になった方や情報の齟齬で混乱している方の助けになれれば幸いである。
なお、批判的に扱ってはいるが、池田氏らの研究の内容自体は素晴らしいものである(特に症例報告)ことは重ねて申し上げておく。
もし間違いや事実誤認等の不備があれば指摘していただけるとありがたい。
さて、この文を書き終えたところで、既にこのニュースについて言及したブログを見つけてしまった。
以下二つとも、有益な情報が多々含まれているため、本増田よりこれらを読んだ方が良いかも知れない。
HPVワクチン 接種後体調変化の報道 と その周辺 2016年3月 (感染症診療の原則)
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/7279d93d6ce526b5ed61b40d8a7a01b8
*1 Slade et al. (2009) Postlicensure safety surveillance for quadrivalent human papillomavirus recombinant vaccine. JAMA, 302, 750-757.
*2 Onuma et al. (1994) Association of HLA-DPB1*0501 with early-onset Graves' disease in Japanese. Hum. Immunol., 39, 195-201.
*3 Matsushita et al. (2009) Association of the HLA-DPB1*0501 allele with anti-aquaporin-4 antibody positivity in Japanese patients with idiopathic central nervous system demyelinating disorders. Tissue Antigens,73, 171-176.
*4 Global Advisory Committee on Vaccine Safety Statement on the continued safety of HPV vaccination (12 March 2014)
http://www.who.int/vaccine_safety/committee/topics/hpv/GACVS_Statement_HPV_12_Mar_2014.pdf
*5 Global Advisory Committee on Vaccine safety Statement on Safety of HPV vaccines (17 December 2015)
http://www.who.int/vaccine_safety/committee/GACVS_HPV_statement_17Dec2015.pdf
http://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/cmsfiles/contents/0000073/73419/sokuhou.pdf
*7 慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究 牛田享宏氏 発表資料(PDF:3,890KB)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000116635.pdf