最後の章になる。
地方自治体はどんな人を欲しているのか、及びどんな人が職員として通用するのかしないのか、それらを説明して終わりにする。
とはいえ、もう4万字を超えそうだ。ここまで読んだ貴方は忍耐力を持っている。地方公務員に適合した人材である可能性濃厚である。
キャリアの棚卸しにしては壮大になりすぎた感がある。まずは、先達の書いた日記をひとつ紹介して記述量のショートカットを図る。
https://anond.hatelabo.jp/20200923212241
この日記を書く前に、はてな匿名ダイアリーで見つけた日記のひとつだ。短く簡潔にまとまっている。内容も概ね正しいと感じる。明白な誤りはない。単純に面接を突破したい人間はこれを見るといいだろう。惜しむらくは、上の日記を書いた人は公務員試験の面接官ではない。
せっかくの機会だ。民間時代を含めると十年以上に渡って面接官を務めた者として、採用可能性が高い人材の傾向を三箇条として述べてみたい。その後、面接評価表にはないポジティブチェック・ネガティブチェックの一部を示そうと思う。
モデルケースを挙げる。採用試験を受けようとする市町村で生まれ、小中高をそこで過ごし、進学や就職を機に都会に出たけれども、また地元に戻って働こうとする受験者がいたとする。
はっきり言おう。満点に近い。もうその時点で、「面接評価では4を取ってください! お願いします!!」と面接官に期待の眼差しで見られている。K市ではそうだった。というのも、そこまで地元愛のある若者はほとんどいないからだ。
覚えておられるだろうか。当時のK市の人事行政の問題点のひとつに若手職員の離職率があった。3年以内離職率が3割超えという高い数値の原因のひとつが、『他市町出身』の職員数の多さにあった。
採用試験を受けるまでの人生で、K市と接点のあった受験者があまりに少なかった。原因はシンプルであり、県庁や政令市や特別区の滑り止めで受ける人間が多かったことによる。みんな現役で地方公務員になりたいので、第一志望に落ちた後もなりふり構わず受けまくるのだ。採用された後も、第一志望の自治体に入るために勉強を続ける。いわば仮面浪人だ。
「何をもって他市町出身なのか?」を定義するのは困難である。ここでは30才以下の職員について、市外在住率(K市に住んでいない者の割合)が『他市町出身』の代替指標として機能するとしよう。さて、K市の市外在住率はどの程度だったと思う?
正解は……30才以下の若手職員のうち、8割がK市に住んでいなかった。私が辞める年には7割を切るところまで改善されていた。新人職員が居住地をK市に選ぶ割合が増えたことによる。改善のミソは、採用試験で評価されやすいポイントを変えたからだ。後述。
これはひどいな、と当時の私は思った。素人考えでもわかる。市外在住率が高すぎる。もし災害が起きたらどうなる? 全員すぐに集合できるのだろうか?
すべての年代になると、市外在住率は約5割になる。K市の近くにある政令市などが魅力的なのもあるが、市町村合併でK市に編入された先の市町村職員が、「もう義理を果たす必要はない」とばかり、こぞって自分が住みたい町に移住していく事情もある。全国的に見ても人が多い地方であるため、魅力的な市区町村が多いのだ。
では、上の『後述』の内容について。私が総務部長に提案したのは、「K市を愛することのできる人間を採用する」というものだ。試験を受ける時点ではK市が好きじゃなくていい。K市出身でなくてもいい。入庁した後にK市を好きになることができる、そういう素地のある人に高い評価をつけるようにした。
申し訳ないが、具体的な内容は部外秘とさせてもらう。公開すると、ネット検索によってK市がわかってしまう可能性があるからだ。ご了承願いたい。
社会人として一番大事なことは何かと問われれば、30代前半までの私であれば、『実力』又は『正しい過程で正しい成果を出し続けること』と答えるだろう。
今の私であれば、『尊敬によって他者との繋がりを保ち続けること』と答える。これが社会人(使用者も労働者も)にとって一番大事な事柄であり、能力でもある。これは、Think CIVILITY 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である(Amazonのページに飛びます)といった名著においても明らかにされている。
このように自分のために何かをしてくれた人に対し、きちんと感謝の言葉をかけられる人が果たしてどのくらいいるだろうか。
あなたの人生にもキャディのような役をしてくれる人はいるのではないか。あなたが存分に仕事ができるよう、目に見えないところで条件を整えてくれている人、成功のための下地を作ってくれる人、ゴルフバッグのような重い荷物を代わりに持ってくれる人、困った時に助けになってくれる人。そんな人たちがいるのではないか。
たとえば会社の中では、誰もがそういう「裏方」の役回りをすることがある。あなたの会社は、そんな人たちの貢献に注目し、正しく評価する体制になっているだろうか。あなたは自分を日頃から笑顔にしてくれる人に、感謝の気持ちを伝えているだろうか。
単に協調性というと、「みんな揃って前ならえ」のイメージがある。今の日本社会では、善悪両方の社会的資質と見なされることが多い。
私が持っている神の辞書によると、協調性とは概ねこんな意味合いになる。
・異なる立場や環境、利害関係にある者が互いに力を出し合って問題を解決すること
本来はこうである。みんな揃って前ならえ、ではないのだ。仕事は1人ではできない。一般事務職として採用される公務員は、民間企業でいうところの総合職だ。常に誰かに依存し、依存されることで仕事を前に進める。
だが、自分ひとりで成果を出していると勘違いする者が後を絶たない。空しいことだ。こういった人の残念なところは、その知性の程度にあるのではない。俺だけが、私だけがスゴイ。もっと自分に注目してほしい、といった自己本位的な動機で仕事をしていることだ。
どんな仕事も、社会に生きる人間一人ひとりを幸せにするために存在している。彼らはそのことに気が付かないか、気が付いても自分の気持ちばかりを優先する。
百歩譲って、20代までは良しとする。だが、30代になっても学校の勉強や部活動で高い成績を上げ、周りに注目されて喜んでいる中高生と同じレベルでは困る。
あなたは、見知らぬ人に対して敬意をもった行動ができるだろうか。自分と考えの異なる人間を尊重できるだろうか。嫌いな人や敵に対しても、悪い感情に心を乗っ取られずに意思の疎通ができるだろうか?
面接においては、この人格的態度を最も高く評価する。私が市職員になる前からそうだったし、K市の面接官として責任を受け持つようになってからも変わらない。
話は逸れるが、あなたが面接官の経験がある人だったとすると、「この人、面接の時とぜんぜん違う!(もちろん悪い意味で)」みたいなことがあったはずだ。面接で猫をかぶるのが上手い人だ。そういう人を見分けるコツがある。
印象がいい――これに尽きる。あなたにとって印象がいいし、他の面接官にとっても印象がいい。特に、ハキハキとした明るい話し方。面接官全員にとって好印象だったのなら、その人は危険だ。本当に使える人が面接に来た場合、面接官が3人だったとすると、大抵1人は、「うーん……」と頭をかしげることになる。採用判断が下しにくいということだ。
それが普通だ。みんなにとってイイと感じる人格をもった人間はまずいない。いたとしたら、それは猫をかぶっているか、はたまた聖人のどちらかだ。
技術職や、職人芸を要する分野で人を雇う場合は特に気を付けよう。それに適合した人との面接では、極度に緊張した様子が伝わってくる。身体は縮こまっていて、声はたどたどしく、自己アピールも乏しく、挙動不審――そういった人が最高の素質(タレント)を持っていることがある。
一流の面接官であれば、誰が試験に来ようと、その人のいいところを最大限に引き出せるよう心がける。履歴書を読み込んで、実際のシミュレーションをし、面接ではよい雰囲気を作るよう心がける。その人が職場に適合している証拠を質疑応答によって全力で探すのだ。受験者が喋るのに苦労しているようであれば、なんとかして悪い雰囲気を壊そうとし、その人の考え方や過去の行動を引き出そうとする。
飲食店などアルバイトの採用では、あなた1人で面接を担当することもあるだろうが、それでも上記のことに気を付ければハズレを引くことは少ない。印象がいいな、と感じた人に気を付けよう。初対面で印象のいい他人はまずいない。たとえ面接官に嫌われようと、素の自分をちゃんと出す人間を採用した方がいい。
猫をかぶる受験者への具体策としては、面接が始まる前と終わった後の行動をこっそり監視するといい。椅子をちゃんと戻しているか、出入口で人とすれ違う時の仕草や、駐輪場で他人の自転車をぞんざいに扱ったとか、車の運転に危険があるなど、それなりの確率でボロが出る。
公務員に限らず、組織で働く人間にとっての血であり肉である。ここでいう知的能力には、知能であるか、知性であるとか、創造性とか言われるものを含む。
すなわち、数値計算やスケジュールの段取り、ある規則に従っての並び替えといった正解がある分析的分野から、新規事業の企画、プレゼンテーション、利害を巡っての交渉や調整といった正解(不正解)がいくつもある総合的分野に至るまで、脳を働かせて答えを導き出すありとあらゆる分野を含んでいる。
官公庁に特徴的な仕事の傾向として、業務の幅の広さ(薄く広く)が挙げられる。特に地方自治体だと、ひとつの役場で多種多様な仕事を行っている(この機会に、あなたが住んでいる市町村の組織図をみてみよう)。民間で例えると、とんでもなく多角化が進んでいることになる。
数年おきに全く新しい仕事を覚えることになるのだが――その意味の幅の広さだけではない。役場を訪れる人間も多種多様だ。男性も、女性も、一般市民も、民間企業も、若者も、中年も、高齢者も、子どもも、障がい者も、何らかの病気にかかった人も、とにかくいろんな人が来る。
それらすべてに対応(問題解決)しようと思うと、まずはその職員が賢くないと無理だ。これは、市役所の現場で働いたことのない私でも確信できる事実だ。傍から見ていてわかる。
礼節や態度は大事だ。植物であれば、花弁や果実など目に見える部分がこれにあたる。それらを支える意味で必要なのが枝であり、幹であり、根である。もっと細かく見ると、細胞質や葉緑体や核ということになる。職業人でいえば、脳というOSがこれに当たる。
このOSが大したことのない物だと、いかに素晴らしい性格や気質を具えていても結果を出し続けることは難しい。正しい答えや行動を相手に示すことができないからだ。市職員が、受付窓口で手早く計算をしたり、各種申請書の書き方の指導ができないと、市民や企業が何度も窓口に来たり、無駄な申請費用を払う羽目になる。
スポーツだと、柔道における心技体がわかりやすい。ある一流の選手がいたとして、その人の精神がどれだけ優れていても、技術が優れていても――風邪で高熱がある、骨や靭帯に損傷がある、五感の一部が機能しないといった事情が生じると、たちまち三流以下の実力になる。
多くの人は錯覚している。例えば、どんなスポーツでも面白い試合というのは――両者ともに拮抗している。心技体のうち、技と体が同じくらいのプロ選手がいたとする。となると、勝負を分けるのは必然的に『心』となる。
実力伯仲の者同士、わずかな差で勝負が決まれば当然盛り上がる。それが、スポーツで一番大事なものが心→技→体の順番と皆に思われる最大の理由だ。
官公庁が筆記試験を必ず行う理由がここにある。現在の公務員業界では、筆記試験(性格適性検査を含む)の作成をリクルートなど民間会社に委託する方向で進んでいるが、今後何年が経過しようと、筆記試験自体が廃止されることはないだろう。組織人として働く上での血肉であるところの、知的能力を客観的に測定できる唯一の機会だからだ。
地方公務員になって13年が経った。 元は民間企業の営業をしていて、諸事情があって公務員に転職した。 今は人事課で研修関係の仕事をしている。 面接官ではないが、補佐役として...
第三章 地方自治体はどんな職員がほしいのか 最後の章になる。 地方自治体はどんな人を欲しているのか、及びどんな人が職員として通用するのかしないのか、それらを説明して終わ...
第二章 更生が期待できる問題職員について できれば2人紹介したかったが、1人に留める。 ここまでの6人は問題ない。何かあっても私が責任を取ろう。が、この2人は今でもK市...
case4. D乃さん これまでの3つの例に比べて短めにしている。政治的な話題になるからだ。代わりに、閑話休題に文章を割いている。 政治というのは厄介なもので、敵と味方を二分す...
case3.C郎さん 私がK市を退職する時点で係争中だった。判決はどうなったのだろう。もはやどうでもいい。考える価値もない。 彼は、当時40代後半の職員だった。建築系の部署で働い...
ここらで話題を変える。問題職員の話ばかりで疲れただろう。 市役所には魅力的な人物ももちろんいる。今これを読んでいるあなたも、人生で一度くらいは公務員に助けられることがあ...
case2.B子さん 二人目のB子さんは、ある意味で私と同期だった。私がK市に採用された年に、高校を出たばかりの彼女が入庁してきた。 K市に入ってからの私というのは、せっせと新人...
A夫さんとの面談の日はすぐやってきた。先日と同じ面談室だった。 こちらは予定どおりの布陣で、A夫さん側は2人。今回は上司と一緒だった。「一緒に来てほしい」と上司に頼んだ...
前職を辞めて1年以上が経った。そろそろ事業会社で働いてみようと決心したところで、キャリアの棚卸しをしてみようと思った。 私は、新卒で人材広告の営業会社に入った。その次は...
今日は1/1だぞ
そ、そんなネタに釣られ…… マジレスですが、ぜんぶで10パートあるんですよ
ずっと上司がまずい話だった。ご苦労様でした。
大晦日にこれ書いてくれたの天才すぎる。ありがとう。
障害者を裏でバラエティ番組ノリでバカにする陽キャが普通に出世する問題。 お役所ってこのへんは全然セーフなのよね。
裏でバカにするのは陽ではない
リンク 2021年度 匿名ダイアリーTOP250 2021年度 匿名ダイアリーTOP251-500 ランキング 順位 ブクマ タイトル 1 2558 当たり屋対策の集合知 2 2336 洪水被害にあったらやる...
リンク 【2021年度】 匿名ダイアリーTOP200 匿名ダイアリーTOP201-300 ランキング 順位 ブクマ タイトル 201 666 美味い素麺なんか食うんじゃなかった 202 665 お前は危険物...
ブクマのゴミどもが食らいついたランキングになんの意味があるのか
ブクマに書くのも無粋だからここに書こ 30位以上で二本入ったわーい 去年までも入ったけど3桁ブクマで下の方がギリギリだったんで
増田って〆12月なんだ
あとで読む(かも
俺の記事があった
ダンス甲子園増田だろ?
「行政」とか「地方自治」とか「人事」とかタグついてたくさんブクマされてるのはどういうことなのか
スマホ用リンク https://www.amazon.co.jp/dp/4434287273 元増田はリンクに要らん”がはいっててつながってねえぞ
この度はご指摘ありがとうございます。 修正を行いました。
昨日、こちらの増田を読ませていただいた。 釣りに頼らず増田でバズる方法 https://anond.hatelabo.jp/20231201170245 いろんな増田日記を解説しているのだが、ふと気になったことがあった。 ...
続編が来ていた。E太さんの話。 クラスで一番の嫌われ者だった彼が地方公務員になって無双するお話 https://anond.hatelabo.jp/20231231221400
見つけました。ちょっと記憶が違っていて採用の話がメインでした。ありがとうございました。 https://anond.hatelabo.jp/20211231220514
見つけました。ちょっと記憶が違っていて採用の話がメインでした。ありがとうございました。 https://anond.hatelabo.jp/20211231220514
探していただきありがとうございます。これでなかったのですが、自己解決してしまいました。 ちょっと記憶が違っていて採用の話がメインでした。 https://anond.hatelabo.jp/20211231220514
軽く読んだんですが職員の懲戒免職とか守秘義務違反だとか起訴だとか細部までリアルですね ゆっくり読ませてもらいます
自己解決しました。 とある地方自治体の特定任期付き職員として、人事政策の立案と運用を担っていた方のお話でした。 https://anond.hatelabo.jp/20211231220514
それです!そして、見つけました。ありがとうございました。 https://anond.hatelabo.jp/20211231220514
>市民課(住基ネット)や税務課(税務情報システム)や福祉課(福祉情報システム)でB子さんの情報を集めてみた 思い切り目的外使用で、警察沙汰になってもしかたないレベルなん...
民間で取引業者間での引き抜きはあるし引き抜いた業者とも普通に取引していますけど
取引先の女性を「結婚で」引き抜いたの? 業務で人材生かせるのならどこいっても祝福してやれよ、女にばっかり罪を負わせんな それじゃなきゃどんなに国内同士で足引っ張ろうが中国...
え? これもデリヘルなの? デリヘルいつ出てくんの?
微細な脳梗塞による高次脳機能障害とかやね、まあ自然となることはある キングファイルで側頭部を殴られた人にもそういうのが発生し得るし病気がうつるようなものだから隔離してお...
https://anond.hatelabo.jp/20211231220518#tb 埒の使い方おかしくね?
デリヘル増田の数多残した見え見えの釣り針乙に、敢えて食い付いて差し上げるのもなんか癪だけどもこれだけは言わせてくれ。 「翼の生えたメバル」が「チチチと鳴いて飛んできた」...
ご指摘ありがとうございます。間違えておりました。 追記で修正しています。
読み終えた。2年前に見たのが懐かしくなった。E太さんの話だったんだな。 問題職員の正しい辞めさせ方 7/10 https://anond.hatelabo.jp/20211231220520
というのも、一般人の平均を超える知能がなくては務まらないタイプの仕事が多いので、必然的に筆記試験のウエイトが重くなる。 ・・・?🤔
失礼しました。 わかりにくい表現だったので該当箇所とその周りを修正しました。
もう面接シーズンだいたい終わったし来年の6月ぐらいにこのネタロンダリングしていいですか?🙋
どうぞ。この記事は著作権フリーです。 県庁や政令市や中核市の面接に落ちて凹んでいる人に向けて書きました。
面接のハウツーと見せかけた高度な晒し日記
ご意見ありがとうございます。 悪影響なブログ紹介が多くなったかなと思ったので、面接対策に効果的なブログも載せることでバランスを取りました。
「論を待たない」は変換をまちがいやすい。「待」であってそうな気がするのもわかる。
学校大好きな陽キャなら楽勝だな
その承認欲求共々気持ち悪い