「見た目の順位」と「実際の順位」…繰り上げスタートなどが引き起こす錯覚
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第101回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)が2025年1月2、3日に行われる。テレビ中継などを見ていると、「見た目の順位」という言葉が、よく出てくる。これは、あるルールがあるために生じる「錯覚」といえる。
「繰り上げ出発(繰り上げスタート)」は、一般道を通行規制する時間を短くして、交通渋滞を回避することなどが目的だ。公道で開催される駅伝には必要なルールだが、「見た目の順位」と「実際の順位」が異なるケースが生じ、観戦している側からすると戸惑うことにもなる。
箱根駅伝の繰り上げ出発に関するルールは以下の通り。
「往路の鶴見、戸塚中継所では10分、平塚、小田原中継所では15分を超えて遅れたチームは繰り上げ出発となる。復路すべての中継所は20分」
「復路のスタートは、往路において1位チームのフィニッシュから10分以内にフィニッシュしたチームは時差出発を行い、その他のチームは往路1位のチームがスタートした10分後に同時出発を行う」
復路、芦ノ湖のスタート時の例を挙げて説明すると、こうなる。(図1)
ここでD大、E大、F大に注目する。D大は1位から10分以内にゴールしたから、復路も同じタイム差(9分50秒後)でスタートする。だが、E大とF大は1位との差が10分を超えているので、きっかり10分遅れの8時10分に同時スタートする。D大は往路で、E大に1分、F大に3分というタイム差をつけたにもかかわらず、復路のスタートではD大の走者が走り始めてからわずか10秒後に、E大とF大が同時に駆け出すことになる。
各中継所では繰り上げの時間が決められている。2日間の総合順位は往路と復路の合計タイムで決まるが、「往路でついたタイム差」「復路の出発時間差」「中継所での繰り上げスタートの有無」「大手町でのゴールの時間差」などさまざまな要素が加味される。「見た目の順位」と「実際の順位」が必ずしも一致しないこともあり、特に復路終盤は10位前後のシード権争いに絡む大学の関係者やファンがやきもきすることもある。
前回100回大会では、往路8位の大東文化大以下の16チームが芦ノ湖を復路一斉スタートとなり、実際の順位が判別しにくくなった。(デジタル編集部)