USスチール買収阻止、アメリカ政府への訴訟以外に打開策見当たらず
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日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収計画の中止をバイデン米大統領が命令したことを受け、両社は3日、米政府への訴訟などを通じ、引き続き買収の実現を目指すと表明した。ただ現状では、提訴以外に打つ手は見当たらず、事態打開のハードルは非常に高い。
バイデン氏は国家安全保障上の懸念や
一方、両社は、米政府の対米外国投資委員会(CFIUS)による買収計画の審査が「著しく適正さを欠いていた。バイデン政権の政治的目的を満たすためにあらかじめ決定されたものだ」と非難した。「法的権利を守るためのあらゆる措置を講じていく」とし、手続きの適正さなどを争い、提訴などに踏み切る方針だ。
USスチールのデビッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は「バイデン氏の行動は恥ずべきもので、腐敗している」とコメントした。
両社は共同声明で「米国で事業を遂行することを決してあきらめない」と、今後も買収計画の実現を目指す方針を示した。しかし、20日に就任するトランプ次期大統領も計画には「全面的に反対」の立場で、決定は覆らないとみられる。
買収計画では、今年6月までに買収が完了しなければ、日鉄がUSスチールに5億6500万ドル(約890億円)の違約金を支払う義務が生じる可能性もあり、日鉄には重荷となる。
同盟国の民間企業が合意したM&A(合併・買収)を米大統領が阻止する異例の決定は、日本企業の対米投資に影響する可能性もある。武藤経済産業相は3日、「理解しがたく、残念だ。日本政府としても重く受け止めざるを得ない」とコメントした。
一方、米国のジョン・カービー大統領補佐官は3日、記者団に「これは日本を巡る決定ではない。あくまで米国最大の製鉄企業の一つを米国所有の企業として維持し、鉄鋼の国内生産能力を保つためだ」との見解を示した。
日鉄は2023年12月に買収計画を発表し、USスチールは24年4月の臨時株主総会で承認した。CFIUSは、審査期限の24年12月23日までに買収に伴う安全保障上のリスクを巡って合意できず、バイデン氏に最終判断を委ねていた。