【台北=園田将嗣】台湾の
頼清徳
総統は10日、「双十節」(建国記念日に相当)の式典で演説し、「中華人民共和国(中国)は台湾を代表する権利がない」と述べて、中台統一を掲げて圧力を強める中国をけん制した。中国は1971年の国連総会で可決された国連での代表権を認める決議に基づき台湾を「領土」と主張しており、頼氏はこれを否定する狙いがある。
頼氏は「台湾海峡の平和と安定という現状を維持する努力は変わらない」と強調し、
蔡英文
前政権の現状維持路線を継承する姿勢も改めて示した。演説では、台湾が現在も「中華民国」を正式名称としている歴史的経緯を踏まえ、台湾と中国は「互いに隷属しない」と、5月の総統就任式でも用いた主張を繰り返した。
中国などから「独立派」と受け止められてきた頼氏は、新たに建国するという「独立論」を封印し、「台湾はすでに独立しており、改めて独立を宣言する必要はない」との立場で、中国が掲げる「一つの中国」原則の受け入れを否定している。この日の演説では、自らの使命として「国家の主権を堅持し、侵略と
併呑
を許さない」との決意も強調した。
中国は頼氏の主張を警戒している。台湾国防部(国防省)によると、中国軍は10日早朝までの24時間で、台湾周辺に軍用機延べ27機と艦艇延べ9隻などを派遣して頼政権を威圧した。
中国は反発
【北京=川瀬大介】中国で台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室は10日、台湾の
頼清徳
総統の演説について「両岸(中台)の敵対的対抗をあおった。(頼氏が)頑固に台湾独立の立場を堅持し、台湾海峡の平和と安定を深刻に破壊していることを証明した」と非難した。「台湾は中国の一部という法的地位や両岸が『一つの中国』に属する事実は変えられない」とも語った。
中国外務省によると、
王毅
外相(共産党政治局員)は10日のコロンビア外相との会談で「台湾問題は中国の内戦が残した問題だ。遅かれ早かれ完全に解決され、国家の完全統一が実現するだろう」との見通しを示した。
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