ソフトバンク・中村晃外野手(35)が20日に福岡市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、5000万円ダウンの年俸1億円プラス出来高(推定)でサインした。

 プロ17年目の今季は101試合に出場。主に代打の切り札としての役割を担い、打率2割2分1厘、0本塁打、16打点だった。今季で2年契約が満了。一定の条件を満たせば自動更新となるオプションが付いていたが、新たに単年契約を結んだ。

 交渉後の会見では「今年の成績もあったので、しっかりダウンした。当然のことです。また来年、頑張って結果を出せるようにしたい」と殊勝に前を向いた。今季は山川のFA加入に伴い、2023年まで4年連続でゴールデン・グラブ賞を獲得した一塁のポジションを明け渡した。それでも「200打席くらいもらっているので、自分の技術不足」と、レギュラーを追われたベテランは一切言い訳しなかった。

 シーズン終盤に輝きを取り戻した打撃は、いまだ衰え知らずだ。「長打を求められる時代だけど、自分の強みを見つめ直して、打つことに特化して来年はやりたい」。ここぞの勝負強さ、選球眼を生かした粘り強い打撃が真骨頂。野球が変わり、評価が変わる中で、見失いかけていた強みに気づいた1年を決して無駄にはしない。

「僕は強いチームでレギュラーが取りたいんです」。入団以来、持ち続けているポリシーは今も変わらない。チームのハワイ優勝旅行から帰国した翌日、早朝5時に家を出て練習場に向かう姿は反骨心そのものだった。

 高卒ドラフト3位入団で、レギュラーの座を与えられるのではなく自力で奪ってきた男。「結局は技術なんで」。男は黙って――。静かに闘志を燃やしている。