フジテレビCM差し止め拡大、サントリーなど50社超に
フジテレビジョンで放映しているCMを当面の間差し止める企業が相次いでいる。トヨタ自動車や花王、サントリーホールディングスなど少なくとも50社超が20日までに差し止めを決めた。いずれもタレントの中居正広さんと女性とのトラブルを巡り、フジテレビの社員の関与が報道されていることなどを踏まえた対応としている。
フジテレビは17日の記者会見で外部の弁護士を中心とする調査委員会を立ち上げると発表した。事実関係や同様の事案の有無などについては「今後の調査に委ねる」という回答が目立った。
調査委についても日本弁護士連合会のガイドラインに沿った第三者委員会になるか「現時点でわからない」とした。調査の独立性や客観性を疑問視する声もある。
こうした説明を受けてフジテレビでのCMを差し止める企業が増えている。
アサヒグループホールディングスは「フジテレビの会見での説明内容に不明瞭な内容がある」としてCMを当面取りやめる。21日から放送予定だったCMを取りやめるイオンは再開のメドについて「事実が明らかになり、フジテレビの改善に向けた体制が整うなど総合的な判断が可能となった時点で再開を検討する」としている。
テレビ局の放送収入には、企業が番組中にCMを流す枠「タイム」と、それ以外の単発を含む「スポット」がある。フジテレビは24年4〜9月期にタイムが368億円、スポットが343億円だった。今回、多くのスポンサー企業のCMは公益社団法人ACジャパンの公共広告に差し替わっており、一般的には出稿料がそのまま支払われる。
今後は新規のCM出稿見送りが増え、3月の番組改編期の特番向けや4月クールの広告枠が埋まらない可能性もある。調査委の立ち上げから、調査・検証結果が出るまでには数カ月を要するとみられ、松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「広告収入への悪影響が出るのは確実だ」とみる。
20日の東京株式市場で、フジテレビ親会社のフジ・メディア・ホールディングス(HD)株の終値は1785.5円と前営業日比6%高となった。「問題の影響を見越して空売りしていた投資家が、ショートカバー(売り方の買い戻し)に動いて株価は反発した」(窪田氏)
同社のPBR(株価純資産倍率)は0.5倍を切っており、割安感もあった。短期志向の個人マネーを呼び込んでいるとの見方もある。同社株の20日の売買高は東証プライム上場企業のなかで5番目に多かった。
フジテレビの港浩一社長は17日の記者会見で中居さんのトラブルについて発生直後の2023年6月初旬から把握していたことも明らかにした。社員の関与については従来通りないと説明したが、調査委で改めて検証する。
一部週刊誌では今回と同様のトラブルが過去にあったことも報道されている。港社長は「(同様の事案について)私はないと信じている」と説明した。この点も今後の調査に委ねるという。
フジテレビの港浩一社長は、タレントの中居正広さんと同社社員の女性とのトラブルを報じられた問題について謝罪しました。トラブルへの社員の関与については外部の弁護士を中心とする調査委員会で調べるとしています。スポンサー企業がCMを差し止めるなど、影響は拡大しています。
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