睡眠中に妻を殺害して罪に問われた男性がいる。眠っていたのは妻の方ではなくて,手を下した本人がそう主張する。しかし,人を殺すことができたとすれば,その人はその時に起きていたというほかはないのではないか?実は,睡眠中の暴力やいたずらなど「睡眠時随伴症」とよばれる行動による事件は,一般に思われているよりはずっと多い。
脳が眠っているか目覚めているかは,どちらかにはっきり分けられる現象ではないと,一部の研究者は考え始めている。「局所睡眠理論」と呼ばれる考えによれば,脳は部位によって眠っている状態と,そうでない状態が混じっている。目覚めているように見える人でも,脳の一部が眠っている場合があり,その逆もありえる。この睡眠をめぐる謎めいた現象を手掛かりに,意識と無意識の境界について考える。
著者
James Vlahos
フリーライター。National Geographic Adventure誌やNew York Times Magazine誌,Popular Science誌に記事を執筆している。
原題名
The Case of the Sleeping Slayer(SCIENTIFIC AMERICAN September 2012)
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睡眠障害/睡眠時随伴症/ノンレム睡眠時随伴症/睡眠時性行為/レム睡眠行動障害/覚醒障害/局所睡眠理論