人道アクセスの障壁
何が人道アクセスを阻むのか
「対テロ政策」の影響
紛争などの人道危機で援助が必要な人たちがいるにも関わらず、その人たちのもとへ人道援助団体が行けない、援助を届けられない、という事態が増えています。
人道援助を必要とする人びとへのアクセスを極めて困難にしている障壁の一つが、いわゆる「対テロ政策」です。2001年に米国で起きた9・11同時多発テロ以降、「テロとの戦い」を目的とする法的・政策的取り組みが、世界的に展開されました。ところがその結果、人道援助スタッフの安全や、活動の実施、そして援助を受け取るべき人びとも、大きな影響を受けることになったのです。
それは、各国の反テロ法や刑法が、国際人道法で認められているはずの人道援助活動まで、犯罪やテロの共犯とみなすようになったためです。
- 例えば、次のような行動が対象になり得ます
- ①
テロリスト指定された勢力の支配地域に暮らす人びとへの援助提供
- ②
テロリスト指定された勢力の指導者と接触を持つこと・維持すること
- ③
テロや犯罪の疑惑がある人物を医療・人道上の理由で搬送すること
- ④
テロ・犯罪疑惑がある患者を医療施設で治療すること。
実際に、シリアで反体制派の支配地域で援助活動を行う国境なき医師団(MSF)は、政府からテロ組織とみなされ、スタッフが拘束されました。カメルーンでは、反政府勢力の支配地域で、銃撃による負傷者を救急車で搬送したスタッフが逮捕され、その地域での活動を中止せざるを得なくなりました。マリやニジェールでも援助活動が犯罪とされるケースが相次ぎ、紛争によって国境地域に追い詰められた人びとに援助を届けることが極めて難しくなり、人道アクセスの確保が困難になってしまいました。
国際的な制裁が援助に影響
また、2021年にタリバンの政権掌握に対して国際社会が課した制裁によってアフガニスタンの人びとに届けられる援助が大きな影響を受けたように、国際的な制裁が人道援助の障壁になることもあります。2023年7月にはクーデターが発生したニジェールに、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)など地域の機構や近隣国が制裁を発動した結果、食料やワクチン等の援助物資を運び込むことができなくなりました。こうした事態で最も打撃を受けるのは、紛争や貧困、食料危機に苦しむ人びと、子どもたちです。
「対テロ」法や制裁の形をとらずとも、政府の対抗勢力がいる地域への援助活動が、国の政策によって制限される事例もあります。たとえばミャンマーでは2023年5月のサイクロン「モカ」によって甚大な被害を受けたラカイン州での活動を軍事政権が制限し、MSFが地域の約46万人を対象に提供していた医療援助活動も中断を余儀なくされました。
こうした状況を変えるため、MSFは2016年から国連や各国に向けて、対テロ法や制裁などの規制対象から人道援助を除外するよう、呼びかける活動を行っています。こうした働きかけの積み重ねによって、2022年12月には国連安保理で、国連の制裁措置から向こう2年間、人道援助を除外する決議が採択されました。
また、2023年6月にはカナダの対テロ法から人道援助を除外する法改正が実現しています。現在もさまざまな形をとって人びとと人道援助の間に立ちふさがる障壁に対し、MSFは声を上げ、人道アクセスの確保に取り組んでいます。
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