過剰サービスだった?
労働人口の減少や作業内容等の物流労働環境の問題により、物流の担い手が年々減っているなかで「働き方改革」が進められているのはよくわかります。
・トラック運転手の時間外労働に「年960時間の上限」設定
・年間拘束時間が、現行の3516時間から原則3300時間へと厳格化
これらを守るということは、1日に運べる量は減少し、即日配達とか翌日配達などの、今までのサービス提供が困難になると指摘されています。
たしかに、健康被害や過労死、人で確保にとっても悪いイメージとなる長時間労働の実態是正は重要です。過労が事故につながることもありますからね。
翌日配達だけでなく、即日配達は顧客にとって本当に必要なのかという「過剰サービス合戦」のあり方も見直すべき時なのかもしれません。
そういった今までの“あたりまえ”となった風潮の見直しも、場合によっては必要かもしれませんね。
ドライバーの収入減も問題に
この残業制限などは、ドライバー側からは“収入が減る”ことを懸念する声も出ています。
ただでさえ、消費者価格を抑えるために中間コストを下げる動きがあり、トラックドライバーの報酬も上げづらい状況にはあります。
燃料費高騰などのコスト増も重なり、物流業界の経営環境は厳しさを増しています。個人事業のドライバーは、実際の手取り額を削っている状況です。トラックを動かすだけでも、様々な経費がかかりますからね。
荷主が運賃を上げることで今までの収益を確保して、ドライバーの収入が減らないようにして欲しいという声もあります。
特に危惧されているのはトラック輸送の下請けを担う数多くの中小企業へのしわ寄せです。日本の場合、トラック運送事業者の99%超を中小が占めているのですからね。
業務が大変な割には儲けが少ないと、ドライバーの“成り手”が減っていきます。そうなると、ものが運べなくなるのです。
企業側も対策しているが…
人手不足対策として物流網維持のためには、
・料金割増し
・運送頻度低下
・輸送の効率化(ダブル連結トラック活用)
・トラック輸送から船や鉄道に転換
・複数の会社での共同輸送
など、様々なことが試みられています。
また、再配達の多さや荷受け・荷降ろし時の待ち時間の長さも長時間労働を招く要因となっています。
荷主企業に対して国が、待ち時間削減などの物流改善計画の提出を義務付けることも検討しているようです。駅や商業施設で好きな時間に荷物を受け取れる宅配ロッカーの設置スマホなどで利用者が配送場所や日時を手軽に変更できるサービスも提供し再配達を回避する…などなど、企業側も変わってきています。
ローソンは、これまで1日3回コンビニエンスストアへ配送を行なっていたチルド・定温商品について、2回に削減することで、コスト抑制とCO2排出量の削減を行なうとしています。
これも2024年4月に施行される働き方改革関連法に向けての取り組みになります。
元々コンビニエンスストアへの配送業務は長時間拘束になりやすい配送体制で、新しい基準を満たすために、現状の配送スケジュールを実現するには、配送車と配送ドライバーの追加が必要となり、年間約20億円のコスト増が見込まれるそうです。
このため、配送スケジュールを見直すことで、コストを抑えようとしているのです。