国民民主党 初の“野党第1党”
原動力は若年層支持衆議院選挙から一カ月あまり、臨時国会での議論が始まり、選挙運動での政党支持率の変動が落ち着いた中での12月調査では、国民民主党は引き続き支持率を伸ばし11.3%と、11月から1.2ポイント支持を伸ばした。
この記事の画像(14枚)選挙前の10月調査までは、1%台が中心だった政党支持率について玉木氏は衆院選後から「これまでは視力検査みたいな数字でしたから」と自嘲ではなく、有権者からの支持に手応えをつかんだ発言をしている。
2カ月連続で10%台を維持し、立憲民主党の9.0%を追い抜き、支持率で“野党第1党”になり「国民民主人気」が続く形となった。
また自民党も、28.1%と11月から2.3ポイント上昇した。
ただし、自民党は選挙を挟んで11月の調査では、一旦8ポイント超、急落していて、支持率を取り戻した形だ。
れいわ新選組も、支持率2.9%で、11月は2.8%、選挙前の10月は1.1%で、引き続き選挙で上昇した支持率を維持した形となった。
【政党支持率】
12月 11月 10月
(上昇)
自民 28.1% 25.8% 34.3%
国民 11.3% 10.1% 1.3%
れいわ 2.9% 2.8% 1.1%
社民 0.6% 0.4% 0.2%
(下落)
立憲 9.0% 13.7% 7.3%
維新 3.2% 5.3% 4.0%
公明 2.4% 3.7% 2.6%
共産 2.7% 3.5% 2.1%
参政 0.7% 3.0% 0.3%
保守 0.5% 1.6% ――
国民民主党は「働く人の手取りを増やす」と掲げ、バイトやパートで働く人に所得税が発生する「103万円の壁」の引き上げをめざし、自民・公明との3党協議で交渉を続けている。
“国民民主人気“は、若年層からの高い支持が背景となっていて、年代別の支持率を見ると、20代以下、30代で最大政党の自民党、議席数で野党第一党の立憲民主を上回りトップの支持を得た。
一方で、60代、70代以上の高齢層では、自民党が圧倒的な支持を得た。
国民民主党が、若年層向けの政策に重点を置くことで、特に若者の支持を広げていることが明らかになった。
【政党支持率(年代別)】
20代以下 30代 60代 70代以上
国民 25.4% 15.6% 6.4% 2.6%
自民 17.3% 13.5% 27.2% 44.4%
立憲 4.1% 4.9% 5.5% 16.7%
「103万円の壁」の引き上げは「150万円程度」望む声「103万円の壁」の引き上げ幅について、連日、自民・公明と国民民主の実務者協議が続いた。
12月13日、自民党の宮沢税調会長は、与党として、国民民主党に対し「123万円」という引き上げ幅を提示した。
これに対し、国民民主党の古川税調会長は「話にならない」と突き返し、選挙公約通り「178万円」までの引き上げを譲らない姿勢を示した。
自公が「壁」の178万円までの引き上げをためらう理由としているのが、所得税収の減収だ。
満額の178万円まで所得税控除を引き上げると、税収が7.6兆円程度減収となる試算を政府は出している。
世論調査では、税収が減るとの指摘を加味した上で、「年収の壁」をどこまで引き上げるかを聞いた。
国民民主案の「178万円まで」とする意見は22.4%、税収がやや多く減って「150万円程度」まで引き上げがよいという意見は、最も多く32.6%だった。
自民案に近い「120万円程度」との意見は27.5%、税収が減らない「103万円で据え置き」との意見は13.3%となった。
【103万円の引き上げ幅】
国民民主案「178万円まで」 22.4%
「150万円程度」 32.6%
自民案「120万円程度」 27.5%
「103万円」で据え置き 13.3%
これを自民・公明・国民の各政党支持別に見てみる。
自民支持層では「178万円」10.0%、「150万円程度」が36.3%、「120万円程度」が35.2%、「103万円据え置き」が15.3%となった。
同じく公明支持層では「178万円」が16.9%、「150万円程度」25.1%、「120万円程度」46.1%、「103万円据え置き」8.5%だった。
与党支持層では、「150万円程度」「120万円程度」を望む声が多い結果となった。
一方、国民民主支持層をみると「178万円」を望む声が59.0%と圧倒的に多く、「150万円程度」27.1%、「120万円程度」10.0%、「103万円据え置き」はわずか3.9%にとどまった。
国民民主党執行部は、「選挙で示された民意」だとして自公との交渉を続けている。
【103万円の引き上げ幅】
自民層 公明層 国民層
178万円 10.0% 16.9% 59.0%
150万円程度 36.3% 25.1% 27.1%
120万円程度 35.2% 46.5% 10.0%
据え置き 15.3% 8.5% 3.9%
少数与党で「熟議の国会」は実現道半ば
衆院選後、11月に召集された臨時国会は、与党が過半数割れした中で始まり、これまでと様相を異にする国会審議が見られる。
臨時国会の焦点「政治とカネ」をめぐる「政治資金規正法の再改正」について、与野党各党の代表者が国会に一堂に会し、フルオープンで各党協議が行われた。
これまで与党が過半数を占めてきた国会では、与党内で法案を“事前了承”して、国会審議は行われるものの、原則与党案通り成立するのが常となっていた。
法案をめぐり、与党と野党が事前に協議をすることは、ほとんど無かったことに比べ、少数与党となり、採決で野党の協力が不可欠となった国会情勢になったことを受けて国会審議が様変わった象徴とも言える。
また、「103万円の壁」について自公が国民民主の提案に対し修正、譲歩を続ける交渉も、今年度補正予算の成立に向けて、国民民主の賛成を得ない限り、衆議院の通過が見通せなかったことが背景にあったものだ。
こちらも少数与党という国会状況を受けた新たな様相となっている。
こうした、与野党の協議が法案の行方に実質的に影響を与える国会になっていることなどについて、与野党ともに「熟議の国会」との言葉が聞かれるようになった。
有権者はこの国会審議についてどう見ているのか、調査では政治の進め方が改善したか、改善していないか聞いたところ、「改善した」31.0%、「改善していない」60.8%となった。
この回答の評価について、同様の質問が以前には無く、調査比較はできない。
ただ、政治不信が長らく指摘されるなか、3割の有権者が「改善した」と答えたことは、少数与党国会での審議の変わり様を、少なからず評価している声と言うこともできる。
一方で、6割が「評価しない、ということから、まだ「熟議の国会」というには実感がない、もしくは一層国民に見える国会審議を求める意見が強いという評価が考えられる。
【国会での政治の進め方】
改善した 31.0%
改善していない 60.8%
こちらも、支持政党別で見てみると、国民民主党支持層からは、調査全体での意見に比べて、「改善した」という意見が高くなった。
調査結果は、「改善した」44.4%、「改善していない」45.9%となった。
国民民主党は「対決より解決」を掲げていて、与党批判を続けても結局与党が押し切ってきた政治より、提言型で与党提案の修正していく姿に変わりつつある国会を見て取った意見とみられる。
公明支持層から「自民党に追従」指摘も
さらに注目すべきは、公明支持層の意見だ。
「改善した」との意見が半数を超えて51.4%、「改善していない」44.2%となった。公明党は「自民党のブレーキ役」として、生活者目線や、平和の党を自負してきた。
一方で、与党体制として自民に追従しているとの指摘もされてきた。
こうした中、政治改革をめぐり臨時国会では、政治資金のチェックをする第三者機関の設置について、国民民主党と歩調を合わせて2党共同で法案提出を行った。
「政治とカネ」をめぐっては、裏金問題は自民党の問題でありながら、衆院選では与党全体として公明党代表が落選する結果になるなど「自公体制」に“足を引っ張られた”との不満も根強く残っている。
選挙で議席を減らして少数与党に“陥った”という思いもある一方、野党とともに政治改革法案で、自民党と一線を画した行動に対して「改善」という見方が強まっているとみられる。
少数与党国会は、まだ始まったばかりで、今後注目される法案としては、引き続き政治改革問題での企業・団体献金をめぐる法案、選択的夫婦別姓の法制化、年度末の来年度本予算法案など、国会審議のあり方が今後も注目される。
【国会での政治の進め方(政党別)】
自民層 公明層 国民層
改善した 37.5% 51.4% 44.4%
改善していない 52.2% 44.2% 45.9%
(執筆:フジテレビ政治部 西垣壮一郎)