第2回ワンピース姿の私に向けられたスマホ シャッター音に体がこわばった

有料記事ワンピースを着て、街へ出た

平岡春人
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 昨年10月下旬、記者の私(26)は友だちの女性と、札幌市中心部の商業施設にあるアパレルショップに入った。

 幼い頃から憧れていたのに、「男性」のふりをして生きる中で着ることをあきらめかけていたワンピースを買うためだ。

 店内に並ぶワンピースの中に、まさに望んでいた紺の花柄の一着を見つけた。

 それを手に試着室へ向かった。

 試着室前にいた店員が、私たちをじっと見た。「試着、ですよね」。戸惑っているような表情だった。

 サイズはL。友だちの身長は150センチほどなので、着るのは私だとわかるはずだ。

 一番奥のブースに案内された。向かう途中、斜め向かいのブースに入ろうとしていた人が、「え?」と小さく声を漏らした。私を見て、同伴の人に目配せをした。

 気にしていないふりをして、2人の前を通り過ぎた。友だちが「似合いそうだね」と満面の笑みで話しかけてくれて、だいぶ楽になった。

 カーテンを閉め、そのワンピースを着た。想像以上にウエストのゴムが縮む。カーテンを開ける。友だちは歓声をあげ、写真を何枚か撮ってくれた。

 向かいのブースを使っていた人がカーテンを開けて私たちを見た。目を大きく見開き、口を開けている。また、じっと見られた。

 それでも、ワンピースを買えた。

 帰宅してからは、ワンピースに着替えて、全身鏡に映る自分をしばらく見続けていた。ずっとこうなりたかったのだ。どうしてこんな簡単なことに、25年もかかったのだろう。

向けられたスマートフォン

 3日後、私はこれを着て外出しようと決意した。

 札幌で知り合った友だちの女…

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この記事を書いた人
平岡春人
文化部|映画担当
専門・関心分野
映画、音楽、人権
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    井本直歩子
    (元競泳五輪代表・途上国教育専門家)
    2023年4月27日16時0分 投稿
    【視点】

    圧巻の文才、描写、表現力。 細かいニュアンスがダイレクトに伝わることがこんなにすっきりと感じるなんて。久しぶりに感動する文章を読みました。 当事者本人が自分自身で書くことに大きな意味があり、そこに才能があって、読み物として完成されている

    …続きを読む
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