「102歳の薬剤師」今も"週6勤務"を続ける深い理由 夫の事業失敗、30歳で開業…予定外でも幸せな人生

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幡本圭佐さん
102歳になった今でも、月曜日から土曜日の10時〜18時で薬局を開けている(東洋経済オンライン編集部撮影)
これから人は100年生きるという。しかし、お金や孤独、健康不安がなく老後を迎えられる人はどれくらいいるだろう。年を取ることが怖いーー。
多くの人が漠然とした不安を抱く中、老後の人生こそ謳歌している人もいる。その元気は、気力は、生きがいは、いったいどのようにして手に入れたのか。本連載では、“後期高齢者”になってなお輝いている先達に、老後をサバイブするヒントを聞く。
今回は、前回に続き、102歳の今も週6で店に立つ、現役薬剤師の幡本圭左(けさ)さんにお話を伺った。
前回記事を読む→【週6出勤「102歳の薬剤師」が毎日"必ず食べるもの"

「薬剤師」への道をすすめてくれた父

「大事なことは嘉永生まれの祖父から教わりました」

今から102年前の1922年9月18日、幡本圭左(けさ)さんは燃料問屋を営む父と母の長女として、長野県に生まれた。下に弟と妹がいる。人の出入りが多い賑やかな家庭で、幡本さんは伸び伸びと育った。

小学生の頃、神奈川県三浦町に住む父方の祖母が亡くなり、1人になった祖父が移り住んでくる。高齢の祖父を心配した父に言われて、幡本さんは祖父と枕を並べて寝た。

「今でも記憶に残っているのは、夏の朝、蚊帳の中で論語を習ったこと。祖父が『子曰く、學びて時に之を習ふ』など1節ずつ唱えて、私が大きな声で復唱するんです。論語以外にもいろんなことを暗唱して教わりました。だから小学校に上がる前なのに『子~、丑、寅、卯~、辰、巳~』って、干支をそらで言えたりしてね(笑)」

学問の喜び、他人への思いやりと配慮、感謝の気持ちなど、祖父は時々、幼い幡本さんに論語の意味も説いた。枕を並べて暗唱した祖父の教えは人生に根づいているなあと、幡本さんは思う。

その教えの中で今も大切にしていることがある。「身体髪膚これを父母に受くあえて毀傷せざるは孝の始めなり」という孝経(中国の教え)の言葉だ。

体はすべて父母からいただいたものなので、傷つけたりせず、親より先に死んだりしてはいけない」ということだと幡本さんは教わった。自身の子や孫にも伝えてきたという。

幡本圭佐さん
レトロな佇まいの「安全薬局」。週6日は営業し、店頭に立つ(東洋経済オンライン編集部撮影)
【写真を見る】築72年! 102歳の幡本さんが切り盛りする“超レトロ”な「安全薬局」(11枚)
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