これから人は100年生きるという。しかし、お金や孤独、健康不安がなく老後を迎えられる人はどれくらいいるだろう。年を取ることが怖いーー。
多くの人が漠然とした不安を抱く中、老後の人生こそ謳歌している人もいる。その元気は、気力は、生きがいは、いったいどのようにして手に入れたのか。本連載では、“後期高齢者”になってなお輝いている先達に、老後をサバイブするヒントを聞く。
前回と同様、81歳から始めたプログラミングでヒットアプリを生み出し、今夏、『やりたいことの見つけ方 89歳、気ままに独学』(中央公論新社)を上梓した、若宮正子さん(89歳)にお話を伺った。「高齢者向け“スマホ講座”は意味ない」という理由とは……?
「駅のトイレの不便さ」に気づいてほしい
「私たち高齢者の心身がわかっていないなと感じることがよくあります」
ITエバンジェリストとして全国を飛び回る若宮正子さん(89歳)は、急成長を遂げるシニア市場を歓迎しながらも、ため息を漏らす。
世の中には、「シニア用」「シニア向け」とうたったスマートフォン、パソコン、タブレット、テレビ用スピーカー、電動自転車などの新商品が次々に登場している。使用状況から安否確認ができる見守り機能付きの家電もある。
AIとIoT技術を組み合わせ、さらにシニア仕様に特化させた製品やサービスの数々。高齢者にとっては好ましい時代になったのではないか。
しかし若宮さんは、それらも高齢者のリアルなニーズをくみ取り切れていないと話す。
総務省が公表した2023年度の総人口に占める65歳以上の人口割合(高齢化率)は29.1%。加速度的な高齢者人口の増加にともない、新規事業を開拓してシニア市場に参入する企業が増え続けている。
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