軍政権の弾圧を生き抜くミャンマー医療者の過酷 来日した著名医師が日本の市民に訴えたこと

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医療過疎地に住む現地の有志の人たちが、タイ北西部のメーソットにあるシンシアマウン氏が運営するメータオ・クリニックをはじめさまざまな場所で一定の医療訓練を受け、地元に戻って簡単な医療を行うというのがこの医療団の取り組みだ。1995年発足当時はメータオ・クリニックが運営していたが、現在は独立組織として活動している。

「ミャンマーからの難民が増え始めた頃からこの活動をしてきました。クーデター後、私たちの仕事の重要性はさらに増しています」(ティータースエ氏)

ビルマ医療協会副代表のティータースエ氏。「バックパック医療団」を組織している(撮影:筆者)

軍事政権による医療従事者への迫害は激しさを増している。国内の医療環境は悪化の一途をたどり、国内避難民は命の危機にさらされている。その中でさらなる打撃となったのが、2024年9月の洪水被害だ。

「私たちが得た情報によるとミャンマーでは100万人以上が洪水による被害を受けました。その多くは国内避難民であり、二重に故郷を追われている状況です」(ティータースエ氏)

バックパック医療団は避難民の命綱に

バックパック医療団は、医療にとどまらず現地の人たちの生活面も支えている。困っている人たちに食料を配り、汚水が氾濫して安全な水がない地域には給水システムを建設した。また、浸水した家屋から高齢者、障害者 、子どもたちを安全な場所に移動させるのも医療団の仕事だった。

「ミャンマーのインフラは整備されているとは言えません。時には患者の元へ向かうのに大きな川を胸まで水につかりながら渡ったり、3~4時間歩かなければならないこともあります。現場の医療者に必要なのは強靭な体力と、コミュニティを守りたいという強い使命感です」

ティータースエ氏はそう強調した。

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