ロシア語vsペルシャ語・シリア国内の言語覇権競争 アサド政権下、言語教育を通じた周辺国の影響力

✎ 1〜 ✎ 32 ✎ 33 ✎ 34 ✎ 35
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
2024年12月15日、シリアのダマスカス、アル・マリキ地区で再開されたムハンマド・ビン・アル・カシム・アル・タカフィ学校の教室で、机に向かう生徒たち。シリアの反体制勢力が、モスクワに逃亡した長年の支配者バッシャール・アル=アサドから首都を奪還したため、学校は1週間の閉鎖を経て再開された(写真・Ali Haj Suleiman/Getty Images)

2024年12月8日にシリアの大統領だったアサドがロシアに亡命し、アサド政権が崩壊してから約2週間が経った。シリア市民はアサド政権に脅えていた日々から解放され、自由を満喫している傍らで、いろいろな変化が起きている。

ロシア文化になじませる努力

ロシアがシリア政府を軍事的に支援する作戦を始めたのは2014年9月30日だった。その後10年間、ロシアはシリア文部省や高等教育省といった政府機関を通して、ロシア語教育の普及をはかった。語学を学ぶとともにロシア文化を学ばせることで、シリア社会をロシア文化になじます努力をしてきた。

ロシアはシリアの地中海に面した沿岸部に、北大西洋条約機構(NATO)の南側面戦力投射用に「タルトゥース海軍補給処」と「フメイミーム空軍基地」の2大拠点を構えた。ロシアはアフリカにおける作戦拠点をリビアにも構えている。シリアの2大拠点はアフリカに物資を輸送する戦略的拠点でもある。

アサド政権が崩壊し、シリアは新たな勢力の支配下にある。もし新政権が旧政権とロシアとの間で結ばれた合意を反故にした場合、シリア地中海沿岸部の2大拠点の利用が認められなくなる可能性がでてきた。現在ロシアはシリアの港湾を失う危機に面している。

今日のようなことになるとは夢にも思っていなかった2015年、ロシアはシリア軍基地近くの公立学校の生徒400人を対象にロシア語を試験的に教え始めた。並行してロシア語教師育成を進めたり、ロシア語教材を無償で配布したり、ロシア語学習ツールを学校に導入させたりした。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事