LINEが「フェイスブック連携」を始めた理由
「年内1億ユーザー」に向けラストスパート
LINEの新規登録には電話番号での認証が必須だったが、今回の機能追加でフェイスブック認証のみでも利用開始できるようになった。加えて、既存ユーザーがフェイスブックの友人関係をLINEの友だちとして取り込むことも可能になる。すでにアンドロイド向けアプリは対応を完了、iOS向けについても近日中にアップデートする。
これまでNHN JapanはLINEとフェイスブックの連携について、「かたくなにやりませんといってきた」(LINE事業を統括する舛田淳執行役員)。だが、世界7800万人、国内3600万人(26日時点)を達成したこのタイミングで、方針転換に踏み切った。
■「我々は本当の知り合い同士をつなげたいんです」
なぜこれまでLINEには、要望が多かったにもかかわらずフェイスブック連携機能がなかったのか。その理由を舛田執行役員はこう語る。
「我々は本当の知り合い同士をつなげたいんです。身近な人とのコミュニケーションをホットにする。その関係性をいかにピュアに構築するかということで、お互いの(携帯電話の)電話帳に載っているような関係性を重視してきました」
フェイスブックは各人の使い方にもよるが、一度名刺交換をした程度、あるいは単なる同僚、場合によっては会ったことがない人など、お互いの電話帳に載っていないような薄い関係性でも友だち関係になることが多い。そうした薄い関係性は、濃い関係性を重視するLINEにそぐわないというわけだ。しかし、ここにきて方針転換した背景には、いくつかの理由がある。
まずは、携帯電話の電話帳をLINEのサーバーにアップすることへの懸念に対して、別の選択肢を用意するという狙いがある。LINEは、電話帳のデータをスマホから取得、Aさんの電話帳にBさんが、Bさんの電話帳にAさんが登録されている場合、自動的に友だち一覧に追加される仕様になっている。友だち申請、相互承認という行為を省いたことが、爆発的な普及とコミュニケーション量の増大につながった。
■電話帳利用に懸念を示すユーザーへの配慮
LINEは取得した電話帳データを、「友だちのマッチング以外には使用しない」「セキュリティー対策も万全に行っている」とし、実際、情報流出などの事故も起きていない。
しかし、アプリのレビュー欄などを見ると、「個人情報のすべてを外部の会社のサーバーにわたすのは心配」など、プライバシーの観点から懸念を示す声が少なからずあったことも事実。新規登録の際、電話帳を利用せず、フェイスブックの友だち情報を利用してマッチングする選択肢があれば、こうしたユーザーにも応えられるようになると判断した。
「電話帳を利用することにアレルギーがある方もいらっしゃるのは事実。すでにスマホユーザーの2人に1人にLINEをご利用いただいている中、そうした一部の方が残ってしまうのは、よい状況だとは思っていない」(舛田執行役員)
■機種変更時の「引き継ぎ問題」も解消
そのほかの理由として、舛田執行役員は「引き継ぎ問題」も挙げる。これまで、LINE上でメールアドレス登録をしないまま機種変更をしてしまうと、今までのLINEアカウントや友だち情報を引き継げないという課題があった。
これからは、フェイスブック認証の登録さえすれば、機種変更してもフェイスブック認証をし直すことで、簡単にLINEのアカウント・友だち情報を引き継げるようになるという。スマホからスマホへの機種変更も増えた今、引き継ぎの利便性を向上させる必要があった。
さらに海外事情の特殊性に合わせるという理由もある。「我々は、電話番号こそが人同士の関係性を図るうえで重要な指標だと思ってきた。しかし米国をはじめとする一部の海外ではプリペイド方式の携帯電話もそれなりに普及していて、日本ほど電話番号の価値がない国もある。そうした国の事情に合わせるという意味合いもあります」(舛田執行役員)
■「年内1億ユーザー」達成なるか
コミュニケーション関連サービスは、友だちとどうつながっていくかの手段によって、使われ方やコミュニティーの"色"が大きく変わってくる。しかし、すでに世界7800万ユーザーを達成した今、フェイスブック認証機能を追加したところで、LINEが目指す世界が大きく変化することはない、という判断もあった。
もう1つ。フェイスブック認証機能は、今年夏から掲げている年内1億ユーザーという目標にも大きく関わってくる。舛田執行役員は秋口から「(達成は)微妙な状況」としながらも、下方修正はしてこなかった。その自信の裏には、このフェイスブック認証機能という"隠し球"があったのだろう。
フェイスブック認証機能は、LINEユーザー数の伸びをどれだけ加速させるのか。1億達成なるか。大みそかに向けたラストスパートが始まった。
(電子報道部 井上理)