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2010/08/12

Prosper in China July 2010

BigResearchのChina Quarterly SurveyのProsper in China - July 2010というプレゼンをBrightTalkでやっていた。

これからの半年の間に高額商品を購買する予定はと聞かれた、18-54歳までの中国人と米国人のグラフがあった。

中国人の最も購買意欲の高い製品は旅行(36.3%)だが、PC(33.2%)、モバイルデバイス(26.2%)、デジカメ(23.1%)が続いている。 家具、家電、TVなども購買意欲が旺盛だ。それにしても米国人の最も購買意欲の高い製品はPC(14.4%)で、TV(11.6%)、旅行(13.4%) が上位だが、中国との差はとてつもなく大きい。
次に今後90日間に新しい携帯電話を購買する予定はありますかと聞かれて、2009年Q2は45.2%が「Yes」と答えていた。それが2010年Q1に48.4%に上昇したのだが、Q2で約4%ポイントも落ち込んでいる。とはいっても、45%近い人間がこれからの3カ月間に買い替える、新規購買を予定しているというのは空恐ろしいほどのボリュームだ。
もうひとつ、車・トラックに関するデータがあった。今後半年間で車・トラックを購買する予定はと聞かれて、2010年Q2では「No」が60%強、「Yes」が20数%だ。前年同期比では「No」が減少し、「Yes」が増加している。ただし、「No」、「Yes」に重ねられている移動平均線はちょっと違うような気がする。

どのメーカーを検討しているかというと中国メーカーがトップだが、前年は48.2%だったシェアを欧州車、米国車に喰われてきている。
そして、製品購買に関るメディアの影響も調査しており、車と日用雑貨品を取上げている。
Source:BrightTalk / Prosper in China - July 2010

例えば車なら、TVCFが31.9%購買決定に影響を与え、(プリント)記事は24.8%、CATVなら21.3%となっている。

このメディアインフルエンスに関して、以前、紹介したTNSのレポートと直観的に相容れない気がする。それは、中国インターネットユーザの60数%はForum/BBSに参加し、50%弱はBlogも利用している。この発信・共有スペースでブランドが語られている。そのため、ソーシャルメディアスペースの影響をメディアインフルエンスに入れていないBigReseachのレポートは片手落ちだと思うからだ。

参考:Social Media in China (Online Ad 2010/06/15)

2010/02/25

Trust + Recommendation = Success

Millward Brownから「Beyond Trust  Engaging Consumers in the post-recession world」というレポートが出ている。

企業に対する「信頼」だけではもはやブランドの成功は成り立たない。特に、懐疑的で貪欲でもない消費者が多い不況下の世界では。ブランドが成功するためには...?

ということで、「Trust + Recommendation = Success」という方式、TrustRスコアを提案している。TrustRスコアというよりも、「Trust + Recommendation = Success」という方式に注目したい。
企業が営々と築きあげてきた顧客からの「信頼」をより強固にし、拡張、あるいはその信頼を共有してもらう「推薦」、すなわち「クチコミ」がなければブランド価値も意味がない。これは、別に不況下であろうと、バブル期であろうと関係ない。

ブランドと顧客、消費者との絆を固く結びつけるものは、価格でも、機能・仕様でも、セレブを使った広告キャンペーンでもない。友人・知人、家族や同僚であ れ、その人間がそのブランドを評価・判断し、相手にその価値を伝えようとすることにブランドの信頼があり、ブランドの価値があり、第三者を介して固く結ばれることになる。その「推薦」、「クチコミ」 がなければブランドの成功は成り立たない。

「Trust + Recommendation = Success」、TrustRスコアの各国トップブランドは、
  • 10倍も平均的なブランドよりも絆が強い
  • 7倍も平均的なブランドよりも購買される可能性が高い
とそうだ。
Source:BtoB Online / FedEx, UPS are top trusted b-to-b brands
Source:MillwardBrown / Beyond Trust (pdf)

「推薦」や「クチコミ」を広めるマーケティングが行われているが、善意の第三者を介しないマーケティングは意味がない。逆に痛くもない腹を探られるのが関の山だ。善意の第三者を増やすことにこそ意味があるが、「推薦」や「クチコミ」を広めることがマーケティングの本質ではないし、大きく目的からそれてしまう。

善意の第三者を増やすための広告、広報、マーケティングをするには、企業・ブランドがオープン、対等、双方向でエンゲージしなければならない。エンゲージして信頼してもらわなければならない。自分の声を聞いてくれる存在であることをアピールしなければならない。信頼するに足り、聞く耳を持つ企業・ブランドであることを理解してもらわなければならない。

しかし、エンゲージするためには顧客、消費者、ユーザがどのような評価、判断をしているかをまず知らなければならない。

ところがモニタリングしていないブランドが46%もいる。やっている39%もフリーツールだ。何が拾えて何が拾えていないかもわからないフリーツールではモニタリングしていないのも同じだろう。39%はやっているだけましだが、46%のブランドは「信頼」+「推薦」=「成功」という方式には乗れない。
Source:Econsultancy (有料コンテンツ)

2010/02/24

Social Media Power of Samsung & LGE Customers

2009年Q3に世界中で販売されたTV(ブラウン管TVを含む)のトップシェアはSamsungで21.9%、LGEが12.9%だ。この2社に日本メーカー3社が続いている。

Twiceが伝えていたDisplaySearchの予想では2009年、LCD TVの年間出荷台数は1.27億~1.3億台だそうなので、上のシェアをそのままLCD TV出荷台数に乱暴に引用すると、Samsungは約2,860万台、LGEは約1,690万台を販売することになる。
そして2009年Q2の携帯出荷台数は合計で2.696億台、シェアトップはNokiaで1億台以上を出荷して38.3%を占めている。が、それに続くのはSamsungが5,230万台で19.4%、LGEが2,980万台で11.1%となっている。韓国の2社シェアはその他を除き唯一前年比アップしている。
2009年通期の出荷台数も乱暴にQ2の4倍、約10億台とし、Q2のシェアをそのまま通期シェアと仮定するとSamsungは約3.8億台、LGEは1.9億台ということになる。

Source:DisplaySearch
Source:Twice / DisplaySearch Hikes LCD TV Unit Forecasts
Source:MocoNews

乱暴な話だが、Samsungは2009年にTVと携帯電話で約4億人以上、LGEは約2億人以上の顧客を獲得したことになる。

これら膨大な顧客は、インターネットユーザであり、SNSユーザ、Blogユーザ、FlickrやTwitterユーザでもある。こういったソーシャルメディアスペースに参加するユーザが自分の日常生活や学校、職業に関すること、興味のあるトピック、そしてブランド関連コンテンツを共有している。このコンテンツ共有ネットワーク、コネクション、リレーションズに参加する人々がブランドWOMを拡散している。

そう考えた場合、1年間に4億とか2億といったサイズの顧客を獲得する両社はとてつもない可能性を抱えていることになる。例えば、2007年と2008年の販売台数=既存顧客数を合算すると10億とか5億超といったサイズになる。このサイズのソーシャルメディアスペースのユーザが一斉にブランド関連コンテンツを発信し始めたとしたら...!!!

これら既存顧客をブランドアンバサダーとして活動してもらうマーケティングを考えると夜も寝られない。

2010/01/28

Power of WOM

Industry StatisticsというページがBazaarVoiceにある。

ここは、業界統計、調査情報を集め、Power of Word of Mouth、Consumer Demand for Ratings & Reviews、Marketer Demand for Ratings & Reviews、Consumer Demand for Ask & Answer、Conversion Results、Average Order Value Results、User-generated Content Beyond the Web、Email Campaign Results、Search Engine Optimization Results、Return Rates and Customer Satisfaction、Evolution of Advertising and Media等など、様々な項目を掲示している。

Power of Word of Mouthを見ると2009年のものだけでも10項目以上ある。その中から目についたものを紹介する。(なお、トップに挙げられているのはBazaarVoiceとKeller Fayが2007年に出したものなので除外する)
  • 90%の消費者は知人からの推薦を信頼する。70%は見知らぬユーザが上げるオプションを信頼する。
    Econsultancy、2009年7月
  • 83%のオンラインショッパーは知人との情報共有に興味がある
    Manager Smarter、2009年9月
  • 43.7%の家電製品購買はWOMが影響
    BIG Research、2009年12月
  • 50%は購買する前にソーシャルネットワークで情報を共有した
    (18-24歳は65%)
    eMarketer、2009年10月
  • 10-24%のソーシャルメディアユーザは購買決定に際し、ソーシャルネットワークに意見を求めた
    eMarketer、2009年10月
Source:BazaarVoice / Industry Statistics

以前、WOM(Word of Mouth)をWeb of Mouthと言い換えた。

参考:Susan Boyle Debut Album : Online WOM (Online Ad 2009/08/28)
参考:Listen, Practice and Engage (Online Ad 2009/10/30)

このクモの巣を使ったWOMマーケティングがある。上のようにオンラインユーザのコネクション、リレーション、リコメンデーションが高い効果を上げていることを前提に、Bloggerを使ってソーシャルメディアスペースにシーディングし、ニュートラルをポジティブ、ポジティブから購買意思決定までユーザに影響を及ぼそうとするものだが、FTCの修正ガイドラインにより明確な修正が求められている。

ただし、WOMMAは、FTCガイドラインにWOMMAのガイドラインが何回となく引用され、「スポンサード・コミュニケーションのみがガイドラインの対象となるべき」とされたことを高らかに明示している。本当にそうなるだろうか?

Source:FTC / Final Guidelines
Source:WOMMA / FTC Updates

どうして、企業・ブランドはユーザとの直接対話を忌避するのだろう?それは直接対話を行う人材、組織、予算がないからだ。今までのメディア理解を続ける既存組織がオンラインWOMを使って、効率よく、効果を出そうとし、最終的にBloggerシーディングに行きついてしまう。

しかし、Dellを見ればいい。Starbucksを見ればいい。Twitter、Blog、Facebookアカウントなどからユーザとの直接対話を、すなわち、ブランドのコントロールが効かないスペースにおいて、火の粉、火花どころではなく、炎上しかねない危険を冒しながらも、行っている。

FordのRanger Stationが火に包まれそうになった時、それを鎮火したのはTwitterだ。Blogger ネットワークではない。担当者、Scott Montyが24時間以内に鎮火している。

参考:Ford : Online Monitoring (Online Ad 2009/09/17)

既存組織のままでは、新しい手法、手段の効果は減衰されるだけだ。リスクマネージメントとは、リスクを取らないことではなく、リスクをコントロールしながら最大効果を上げることのはずだが。

2010/01/25

Toyota Risk Management

以前、「Toyota Floor Mat Campaign」というエントリを書いた。

BrandChannelの記事を、
400万台以上のリコールを行っているToyota USAのWebサイトには、大量リコールをうかがわせるものはなく、ただ、「NEWS ALERT Important Information on Floor Mat Campaign」とページ左下に、あくまでも目立たなく小さな告知があるだけだ。
また、昔、FordのPinto/Explorerがメカニカルな問題を隠ぺい、軽視、あるいは危険性公表を怠ったために受けたダメージを例に引き、Toyotaはデトロイト、大昔のデトロイトの流儀に危険なほど似ているとまで書いている。
と紹介した。

参考:Toyota Floor Mat Campaign (Online Ad 2009/12/14)

ところが、先週、Toyotaはまず、米国で230万台のリコールを発表、欧州でもリコールの準備をしているという報道があった。

Source:NYTimes.com / Toyota Issues a 2nd Recall
Source:朝日新聞 / トヨタ、米で新たに230万台リコール

以前、12月14日前後では「NEWS ALERT  Important information on Floor Mat Campaign」だったが、
今回、1月23日は、「NEWS ALERT Imporant information On Safety Recall Campaign」となっている。
そこで上の赤セクションをクリックすると、1月21日付の「Toyota Files Voluntary Safety Recall on Select Toyota Division Vehicles for Sticking Accelerator Pedal」というリリースが読める。今回のリコールを(あくまでも当局の強制ではなく)自発的に行うこと、限定された車種だけに適用され、ごく稀にしか起こらないと説明している。

Source:Toyota.com / Toyota Consumer Safety Advisory

ところがJust-Autoによれば、Toyotaのリコール発表は、ABC Newsがプライムタイムで「意図しない加速問題」を番組で取り上げる数時間前に出されたとのことだ。このABC Newsは、「ニュージャージーに住むKevin HaggertyというToyota車オーナーが車のアクセルの電気系統不具合をToyotaのディーラーに見せ、ディーラーはセンサーとアクセルを取り換えた」ことを伝えたらしい。

Source:Just-Auto / US: Toyota recalls 2.3m more cars as media eyes acceleration claims

今まで構造的な不具合はないとしていたToyotaに、エレクトロニクス系統の不具合の可能性があることを認めさせるような番組が報道される数時間前に、やっと、リコールを発表したというのが真相のようだ。

Facebook、Twitterにおける対応も同じだ。リコールが公表され、顧客・ユーザがFacebook、Twitterに書き込みだして、初めててリコールを告知している。その後、殺到している顧客からの問合せ電話回線がつながりにくいための「謝罪」が来ているが、リコール関係で公式Web以上の情報はない。


こう見てくると、まず企業・ブランドの公式Webサイトで顧客対応や危機管理はできないのが自明だ。顔の見えない者同士が建前だけで言いたいこと、聞かせたいこと、見せたいことを並べ立てるだけの公式Webサイトにおいて、わざわざ突っ込みを入れられかねない事柄、リコール情報を大仰に掲示するわけにはいかない。Web担当も法務、広報、財務など社内組織の複数から許可、承認を受けた上で公式Webページを改訂、更新するしかないわけだ。

しかし、ソーシャルメディアスペースにおいて、そんな建前は成立しない。製品・サービスを購買し、利用している既存顧客にCレベルから語れる言葉はない。製品・サービスを開発、検証、販売、保守している担当者の言葉がなければ既存顧客に届く言葉とはならない。対応を受けた顧客がそのコンテンツを他ユーザと共有するだけに、オープン、対等、双方向のメッセージでなければ意味がない。

また、オープンなソーシャルメディアスペースでは、企業・ブランドがアナウンスする前に情報感度の高いユーザは最新情報を複数サイトにあっという間に書き込む。そのユーザの友人やフォロワーは、自分のフォロワーに転送、共有する。全体トレンドの方向性を決めかねないほどのパワーが発揮されるスペースだ。そのスペースで後出しでは、告知効果もしれている。

だからこそ、FacebookやTwitterといったスペースで真摯に顧客・ユーザと直接対応しなければならないはずだが...?

2010/01/12

Lessons from Lenovo

The ConsumeristにLenovoのカスタマーサービスを取上げたエントリ、「Lenovo Ignores Customer, Waits For Gift To Reach Wrong Destination」がある。

12月4日、父親のためにLenovoのThinkPadをオンラインで購入した消費者は、まず自分が住むシカゴにThinkPadを送らせ、セットアップ後、19日にデトロイトに住む父親に届けようとしていた。父親へのXmasプレゼントが台無しになってしまったLenovoとのやり取りの一部始終を読んでいただきたい。

December 7th: The shipping date changes to the 12th. I start to get nervous.

December 9th: The shipping date changes to the 22nd. I send M. an email asking why there is a slip in the date and seeing if there is anything to be done. No response.

December 11th: I call M. and leave a message. No response

December 14th: I call M. again and leave a message. She calls me back and we agree that the best course of action is to have it shipped to a different address. I give her this address, and she says that I'll get a couple of emails over the next few days saying that they have to cancel the order and reissue it to change the address. This seems overly complicated, but hey, if it gets me what I need I'll go with it.

December 16th: I get a shipping confirmation (Woh! Ahead of schedule). Unfortunately, it's to the wrong address. So, I call M. No response.

December 17th: Call to M. No response. Package is spotted in Japan.

December 18th: Call to M. No response. Package is spotted in Alaska

I decide to change my plans and come back on Monday in foolish hopes of getting the computer.

December 21st: Call to M. Package is in Louisville. I call UPS to see if I can have it "predirected", they say I have to wait until they make a delivery attempt or the sender redirects. M. calls back to say that she's put in the request for redirection. I go back to Michigan.

December 22nd: Package is in Louisville getting cleared through customs.

December 23rd: Package is on its way to Chicago and ready for delivery.

December 24th: My neighbor emails me the info notice number so that I can redirect it. I don't have the option on line, so I call. They tell me that they can't redirect it because the sender won't allow it.

Merry Christmas. My dad got a box with a tracking number in it. (Also, Buy.com canceled the laptop stand that I tried ordering for him, so he had nothing under the tree.)

December 26th: I call UPS and they tell me that I need to either freeze it at the warehouse or they'll ship it back.

December 28th: I call M. again. No response. I call another number and wait on hold for 45 minutes and am told by a rep and supervisor that the redirect request was made on the 24th and it takes 2 business days to get processed, so look for the change on the 29th.

December 29th: No change in UPS. No response from M.

December 30th: See December 29th.

So, what do I do here? The laptop is 60 minutes away from my house, and 5 hours away from where it needs to be.”

Source:The Consumerist / Lenovo Ignores Customer, Waits For Gift To Reach Wrong Destination

Consumer Reportsを配信する非営利団体Cosumer Union(寄付などによる年間予算規模2億㌦、職員数600名以上)の子会社、Consumer Media LLCが運営するConsumerist.comに、ここまでボロボロのカスタマーサービスの現状を晒されたLenovoに残されているのは...?

考えるべきは;
  • 担当者にとって対応する消費者は1人だが、その背後には英語がわかる数億のインターネットユーザがいること
  • その数億のインターネットユーザは英語圏だけではなく世界200カ国以上に存在すること
  • 担当者の消費者対応はクローズなコミュニケーションではないこと
  • 企業・ブランドの消費者対応はオープンで累積されてゆくこと
  • 累積された対応・コミュニケーションは世界中から検索されること
  • そして、リアルタイムの対応・コミュニケーションも世界中から検索されること
  • もはや企業・ブランドがコントロールできる情報・コンテンツなど存在しないこと
  • 情報・コンテンツをコントロールしているのは消費者・ユーザであること

  • これを理解、把握しない企業・ブランドは蚊帳の外ではなく、オンラインに存在できないこと
  • 営々と築いてきたブランド評価、価値はオンラインにないこと
  • オンラインに存在しない企業・ブランドに価値はないこと

  • Cレベルの理解を促進しない限り、ボトムアップする時間は残されていないこと
  • Lenovoから学ばない限り、2010年以降、企業・ブランドに未来はないこと
  • ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ (○に思うこと、考えることを挿入してください)

2009/11/02

Online Friends & WOM

9月に「Social Media Trends」でGlobal Web Indexのデータを紹介した。

参考:Social Media Trends (Online Ad 2009/09/09)

あれば、6月にアップされたものだったが、そのGlobal Web Indexが9月にFuture WebというデータをSlideShareに挙げている。

その中に特に目を惹いたデータがいくつかある。

まず、ブラジル、中国、ロシア、英国のTVとWeb消費時間を比較したものだ。スライドのヘッドラインとして、「UK - less time online」とはあるが、それはブラジル、中国、ロシアと比較しただけの話だ。英国でも毎日オンラインの消費時間がTVでの消費時間が上回っている。ロシアなどはTV消費時間が119分なのに対して、オンラインは217分、82%も上回っている。中国もTV消費時間は146分に対してオンラインは232分、59%も上だ。ただし、ブラジルはTV消費時間が223分に対してオンラインは219分。若干、TVが上回っている。

また、対面友人よりもソーシャルネットワークの友人の方が多いというデータもある。中国は24.1人の対面友人に対して51.5人のソーシャル友人。国土の広さを考えれば中国特有のパターンとも言えなくもないが、英国でも対面21.4人に対して49.3人だ。どの国でも対面より、ソーシャル友人の方が多い。
次にもうひとつ面白いデータがある。Facebook、LinkedIn、Twitterのコネクションに対して、「今日、ビールでもどう?」と電話するのはFacebookで9%、LinkedInは3%、Twitterに至っては、0.3%しかいないという事実だ。
そして、最も正確な情報を提供してくれるソースとして信頼する3番目にソーシャルネットワークのコンタクトが入っている。

:先週末、紹介したeMarketerの元ネタがGlobal Web Indexだ。先週は
「ソーシャルネットワークのコンタクト」が隣人の3.2と同率で4位になっている。
と書いたが、どうやら3.0にも届いていないし、同率でもない。

参考:Listen, Participate and Engage (Online Ad 2009/10/30)

なお、彼のスライドの9ページめに以下がある。「Sony Ericsson w960iで検索すると10個中、10個はソーシャルメディア系だ」と検索結果を示している。

そんなことはない。Google.comであろうと、Google.co.ukであろうと最初に来るのは、Sonyericsson.comだ。他にもソーシャル系ではない結果が出てくる。どうしてこんな説明をするのだろう。それとも、Sonyericsson.comサイトそのものがソーシャルサイトだとでも言うのだろうか?と、先週末にSlideShareのページにコメントしておいたが、今日時点で、まだ返事はない。
Source:SlideShare / Global Web Index - Future Web

TV消費時間よりもオンライン消費時間の多い消費者が増え、対面友人よりもソーシャルネットワークでの友人の方が多く、そのソーシャルネットワーク内でのコンタクトの大半は顔も知らない赤の他人だ。そして、その顔も知らない赤の他人の言葉は、家族や親友の次に信頼できるとされている。

もうカビの生えた固定観念は払拭しなければならない。カビで覆われた目から見えるものはない。カビで隠された耳から聴けるものはない。そして、カビで包まれた身体では新しい歩みを踏み出すことはできない。

2009/10/30

Listen, Participate and Engage

10月27日付けeMarketerのニュースレターに「American Brands that Inform」がある。

「ブランドが実行できる米国インターネットユーザにとって最も適した、受け入れられやすいアクション」として以下が挙げられている。当然、「値引き」が五段階評価の3.9でトップ、2番目から5番目まではブランドがやらなくても済む話だが、6、7、8、9、11番目になると、如何にユーザがブランドとエンゲージしたいかが分かる。
  • 6位:ユーザに適した場所に広告する
  • 7位:ユーザが企業・ブランド、あるいはスタッフとやり取りできるプラットフォームを作る
  • 8位:ユーザが製品を使えるライブイベントを開催する
  • 9位:オンラインコミュニティを作る
  • 11位:ユーザが他のユーザと会えるリアルなコミュニティを作る
そして、「米国インターネットユーザが製品購買意思決定のために情報を収集した信頼できるソース」として以下が挙げられている。ここでも当然、家族が五段階評価の4.2でトップ。親友が4.1、業界エキスパートが3.8と来て、「ソーシャルネットワークのコンタクト」が隣人の3.2と同率で4位になっている。基本的に顔の見えない「ソーシャルネットワークのコンタクト」が、顔の見える隣人と同率の信頼を獲得するところまで来ているのが分かる。
Source:eMarketer / American Brands that Inform

プラットフォーム、イベント、コミュニティを作って、ユーザとエンゲージしてくれと言われている企業・ブランドに「聞き耳」戦略がなければ、これらユーザの要望を知ることもできない。それらのスペースで語られるお金に代え難いユーザの意見、アドバイス、批判を無視し、見逃すことになる。

そして、そうこうしている間に、製品購買意思を決定する情報収集プロセスに大きな比重を占めつつある「ソーシャルネットワークのコンタクト」からブランドが語られている。この「ソーシャルネットワークのコンタクト」は、どこからそんな情報を仕入れているかというと、マスメディアもあれば、ソーシャルメディアもある。対面WOMもあれば、オンラインWOMもある。ただ、企業・ブランドがソーシャルメディアスペースに参加し、Facebookファンページでユーザとエンゲージしていたり、Twitterでつぶやいていればいるほど、そのコンタクトがブランド情報を仕入れやすくはなる。

Susan BoyleのファーストアルバムをTweet/RTしたり、Southwestのバックパック話をリレーしている数多の「ソーシャルネットワークのコンタクト」を考えると、対面WOMよりも各種制限がなく、世界中に広がるオンラインWOMが一層、パワーを持ってくることは明らかだ(本BlogでWOMとは、Word of MouthやWorld of Mouthではなく、Web of Mouthを言う)。

参考:Susan Boyle Debut Album: Online WOM (Online Ad 2009/08/28)
参考:Southwest: Brand Royalty (Online Ad 2009/10/26)

そして、ソーシャルメディア専任担当者がいる企業・ブランドは、Facebookでも、Twitterでも、ユーザと対話しながら、ブランド体験を広めてゆくことになる。

2009/10/29

Online Consumer Behavior 2009

先週、Top Brands by Social Mediaを書いた。

参考:Top Brands by Social Media (Online Ad 2009/10/20)

そこで引用したReadWriteWebの記事末尾に、次のような記述がある。
ところで、ソーシャルメディアスペースにおけるMcDonald's、Marlboro、そしてToyotaに関するコメントは一概に否定的だ。

WildfireがTealeaf向けに行った別の調査によると、英国成人の74%は、製品やブランドに関する否定的なコメントは、その会社に注文する見込みに否定的に影響すると応えている。
Source:ReadWriteWeb / The Top 3 Brands by Social Media Presence

ということで、Tealeafの調査データを見てみると、この74%というのは、「オンライン注文時にWebトラブルを経験した成人1,651人」のうち、「オンラインで否定的なコメントを読むと74%は、その会社に注文する見込みに影響する」ということだった。
そして、
  • 78%はオンライン注文時にトラブルを体験した場合、それを他人と共有する
  • ユーザは、特にソーシャルメディアスペースでの友人・知人を信頼する
  • 56%は悪いレビューを読んだ後、そのベンダーへの注文をやめる
ただし、悪いことばかりではない。
  • 52%は良いレビューを読んだ後、そのベンダーへ注文した。
アドバイスとして;
  • 企業Webを顧客がどのように利用しているか、なぜ顧客がトラブルにあうのかモニターしろ
  • 顧客の声を聴き、Webサイトに何を望んでいるのか話すように仕向けろ
  • いかなるWebサイトの問題にも迅速に対応し、大多数の顧客に影響が及ぶ前に問題を解決しろ

  • ソーシャルメディアスペースで体験を共有する際、33%はベンダーからのレスポンスを期待している
最後の一枚に3つのキーワードがある。
Source:Tealeaf / 2009 Survey of US Online Consumer Behavior

この頃は、どうやらどこを見渡しても「オンラインモニタリング」から逃げ出せそうにない。

モニタリングしていなければ、どれくらい否定的なコメントがソーシャルメディアスペースに充満しているのか、どのルートで拡散しているのか、そして、一体全体、何が原因なのかも分からない。また、どのような対処を行うべきかも分からない。

最もクリティカルなのは、ベンダーからのレスポンスを期待する33%のユーザを無視、拒否していることも分からないことだ。なぜなら彼らはブランドとエンゲージしようと待っていてくれるからだ。

2009/09/30

Ford Social Media Strategy

つい先日、「Ford: Online Monitoring」で、Twitterを使い、八面六臂の大活躍をしたFordのGlobal Digital and Multimedia Communications Manager、Scott Montyを紹介したばかりだが、その彼が、9月21日に開催されたOMMAの基調講演で発表したFordのソーシャルメディア戦略という資料がある。

参考:Ford: Online Monitoring (Online Ad 2009/09/17)

Source:SlideShare / Zero to 60: Social Media Strategy via Ford
Source:ViralBlog / Ford's Social Media Strategy - OMMA Keynote

詳細はスライドを見ていただくとして、中ごろに以下のスライドがある。
Strategy: to humanize the company by connecting consumers with Ford employees and with each other when possible, providing value in the process.
顔の見える企業・ブランドへ変革するという今、一番、重要で必要な認識と戦術だろう。

そして、FacebookにあるFordのエコ・グリーンキャンペーン用アプリも紹介されている。アクセスしたユーザ一人ひとりが自分にできるエコ・グリーン対策を書き込み、それを他のユーザが評価することができる。すでに24,000人以上が書き込んでいる。そして、それはユーザのプロファイルに表示することもできるため、彼らの友人コネクションへも広がってゆく、Fordのブランド、キャンペーンと共に。
(クリックでページへ)

昨日、「Social Media Tips from Kodak」を書いたばかりなのだが、Fordのソーシャルメディア戦略からも米国の大手グローバル企業が本格的にソーシャルメディアマーケティングを導入し始めていることが分かる。

参考:Social Media Tips from Kodak (Online Ad 2009/09/29)

上の参考資料でKodakは、ソーシャルメディアに関する3つの誤解、神話を挙げていた。
  • ソーシャルメディアはガキ向けだ
  • 米国では人気になっているが世界ではまだまだだ
  • ソーシャルメディアはビジネスで使えない
と、他国の企業・ブランドが思っている間に、米国グローバル企業・ブランドは後姿が見えないほど先へ行ってしまう。

2009/09/17

Ford: Online Monitoring

先日、アップした「Twitter Report」の「Branding & Awareness」にFordを取上げた。

参考:Twitter Report (Online Ad 2009/09/11)

そのFordのケーススタディを詳しく見てみたい。
















まず、2008年12月9日、18:10、Ford RangerのファンサイトであるThe Ranger Stationから火の手が上がった。














その種火は、Fordの法務部門からサイトへ送られた「警告状」だ。これはサイトオーナー、Jim Oakesに対してWebを閉鎖、URLを返上し、5,000㌦を支払えというものだ。何が何だか分からないJimは、サイトのユーザフォーラムでうっぷんをぶちまけたところ、その後の22時間で916回のレスポンスを受けた。この火種はWeb、Blog、フォーラム、SNS、Twitterと様々なチャネルを通して延焼していった。

12月10日、5:30、Fordのグローバルデジタル・マルチメディアコミュニケーションマネージャ、Scott Montyは通常通り、Twitterをチェックしたところ、ひとつのTweetが1:30から待っていた。
上は、Jim OakesのオリジナルエントリをアップしているFordの別ファンサイト、FocalJetへリンクされている。別にScottには別のファンサイト、Mustang Evolutionにある類似エントリを知らせるDMもあった。野火がファンサイトからファンサイトへ飛び火、延焼していた。FordのカスタマーサポートセンターにはJimのオリジナルエントリを出火場所とする1,000通以上の苦情emailが殺到していた。

Scottは午前中一杯、内外の状況把握に努めていた。そのステータスをTwitterで発信している。
そして、彼は、ある程度、状況が把握できた時点で下のTweetを行っている。これが最初の消火活動となっている。それは「fordファンサイトに関する法的手段に関して関心を寄せる方へ:現在、法務と問題解決の交渉中」というメッセージもそうだが、画期的なポイントは、「RT乞う」というメッセージだ。
その時点でScottのフォロワーは5,600人。そのうち19人が彼の要請に応えてRTした。その19人が抱えていたフォロワーは13,400人。

その後も、Scottは法務からのフィードバックを供給し続けている。曰く、「法務からは全く別の話が分かってきた」、「サイトオーナーからチャンと返事がもらえていなかった。これにはもっと深い問題がある」「サイトで偽物が売られていたことが分かった。URLに関しては調査中」
ScottはTweetの間に社内の法務とコンタクトして、「サイトでFordのロゴを付けた偽物が売られていたという警告状送付の理由、URL返上・サイト閉鎖や5,000㌦要求は法的手段に訴えるという脅し」だったことを確認している。

ようやくここまで原因調査や火災消火の方法、今後の対処などが決まると、ScottはJime Oakesに直接、電話している。これまでの状況を説明し、これからの対処を説明し、Jim側の話も聴取している。双方が対処方法に納得したのち、ScottはTweetしている。
その後もTweetを続け、Scottが鎮火を宣言したのは翌日の2:29だった。Ranger Stationでの発火から鎮火まで、22時間26分かかったことになる。

Source:RonAmok / Ford, Fansites, and Firefighting
Source:RonAmok / The Ranger Station Fire: How Ford Motor Company Used Social Media to Extinguish a PR Fire in Less Than 24 Hours.

Ron Amokは、
  1. Everything is Public
  2. Company don't talk: People do
  3. Without Support: New Media Fails
を挙げてまとめとしている。

Ron Amokは、上の3点を挙げ、下の7点を比較してROIを出せとしている。
  1. Scott Montyはこの問題解決にあたり19時間を費やした
  2. 彼は問題の原因調査を主導した
  3. 彼は複数のミーティングを開催した
  4. 彼は複数の電話をかけた(サイトオーナーJim Oakesへも)
  5. 彼は138回、今回の問題に関してTwitterにメッセージをアップした
  6. 彼はフォロワーに助けを請い、フォロワーは合計32,332人へメッセージを転送した
  7. 彼は今回の問題を24時間以内に完全鎮火、解決した
これらにかかったコストと、今回の問題が解決されず放置され、オンライン史上最大の大火となり、販売台数減少、ブランドイメージ・価値・評価が地に落ち、マスメディアを駆使した販売・イメージ回復キャンペーンに費やした総コストを比較した場合、そのROIはどうなるのかと。

彼の3点に
  1. ソーシャルメディアスペースにおけるリスク管理
  2. オンラインモニタリングの重要性
  3. RT (ReTweet)効果
  4. ソーシャルメディアマーケティングの人員・組織・予算化の必要性
を付け加えたい。

特に、リスク管理にソーシャルメディアを取り込んでいる米企業もまだ13%でしかない。ハドソン川の奇跡を伝えたTwitterが、企業に牙をむくのは今日かもしれない。
Source:Source:Russell Herder / EMBRACING THE OPPORTUNITIES,
AVERTING THE RISKS

2009/09/04

Social Media Opportunities and Risks

Russell HerderとEthos Business Lawというところから、「Social Media: Embracing the opportunities, averting the risk」という資料が出ている。2009年6月に米国の438人のマネージメント、マーケティング、人事担当役員に調査を行ったものだ。

それによると、81%は「ソーシャルメディアが消費者・顧客との関係強化」、そして「企業のブランド構築」に価値があると答えている。
次によく使われているソーシャルメディアとしてFacebookが80%、Twitterが66%となっている。Yammer(企業向けマイクロブロギング)も11%使われているのでTwitterと合わせてマイクロブロギングは77%となる。Facebookと肩を並べる利用率だ。
そして、なぜソーシャルメディアを使うかというと、「自社に対して消費者が何を言っているかを知る」が52%、「競合企業のソーシャルメディア利用をモニターする」が47%だ。ソーシャルメディアスペースのユーザが何を語り、競合が何をしているのかを知ろうとしている。どちらも聞き耳を立てる話だ。
さて、今後、ソーシャルメディア利用を増やすのか、維持するのか、減らすのかも訊いている。「増やす」のは73%、「維持する」が25%だ。
Source:InternetNews.com / Survey: Business Lack Social Media Policy
Source:Russell Herder / EMBRACING THE OPPORTUNITIES,
AVERTING THE RISKS


このように米国企業は、ソーシャルメディアを活用してブランド構築や消費者との関係強化を目指している。もちろん、競合他社の動向をチェックすることも忘れてはいないし、自社ブランドに対して何を言われているかを聞こうとしている。

今週の初めに「Online Monitoring」で書いたように、兎にも角にもモニタリングが重要なことは間違いない。

参考:Online Monitoring (Online Ad 2009/08/31)

2009/09/03

Gap campaign without TVCF

Gapの「Born To Fit」というキャンペーンが始まっているとClickZが伝えている。

新しいキャンペーンにTVCFは含まれず、Gap始まって以来という規模でのオンライン広告とソーシャルメディア、特にFacebookを活用したものになるそうだ。オフラインとしては印刷媒体、映画館、屋外広告で、全てがFacebookにあるGapのページへトラフィックを誘引するものとなる。キャンペーンは8月13日に始まっている。

Gapのデジタルエージェンシー、AKQAのディレクター、Julie Channingによれば、「消費者がファッションについて語っている場所(ソーシャルメディアスペース)でリーチ」することが大きな目的で、「ファッションに興味がある人にリーチし、オーディエンスに影響を与え、Gapに懐疑的な人にもGapがどうやってこのデニムを作り上げたかを話し始めてもらいたい」わけだ。

そのため、Facebookを今回のキャンペーンの中心に据えている。

(クリックでサイトページへ)
Source:ClickZ / The Gap Steps Up to Social Media in New Denim Campaign

何もファッションに限らず、ターゲットオーディエンスに訴求したいと考えているB2C/B2Bブランドは、そのオーディエンスが集う、見る、読む、観る、聞くメディアに予算を投下してきた。露出回数を稼ぎ、フリーケンシーを稼ぎ、アーリーアダプターに愁眉を送ってきた。

しかし、そのターゲットオーディエンスはレガシーメディアも消費してはいるが、そのメディア消費の大半がソーシャルメディアとなった今、どこに予算を配分するかは明白だ。

最後に、今回のGapのキャンペーンには成功度を測る数的なベンチマークは設定していない。逆に「ブランドと消費者がどれくらいやり取りをするか」を見守ることにしているらしい。

初めてソーシャルメディアスペースとそのユーザに対してブランドコンテンツを露出するわけだから、同業他社のケースをそのまま踏襲するわけにはいかない。それほどナイーブでも傲慢でもないのは当然だ。これはひとえにソーシャルメディアスペースが、今までのメディアスペースとその住人達とはまるで違うことを少なくとも認識していることを示している。単純に、露出チャネル・数、頻度、累積時間など従来のメディア指標で、新しいメディアを測ることができないことも理解していることを示している。

2009/09/02

Viral Video and Twitter

4分を超える長尺だが、「PSA Texting and Driving 'COW' taster 001」というビデオに注目が集まっている。



上のビデオの視聴回数は174万回を超えており、YouTubeには4分フルのものから1~2分に編集されたビデオがいくつも上がっている。Break.comでは「Don't text and drive」として上がっており、視聴回数は約69万回にも上っている(8月29日時点)。

Viral Video Chart(YouTubeだけではなく、Break.comなど他のビデオサイトもモニターしている)ではここ一週間はトップ10に入っており、総視聴回数は385万回を超えている。なにより746のBlogがこのビデオを取上げ、9,231個のコメント、1,692個のTweetsが記録されている。(8月29日時点)

Source:Viral Video Chart

このビデオは英国のGwent Police Authorityが、全てのドライバーの交通事故撲滅、特に若年層や初心者に運転中の携帯電話操作の危険性を強く警告するために作成したものだ。

Source:Gwent Police Authority

ところでこのビデオがバイラル化した原因として、まず考えられるのは、実際の事故かと思わせるほどのリアルで衝撃的な映像がある。しかし、どんなにコンテンツが素晴らしく、感動的で、あるいは衝撃的なものであったとしても、それを伝えるチャネルがなければ画に描いた餅に終わってしまう。

バイラルビデオに関するTubeMogulの調査ではリフェラルトラフィックの大半はBlogからとなっている。(この調査にTwitterは含まれていない)
  • 80.88% Blog
  • 11.18% 検索エンジン
  • 3.66% ソーシャルネットワーク
  • 3.19% ソーシャルブックマーク
  • 0.63% ビデオ検索エンジン
  • 0.05% Email/IM
参考:Asics Viral Video Campaign (Online Ad 2009/06/30)

だから今までビデオのバイラル化を目指す場合、いかにしてタッチポイントを増やすかに各マーケターは注力していた。いかにして多くのBlogに取上げてもらうかが主眼だった。そのため、746のBlogが取上げ、9,231個のコメントを獲得している今回のビデオもバイラル化したといえる。

しかし、それを上回る効果を上げたのはTwitterだろう。1,692回もTweetされたコンテンツは、それぞれのTwitter達が抱えるフォロワー達に広がる。数人のフォロワーしかいないTwitterもいれば、数千人、数万人を超えるフォロワーを抱えるTwitter達もいる。このコネクションの広がりは、ビデオを取上げたBlogの数を凌ぐ。

今後、ビデオのバイラル化にTwitterは欠かせなくなるし、ひょっとするとBlogの影響力を上回る効果を発揮する可能性が高い。

2009/09/01

SAS Globe of Fortune

SASがFacebook Connectを使ったオンラインゲームというか、オンラインコンテストというか、無料で航空券が当たる懸賞抽選サイトを立ち上げたとAdverblogが伝えている。

ただし、このゲームに参加し、航空券をゲットするには18歳以上でFacebookに25人以上の友人を持っていることが条件だ。また、出発地はSAS便が出ているところで、こちらで勝手に別なところを決められない。それと一緒に旅行するFacebookの友人が必要だし、二人で一緒に旅行する動機を書いて送らなければならない。
(下をクリックでサイトへ)
sas_global_fortune02.jpg
こんなに面倒でも、当たったら気の合う二人でタダ旅行を楽しむことができる。
ただし、受付は8月31日、そう、昨日までだったのだが。
sas_global_fortune03.jpg
Source:Adverblog / SAS Globe (Facebook) of Fortune

Facebookにページプレゼンスを持っていないSASにしてもFacebookを使ったマーケティングを開始している。というか、開始せざるを得ないのだ。

ターゲットがどこにいるかを考えると、それはTVでも、新聞・雑誌でも、メディアのWebサイトでもない。ターゲットはソーシャルメディアスペースにいるわけだ。そして、そのソーシャルメディアスペースはユーザの友人コネクションを通してコンテンツ露出を共有し、再露出してくれるスペースとなっているわけだ。

それさえ理解すれば、後は露出方法だけといってもいい。

なお、このAdverblogのエントリページ末尾にKorean Airが広告を載せていた。クリック先は言わずもがなのKorean Airの公式Webサイトだ。DoubleClickというかGoogleのアドネットワークによってKorean Airの広告が、SASのコンテストを書いているAdverblogに配信されたということだ。

SASのFacebookというソーシャルメディアスペースを活用したキャンペーンと比べると、正統派のトラフィック誘引広告だ。それでも広告さえ出していない、いや、出せない他国の航空会社と比べればまだ、いや、ずっとターゲットユーザがどこにいるかを理解しているということになる。

2009/08/28

Susan Boyle Debut Album : Online WOM

8月27日の朝、筆者のFacebookにSusan Boyleからのアップデートがあった。「デビューアルバムの予約受付がPlay.comでできます」というアナウンスだ。

Susanのページにアナウンスがあってから9時間で4,729人が「like(お気に入り:日本語UIでは『いいね』)」とし、すでに409人がコメントを寄せている。
アルバムの申し込みをしたい方は下からどうぞ。
(クリックでPlay.comへ)
一時期の熱狂的なフィーバーからすると毎日数千人のファンが離れていたが、Susan BoyleのFacebookページには現在でも186万人のファンがついている。(8月27日時点)

今回のアナウンスでFacebookユーザ、彼女のFacebookファンの間のみならず、BlogやTwitterで発生するオンラインクチコミは世界中を巡るだろう。

筆者もTwitterで2つほどコメントしておいた。
その後、Twitterでの「Susan Boyle」に関するつぶやきはどうなっているかと検索してみた。驚いたことに、最初のTweetから1分後に、DreamerTweetsがRTしている。そして、その39分後には、citytravelbugがvia DreamerTweetsということでまたRTしていた。
DreamerTweetsには143人のフォロワーがいる。そのフォロワーの中には2,026人のフォロワーを持つtshirthellcindyや、787人のフォロワーを持 つmandysrandyなどがいる。また、パリ在住のcitytravelbugには1,457人のフォロワーがいる。そのフォロワーの中には1,211人のフォロワーを持つsnookerstや、4,017人のフォロワーがいるAdrianEdenなどがいる。

DreamerTweetsやcitytravelbugがRTしたことで、彼らのフォロワーに筆者のコメントがそのまま表示されてゆく。リンクを クリックすることでFacebookのSusan Boyleのページが筆者のフォロワー、彼らのフォロワーへ露出されてゆく。

一面識もないDramrollから発信されたつぶやきが、DreamerTweetsやcitytravelbugへ伝わり、彼らがRTしたことで、彼らのフォロワーにも伝わってゆく。これが「Social Media Revolution」の中で語られている「Word of MouthからWorld of Mouth」への進化だ。対面WOMからオンラインWOMへの進化だ。

参考:Socila Media Revolution (Online Ad 2009/08/19)

Facebook、Twitter、Blogなどのソーシャルメディアスペースで世界のインターネットユーザは幾重にもクロスし、メッシュしながらコネクションがつながっている。オンラインWOMが急拡大していくことは自明の理だ。

そう考えるとWOM=Word of MouthやWorld of Mouthではなく、Web of Mouthといったほうが正しいのかもしれない。

そしてのこのWOMは世界中で発生している。PCからのTwitterトラフィックだけでも4,400万人のユニークユーザがいるが、北米からのユーザはその半分でしかない。残りの2,200万人は欧州から1,100万人、アジア・パシフィックから700万人、南米から400万人だ。

これに携帯や他のモバイルデバイスユーザが加わることになる。

Source:Sillicon Alley Insider / Chart of the Day

このオンラインWOMは、マーケティング戦術としても、広報・PR戦術としても使える手段だ。しかし、それにも関らず、日本の企業がグローバルなブランディング戦術として今までに使った例はない。

なんともったいない。

2009/08/27

SimpliFlying Answers to UA Breaks Guitar

Bad Reputation Fly Highで、United航空のブランドイメージを失墜させたDave Carrollの話を紹介した。

参考:Bad Reputation Fly High (Online Ad 2009/07/29)

すると、SimpliFlyingを書いているShashank Nigamが、「業火に包まれたPRに対処する10個のソリューションをUnited航空に提供」するため、詩を書き、友人に書いてもらった曲をビデオ化してYouTubeにアップしている。


Source:SimpliFlying / SimpliFlying releases The Answer in response to "United Breaks Guitar" by Dave Carroll, the de-facto CMO of United Airlines

これがUnited航空に届き、理解してもらえるかは別物だが、United航空以外の航空会社が、もし、同じようなトラブルを抱えてしまったとき、何がベストなソリューションになるだろう。

答えは簡単だ。Dave CarrollのYouTubeビデオにリプライビデオを返すことだ。窓口担当者ではなく、CMOでも、CEOでもいい。直接、オープンで対等なスペースで対話することだ。

すでに2年前、JetBlueは嵐、豪雪による航空機の運行を休止、停止したことにより、乗客に多大な迷惑をかけたトラブルに対して、CEOのDavid Neeleman自身が謝罪し、再発防止策、返金などを説明している。


参考:JetBlue: Our Promise to You (Online Ad 2007/03/08)

2年も前にあったPR、ブランドイメージトラブルを航空会社は学習していない。ただし、学習していないのは何も航空会社に限った話ではない。

2009/08/24

Mobile Performance

Dynamic Logicからモバイルのブランディング効果についてデータが出ている。

まず、eMarketerのデータを示し、モバイルブランディングを忘れていませんかと注意を喚起している。
今年のモバイル広告総額は全世界で50億㌦、2011年には3倍になると予想されている。が、その87%がダイレクトレスポンス(DR)に当てられており、ブランディングは13%でしかない。

マーケティングに欠けているところはありませんか?まず、モバイルを全くやらないこと、次にDRにしか使っていないこと。
ということで、米と英で調査されたモバイル広告のブランディング効果を示している。

対象業界は、アルコール、自動車、家電、消費財、エンタメ、金融、小売、通信、旅行で、モバイルキャンペーンを露出した調査対象と、非露出グループを比較すると、モバイル広告はPurchase Funnel (購買行動プロセス)でブランド指標を向上させる効果的なメディアだという結果が出ている。

Source:Dynamic Logic / First Look At Mobile Performance

Dynamic Logicは、
モバイルデバイスを持っている26%しかインターネットにアクセスしていない。しかし、プロバイダが利用を促進するような料金・サービスパッケージを提供し始めるので、WAPを使ったモバイルのブランディングキャンペーンを行い、よりターゲットされたオーディエンスにリーチできる
と書いている。

しかし、本当にこれから考えなければならないのは、モバイルSNSやTwitterだ。例えば、「24時間、最大距離30㌢(寝ている時の携帯との距離)」というメディアである携帯は、オンラインWOMのソースで、Facebook村の井戸端拡声器でもある。ピーチク、パーチクとさえずる口さがない雀の群れが集まる大木にどうやって一緒に雨宿りさせてもらうかという問題だ。

メディアとしての影響度・力だけではなく、その利用スペースを考えれば考えるほどモバイル、携帯をこれからのマーケティング戦略の中心に据えるしかない。

2009/07/08

Face to Face WOM to Online WOM

EIAAから初めての「Media Multi-tasking Report」が出ている。

それによると、TVとインターネットを同時に利用しているマルチタスカーが増えている。欧州では2006年からすると38%増で全体の22%に達している。

マルチタスカーのプロファイルを見ると;
  • その大半は35歳以下
  • 複数メディアをいつも利用するユーザの4分の一(25%)は、デジタルユースカテゴリ(16-24歳)に属する
  • その29%は「Golden Youth(25-34歳:インターネットのヘビー+エンゲージユーザ)」に属する
  • 45-54歳のマルチタスカーは13%、55歳以上は11%にしか過ぎない
ただし、
  • 55歳以上の「Silver Surfer」も複数メディアを同時利用するようになってきたデモグラフィックスに属する
  • 2006年からするとメディアのマルチタスキングが75%も増えている「Silver Surfer」は今後の重要なターゲットを構成する
ということだ。

さて、TVおよびインターネットのマルチタスカーと、それ以外のインターネットユーザにおけるインターネット活動の差を見てみる。SNSとIMでの差が大きい。マルチタスカーはSNS(53%対33%)、IM(51%対27%)を含み、すべてのインターネット活動で非マルチタスカーを凌いでいる。いかにマルチタスカーがヘビーなユーザ、コミュニケーターであるかが分かる。

次にTVおよびインターネットのマルチタスカーはそれ以外のインターネットユーザと比べ、製品やサービスの調査・購入検討時に、企業・ブランドサイト、価格比較サイト、そして製品レビューサイトからの情報法をより多く入手している。
また、TVおよびインターネットのマルチタスカーの半分(48%)は、それ以外のインターネットユーザ(36%)と比べ、ブランドに対するマインドを活発に変えているそうだ。

Source:EIAA / Media Multi-taskers (pdf)

EIAAは、上述の「ブランドに対するマインドを変えている」という点から、WOMから「WOW(Word of web)」へ急速に移行していると結論づけている。

対面WOMからオンラインWOMへという流れがようやく検証されてきた。上述の企業・ブランドWeb、価格比較、レビューサイト以外にも、Email、IM、SNS、Blog、チャットなど多くのコミュニケーションチャネルでブランドが語られている。対面WOMの情報ソースは既存のレガシーメディアだけではなく、オンラインメディアでもあるし、オンラインのコンテンツが増えてきているのは間違いない。

ブランドのコントロールできないコンテンツがオンラインで消費されている現状で、レガシーメディアを使ったコントロールも、既存のPRフローも効果はない。

オンラインでのブランドコンテンツをいかに効率よく、露出、消費、共有、再露出へつなげるかが最も重要になってくる。また、オンラインでのブランド評価をどのように保護、管理するかも課題となってくる。コンテンツ消費をモニターすることがまず重要だが...?

2009/06/01

Susan Boyle - Final

2009年のBritain's Got Talentの決勝戦が終わった。結果はDiversityが優勝、賞金10万ポンドを獲得し、エリザベス女王の前でパフォーマンスを披露することになる。

予選、準決勝でも一糸も乱れぬダンスパフォーマンスを披露していた彼らが最後の栄冠を手にするのは当然だっだのかもしれない。

Susanは予選でのエントリ曲、「I Dreamed A Dream」を再び歌い、会場を沸かせたが残念ながら予選ほどの圧倒的な力はなかった。緊張が窺える硬い表情もあり、予選時に彼女の体全体からほとばしり出ていたパワーが消え、声自体の幅や深み、そして伸びに欠けていた。準決勝後のトラブルが後を引いていた。

出生時の低酸素症による脳への軽い障害を持ち、幼いころからイジメにあい、両親とともに過ごしてきた彼女の人生を一変させた2009年のGritain's Got Talentが終わった。Susanの勇気と歌声に大きな拍手を送りたい。

Source:DailyRecord / Exclusive : Susan Boyle's first ever song ...

さて、Facebookにある彼女のページには7件の書き込みがある。それに対して合計で70,740件のコメント、313,102回「Like」がクリックされている。(5月31日朝時点)

この70,740件のコメントは、そのすべてが彼女の歌声、個性を褒め称えるものではない。四文字熟語や、ねたみ、容姿のあげつらい、そして彼女の人気にあやかって自分のWebやBlogへトラフィックを誘引しようとするアフィリエート的な輩もいた。

Source:Facebook / Susan Boyle

ま、言い換えれば人間社会の立場、動きすべてが凝縮されているといっても過言ではない。

FacebookやBlogなど、オープンで対等な会話を醸成するスペースにいる限り、また、彼女の歌声を世界中のインターネットユーザに広く知ってもらうために参加したスペースにいる限り(ただし、これは彼女の本意ではなく、talent.itv.comの狙いだが)、清濁併せ飲む必要がある。その意味でネガティブコメントも受け止めなければならない。

ところで、このネガティブコメントはどれくらいの比率になるかというと、Keller Fay Groupから出ているWOMのデータでは全体の10%だ。しかし、その6倍以上が「非常に肯定的」なWOMになっている。
また、肯定的なWOMは否定的なWOMよりも他の人にリレーされている。
Source:Keller Fay Group LLC / Single-Source WOM Measurement (pdf)
参考:36% (Brand Advocate) Talk Brands Online (Online Ad 2006/12/19)

世界中がインターネットというネットワークであり、かつ最大のメディアによってつながれている現在、企業・ブランドの意思にかかわらず、ブランドコンテンツは消費され、共有、拡散されている。それもマスメディア経由のコンテンツではなく、ソーシャルメディアスペースでユーザが創造した、あるいは共有されたコンテンツからブランドが発信されている。

この時代にソーシャルメディアスペースに参加する勇気を持たず、ネガティブコメントに怖気をふるい、レガシーメディアだけの情報・コンテンツ発信を続け、コンテンツ流通をモニターもしていない企業・ブランドに明日はない。

たった10%のネガティブコメントに対処できないために、62%に達するブランドアドボケートを見殺しにするのも、ネガティブコメントよりも他の人々へリレーされる肯定的なWOMを醸成しないのも本末転倒だ。

もうひとつある。

Facebookの彼女のページに何度も何度も「ゴタク」や「ヨタ」を飛ばす輩に対して、別の多くのユーザが「諭し」、「無視し」、「封殺」しようとしていた。それはSusan Boyleの価値を最もよく理解し、その価値をまだ知らぬ人々に知らせたい、届けたいと希求するアドボケーターが、ネガティブコメントに対してSusanに代わって奮戦していたということだ。彼らはSusanのサポーターでもある。

アドボケーター、(WOM)リレーされるコンテンツを提供すること、そしてサポーターを支援することこそがマーケティングだ。そして、このマーケティングはSusanの歌声が世界中の英語圏、非英語圏に届く時代に特定の国だけで行っていても意味がない。

今回を含め6回にわたり、Susan Boyleの歌声、彼女の歌声を広めたソーシャルメディア、ブランドバス、ネガティブコメントなどに関して書いてきた。彼女の存在、歌声、勇気、影響はとてつもなく大きい。それは一人の女性としてだけではなく、世界中を巻き込んだ嵐としても...。

参考:Amazing Voice : Susan Boyle (Online Ad 2009/04/20)
参考:Susan Boyle -2 (Online Ad 2009/04/21)
参考:Susan Boyle -3 (Online Ad 2009/04/27)
参考:Susan Boyle -4 (Online Ad 2009/05/02)
参考:Susan Boyle -5 (Online Ad 2009/05/31)

最後にやはりSusanの最高の熱唱を聞きたい。